2024.01.29NTTリーグワン2023-24 D2 第5節レポート(S愛知 52-19 九州KV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第5節
2024年1月28日(日)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 52-19 九州電力キューデンヴォルテクス

広いようで狭い日本のラグビー界。
古巣戦と地元クラブとの対戦を終えた男たちの思いとは

九州電力キューデンヴォルテクスの尾池亨允選手は昨シーズン、豊田自動織機シャトルズ愛知に在籍していた

週中の厳しい寒さも和らいだ日曜日のパロマ瑞穂ラグビー場。この日リーグワン唯一のカードだった豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)と九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)の対戦は、52対19でS愛知が勝利を飾った。

開始9分の間に3つのトライを奪う快調なスタートを切ったS愛知。そのあとは押し込まれる場面があったものの、粘り強いディフェンスで対抗し、自慢の素早いパスワークからリードを広げた。2枚のイエローカードを受けるなど、ペナルティに苦しむ時間帯があったことは課題として残るが、これで勝点を『20』に乗せ、暫定ながら首位に立った。昨季の同時期は勝点が『13』だったことを考えると、大きな成長と言える。

この試合に、特別な思いで臨む選手が両チームにいた。

一人は、古巣対戦となった九州KVの尾池亨允だ。昨季の1シーズンのみではあるがS愛知に在籍。期間としては短いものの、優しい人柄で多くの選手に慕われていた。そんな尾池は試合後のミックスゾーンで開口一番「楽しかった」とこぼした。

「ウチからしたらビジターゲームでしたけど、僕だけ勝手にホストゲームだと感じていました」(尾池)。試合前のアナウンスや交代出場時にはひと際大きな拍手が送られ、S愛知のファンに温かく迎え入れられた。後半27分に自身が奪ったトライは「たまたまです(笑)」と謙遜しつつも、「次はやり返します」と3月に控える次回対戦を心待ちにしていた。

豊田自動織機シャトルズ愛知の村川浩喜選手は福岡県出身。大学卒業時には九州電力キューデンヴォルテクスに加入する話もあったという

もう一人は、福岡県出身のS愛知・村川浩喜。地元のチームである九州KVには「思い入れがあった」と話す。東福岡高校から筑波大学を経てS愛知に加入したが、その前には九州KVに入団する話もあったという。「今季初出場の相手が九州KVだったのでうれしかったし、気持ちが入った試合でした」と数奇な縁を振り返った。

広いようで狭い日本のラグビー界。出場する選手の経歴をたどって、どんな思いで試合に臨んでいるのかを知るのも、面白さの一つだ。

(齋藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル 共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日は、たくさんのファンの方々に試合に来ていただいたことに、そして、素晴らしい環境でラグビーをさせてくださった運営関係者のみなさまにも感謝申し上げます。ありがとうございます。

前節の浦安D-Rocks戦は天候不良によって中止になったという中で、今日の試合に向けて素晴らしい準備ができたと思っていました。その準備が、開始とともに発揮できたところはすごくポジティブな点です。ただ、前節と今日の試合の2試合で3枚のイエローカードをもらったことについては、非常に残念に思っている点です。その部分については、課題としてこのチームを率いている私が、責任を重く受け止めないといけないと思っています。本日はありがとうございました」

──前節に比べて良くなった点はどこでしょうか?

「前節を終えて、今日に至るまでの中で、アタック、ディフェンスともにコネクションをより高めていくところにフォーカスして取り組んできました。今日に関して、その部分は、非常に良い連係が取れていたと思います。その点については、前回から大きく成長できたと思っています」

──ペナルティが多いという課題はどのように改善していきますか?

「もちろんスキル的な問題もあるかと思いますが、われわれ自身の中にある環境の問題、ペナルティを簡単に許してしまうような環境作りを、私がうまくマネジメントできていないところが原因かなと思います。私自身がしっかり反省して、どういうチーム文化を根付かせていくのか、そこをいま一度見直すべきというふうに今日は勉強させていただいたと思います」

──リード時の試合運びの難しさは感じましたか?

「そうですね、今日の試合は、九州電力キューデンヴォルテクスさんがどうこう以前に、われわれ自身にまずはフォーカスをすることを掲げていましたので、少し中だるみをするような時間帯があったことは、ディビジョン1に昇格することを目指しているのかと問われたときに、相応しい態度ではなかったと。そこについては、点差うんぬんではなく、われわれが掲げている目標に対してどうあるべきかということが非常に重要だと思いますので、これを受けて改善しなければいけないと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「ヘッドコーチが申したとおり、たくさんのサポーターの方々に来ていただけたことに感謝申し上げます。このような寒い天気の中にもかかわらず、来ていただけたこと、大変感謝しております。

試合に関しましては、“ファーストスタート”ということを掲げていて、開始10分で3トライを取れたことに関しては、これ以上ない良い結果だったとは思います。しかし、そのあと試合が進むにつれて、自分たちの規律のところでチャンスを逃してしまいました。ただ、若い選手たちやチャンスをもらった選手たちがしっかりとフィジカリティーを試合の中で出してくれて、とても良かったと感じております。また新しいチャレンジ、次のチャレンジに向けて、頑張っていきます」

──メンバーに変更がありましたが、一緒にプレーしていかがでしたか?

「そうですね、チームスコッドの中にも成長というものを感じています。ゲームメンバーの中で何人か変更があっても、自分たちのパフォーマンスの質は、ほとんど何も変わらずできているところがとても素晴らしいと思いますし、そのような選手たちの成長に対して、賞賛の言葉を述べたいと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ代行(左)、竹ノ内駿太キャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ代行

「本日は素晴らしいグラウンドと会場を準備してくださった関係者のみなさまに、お礼を申し上げます。結果的に差が開いてしまいましたが、最初の入りの部分で、ウチがスキを見せたと言いますか、準備してきたことのディテールをやり切れなかったところで、豊田自動織機シャトルズ愛知の勢いにやられてしまったという前半の展開だったと思います。ハーフタイムで、『もう一度ゲームスタートのつもりで行こう』と話をして、選手を送り出しましたが、選手はそこに対してしっかり切り替えて、準備してきたことをできた部分もたくさんありましたし、ウチとしても後半戦につながるいい部分もあったので、そこをポジティブに捉えながらも、後半戦に向けて、チームとしてどうやって立て直していくか、もう一度良い準備をして、次の試合に向けてチームでやっていきたいと思います。本日はありがとうございました」

──敗れた中でも得られた収穫はなんですか?

「開き直ってアタックしたということも重なったとは思いますが、このゲームの前に2週間のブレイクがあった中で、アンストラクチャーをチームとして強化してきました。そこに対して、アタックのボールの動かし方などは、練習した成果が少し出たというのもあります。それでトライを取れたのはチームとしての自信を持てたと思うので、そこはプラスになると思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
竹ノ内駿太キャプテン

「大会関係者のみなさん、本日はありがとうございました。ヘッドコーチ代行からもありましたけど、最初の10分間で立て続けにトライを取られたところが今日のゲームのすべてだと思っています。フィジカルバトルのところで、僕らが受けに回ってしまって、そこを打開しようと自分たちの準備したプレーをできたところもありましたが、自滅というか、自分たちのプレーをし切れなかったところが、最終的にこのスコアになったかなと思います」

──後半戦に向けてチームに意識させたいことは?

「僕らは今季からディビジョン2に上がったチームということをもう1回再確認することですね。チャレンジャーとしてのマインドセットがまだまだ足りていない試合が多々あったと僕は思っているので、ベースになる部分をもっとこだわって、チームに対して落とし込んでいきたいなと思います」

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