2024.02.11NTTリーグワン2023-24 D2 第6節レポート(RH大阪 15-24 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第6節
2024年2月10日14:30 ヨドコウ桜スタジアム (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 15-24 豊田自動織機シャトルズ愛知

杉下暢の復帰とともに向上を見せるRH大阪。
「あと一歩」を、次の勝利に

レッドハリケーンズ大阪にとって、杉下キャプテンの存在は大きい

2月10日(土)、ヨドコウ桜スタジアムで行われたディビジョン2の第6節では、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)と豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)が対戦。S愛知が先制トライを奪ったものの、前半はRH大阪が15対10と逆転し、折り返した。後半はS愛知がトライ一つとペナルティゴール3本でスコアを重ね、終わってみれば15対24でビジターのS愛知が勝ち点4を持ち帰った。

昨年末の12月24日に行われた第3節での同カードでは、59点もの差をつけられ、敗れていたRH大阪。そこから二つの試合をはさみ、チームとして変化した部分の一つに「マインドセット」を挙げたマット・コベイン ヘッドコーチ。そのマインドセットについて、前節の試合後に「ラグビーは、マインドセット一つで変わると思っている」と話していたのは、キャプテンの杉下暢だった。向上したコリジョンに関しても、接点で戦うことの重要性をチームに繰り返し伝えてきていた。

開幕から6戦すべてに先発している島田久満は、チームが一歩ずつ向上してきていることの要因の一つに負傷していた選手が戻ってきたことを挙げ、中でも「キャプテンが帰ってきてくれたことは、かなり大きい」と話している。

第4節に、杉下本人が想像していたよりも早い先発での復帰を果たし、8カ月ぶりのフル出場。それ以降、キャプテンとしての役割だけでなく、接点一つひとつに対するたくましい姿勢と力強いキャリーで存在感を示している。「杉さん(杉下暢)は、体を張って、見せてくれる。その杉さんを見て、みんながやっていく」(小村健太)ことができているという。「苦しいシーンでも声を出し、試合だけでなく、練習から引っ張ってくれる。チームの精神的な支柱」(深澤翔祐)である杉下の存在は、大きい。

試合後、バスに向かう選手たちの中には、直近2節の試合後の表情とは違う、ロッカールームでは整理し切れなかった気持ちがあるように見受けられた。後半40分を迎えるまでのスコアは、15対21。1トライ1ゴールで逆転勝利できる状況だった。この日も5,922人の観客がスタンドでタオルを回し、声援を送ってくれていた。どのような気持ちがあるかは、想像に難くない。

あと一歩ぶんだけ、届かなかった勝利。課題を的確に把握しているからこそ、改善すべき点を前向きに明示してくれるキャプテンは、「チームを奮い立たせてくれる存在」(五十野海大)。3週間後、この日には届かなかったものをつかみ取れるよう、RH大阪をけん引してくれることを期待したい。

(前田カオリ)

レッドハリケーンズ大阪

レッドハリケーンズ大阪のマット・コベイン ヘッドコーチ(左)、杉下暢キャプテン

レッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ

「試合の入りはあまり良くなく、先制トライを取られてしまいました。私たちは今週のトレーニングで、『自分たちにプレッシャーを掛けるのではなく、相手に掛けよう』ということをずっと言い続けてきましたが、前半の途中からはそれができていました。チャンスのあるところでは、自分たちのやりたいラグビーをすることもできましたし、イグジットもしっかりして、自分たちの首を絞めないプレーができたと思っています。自分たちがやりたいアタックもできていましたし、今シーズンの中で一番良いラグビーができたのではないかと思っています。後半は、向かい風の中で必ずタフな展開になるだろうと予想していましたが、少し自陣でのプレーが多くなってしまったことも感じています。最後の最後にチャンスもありましたが、そこで得点を取り切ることができませんでした。豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんの良いプレーによって試合を締められてしまったと感じています。ただし、ロッカールームでも選手たちに話しましたが、選手たちが見せてくれたファイトについては、私は本当に誇りに感じています。引き続きこのような戦う精神を示し続け、残りの試合を戦っていきたいと考えています」

──S愛知との前回対戦から改善された部分を具体的に教えてください。

「やはりコリジョンの部分ではないでしょうか。前回対戦したときに、私たちは接点に関して目を覚まされました。今回はしっかりできていたと感じています。ただ、練習で何かしたというわけではなく、マインドセットがしっかり変化したことによって、このハードコンタクトに向かっていく姿勢も持てるようになりました。アタックに関しても、無理にパスを投げるのではなく、しっかり我慢してプレーし続けられる強さを持てるようになりました。また、セットピースに関しては、最初のほうはあまり良くありませんでしたが、徐々に良くなってきています。スクラムにはまだ問題があるので、引き続き改善していく必要がありますが、今回の試合に関してはセットピースも悪くなかったと感じています」

──最後のチャンスで、得点につなげられなかった原因はなんでしょうか?

「S愛知さんのディフェンスは良かったです。自分たちの意図していた勢いを出せませんでしたし、厚い壁でした。スペースを探し、フェーズを重ねましたが、勢いを出せなかったので、最後にあのような形になりました。ひさしぶりに80分間プレーする選手もいましたし、足がだんだん動かなくなってしまったことも、厳しい状況にしてしまいました」

レッドハリケーンズ大阪
杉下暢キャプテン

「今日の試合は、二つのことを意識して臨みました。まず一つ目は、コリジョンの部分。S愛知さんとの前回対戦では、シンプルにフィジカルでドミネートされてしまっていたので、コリジョンでしっかりファイトしようと臨みました。これは今日の試合でしっかりと出せていたと感じています。そしてもう一つは、プレー精度。直近の2試合、第4節は40分、第5節では60分しっかりと戦うことができていましたが、後半の勝負どころでプレー精度を高く遂行することができなかった結果、自分たちのモメンタムを失い、自分たち自身にプレッシャーを掛けてしまっていた部分がありました。今日は精度を高く遂行し切ることで、相手にプレッシャーを掛けようと話していました。要所ではその瞬間に集中し、相手にプレッシャーを掛けることができていましたが、風下になっていた後半、敵陣に入っていくことができたチャンスで、またミスをしてしまいました。そこはチームとして、もう一段レベルアップしないといけない部分だと感じています」

──スクラムについて、前半はコントロールできていたが、後半は少し苦しいようだった。どういった部分が原因でしょうか?

「相性もあると思いますが、相手のフッカーが佐藤慶選手に代わりました。経験もある選手ですので、良いスクラムコントロールでわれわれにプレッシャーを掛けてきたように感じました。そこからS愛知さんのスクラムのモメンタムが復活しました。それに耐えられなかったわれわれの力不足もあります」

──最後の場面は、惜しくも得点につながりませんでした。

「もう少し自分たちの意図したアタックをしたかったです。落ち着いて精度を高く遂行しようという話をしていましたが、やはり少し焦ってしまった部分もあったかと思います。ミスをしてしまったことで、ズルズルと下がってしまいました。私も含め、9番、10番、15番の選手としっかりとコミュニケーションをとり、意図的にアタックするべきでした。あと、ハードワークの部分。足が止まってしまっていました。いまのトップ3に勝つためには、改善しなければいけません」

──けがから復帰し、10番に入ったボークコリン雷神選手のグラウンドでの貢献についてはいかがでしたか?

「特にコミュニケーションの面において、貢献してくれました。チームの潤滑油といいますか、われわれが静かになりそうなタイミングで、的確なアドバイスを与えてくれました。非常に頼りになりました」

──試合前の入場の際、杉下キャプテンではなく、けがから復帰した茂野洸気選手が先頭に立ち、入場したことについて。

「茂野選手が50キャップの節目の試合だったので、先頭に立ってもらい、入場しました。茂野選手は2代前のキャプテンを務めていましたので、今日もチームを引っ張ってもらいたいという思いがあって、お願いしました」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日は、本当にこの素晴らしいスタジアムにたくさんのファンの方々がご来場いただいている中でプレーできたことにつきまして、チームを代表してまずはお礼申し上げます。そして、このスタジアムにたくさんのこのレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)のファンの方々が応援に駆け付けているのを見て、地域に根ざした本当に素晴らしいチームだなということをあらためて感じました。

そんな中で、勝ち点4を獲得できたということについては、うれしく思っております。本日はありがとうございました」

──前半はリードされて折り返しました。苦しんだ要因はなんだったのでしょうか?

「まずRH大阪さんの本当に素晴らしいゲームプラン、特に接点でのプレッシャーが非常に厳しかったことが大きな要因となりました。あと、最も苦しんだのは、われわれ自身の中にある問題なのかな、と。前半も、もう少し簡単に得点もできるようなシーンもある中で、フィフティーフィフティー(50:50)のパスをつなぐなど、自分たちでコントロールできずに自分たち自身でリズムを壊したというところが問題だったと思っております。とはいえ、スクラムやラインアウト、ブレイクダウンを含めて、十分に戦えるという手応えを前半から感じていました。劣勢で折り返していても、80分でスコアは上回ることができると感じていたので、慌てることなく淡々と進めることができました。本来はもう少し得点できなければいけないシーンもあったと思いますが、得点できなかったのは自分たちの中にある問題で、良い反省材料として学びにさせていただいたと感じています」

──苦しい時間を打開する策は、どのように執っていきたいですか?

「自分たちが思い描いているラグビーを大きくモデルチェンジする必要はないと思っていますが、(次の試合が3月なので)2月はわれわれにとって大きく成長する1カ月だと思っています。ここでディティールの部分をしっかりと積み上げたいというふうに思っています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
フレディー・バーンズ ゲームキャプテン

「徳野ヘッドコーチが申し上げたとおり、素晴らしいスタジアムで素晴らしいファンのみなさんの前でプレーできたこと、感激しました。そして、RH大阪の選手のみなさんには、良いゲームプランで苦しめられましたので、称賛したいと思います。自分たちにとってもいいチャレンジになったと感じているので、自分たちのパフォーマンスはもう少し良くならなければいけないというふうには思っていますが、この良いチャレンジを生かし、この調子でしっかりと成長していきたいです」

──急きょキャプテンを担うことになりましたが、普段と何か意識は変わりましたか?

「今朝、急に(キャプテンを務めている)ジェームズ・ガスケルがメンバーから外れることになりましたが、このチームのキャプテンをさせてもらうということは光栄だったと感じています。いまこのチームの状況の中で、どこのチームも自分たちを倒そうと向かってきていることを感じています。そうした中でもしっかりとその対戦相手に対して少しでも多くの得点を取って勝つことができれば、これからの自分たちの成長にもつながっていくだろうと思います。ここで得たものをしっかりと次につなげていけるよう頑張っていきたいです」

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