2024.02.13NTTリーグワン2023-24 D3 第6節レポート(日野RD 61-12 SA広島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第6節
2024年2月11日(日)14:30 AGFフィールド (東京都)
日野レッドドルフィンズ 61-12 マツダスカイアクティブズ広島

試合に飢えた日野RDの選手たち。
「攻める気持ち」が勝利の原動力に

「アグレッシブなディフェンスができていた」と語った日野レッドドルフィンズの高野恭二選手(フルバック)

386日ぶりとなった東京開催でのホストゲーム。マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)を迎えた日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)は序盤から試合の主導権を握り、ボーナスポイントも含めた勝ち点5をゲット。ホストゲームに訪れたファンを大いに喜ばせた。

1月6日以来のリーグ戦となった日野RDの選手たちはグラウンドで戦うことに飢えていた。「第4節の中国電力レッドレグリオンズ戦中止のあと、1週間のオフを挟んで3週間しっかりとこの試合に向けて準備してきた」(苑田右二ヘッドコーチ)という日野RD。今季はラグビーチームとしては少人数の編成で戦い続けているだけに、そのぶん結束も固い。2月初旬に加わったアーリーエントリーの選手に先輩たちの心意気を伝え、より強いチームとして成長するためにも、この試合ではとにかく結果を出すことが必要だった。

前半、キックオフからのプレーではSA広島の出足が良く、キックオフボールを奪われた日野RDは一気に展開されて自陣5mラインまで押し込まれる。しかし、そこで光ったのがフォワードとバックスが一体となったディフェンス。「1カ月間隔が開いた中でもディフェンスの準備をものすごくやってきた。後ろから見ていても、内側のプレーヤーがしっかり前に出て守ってくれていたので、外側のプレーヤーもそれにリンクして対応するだけ、とコミュニケーションも取れていた。そういう意味で点を奪われる怖さのまったくない、アグレッシブなディフェンスができていた」と高野恭二が語ったように、バックス陣は高い運動量で粘り強くカバーを続けた。松井佑太も「ボールをしっかり回して攻めてくる相手に対し、コーチとも試合前に『センターとウイングで攻めのディフェンスをリードしていこう』と話していました。自分も期待されている仕事をしっかり遂行して、『受ける、ではなく攻めるディフェンスで』、という点を強く意識していました」と振り返る。そうして守り続けるうちに相手のハンドリングミスを誘発。高野が冷静にボールを蹴り出していきなりのピンチを脱出した。

ピンチをしのいだ日野RDはすぐに反撃。前半5分に相手オフサイドのペナルティからのクイックスタートで橋本法史がグラウンドのど真ん中を切り裂いて先制のトライを挙げると、その後はキッキングゲームの展開となったものの、高野のキック精度が相手のそれを常に上回ったことでエリアマネジメントにも成功。そこから小島昴、松井、さらには橋本の2トライ目と立て続けに得点を奪って28対0とし、完全に試合のペースを握った。

さらにホームの観客が湧いたのは前半35分に飛び出した松井のプレー。右タッチラインで得たラインアウトのボールをキープしたSA広島が左に展開する流れに対して、グラウンドのほぼ中央で松井が鋭い出足から強烈なタックルをしかける。これが相手のノックオンを誘発した。骨のきしむ音がグラウンドに響き渡ったこの「魂のタックル」。スタンドのファンは「攻める」という松井の熱い思いを受けとったはずだ。

「あの時間帯は試合が停滞し、攻め込まれている状況だったのですが、そこで『自分自身がもう決めてやる』という気持ちで向かっていきました。ちょうど相手のサインを研究する中で、読みどおりのサインが来たので思いっ切り行った結果です」と松井はそのタックルを振り返る。このプレーでおでこと髪の生え際付近から出血した松井は一時負傷退場となるも、後半頭から包帯を頭に巻いて再出場。「自分も確かに気持ちが高まっていたので、『出させてください、いけます』と。チームにできるだけ貢献しようという気持ちでした。また後半は切り替えて全力で戦おう、という気持ちで出ました」(松井)。

この言葉に象徴されるように、日野RDの選手たちの気迫が随所に表れていた。「バックスに展開すれば、必ずフィニッシュまでつなぎ、トライを取り切ることを徹底してきた」(苑田ヘッドコーチ)という練習の成果をバックス陣は存分に発揮し、終わってみれば9トライの快勝。バックス陣がプレーで示した「攻める気持ち」が勝利への原動力となった。

(関谷智紀)

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(右)、橋本法史バイスキャプテン

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「本日も素晴らしい環境でホストゲームができたことに感謝申し上げます。

今日の試合に臨むにあたって、3つの大切なことがありました。まず一つ目はセカンドラウンド(後半戦)のスタートとなる試合ということで、良いスタートを切りたかった。二つ目はアーリーエントリーの選手も入って47名、全員がそろって初めてのゲームというところ。そして3つ目は、第4節に予定されていた中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんとの試合が中止となりましたが、そのあと1週間のオフを挟んでからの3週間、本当に良い内容の練習ができた。今日も本当にみんな試合がしたくてウズウズしている中で、本当にエキサイティングなラグビーができたこと、それをホームグラウンドでできたことが非常にうれしく思います。

次の中国RR戦に向けて、1週間またオフを挟んで2週間の練習という予定ですが、今回のゲームよりさらに成長して中国RR戦に向かえるように、全員で良い準備をしていきたいと思います」

──試合中止もありましたが、ディビジョン3での対戦が一巡しました。一巡を終えて手応えはいかがでしょうか?

「エキサイティングなラグビーをしようということで、一番はプレーしているメンバー自身がボールを動かしながら楽しむ、という内容を披露できたと思います。今日も9つのトライを取れ、本当に良い崩しのパターンが前半から見えていました。今日の試合で学んだ部分も多くあるので、その学んだ部分を次に向けてしっかり改善し、もっともっとエキサイティングなラグビーができるよう取り組みを続けていきたいと思います」

──少しペナルティが多いと感じました。ペナルティがなければもう少し得点できたとも思いますがそのあたりはいかがでしょうか?

「ペナルティは今日12回あってフリーキックと合わせると13回。今シーズン、われわれはペナルティの数を毎試合一ケタに抑えることを目指して取り組んでいます。現代ラグビーはラインアウトからのスコアが50%ちょっと、スクラムからは12~13%と65%くらいはセットピースからの得点が占めているので、簡単にペナルティをして相手に起点を作らせないようにしなければならない。今日の試合は規律良くプレーをする意識は持っているものの、試合間隔が空いたところもあって『やってやるぞ』という気持ちが前面に出すぎてペナルティをしてしまう場面もあった。アグレッシブにプレーしながらも相手にスキを与えないようなラグビーをできるよう成長していきたいと思います」

──今日も23人全員が出場。このあと、試合間隔が詰まることを想定し準備しているのでしょうか?

「毎試合23人全員を出場させていますのでそういったことを想定しているわけではありません。シーズン12試合をとおして勢いを持ってラグビーができるように、疲れてきた選手やけがから復帰してきた選手といった点を考慮してバランス良く起用しています。今季のわれわれは、スターティングメンバーがチームを勢い付かせ、途中出場のメンバーが最後さらに勢いを強化してフィニッシュする、という役割をみんなが理解してくれている。そういう役割をしっかり遂行できる交代をするようにしています」

──とても良い内容でしたが、あえて今日の反省点挙げるとすれば?

「試合間隔が1カ月空き、選手みんなが『前に出てやってやろう』という気持ちが出ている中で、プレー選択が簡単な判断になる場面もあった。その部分や、ディフェンスでのペナルティの多さなどは改善できる。われわれ、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)はディビジョン1に上がって常にトップレベルに入れるようなチームになっていきたい、という目標を持って日々取り組んでいます。もっとスキのないチームとなって、もっとエキサイティングなラグビーができると思うので、そこを見据えて今から準備を始めることが重要です。もっともっと良いラグビーができるよう、ポジションリーダーの選手を中心に良い練習をさらに積み重ねていきたいと思っています」

日野レッドドルフィンズ
橋本法史バイスキャプテン

「前回の試合からおよそ1カ月も空いてしまったということで、自分自身も結構緊張をしたのですが、この試合に向けて本当に良い準備ができていて、その中で戦いに臨めました。良い内容の試合をお見せできたと思います。前半の途中からもう少しエナジーを上げていきたいなというところはあったんですが、全体的には良いゲームができたのかな、と思います」

──開始5分の先制トライの場面について。ペナルティをもらった直後にクイックスタートした判断の理由を教えてください。

「自分自身、試合の中でどうしたらチームに勢いを付けられるか、という点も常に考えてプレーしています。あのプレーは外からの声もあって『タップで行こうよ』っていう感じだったので、タップで行ったらたまたま目の前が開いてトライできた。スコアが入ったことによって自分たちのペースに持って来られたと思うので、先制トライで勢いが少しでも出ていたとしたら良かったかな、と思います」

──フォワードとバックスが一体となった守備ができていたように感じますが、スクラムハーフの位置から見ていかがでしたか?

「ディフェンスもそうですし、アタックでも選手みんなが本当にアグレッシブにプレーしていたと感じます。試合間隔が1カ月空いてしまったことが逆に良かったというか、みんながボールを持ちたい、タックルをしたいというアグレッシブな気持ちが出ている力強いディフェンスだったと思います。ペナルティなどが減ってくれば、もっともっと良いディフェンスができていくと思います。後ろから見ていても頼もしいディフェンスでした」

──今季ここまでの手応えをどう感じていますか?

「試合を重ねる中での手応えとしては、コンタクトエリアのところで、一人ひとりがとても体を張ったプレーができていると感じています。チーム全体として誰が出ても同じような戦い方ができるチームになっていると思っていて、今季の日野RDは、メンバーの交代などがあっても同じ強度で試合ができることが本当に強みになっていると思います」

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島の中居智昭ヘッドコーチ(左)、﨑口銀二朗キャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ

「本日はありがとうございました。試合開始から日野RDさんの圧力あるプレーに対して受けに回ってしまい、早い段階で点差が離れてしまった、というところで非常に残念な結果となりました。

アタックの部分については、前半から良い面も少しずつはあったのですが、なかなかそれがつながらず得点に結びつかなかったところが今日の結果かな、と思います。後半の最後に意地を見せるような形でスコアは取り返しましたが、最初からそういったプレーが出せるような形にチームを修正して次のゲームに臨みたいと思っています」

──前回の対戦からこの試合に向けて修正して臨んだ部分があれば教えてください。

「セットピースの部分です。スクラムで前回うまくいかなかった部分があったので、そこを何とか修正しようとしました。その中で、日野RDさんもわれわれに対し策を練っていて、そういった面で優位性が生まれなかった。逆に、われわれのペナルティもあり、日野RDさんもペナルティという形で、ある程度お互いリスクを背負った状態でのセットピースになってしまったのかな、と思います。あとはエリアの部分です。戦うエリアをもっと前でプレーしよう、ということで意思統一してはいたのですが、蹴ったあとのディフェンスやそういった部分で相手の方が一枚上手な形でボールを持ってきたり、裏に抜けたりというプレーがあり、われわれが後手に回った部分がありました」

──次の中国RR戦に向けて今日の良い点をどう次に生かしたいでしょうか?

「フェーズの中で相手の裏に出るシーンが何度もあったのですが、そこが早い展開として次のプレーにつながっていないというケースがありました。試合開始早々に普通のリズムで攻めていた中でターンオーバーを起こしてしまって、そこからずっとピンチが続くといった展開になっていました。チャンスではスコアまでしっかり取り切る、というところを修正していきたいと思います」

マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン

「中居ヘッドコーチの言葉にもあったとおり、日野RDさんの圧力に負けてしまったところが今日の試合のすべてかな、と思います。試合の要所でわれわれ、マツダスカイアクティブズ広島も良いアタックや良いディフェンスはあったりしたのですけれども、それが単発で終わり数を重ねられなかった。その結果日野RDさんの流れでゲームが進んでしまった。みんながこの結果には悔しい気持ちを持っていると思う。しっかりと練習をして次の中国RR戦に向けての準備をして、その試合でもリベンジになると思うので、しっかり勝って、また良い勢いをつかんでいきたいと思います」

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