NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第12節 カンファレンスA
2024年4月7日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 東芝ブレイブルーパス東京
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)
解き放たれた超獣。
いまこそ苦しむ“家族”を助けよ
「ラグビーを始めたころの最初のポジションは?」とたずねると、彼は少しはにかみながら「ウイングです」と答えた。その照れ笑いのような柔らかな微笑みからは「意外と思われるかもしれませんが」という真意が読み取れる。現在のポジションはスクラム最前列のプロップで、実はこれまでにバックスだけでなく、フォワードではナンバーエイトも経験。いまでも試合でペナルティを奪ったあとに自らボールを保持してすぐにアタックしようとするのは、ボールを持って走るポジションを務めていたころの名残でもある。
目の前の相手を豪快に吹っ飛ばすさまは、まさにブレーキの壊れたダンプカー。「豪快」という単語では到底表現し切れない、超獣のごときプレースタイル。今季、第2節に出場して以降は欠場を続けていたオペティ・ヘルが、3月以降、本格的に戦いの最前線に戻ってきた。
「その間、チームはなかなか勝てない状況が続いていましたが、私は試合に出ている仲間たちと同じ痛みを味わい、同じ感情を抱いていました。だからこそ、早く復帰したいと思っていました」
1998年生まれのトンガ出身。小学生のころにラグビーを始め、当初は大人たちにまじってプレーしていたとか。のちに“秘密兵器”と称される怪物性のベースは、この時代に培われたという。
「大人たちに揉まれるタフな環境の中で養われたものはあったと思います。高校生のころには、同世代の相手にしっかりと体を当てられるようになっていました」
しかし、母国トンガにはオペティ・ヘルよりも巨大な体躯の選手は山ほどいる。いまでは想像しがたいが、当時は試合や練習で当たり負けしたことも一度や二度ではない。
「相手にふっ飛ばされても、あきらめずにもう一度チャレンジしていました。このネバーギブアップの精神はトンガ人のプライドのようなものです。相手に自分の恐れを見せない。絶対にあきらめない。『ギブアップをするのは自分が死ぬときである』と、私は先輩から教わりました。その教えを守り続けてきました」
紆余曲折を経て、義兄のトゥパ フィナウのすすめでトライアウトを受けて2019年にクボタスピアーズ(当時)に入団。かけがえのないファミリーとの出会いが、トンガ人のプライドにラグビー特有の献身性をプラスさせた。
「初めてチームのロゴマークを見たときは馬なのかユニコーンなのか分からなかったのですが(苦笑)、いまは先輩方が築いてきたレガシーの上にチームが成り立ち、そして私たちがそれを受け継いで新しい歴史を作っていることを理解しています。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は私にとって家族のような存在です。家族を助けるためには、まずは自分が強くなる必要があります。強くならないことには、誰も助けることはできません」
今季は5勝6敗と苦しい戦いを強いられているS東京ベイ。いまこそ家族を助けなければならないときである。さあ、解き放たれた怪物よ、ピッチで思う存分暴れるがよい!
(藤本かずまさ)
東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)
悲願達成への不可欠なピース。
さあ、暴れよトライゲッター
東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は4月7日、秩父宮ラグビー場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と対戦する。
リーグ戦2位のBL東京に、頼りになるトライゲッターが帰ってくる。日本代表としてラグビーワールドカップ2023フランス大会でも活躍したジョネ・ナイカブラが、6試合ぶりに先発メンバーに名を連ねた。
「(欠場期間中から復帰に向けて)徐々に積み上げてきました。試合に出場することが待ち遠しいです」
今季は開幕節の静岡ブルーレヴズ戦で圧巻の4トライ、第2節の東京サントリーサンゴリアス戦では松島幸太朗に競り勝ってトライを奪うなど、好調なスタートを切ったが、第3節のコベルコ神戸スティーラーズ戦、第6節のトヨタヴェルブリッツ戦はともに前半途中に負傷交代をしていた。
離脱期間中もチームは好調を維持し、ここまで10勝1敗としているが、悲願の優勝に向けて、圧倒的なスピードで局面を打開するジョネ・ナイカブラの存在は欠かせない。ただ、物静かで謙虚なエースは目の前の一戦に集中している。
「1試合ずつにフォーカスし、プランに基づいて遂行することが大事です。S東京ベイは体の大きな選手が多いので、ディフェンスのラインスピードを上げていきます。(個人的には)自分のところにボールがこなくても、しっかりと動きます。また、(相手の)キックに対して注意を切らないようにします」
1年前には愛娘が誕生。「彼女が成長していく姿を見られることが本当にうれしいです」と優しく微笑んだジョネ・ナイカブラは、グラウンドでは“もう一つの家族”とともに戦う。
「(チームメートの)兄弟たちと試合をすることを本当に楽しみにしています。自分の役割にフォーカスし、トライができれば最高です」
(安実剛士)