2024.04.09NTTリーグワン2023-24 D1 第12節レポート(S東京ベイ 20-22 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第12節 カンファレンスA
2024年4月7日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 20-22 東芝ブレイブルーパス東京

ラスト1分で変わったシナリオ。
S東京ベイが直面する“生みの苦しみ”

序盤にトライ・セービング・タックルを決めるなどしてチームを牽引したクボタスピアーズ船橋・東京ベイの立川理道キャプテン

バーナード・フォーリーの約3カ月半ぶりの戦線復帰を祝うオレンジの歓声は、80分後には落胆のため息に変わった。勝たなければならなかった。勝たねばならない戦いで、勝てなかった。狼の猛追から逃げ切れず、屈辱的な逆転負け。試合後、キャプテンの立川理道が「これは分からないことですが……」と前置きした上で口にした「『いい試合だった』で満足している選手がいるかもしれません。そうではなくて、リーダー陣と厳しく振り返る必要があります」という重たい響きを持った言葉が、チームの現状の切実さを物語っていた。

絶好調をキープする東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)を対戦相手に迎えた秩父宮ラグビー場でのホームゲーム。前半を支配したのは、今季はここまで苦戦を強いられ続けてきたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)のほうだった。スーパーヘビー級のフォワードが戦車のように前進し、機動力に満ちたバックスが躍動感あふれるアタックを見せる。これぞ本来の“スピアーズのファイト”。憑きものが落ちたかのようなその戦いぶりに、S東京ベイの今季ホーム初勝利というエンディングを予測した者も少なくはなかったであろう。

ところが、後半になると試合は表情を変え、BL東京が着実に物語のシナリオを書き換えていく。運命を分けたのはラスト1分。得点は20対15でS東京ベイがリード。勢いに乗るBL東京は、セタ・タマニバルがクイックタップから速攻トライを決めて同点に追い付く。そして、試合終了のホーンが鳴った直後にリッチー・モウンガがコンバージョンキックに成功。S東京ベイがつかみかけた勝利は、この瞬間にするりとこぼれ落ちた。

「試合に戻れたことはとてもハッピーです。試合に出られなかった間はフラストレーションを感じていましたが、エキサイティングな気持ちで今日を迎えることができました。ただ、結果を出せなかったことはとても残念です。後半はプレッシャーが掛かり、自分たちのラグビーができませんでした」(バーナード・フォーリー)

待望の復帰戦となったのだが‥‥クボタスピアーズ船橋・東京ベイのバーナード・フォーリー選手

試合では復帰したバーナード・フォーリー、ゲラード・ファンデンヒーファーをはじめとしたベテラン陣が存在感を発揮し、紙森陽太、江良颯、為房慶次朗らニュージェネレーションも躍動した。強いスピアーズを作ってきた男たちと、これからさらにスピアーズを強くしていく男たち。そこに未来は確実にある。だが、現在と未来の歯車がなぜかうまくかみ合わず、時が前へと進まない。

これが生みの苦しみというものなのか。もちろん明日のことなど、誰にも分らない。しかし、現実を直視し、いまこの瞬間をどう生きるかで明日が決まる。おそらくは近い将来、『この敗戦がチームにとって大きな財産になった』と振り返られる日がきっとくる。

(藤本かずまさ)


クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「両チームが80分間をとおしてアームレスリングのような接戦を繰り広げました。そうした戦いの中で、ラスト10分のところでスクラムのペナルティを犯したことや、正しいエリアでプレーできなかったことが、最後の結果に響いたと思います。ただ、選手たちの努力や、(前節の)埼玉パナソニックワイルドナイツ戦から改善できた部分は見ることができました。ポジティブな点も多くあったので、そういった部分は今後も続けていきたいです。復帰した選手たちも前半、後半問わず、いいインパクトを残してくれましたし、いいコントロールをしてくれました。(勝敗を分けたのは)本当に最後の最後の、小さなところだと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「今シーズンは接戦が多く、なかなか勝ち切れていません。そこには理由があると思います。学びを常に受け入れて、次に生かさなければ勝ち切れないリーグになってきたと思います。しっかりと今日の敗戦を受け入れ、次の試合に向けて切り替えてやっていくしかないと思います。ただ、ゲームの中でやろうとしていることは、特に前半はできていたと思います。そういう時間をしっかりと長く保って、しっかりと勝ち切れるようなチーム作りを、あと4週間やっていく必要があると思います」

──クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)らしさを取り戻した、いい部分もありました。

「もちろん、明るい材料もあります。バーナード(・フォーリー)が帰ってきてくれたこともそうですし、(藤原)忍も毎試合良くなっています。後半に入ってきた若い選手たちもしっかりと仕事をしてくれています。そういったところはチームにとってすごくポジティブな部分だとは思うのですが、やはり勝ち切れない試合というのは、もどかしい…。これは(理由が)分からないです。僕もまだチームの中で共有できていないのかもしれませんが、『いい試合だった』で満足している選手がいるのかもしれません。そうではなくて、リーダー陣とそこを厳しく振り返る必要があると思います」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、原田衛バイスキャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「ものすごい試合でした。まずはS東京ベイさんに最大限の敬意を表したいと思います。私たちは激しいプレッシャーにさらされ、特にラインアウトやセットピース、コリジョンのところでものすごく苦しめられました。同時に、そうした中でも選手たちは本当によくやってくれました。苦しい状況でもあきらめず、しっかり力を見せてくれたと思います。後半に関しては、『よりダイレクト(あまりパスで展開せずに相手に当たっていくようなプレー)に、フィジカルを押し出していこう』というところで、自分たちのできる部分を見せられたと思います。もちろん、修正点もたくさん見つかりました。その修正点は持ち帰りたいと思います。負けて学ぶのではなく、勝って学びを得たことはチームとしてはポジティブに捉えられます」

──前半のプレッシャーを受けた部分についてはどう振り返りますか?

「まず、序盤のタックルの局面で、S東京ベイさんからかなりダブルタックルを受けました。そこはS東京ベイさんがしっかりと準備をされていたのだと思います。今後はタックル(を受ける際)のバリエーションを見直さなければいけないと感じます。ただ、前半の後半に関しては、しっかりと相手選手と相手選手の間を抜いていくことができ、そこは良かったと思います。

試合をとおしては、アームレスリングのようなタフな試合になり、サイズが大きくてフィジカルが強いS東京ベイさんに対し、私たちはしっかりとオプションを遂行するために早くセットして、自分たちの使うスペースをしっかりと認識し、それに対してアタックしていくことが求められました。

こういうタイトな試合をモノにすることで自信が生まれてきます。実際に自信があったからこそ、こういう試合をモノにできることもあると思います。今日の試合のようなシナリオでも、しっかりと最後まで戦ってくれた選手たちを誇りに思います。お互いのために頑張ろう、チームメートのために体を張ろうという意識を選手たちからものすごく感じられました」

──来週のコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)戦で勝利すれば、プレーオフトーナメント進出が決まります。

「確かにそういった状況は把握しています。ただ同時に、先を見過ぎずに、しっかりと地に足をつけて戦っていきたいと思っています。仮に勝ててプレーオフトーナメント進出が決まったとしたら、それは選手たちが頑張ってきてくれたことが報われる一つの素晴らしい形だと思います。同時に、『一試合一試合が重要』という捉え方をすると、今日の試合からもたくさんの学びがありました。そこを修正して、いかにより良くした状態で神戸S戦に臨むかというところで、また次の新しい1週間が楽しみな気持ちもあります。もし、プレーオフトーナメントに進出できたとしたら、そのための準備が整っていた、そこまでの結果を出せる力を蓄えてきたからこそのことだと思います。それは素直にうれしく受け取りたいと思います」

東芝ブレイブルーパス東京
原田衛バイスキャプテン

「前半と後半で対照的な試合になったと思います。後半は、新しい選手がエナジーを与えてくれて、これが今年の東芝ブレイブルーパス東京の強さかなと感じました。全員が最後まで勝ちをあきらめずに戦った結果だと思います」

──来週の神戸S戦で勝利すれば、プレーオフトーナメント進出が決まります。

「このチームで試合ができるのも、プレーオフトーナメント決勝戦までいってもあと6、7試合くらいになります。一戦一戦、時間を無駄にせず、次の1週間もしっかりと準備をしていきたいと思います」


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