NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第13節 カンファレンスA
2024年4月13日(土)14:00 IAIスタジアム日本平 (静岡県)
静岡ブルーレヴズ vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)
アイスタ開催の試合で勝つことの意義。
静岡県全域の方に応援してもらえるように
「静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)は静岡県全域をホストエリアにしていますが、普段のホストゲームはヤマハスタジアムやエコパスタジアムという県西部での開催が多いので、今回のように中部や東部の方が来やすいアイスタ(IAIスタジアム日本平)でやれるのは、すごく意義があることだと思います。僕らが静岡県全域の方に知ってもらう、応援してもらえるチームになるためには、ここで良い試合をして勝つことが本当に大事だと思っています」(日野剛志)
ジャパンラグビー リーグワン創設とともに「ヤマハ発動機ジュビロ」から「静岡ブルーレヴズ」に名前が変わり、ホストエリアが県全域になって、年に1、2回アイスタでホストゲームが開催されるようになった。サッカーでいえばジュビロ磐田のライバルチームである清水エスパルスのホームスタジアムで試合をするというのは、サッカー王国の県民から見れば画期的なことだった。さまざまな面で垣根を越えていくラグビーというスポーツの魅力とも言える。
だからこそ、この貴重な舞台で「また観に来たい」と思ってもらえるような試合をすること。その重要度は、日野をはじめとして多くの選手が強く実感している。
しかも相手は、昨季のチャンピオンチーム、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)。能力の高い選手やフィジカル面に強みを持つ選手がそろっており、「コンタクト勝負ですね。大きい選手が多いチームに対して、どれだけ引かないか、前に出続けられるかが大事になると思います」と先発復帰するプロップの伊藤平一郎は言う。選手同士が激しくぶつかり合う、ラグビーの醍醐味に満ちた戦いになることは間違いない。
また“アイスタでの戦い”には、静岡BRの強みを生かしやすいというアドバンテージがある。
「本当に素晴らしいピッチで、芝の根がよく張ってるんでしょうか。スクラムで踏ん張っても芝が全然めくれないんですよ。だから僕らの武器であるスクラムがすごく組みやすい。S東京ベイに対しては、そこでアドバンテージをしっかり取っていかないと勝利は見えてこない。僕らの特徴を存分に発揮して勝ちたいと思います」(日野)
ピッチとスタンドが近くて観やすさという面でも定評のあるアイスタ。静岡BRらしいラグビーを堪能するには最適な舞台だからこそ、ラグビーの試合を観たことがない人やサッカーファンにもぜひひと声かけて、いつものオレンジではなく青く染まったアイスタに足を運んでみてほしい。
(前島芳雄)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)
断ち切りたい“負の連鎖”。
「残り試合すべてに勝つ」(テアウパ シオネ)
第12節を終えた段階で5勝7敗の8位。勝利の女神とのそりがなぜか合わず、得体の知れない苦難に直面している今季のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)。しかし、戦いの中にはポジティブな要素も見受けられ、個々のプレーに目を向けてみれば、ベテラン勢は質実剛健な戦いぶりでチームをけん引し、ニュージェネレーションの選手たちもピッチで輝きを放っている。
「今シーズンはアンラッキーな試合が続いています。ただ、これで満足しているようではスピアーズではありません。『チームのせいではなく、自分のせいで負けたんだ』と。私はそう考えるようにしています」
そう語るのは2017年入団のベテラン、テアウパ シオネ。力強いボールキャリーとタックルでチームにエナジーをもたらす姿はまさに“頼れる先輩”。東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦でも存在感を大いに発揮し、その躍動的でエモーショナルな戦いは、今季も錆びていないどころか、むしろ輝きを増している。
「同じ13番(センター)のリカス(・プレトリアス)が、すごく調子がいいんです。私も負けてはいられません」
1992年生まれのトンガ出身。かつてS東京ベイには、トンガ出身の大先輩、現・クリタウォーターガッシュ昭島バックスコーチのオツコロ カトニが在籍していた。オツコロはS東京ベイにおけるトンガ出身選手のカルチャーを築いた人物。31歳になったテアウパが現在もコンディションをキープできている秘密が、このオツコロの置き土産にある。
「昨年からサウナに通うようになって、体が少し軽くなってさらにスピードが出せるようになりました」
このサウナこそ、オツコロがS東京ベイのホームエリアで開拓した大浴場。大先輩から文化を受け継ぎ、テアウパも昨年から通うようになったという。
「若いころは試合後にお酒を飲んでも平気だったんですが、次第にリカバリーが追いつかなくなってきたので、ハルさん(立川理道)に相談したんです。すると、もう30歳になったんだから体をケアしなさいと。それでサウナに通うようにしました」
基本は8分間を4セット。地元の高齢者の方たちと一緒にサウナに入り、「整う」感覚も分かるようになったとか。
「リカバリーもしっかりとできるようになり、実際に試合での調子もよくなりました」
今節の相手は、昨年12月24日の第3節で逆転負けを喫した静岡ブルーレヴズ。その一戦では前半に7対16とリードされるものの、後半には逆転に成功。その、逆転トライを決めたのがテアウパだった。だが、その先に待ち構えていたのは痛恨の敗北。後半43分にトライを許し、一度はつかみかけた勝利を手放すに至った。ここからS東京ベイは何かに憑かれてしまったかのような、タフな接戦で勝ち切れない苦しい戦いを強いられることになる。前節のBL東京戦も、しかり。
「BL東京戦は本当に残念な結果に終わりました。しかし、残りの4試合すべてに勝って、たとえプレーオフトーナメントに進出できなかったとしても、いい形で次のシーズンにつなげていきたいです」
そしてもちろん、「負けられない」相手はチームメートのリカス・プレトリアスだけではない。
「相手チームのセンターには絶対に負けたくないです。試合にも、可能ならばシーズンをとおして全試合に出たいです」
いかなる困難にも意味はある。だから、抗うだけの価値がある。そろそろ断ち切ろうじゃないか、クリスマス前日から始まった負の連鎖を。
(藤本かずまさ)