2024.04.20NTTリーグワン2023-24 第13節 江東BS vs 中国RR-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第13節
2024年4月21日(日)13:00 小田原市城山陸上競技場 (神奈川県)
清水建設江東ブルーシャークス vs 中国電力レッドレグリオンズ

清水建設江東ブルーシャークス(D3)

達成なるか、41歳でのファーストキャップ。
フランカー一筋の男が引退前に示す情熱

清水建設江東ブルーシャークスの大隈隆明選手。監督から今シーズン再びプレーヤーに。そしてこの試合に出場となるとリーグワン初キャップ(写真提供:清水建設江東ブルーシャークス)

来季のディビジョン2昇格が懸かった前節の大一番、クリタウォーターガッシュ昭島との一戦を46対22で制した清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は目標であった1年でのD2返り咲きを達成した。昇格の喜びは大きく、選手たちはもちろん、勝てない時期も応援し続けたファンにとっても最高の瞬間だった。

「ホッとした」という気持ちが一番強いと語るのは、昨季は監督として指揮を執り、今季、選手として現役復帰した大隈隆明。

「昨シーズンは、監督としてD3に降格してしまった心残りという、モヤモヤしたものがずっと心の中にありました。なので、D2昇格が決まった瞬間、本当にホッとした気持ちでいっぱいでした」と安堵の笑顔を見せた。

そんな大隈は、今節、今季初のメンバー入りを果たした。2005年に近鉄ライナーズ(当時)に加入し、2007年にはキャプテンも経験。その後、2017年から清水建設ブルーシャークス(当時)に加入した。トップカテゴリーから加入した選手として経験値が高く、チームの中で大きな存在となり、選手兼監督の時期も経て2020年には正式に監督に就任。今季はフォワードコーチ兼任のプレイングコーチとして現役選手に復帰していた。今節、出場すればリーグワンのファーストキャップとなる。

ラグビーを始めた中学2年生から28年間フランカー一筋の大隈。「自分の考え一つでいろいろな局面に顔を出せる。型にとらわれないで戦えるのがフランカー」だと話す。

ただ、身長(170センチ)を考慮し、高校・大学時代に周りからはフッカーなどへのポジション変更を勧められたという。サイズを理由にされる悔しさとフランカーへの情熱を持ち続け、心が揺れることはなかった。「サイズが小さくてもやれるところを見せたいです。とにかくフランカーというポジションが好きなんです。貫きとおして、将来ラグビー選手を目指す子どもたちに勇気を与えられるように、戦う姿を見せたい」と意気込みを口にした。

そんな大隈だが、先日今季限りでの現役引退が発表された。「チームが『仕事もラグビーも100%』と掲げており、行動で示していかないといけない立場でもある中で、年齢的にも会社から求められるものも大きくなりました。その100%が達成できなくなるのであれば、チームに残るべきではないという思いと、選手たちが頼もしく自分がいなくてもこのチームは大丈夫だと思いました」とそんな思いが重なっての決断だったという。

残り少ないラグビー選手人生、さまざまな思いを背負って戦う今節は、前回対戦で22対21と接戦での勝利となった中国電力レッドレグリオンズをホストゲームに迎える。相手はD3で1試合平均のタックル成功数が最も多いチーム。江東BSとしてはいかにボールキープをしてアタックし続けられるか。フランカー一筋を貫きとおしてきた大隈の活躍に期待が寄せられる。

(山村耀)

中国電力レッドレグリオンズ(D3)

勝利のカギを握るのは自分たちらしいラグビーの貫徹。甘さを排除し、勝利にこだわる

中国電力レッドレグリオンズの宮田賢斗選手(写真中央)。「僕はフロントローだけど、ジャッカルを強みとしてやっています」

試合前日の夜にバニラアイスを食べる。それが宮田賢斗のルーティンだ。大学時代に友達の勧めで始めたが、当初から「そんなことで変わるわけない」と効果を信じているわけではない。それでも、何年も欠かさず続けると、いまでは自分らしく試合に臨むための大切な儀式になった。

宮田賢斗は今季のリーグ戦全9試合に先発出場。プロップという体力の消耗が激しいポジションだが、そのうち4試合にフル出場している。坪井秀龍フォワードコーチは、「スクラムでもフィールドでも存在感があって、高いワークレートで80分戦える選手。ディフェンスが中心のチームスタイルに一番マッチしていると思います。常に冷静で体も強いので、あいつならいつでもやってくれる」と絶大な信頼を寄せている。

昨夏には体づくりに取り組み、「長い時間プレーできるように今シーズンに向けてやってきました」。激しい戦いが続く中で「どうしても痛いところは毎試合出てくる」と言うが、体のケアを怠らず、常にグラウンドに立ってきた。今年1月の結婚も追い風となり、今季はジャパンラグビー リーグワンにおける自身初トライを含む3トライを記録。シーズンを通じて好調を維持し、今節もスタメンで自分らしく戦っていく。

「僕はフロントローだけど、ジャッカルを強みとしてやっています。アタックも好きですが、どちらかというとタックルをするのが好きで、相手を確実に止めて、そこからのブレイクダウンでジャッカルするっていう流れが好きですね」

中国電力レッドレグリオンズは今節、ディビジョン2昇格を決めた清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)とのビジターゲームに臨む。チームとしても“自分たちらしさ”がカギになる。

前節のマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)戦では、持ち味のディフェンスで受け身になってしまい、自分たちのラグビーをさせてもらえずに敗れた。その前の2試合では上位2チームを相手にアグレッシブさを見せて健闘していたが、その自信をSA広島戦でうまく生かせず、「心のどこかに『絶対に勝てる』っていう慢心があったのかもしれない」(宮田賢斗)とチームの甘さが結果につながっていた。

だからこそ今節は、「自分たちのラグビーを徹底してやっていきたい」と宮田賢斗は意気込む。前回1点差で惜敗した江東BSを相手に「ディフェンスから流れを作って勝ちにこだわりたい」と今度こそ勝利をつかみにいく。

「前回が1点差だからといって同じような試合ができるとは限らないし、相手はまた目の色を変えてやってくるはず。まず僕たちが自分たちのラグビーをすれば、その先に勝利という結果がついてくると思います」

宮田賢斗は今節もまたバニラアイスを食べる。前夜のうちに甘さをすべて消化して、試合では自分たちらしいラグビーを貫徹するだけだ。

(湊昂大)

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