2024.12.24NTTリーグワン2024-25 D2 第1節レポート(RH大阪 34–13 GR東葛)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第1節
2024年12月22日(日)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 34–13 NECグリーンロケッツ東葛

後半8分のビッグゲイン。
“勁草”が“疾風”となり、成長を示す勝利を呼び込む

殊勲のインターセプト&トライでプレーヤー・オブ・ザ・マッチに。レッドハリケーンズ大阪の山口泰輝選手

12月22日(日)にヤンマースタジアム長居で行われたディビジョン2第1節には、9,071人の観客が訪れた。試合は、ホストチームのレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)が34対13でNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)に勝利し、ボーナスポイントも含めた勝点5を獲得した。

二十四史の一つ・後漢書の中に、“疾風に勁草を知る”という言葉がある。速い風が吹いたときには、折れてしまわない強い草を知ることができる。そこから転じて、苦難のときにこそ、その者の真価が分かるという意味である。

1カ月前、RH大阪はプレシーズンマッチの3戦目として、GR東葛とのゲームに臨んだ。結果は、19対54。昨季に対戦した2戦に続き、大差で敗れた。

その試合では、23歳の山口泰輝がゲームキャプテンを務めた。試合後には先輩たちばかりの中で「勝ちたいという気持ちがプレーから感じられなかった」とあえて強めの言葉を選び、「1カ月後には勝てるようにしましょうよ」とチームに呼びかけた。キャプテンの杉下暢は、山口がいかに堅固な“勁草”であるかがうかがい知れるそのエピソードを挙げて、バイスキャプテンの一人として「信頼している」と開幕前に話していた。

その1カ月後となるこの日、今度は山口自身が“疾風”となる。

後半8分、GR東葛がフェーズを重ね、ゴールラインに迫っていた。山口には、その局面での展開が読めていたのだろう。あと2m、あと一つのパスでトライできるところまできたGR東葛のパスを狙いすましていたかのように、インターセプト。そのまま“疾風”のごとくゴールラインまでの98mを駆け抜けるビッグゲインだった。

本人は「足が遅いと言われているので、右から追いかけてきた相手のウイングが気になって、聞こえなかった」と言うが、インターセプトの瞬間からトライを決めたあとまでの約20秒の間、ずっとスタジアムにはこの日最大の歓声が響き渡った。相手指揮官にも勝敗を分かつ「ビッグプレー」だったと称賛されたその“疾風”は、勝利への強い意欲に周りを巻き込み、赤い旋風へと変えてみせた。

トライ後、祝福を受ける山口泰輝選手

山口が試合後のフラッシュインタビューで話したとおり、「ここから長いシーズンが始まる」。新入社員という立場から、グラウンドでは最後尾の立ち位置から、山口はチームを目標地点へと押し上げ続ける。

(前田カオリ)

レッドハリケーンズ大阪

レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(右)、茂野洸気バイスキャプテン

レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ

「今日は大阪市民のみなさんも含め、たくさんの方に来ていただきました。私たちのプレー、勝利するところを見ていただくことができ、本当に良かったです。レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)らしく、タフにディフェンスをしてプレッシャーを掛けていくことができ、とても良かったと感じています。とはいえ、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんは激しいアタック、そして選手個々の能力も高いので、ピンチを迎えるシーンも多くありました。そうした局面でも崩れることなく自分たちの絆を使って80分間戦い抜いたことが、勝利につながりました。シーズンは長いので、ここで得た反省点をしっかり見極め、これからの試合に臨んでいきます。今日は本当にありがとうございました」

──試合を迎える前、セットピースとコリジョンがポイントになってくると挙げておられました。実際に今日の試合を終え、どのように感じたか教えてください。

「セットピースに関しては、選手たちは本当に頑張ってくれたと感じています。スクラムについては、少し思いどおりにできなかったので、修正していきたいと考えています。自分たちのやりたいことをしっかり全うしよう、やり切ろうという姿が見られたので、小さな修正で改善できると思います。ラインアウトについては、獲得率もモールも、概ね向上しています。今日の試合で一番良かったのは、コリジョンでした。常に接点でファイトすることができ、アグレッシブに刺さりに行って、相手のモメンタムを止める。それは試合の入りから見せてくれたので、非常に満足しています」

──コリジョンに関しては、シーズンを迎える前から重点的に取り組んできた部分だとおっしゃっていました。手ごたえを得ると同時に、さらに向上したいと感じる部分もありましたか。

「私たちは、外国籍選手が多いわけではなく、日本人の社員選手が中心のチームです。すべてをバランス良く戦うというのは、難しいことだと思っています。よって、プレシーズンはスキルやコリジョンにフォーカスして強化してまいりました。シーズン前からS&C(ストレングス&コンディショニング)に時間を掛けてやってきた成果が、見えたと感じています。やってきたことを積み上げ続けるということが大事なので、相手に対してより効果的にイヤなプレーができるよう、もう少しゲームを見極めて修正し、さらに自分たちの良さを発揮できるよう続けていきます」

レッドハリケーンズ大阪
茂野洸気バイスキャプテン

「リーグワン関係者のみなさま、この場にはいらっしゃいませんがレフリーのみなさま、応援してくださったみなさま、本日はありがとうございました。試合に関しては、無事に勝ち切ることができて本当にうれしい気持ちです。勝利できた要因を一つ挙げるならば、自分たちのディフェンスが機能したことです。10月から始まったプレシーズンマッチでは、うまくいかない試合もありましたが、自分たちの取り組んできたことを今日の試合にしっかり出すことができました」

──ディビジョン2第1節すべての試合を終え、順位表でも観客数でもトップでの走り出しとなりました。

「たくさんのお客さんに自分たちの試合を見てもらえるということは、選手として本当に幸せなことです。モチベーションも上がります。私たちは、社員選手が中心となっている区民アンバサダー活動を通じ、より地域のつながりを深めていくために、いろいろなイベントに参加させていただいています。僕自身も、明日の朝から(大阪市東成区の)今里にある幼稚園で、スマホ教室を行います。こうした地道な活動で認知してもらえる方を増やしていった結果が、今日の9000人を超えるお客さんにつながったと思いますので、本当にうれしく思っています。地道な活動を継続していくことで、より大阪に根付いたチームになっていくことができると考えているので、1万人以上の方に見てもらえるよう、またチャレンジしていきます。

スコアに関しても、(ボーナスポイントを含む)5ポイントを取れたことに満足しています。来てくれた方たちに勝利を届けられたという意味でも、大きな意味があったと思います。自分たちの熱い試合を見ていただければ、『また次も見に行こうよ」と思っていただけると思いますし、RH大阪を、ラグビーをさらに好きになってもらえるよう、これからも精一杯がんばっていきます」

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(右)、ニック・フィップス キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「まず、RH大阪を祝福するところから始めたいと思います。前半、非常に良いプレーを展開し、私たちにはプレッシャーが掛かりました。私たちにハンドリングエラーが5回あったことにより、相手を勢い付かせてしまいました。ペナルティに関しても、そうです。結果的に、フィールドポゼッションはRH大阪が上回り、スコアにもつながりました。ハーフタイムには、選手たちにその話をしています。よって、私たちは後半、良いスタートを切ることができたと思っています。スピードとともにプレーするという私たちのスタイルも出せましたし、常に相手のディフェンスをプレッシャー下に置くというスタイルも出せたと思っています。ただ、24対13の時点で、ビッグプレーがありました。パスさえ渡れば私たちがスコアできるという局面で、ボールをインターセプトされました。RH大阪が98mを独走し、トライしました。24対20になるはずだったところが、今回の31-13というスコアに変わった瞬間だったと思います。非常に残念な気持ちになりました。

試合中はパソコンを私の前に置いているのでリプレーも可能ですが、相手にオフサイドがあったのではないかと思う場面が4回ありました。レフリーの方にそれをしっかり見ていただけなかったことも、残念だったと感じています。モメンタムが大きく変わった瞬間でしたので、スコアも大きく変われば、追わなければならないスコアも大きくなります。フラストレーションを感じました。けれど、それがRH大阪の披露してくれたエフォートを消し去るものではなく、本当に素晴らしいプレーを見せてくれたと感じていることに変わりはありません。

次の試合まで6日間ありますので、私たちは今日の試合から学べることを学んでいきます。この状況は、選手たちにとってプレッシャーを受けることを作り出し、良いチャレンジを生み出す機会になりました。ニック(・フィップス)を始めとする選手たちは、すでに試合後のロッカールームでそのような話をしていました。もう一段気合いを入れ、来週の試合に向かって準備をしていきます」

──ファーストキャップの選手たちもいました。チームとして新たな選手を迎え入れた感触はいかがでしたか。

「5人のうち、4人は先発、1人は控えで今日の試合に出場しました。彼ら自身も試合を迎えられることは喜びを感じていましたし、私も楽しみでした。今週はその話もしながら試合に向けての準備をしてきました。新しい選手とともにプレーできることに、以前から在籍していた選手もエキサイトしていました。
その5人は、今日の試合を楽しみにしていただけに、この結果を受け、非常に残念だと感じているだろうと思います。5人とも、とても人格者で、良い選手ばかりです。今回の試合で傷ついていることだろうと思うので、修正できるところをしっかり修正し、来週の試合に臨みたいと考えています」

──今日の試合でトップリーグ&リーグワン通算50キャップを迎えた山極大貴選手について、教えてください。

「ニック(・フィップス)がほとんど話してくれましたが、特別な選手だと感じています。周りの選手たちだけでなく、スタッフからもとてもリスペクトされている選手です。彼が不平不満を言っているところは一度も見たことも聞いたこともありません。常に笑顔で自分が務めるべき仕事に取り組み、ラグビーをすることを楽しんでいる選手です。ラグビーができる機会に対して常に感謝し、愛し、向き合ってくれるプロフェッショナルな選手です。この50キャップのあと、さらに50キャップを重ね、GR東葛で100キャップまでいってくれることを願っています」

NECグリーンロケッツ東葛
ニック・フィップス キャプテン

「RH大阪に関しては、ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチが話したとおり、本当に素晴らしかったと感じています。前半は私たちを慌てさせるようなプレーをしていました。私たちは本来であればもっとコントロールできたのではないかと思いますが、エラーが多くありました。このエラーによって相手に勢いがついてしまったので、エラーさえなければ、と言うこともできます。何かに対して急ぐようなレース(争い)とのところで、RH大阪に上回られてしまいました。非常にエンターテインメント性の高い試合だったのではないかと思います。レフリーも試合を続けさせるような動きをしてくれたので、それも良かったと感じています。私たちは、来週に向けてより良いチームになるのみだと思っています。そのプロセスを楽しみにしています」

──より良いチームになるために、来週の試合までに取り組んでいきたいことを教えてください。

「プレーに関しては、もっとハイテンポでプレーしたいと思っています。今週に関しては、ボールインプレーの局面では、前半に3フェーズ以上重ねられたのが一度しかありませんでした。それが唯一トライできた場面でしたが、フェーズを重ねられなかったことが足を引っ張った部分でもありました。もう少し忍耐強くできなければいけないと感じていますし、ブレイクダウンに関しても、より良い仕事をできるようにし、ボールをキープできるようにしなければなりません。ボールさえ手にしておくことができれば、脅威を与えられるチームだと思っているので、それらができれば、もっとゲームを展開できるはずです。

あと、山極(大貴)選手について、少し話をさせてください。(リーグワン公式HPの)見どころの記事にあったとおり、今日の試合で(トップリーグ&リーグワン通算)50キャップを迎えました。本当に素晴らしい選手で、いまはフォワードの選手たちをリードしてくれています。これからの活躍が楽しみで仕方ない選手だと思います。ですので、今日を最高の1日にしてあげたいという気持ちがありました。そうしてあげられなかったことが、本当に残念です。この結果を受けてトレーニングに取り組み、来週こそ、それを実現してあげたいと思っています。

昨日、コーチから50キャップの発表があるまで、彼は自分からそのことについて言いませんでした。本当に彼らしさが出たところだったと思います。自分のことよりもチームのことに集中し、謙虚にハードワークできるのが彼です。GR東葛を代表する、本当に素晴らしい選手です。日本代表のジャージーも着てほしいなと思っているので、日本代表チームのエディー・ジョーンズ ヘッドコーチに彼の良さをぜひ伝えておいてください(笑)」

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