2025.01.20NTTリーグワン2024-25 D1 第5節レポート(三重H 19-27 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第5節(リーグ戦) カンファレンスB
2025年1月19日(日)12:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 19-27 東京サントリーサンゴリアス

3連敗の中でも見えている確かな光。“勝ち切れるチーム”へ変化を遂げている最中だ

三重ホンダヒートの中尾隼太選手。チームは敗れたものの「試合前も試合中も雰囲気は良かったですし、とても前向きな状態です」

「あと一息で勝てたという悔しさがある反面、自信につながる部分もありました」

東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)に19対27で敗れたあと、三重ホンダヒート(以下、三重H)の植村陽彦は、明暗が入り交じる表情で試合を振り返った。

「バイウィーク(中断期間)前の最後の試合ということで気合いを入れて臨みましたが、結果的には勝ち切れませんでした。本当に悔しい試合になりました。ただ、アタックの場面では手ごたえも感じましたし、連続攻撃ができた点は良かったと思います」

今季の三重Hは試合終盤に粘り強さを発揮する場面が増えており、この日も前半終了時点では7対18とリードを許していた。それでも、後半は一時2点差まで追い上げ、東京SGを苦しめた。これで3連敗となったが、植村は大敗続きだった昨季とは異なる雰囲気を感じているという。

「ハーフタイムには『まだまだ追いつける点差だぞ!』と声を掛け合い、最初の30秒に全神経を集中して自分たちの流れにしていこうと話しました。気持ちがヒートアップしていると細かい内容は頭に入りませんし、重要な点にだけ集中して後半に臨むよう心がけています。最後まであきらめない姿勢は、昨季と比べて明らかに違う部分です。昨季は試合終盤の数分間を追いつくことが極めて難しい点差で戦う状況が多かったです。でも今季は、ワントライ・ワンゴールで逆転できる状況で終盤を迎えられています」

この終盤の強さを支える要因の一つが、途中出場のメンバーの奮闘だ。キアラン・クローリー ヘッドコーチはここまでの5試合で多くの選手を入れ替え、先発とリザーブの23人全員が力を発揮できる体制を築いてきた。

52分間プレーした中尾隼太も、今季は先発とリザーブの両方を経験。この試合では、マヌ・ヴニポラの負傷を受け、前半28分という早い時間帯で緊急投入されたが、見事に対応してみせた。

「練習で良いパフォーマンスを見せた選手が試合に出られるので、全員にチャンスがあります。コーチがしっかり見ていることを選手も理解しているので、みんなのモチベーションが高い状態を保てています。23人で戦うのが当たり前になっているので、途中出場の選手にもそれぞれ役割があります。それを全員が全うし、チームに良い影響を与えようとしています。試合前も試合中も雰囲気は良かったですし、とても前向きな状態です」

中尾はこう語り、チーム全体が前向きに取り組んでいることを明かした。リザーブの選手を含む全員の情熱こそが、試合終盤の粘り強さを生み出しているのだ。負けてもなおモチベーションが高い三重H。バイウィーク中の練習を通じて、“勝ち切れるチーム”を目指して、さらなる進化を遂げようとしている。

(籠信明)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「正直に言えば、まだがっかりしています。ただ、選手たちのパフォーマンスや努力に対してではなく、試合の結果に対してです。前半の序盤で相手にチャンスを与え、得点を許してしまいました。後半も自分たちの判断や意思決定のプロセスがうまく機能しなかった結果、最終的にはポイントを失い、試合が終わってしまいました。ただ、一週間をとおした練習における選手たちの姿勢やパフォーマンスについては、すべての選手が素晴らしいものを見せてくれました。今日プレーした選手だけでなく、試合に出られなかった選手たちも含めて、準備はうまく進められていたと思います。この姿勢は、次の試合に向けて非常に重要な部分になると考えています」

──次の試合に向けた修正点や課題を教えてください。

「試合の中で良い時間帯もありましたが、それを一貫して発揮することができませんでした。細かい点で言えば、ターンオーバーが発生した際のリアクションや、ブレイクダウンの部分で改善が必要です。われわれは残り20分の時点で20点も差をつけて勝つような試合展開ができるチームではないので、最後まで粘り強く戦い、接戦を制する力を身につける必要があります。チームとして一つの要素を改善すればいいというわけではなく、全体的な一貫性とプレーの精度を上げることが大切です」

──昨季からメンバーが大きく入れ替わりましたが、その中で気をつけていることはありますか?

「新しいメンバーは増えましたが、トレーニングをしているのは試合に選ばれた23人だけではありません。すべての選手が非常に努力しています。ほかのチームと比較しても、この5試合でかなり多くのメンバーを入れ替えて戦ってきました。その背景には、選ばれたときには誰もが良いパフォーマンスを発揮できる準備を整えていることがあります。私自身、特別なことをしているわけではありません。選手全員がその状態にあるので、それを信じてチームを引っ張っているだけです」

──序盤の5試合を終えましたが、昨季と比較してどのように感じていますか?

「昨季の最初の5試合を振り返れば、まだポイントを一つも獲得していない状況でした。今季もこれまでクボタスピアーズ船橋・東京ベイや東京サントリーサンゴリアスなどの強豪チームと対戦しました。そして次は、常にビッグプレーヤーがいる東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)との試合が控えています。それでも、われわれは確実に改善していると感じています。課題としては、強いチームを相手にどこまで自分たちのパフォーマンスを見せられるかという点です。目の前の試合に集中して取り組むだけです。この試合の分析を行ったあとは、その結果を忘れて次のBL東京戦に備えます。そしてBL東京戦が終われば翌日に分析し、その次の浦安D-Rocks戦に集中します。このリーグは非常に拮抗しており、接戦が多いと感じています。われわれは1試合1試合を大切に戦っていくつもりです」

三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

「ヘッドコーチのコメントに自分から付け加えることはありませんが、負け方についてはやはりがっかりしています。チャンスはあったにもかかわらず、その中で相手に簡単に得点を許してしまいました。一方で、こちらが得点を挙げることには非常に苦労しました。このような展開では試合に勝つのは難しいです。準備に関しては、われわれは本当に勝つための準備をしっかり行い、それができていたと思っています。この姿勢は次に向けて継続したい部分です。ただ、今回勝ち点ゼロで終わってしまったことについては非常に残念です」

──試合中には素晴らしいスティール(ジャッカル)もありましたし、それ以外にも良いプレーが見られました。ご自身の感触はいかがですか。

「レフリーが特にブレイクダウン周辺に注目しているように感じました。われわれがペナルティを取られた場面もいくつかありましたが、レフリーがその部分を普段以上に注視していると感じたので、こちらも普段以上に勝負していこうと思いました」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(左)、流大ゲームキャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「まずは三重ホンダヒート(以下、三重H)のみなさん、ありがとうございました。そして、サンゴリアスのファンのみなさん、応援ありがとうございました。今季はまだ白星がなかったため、1点差でもしっかり勝ち切るということをテーマに、この1週間準備を進めてきました。選手たちが最後まで我慢強く戦い抜いた結果、この勝利をつかむことができたと思います。この勢いを次につなげていきたいです」

──4試合未勝利の中、必要なのは「1%のこだわり」の積み上げだと仰っていました。その中で何がプラスされましたか?

「例えば、同点の場面が2回続いた際に、1点を奪うか、1点を守るかというこだわりです。キャプテンの流大も話していたように、あるプレーのあとにさらにもう一つアクションを起こすことで、大きく結果が変わる場面が数多くありました。そうした細かい部分に悔いが残らないようにしっかりと準備し、1%でもパフォーマンスを向上させようと話してきました」

──今日は前半からメンバーを入れ替えていった印象ですが、どんなイメージで采配をしていましたか?

「このリーグでは、チームプレーの力が勝敗を決定付けると考えています。個々の力に頼るのではなく、組織としての力が重要です。前半の交代はけが人が出たための対応でしたが、80分間をとおして15人だけで戦うのではなく、フレッシュな8人を活用し、常にチームプレーができる15人をグラウンドに立たせることを意識しています」

──今日の調子というよりは、疲労した選手をフレッシュな選手に入れ替えるイメージでしょうか?

「そうですね。戦術的な意図もありますし、イエローカードに対応するための判断も必要になります。また、5週連続の試合だったこともあり、疲労の蓄積や小さなけがを抱えながら戦っている選手もいます。SCコーチやメディカルスタッフと密にコミュニケーションを取り、常に“アグレッシブ・アタッキング・ラグビー”ができる15人を選んでグラウンドに送り出しています」

──堀越康介キャプテンをリザーブに回すなど、メンバーを選ぶ上でどのような狙いがありましたか。

「呉季依典選手も非常に調子が良く、またチーム全体の80分間のストーリーを考慮しました。最後のリーダーシップも重要だと判断し、今回は堀越康介を後半のフィニッシャーとして起用しました」

──後半、2点差の場面でペナルティキックを選択し3点を加えた場面では、5点差では逆転されるリスクもありましたが、どのように感じましたか?

「判断に迷う場面では指示を出すこともありますが、基本的にはグラウンド上のリーダーシップを信じています。三重Hのこれまでの試合を分析し、3点を積み重ねる形でプレッシャーを掛けることが重要だと考えました。事前にリーダーグループともその点を話しており、非常に正しい判断だったと思います。コーチングボックスからもショットを狙うよう言っていました」

東京サントリーサンゴリアス
流大ゲームキャプテン

「本日はありがとうございました。鈴鹿の素晴らしい雰囲気の中でラグビーができたことに感謝しています。『泥臭くても不細工でもいいから勝とう』と話して臨み、それを体現できた試合だったと思います。ターニングポイントや修正点は多くありましたが、現在のリーグワンで勝つことの難しさを自覚しているからこそ、この勝利をうれしく思います」

──「1%のこだわり」について教えてください。

「『ルーズボールへの執念』、『ラインブレイク時の戻り』など、細かな部分への意識が1%の差を生むと感じています。特にイエローカードが出た際、フォワードの献身的な動きが光りました。しかし、私たちの目標は優勝です。いまのレベルでは達成は難しいので、次の静岡ブルーレヴズ戦に向けて課題を一つずつ克服したいです」

──今季のリーグワンの厳しさについてはどう感じていますか?

「今季は全チームが非常に強く、フィジカルのレベルやコーチングの質も向上しています。ほかの試合でも拮抗した展開が多く、どのチームが勝つか予測できないシーズンです。この状況は日本ラグビーにとって良いことだと思います。今回つかんだ1勝を次につなげ、勢いを持続させたいです」

──勝利をつかむために必要なことは何だったのでしょうか?

「外からはスター選手の存在が目立つかもしれませんが、このチームの本質は泥臭いラグビーです。ボールをつなぎ、全員で走ることが私たちのDNAです。『1%へのこだわり』を続けて、次の勝利を目指します」

──後半のペナルティについてはどう感じていますか?

「事前に今回のレフリーがブレイクダウンに厳しいと分析して注意していましたが、試合中にエキサイトしてしまい、冷静さを欠いてペナルティを取られた場面がありました。ファイトするところと冷静さのバランスを保つことが課題です」

──2点差の状況からペナルティキックで3点を奪った場面の判断について教えてください。

「後半は風上で自陣からの脱出も安定していたため、一部の選手からは『タッチを狙おう』という声もありました。ただ、過去2試合が同点だった経験から『確実に3点を取る』判断をしました。5点差にすることで相手にリスクを冒させる状況を作れたのは、結果的に良い選択だったと思います」

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