2025.02.10NTTリーグワン2024-25 D1 第7節レポート(相模原DB 44-40 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第7節(交流戦)
2025年2月9日(日)14:30 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 44-40 トヨタヴェルブリッツ

「動けなくなった最後の5分」が伸びシロ 殊勲の6番が古巣相手に勝鬨を上げる

まさにオールアウトのパフォーマンスをみせ、プレーヤー・オブ・ザ・マッチも受賞したトヨタヴェルブリッツの吉田杏選手

前半だけで6本のトライ。三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)のグレン・ディレーニー ヘッドコーチが「自分がここに来て3年以上になりますが、一番いいラグビーを見せてくれました」と評価する展開で大量リードして試合を折り返すと、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)の反撃に耐えて、今季3勝目を挙げた。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた吉田杏は、「古巣であるトヨタVとの勝負に勝ててうれしい。自分の選んだ道が正しかった」と胸を張った。

昨季にトヨタVから相模原DBへ移籍し、強靭なフィジカルとワークレートの高さでチームに貢献し、存在感を放ち続けてきた。その背後にあるのは、試合に挑む真摯な態度だ。「けがが成長を阻む一番の要因です」と口にし、オンとオフの両面でコンディションの維持を徹底している。

そんな吉田が試合終了を告げるホーンまであとわずかというところで、グラウンドにばったりと倒れた。

「前半から120%の力で飛ばしました。ハードワークするのがチームスタイルで、インパクトを残す80分間をやり続けることができたと思いますが、自分は最後の5分間のところで体が動かなくなってしまいました。そこは伸びシロだと思います」

試合前、キャプテンの岩村昂太はロッカールームでチームメートにこんなことを話していたという。

「トヨタVはかっこいいプレーだったり、いろいろな技を使ってわれわれを攻撃してきたり、そういったエリート軍団である。ただ、われわれはそうではなくて、泥臭くひたむきにハードワークするというのがわれわれのDNAで、それをグラウンドで80分間証明しよう」

そのメッセージの裏側には、「ここ数試合は、自分たちの仕事にしっかりフォーカスできていなかったので、自分たちのあるべき姿、DNAを忘れてほしくない。僕らがそういうプレーをしたとき、ダイナボアーズはいいチームになれることを自分自身とチームメートで再確認したかった」(岩村)という意図があった。

そのとき、吉田は「ラグビーは15人でやるものなので、ワールドクラスの選手が何人いても機能していなければ意味がない」と考えていたという。

この勝利は、チームにとって大きな自信につながるだろう。そして岩村、吉田はそれぞれ似たような言葉で、先を見据えた。

「これを僕らのスタンダードとして成長していきたい。ここから後退することは絶対に許されない」(岩村)

「これを維持して、一貫性を持ってプレーできたら同じ結果が付いてくる」(吉田)

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「また前半と後半でまったく違う試合になりました。そこには風も影響していると思いますが、前半は、自分がここに来て3年以上になりますが、一番いいラグビーを見せてくれたと思います。アタックのテンポもすごく良くて、選手たちを誇りに思います。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)も素晴らしい、リスペクトしているチームで、素晴らしい選手もそろっているので、後半に相手もまた(アタックして)くるというのは分かっていて、勢いも相手にかなりあり、われわれが止められない場面もありましたが、最後には勝ち切ることができました」

──ハニテリ・ヴァイレア選手がアーリーエントリーで加わった中で試合に出場する初めての選手になりましたが、起用した理由と評価を教えてください。

「彼は素晴らしいトレーニングをしていて、さまざまなポジションでプレーできます。今日もフォワードを6人ベンチ(リザーブ)に入れたので、いろいろなポジションができる選手が必要というところもありましたが、彼が練習で勝ち取ったベンチのスポットです。今日、試合に出ることができたのは彼もうれしいと思いますし、これで決して終わりではないので、出るチャンスはまだまだあると思います」

──今日のようなタイトな試合では、どうしてもキャプテンを引っ張ってしまいます。岩村昂太選手に代わるようなリーダーシップを持つ選手が今後のチームの成長にとって必要だというところはヘッドコーチもお考えと思いますが、そのあたりをどう捉えていますか?

「もちろんリーダーシップグループの中で、次のリーダーのところも、リーダーシップを見せてくれる選手を育てようとしているところもありますが、昂太もこういうタイトな、大事な場面でベストなプレーを見せてくれているので、そこは信頼しています。鶴谷(昌隆)もバイスキャプテンとしていいバランスをもってプレーできている。このチームに来て、いいリードをしてくれて本当に感謝しています」

──以前からヘッドコーチは一貫性ということを強く言われていますが、今日の試合で前半の流れのままいけなかった一貫性の部分、うまくいかなかったところをどういうふうに考えていますか?

「後半、大事なアタックの場面で、ラインアウトを何個か取られたところは一つあると思います。シーズンをとおしてラインアウト成功率は90%以上なので、そこは過去では問題ではありませんでした。風下で敵陣に入るチャンスは何回もなかったと思いますが、そこでターンオーバーをしたあと、またはペナルティを取ったあと、いいプレーのあとにミスをしたところで相手に勢いが入って、その勢いをまた取り戻すことができなかったと思います。後半の陣地とボール支配率の数字は分かりませんが、最後の約4分間、われわれがアタックしたところで五分五分になったかもしれません。後半のほとんどは自陣でプレーしていて、相手に勢いがある中、われわれにチャンスがあったときにタッチに押し出されたり、ラインアウトでミスをしたり、そこで勢いを取り戻す機会を失ってしまいました。その改善がカギになると思います」

──この2、3年で、チームがどちらに転ぶか分からない試合を勝ち切れるようになってきました。それはチームの何が成長したからですか?

「一番は時間と経験だと思います。われわれも(勝利に)ふさわしいメンバーがそろっていると思います。リーグワンはタフなリーグで、特にディビジョン2から上がってきたときは、自分たちはまずはみんなが経験を積んで、ここでプレーするのがふさわしいということを証明しないといけないと思いました。自分たちがここで自信を持ってプレーし続けて、経験を積んで、その結果がこういう試合を勝ち切ることにつながると思います。タフな試合の中で自分たちがどうやって(やるべきことを)遂行できるのかというところがカギになると思いますが、そこは時間、経験を重ねる中で選手たちも自信につなげながら、遂行しなければいけないときに遂行できるようになってきていると思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「ヘッドコーチが言ったように、本当にタフなゲームで、前半、後半、本当に一瞬も気を抜けないような試合展開でした。試合に入る前にロッカールームでチームメートに、『トヨタVはかっこいいプレーやいろいろな技を使ってわれわれを攻撃してくるような、そういったエリート軍団である。ただ、われわれはそうではなくて、泥臭くひたむきにハードワークするというのがわれわれのDNAで、それをグラウンドで80分間証明しよう』ということを言って、グラウンドに出ました。実際に、入りからそういった姿を選手一人ひとりが見せてくれて、ああいった前半の展開につながった。われわれのDNAを応援に来てくださったみなさんに伝えることができたかなと思います。ただ、後半に関しては、ペナルティや簡単なミスで流れに乗れなかったところなどが課題だと思うので、また映像をしっかり見て反省したいと思います。ただ、今日の勝ちはすごくうれしく思います」

──メンタルコーチが入って、メンタル面でチームが非常に強化された印象があります。ただ、今日は後半、キャプテンとして、メンタル的に若干緩くなっていたなというのは感じましたか?

「メンタル的に緩くなったというよりは、コネクションが切れていたり、コミュニケーションの部分でうまくいかなかったり、あとはタックラーと2枚目のディシジョン(判断、決断)が悪かったり、そういったところが原因としてあったとは思います。ただ、そこも一人ひとり、どういったマインドでやるのか、常にディフェンスではどういったことを今日の試合でやっていくのかは事前に決めているので、そういったところを、どんなにきついときでも考えながらできるかどうかが、何より大切だと思っています。もしかしたら考えられずにそういったところをやってしまったがゆえに、相手に勢いに乗られてしまったというところはあるかもしれません」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(左)、彦坂圭克ゲームキャプテン

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「前半に関しては、非常に残念に思っています。あれはわれわれの本来の姿ではないと思っていましたし、(私としては選手たちがもっと)いいプレーができると思っていましたが、それは選手も同様の気持ちでハーフタイムに入りました。その後、後半に関しては非常にいいラグビーを展開することができたものの、超えるべきハードルが高すぎたというのが率直な意見です。ファイティングスピリッツは見せましたが、前半に関しては、課題を解決していく必要があると思っています」

──前半にディフェンスが前に出られなかった要因はどこにあると考えていますか?

「一つのチームが仕掛けてくると、それに対してもう一方のチームが待ってしまう、そういったときに相手のプレッシャーに対して受けに回ってしまうということがあると思います。なので、今日に関しては、前半、相手がゲームを取りにきて、そしてわれわれが受けてしまったというところで、後半に関してはその逆のことが言えると思います。トヨタVがゲームを取りにいき、相手が受けに回った。とはいえ、後半に関しては、われわれの手が届きませんでした。先ほども申し上げましたように、選手のパフォーマンスに関しては非常に誇りに思います。ああいった姿が、われわれの本来の姿に近いものであり、練習でやってきたことを出すことができました。前半の部分に関しては、チームとして振り返りを行っていきたいです」

──後半立て直したものの、前半がだめだったということですが、一貫性が欠けているのはどこに原因があったのでしょうか?

「今回のことに関してはチームの成熟度、そして理解度というところが関わってきます。それが何かというと、いいラグビーをするためには80分間自分たちを出し切る必要があるというところです。これまで過去にチームとしてあまり成功を収められていない局面で、メンタルの面で試合中にスイッチが切れてしまっているような部分がありました。そういったところが過去の結果を反映しているのだと思います。いまのチームに関しては、いいトレーニングをしていますし、非常にハードなトレーニングをしていますが、どうしても試合の中で、細かな瞬間、その一瞬の中でメンタルのスイッチが切れてしまうことがあります。それが実際に表れたのが前半で、相手にやられ、相手に試合をコントロールされてしまい、そしてチームとしてリセットし、立て直すのがハーフタイムまでかかってしまった。ただ、そこに関しては、チームにおける学びだというふうに思っています。

ファンの方々にとっても、選手にとっても、そしてまたコーチにとっても、いまの結果に関しては心苦しい気持ちではありますが、率直に言うとそれがチームの現実というところでもあります。80分間、プロセスにこだわってやりたいプレーをやり切る。そういったことに関しては、指を鳴らせば1日で変わるわけではありません。そこには学びが必要であり、ときにこういった学びに関しては痛みを伴うことがあります。そういった点に関して、今日はチームに関わる者全員が非常に苦しい思いをしているところではありますが、以前もお伝えしましたように、勝っていようが、負けていようが、また結果が引き分けであろうが、また月曜からわれわれがやることは変わりません。それは80分間、メンタルの点でチームを作り上げていく、そういったことを今後やっていきたいです」

トヨタヴェルブリッツ
彦坂圭克ゲームキャプテン

「スティーブ ヘッドコーチと同じですが、後半の40分間は選手がハードワークしてくれたし、自分たちのいいラグビーができたと思いました。前半40分間は相手というより僕たちのディフェンスがうまくできていなくて、ディフェンスで前に出られずに受けに回っていました。そこでディフェンスがうまくいかなくて、点数を多く取られたのがちょっともったいないかなと思いました。でも、後半の40分間はすごくいいラグビーができました。今回は終わったので、次に向けてチーム一丸となって前に進んでいくしかないと思うので、がんばります」

──前半にディフェンスが前に出られなかった要因はどこにあると考えていますか?

「自分たちのマインドだと思います。自分たちが前に出ようとは言っていたのですが、実際に行動に移せなかったので、そこが問題だったかなと思います」

──ハーフタイムでどうマインドを取り戻しましたか?

「もう一回、自分たちに集中しようという話をしました。自分たちの持っているエナジーというか力強さをもっと出していこうと」

──前半、そのマインドがなかったのは、この1週間の過ごし方に原因があったのでしょうか?

「そういうことではありません。シンプルに、相手が速かったですし、そこで最初の5分くらい受けに回った。そこがいけなかったと思います。この1週間はいい準備ができたと思っています」

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