2025.04.19NTTリーグワン2024-25 D2 第12節レポート(花園L 54-21 九州KV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第12節
2025年4月18日(金)19:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 54-21 九州電力キューデンヴォルテクス

連続ハットトリックの陰に、ファンタジスタからの“キラーパス”

2試合連続でプレーヤー・オブ・ザ・マッチという鮮烈なインパクトを残している花園近鉄ライナーズの江川剛人選手(右)。DIVISION 2のトライランキングでも一気に7位タイに浮上

花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を54対21で下し、5連勝を飾った。

前半を折り返した時点では14対14と拮抗した展開だったが、後半に自慢の攻撃力が爆発。九州KVを寄せ付けなかった。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、前節に続いてハットトリックを達成した江川剛人が納得の選出となった。2試合連続でヒーローとなった江川の活躍の陰にあったのが、一人のファンタジスタの存在だ。

後半10分からピッチに送り出されていた丸山凜太朗が、投入直後にキックで魅せた。

後半17分、左サイドから丸山が蹴ったボールは美しい弧を描きながら、走り込んだ江川のもとに寸分も狂うことなく飛び、トライをお膳立てした。

「特にコールはなかったですけど、僕の判断で蹴ってうまくタケ(江川剛人)が取ってくれました」(丸山)

交わされた言葉はなく、阿吽の呼吸で決めたトライだが、決して偶然の産物ではなかった。丸山も江川も今季、出番に恵まれない日々が続いていたが、ベンチ入りさえままならなくとも、二人は互いの特徴を把握する間柄でもあった。

「ボールキャリーでももっと自分で前に持っていきたい」と課題を口にする江川だが、その加速力は一級品。前節・レッドハリケーンズ大阪戦では丸山が蹴った芸術的な“キラーパス”に抜け出してトライを決めた江川は「チェイスでボールを追い掛けるだけなので大好きです」と丸山のパスに感謝する。

前節、すでに開通していた“丸山―江川のホットライン”だが、「僕が試合に入ったら、ウイングの立ち位置をちょっと外側にするようにはタケに言っています」と丸山。その言葉どおりの立ち位置から決めたトライで九州KVを33対14と突き放し、試合の流れを引き寄せたのだ。

背番号10はクウェイド・クーパーに譲っているが、後半から投入されるとクーパーとともにダブル司令塔として機能。向井昭吾ヘッドコーチも「丸山が10番(の役割)でインサイドにはクウェイド(・クーパー)というパターンでボールが動く。楽しみなラインになってきました」と期待を寄せる。

「ああいうプレーというか、閃きが僕の持ち味」と丸山は胸を張るが、私生活でも仲がいい江川についても「スピードがあるのでそこは信頼して蹴り込めます」。

丸山の“一刺し”と江川のランはシーズンの佳境を迎えた花園Lの新たな得点パターンになりつつある。

(下薗昌記)

丸山凜太朗選手(左)とクウェイド・クーパー選手の”ダブル司令塔”にも注目したい

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、パトリック・タファ キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「今日はありがとうございました。今日の試合のターゲットは接点で必ず勝つというところでした。前半は自分たちのミスでなかなか敵陣に入れず、得点できなかったですけど、後半は思ったとおりにコンタクトのところで確実に前に出られて、自分たちの強みを生かせたゲームだったと思います。まだ前半でトライを取れるところがあったと思うので、それをまた修正して、あと2試合、確実に自分たちの得点を増やして勝っていきたいと思います」

──シーズン終盤にきて5連勝です。好調の要因を聞かせてください。

「やることがスマートになって、自分たちがどこで何をするかというのが、試合に出る人、リザーブの人、代わって入った人も、全員が同じ絵を見てプレーができるようになりました。それとやっぱり、勝つことによって、自信が付いているところが好調の要因だと思います」

──ウィル・ハリソン選手は10番で起用されてきましたが、今日は15番での出場でした。その意図や、彼に対する期待はどのようなものがあったのでしょうか。

「今日見ていただいたとおり、キックは1本外しただけで、それ以外は全部決めました。これから上がっていく上ではそれが非常に重要なポイントという部分と、雲山(弘貴)がフルバックをやってきましたが、もし彼がけがをしたときのことを考えて、今回チャレンジで彼を起用しました。非常にうまくいったと思います」

──江川剛人選手は前節も良い活躍をして今回は先発でした。先発の理由と今日のパフォーマンスの評価を聞かせてください。

「自分たちが強いチームなのかどうか分かりませんが、私がやってきた中では、1試合1試合でヒーローが出るというか、チームに勢いをもたらすような選手が(強いチームは)一人出てくるものです。それが前回は江川でしたが、今回もやっぱり的確な位置で的確にトライを取ってくれる、彼がウチのチームのもしかしたら“勢い玉”という形になるのかなと思っていますので、その勢いを買って、今回も起用しました。ディフェンスも強いので、彼は上のステージでやってほしいような選手です。この輝きをそのまま続けてほしいと思っています」

──残り2試合は天王山になると思います。キーになる部分についての考えを聞かせてください。

「NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さん(との試合)からですけれども、私たちと同じように外国籍選手も多くて、日本人プレーヤーの一人ひとりの精度も高く、水を漏らさないようなディフェンスをしていて、総合力の高いチームです。アタックについてミスをしないことがキーになってくると思います。(今日の)前半、なぜああいうスコアになったかというと、セットピースが安定しなかったから。特に敵陣に入ってラインアウトを取っていれば、みなさんも見ていただいたとおり、後半はそこがきちっとハマって、自分たちの準備されたアタックができ、あれぐらい前に行けるということになります。ちゃんとセットピースを安定させて、ミスをしないということが一番のキーになると思います」

花園近鉄ライナーズ
パトリック・タファ キャプテン

「タフな戦いになりました。前半はミスとペナルティがあって規律を守れず、目指しているラグビーができませんでした。後半になって、モメンタムを生み、やりたいラグビーができて、その上で、結果を得ることができました。ポイントだったのは、やっぱりコリジョンで負けなかったことです。1対1のバトルで負けないという思いで試合に臨みました。スローなスタートになりましたし、フォワードも前半は苦戦していましたが、後半は何とかチーム一丸となって試合を立て直すことができて良かったと思っています」

──シーズン終盤にきて5連勝です。好調の要因を聞かせてください。

「シーズン序盤はスローなスタートでした。その理由は新しいメンバーがたくさん加わって、チームとしてコンビネーションが合うまで時間が掛かったかと思っています。毎週、このように連続で勝つことによって、チームとしての自信をもち始めていますし、何より信頼する気持ちが生まれているのを感じています。この自信をもって次のGR東葛戦と豊田自動織機シャトルズ愛知戦を戦っていきたいと思います」

──前半はミスが多くて非常に悪い流れだったと思いますが、それを後半どのように周りに声を掛けて立て直したのでしょうか。

「前半が終わってロッカーに戻り、ハドルで私が話したのは『前半はすべて忘れよう。新しいスタートだからリスタートしよう』ということです。前半のパフォーマンスが悪かった理由はさまざまありますし、ポイントとしては、前半はすべてそれらを忘れて、後半にフォーカスしようと。自分たちがやらないといけないフィジカルを出す、ディテールのあるラグビーをする、精度のあるラグビーをするというところにフォーカスをさせて、それを後半にできるようになり、それが自信に変わって結果につながったと思います。前半の流れの悪いところをちゃんと克服できたことについて、私自身はすごく満足しています」

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ(左)、ウォーカー アレックス拓也キャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ

「本日は本当に素晴らしいグラウンドでたくさんのファンの方々、『チャージャー(ファンの愛称)』の皆さまにも来ていただいて本当に素晴らしい環境でラグビーができたことを本当に感謝いたします。

チームとして敗戦が続いていた中で、もう一度自分たちのプライドをしっかりと見せようという話で試合に入っていきました。前半は本当にウチがやりたいラグビー、いいプレッシャーを掛けて敵陣でモールを使っていく、いいラグビーを展開できたのですが、後半はライナーズさんのアタックが本当に素晴らしかったなと。ウチの選手も必死にタックルにいっていましたが、相手に上回られたかなと思っています。セットピースの部分でも、ウチのやりたいセットピースができず、ライナーズさんのプレッシャーを受けて、ペナルティをしてしまったことも大きかったと思っています。

また、チームとしては2枚のイエローカードを出してしまったので、そこは残りの2試合に向けてしっかりと修正して挑んでいきたいと思います。ありがとうございました」

──前半は強みであるブレイクダウンでプレッシャーを掛けていました。最後の場面でもトライを取り切って試合を終えたところは次の試合に向けての前向きな要素だと思います。次のホストゲームに向けての課題と、抱負を聞かせてください。

「今日、うまくいったモールやディフェンスの部分でも、しっかり相手の攻撃をつぶせていた部分はありました。私たちは、ディフェンスからリズムを作っていくチームですので、もう一度そこを全員で意思統一して、九州のチャージャーの皆さまにしっかりといいラグビーを見せられるように準備したいと思いますし、1週間空きますのでしっかりコンディションも作り直して、ベストな状態でチャレンジしたいと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン

「まずは本日、試合を開催するにあたりまして、ご尽力いただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございます。先ほど、今村ヘッドコーチからもありましたけども、前半は自分たちのセットピースで敵陣に立って、優位に進めて自分たちのやりたいことがしっかりできたというふうに思います。ですが、後半ですね。相手のセットピースや縦への強いキャリーなどで受け身になってしまったというか、少し自分たちに綻びが出てきてしまったところで、相手に付け入るスキを与えてしまったのかなと思います。

点差は離れてしまいましたが、選手たち23人全員、自分たちの出せる100%は出したと思いますし、しっかりと反省するところは反省して、2週間後の清水建設江東ブルーシャークス戦に向けて、また全員で一丸となって頑張っていきたいと思います」

──相手のプレーが前半と後半で変わった部分はあったのでしょうか。

「自分が感じたのは、より後半に相手が縦にしっかり強いキャリーをするようになったのと、セットピースが安定したというところですかね。前半は自分たちが敵陣に入って、相手がペナルティをして、それによりもっと自分たちが敵陣に入り込んで、そこからラインアウトや(モールなどからの)ピックでしっかりとフィジカルは出せたと思います。後半はどちらかというと、敵陣に入っても、自分たちのミスが出たり、綻びを突かれたりした感じはあったので、後半はそこが変わったというふうに思います」

──前半は14対14で折り返して、かなり手ごたえもあったと思います。今日の花園Lに対してうまくいった部分を教えてください。

「前半での、モールや敵陣の22mよりトライラインに近づいたときの自分たちの動きは、普段から練習しているものをしっかり出すことができたと思います。フォワードは特にピックゴーやフィジカリティのところで、しっかり勢いをつけて入っていて、そこがうまく機能した印象があります」

──前半は強みであるブレイクダウンでプレッシャーを掛けていました。最後の場面でもトライを取り切って試合を終えたところは次の試合に向けての前向きな要素かと思います。次のホストゲームに向けての課題と、抱負を聞かせてください。

「一貫性の部分をもう少ししっかりやっていきたいと思います。前半は特に自分たちのやりたいプレーがしっかりできていたと思いますが、後半は少しそこに綻びが出たので、そこにどういう理由があったのか、しっかりと反省できると思います。80分、自分たちのやりたいこと、やらないといけないことをやり切ったら、必ず結果が出ると思いますので、そこをもう1回、チーム、個人でしっかり話し合って、解決できれば次の試合でもしっかりと結果が出るのかなというふうに思います」

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