2025.04.21NTTリーグワン2024-25 D2 第12節レポート(日野RD 20-12 RH大阪)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第12節
2025年4月20日(日)14:30 太田市運動公園陸上競技場 (群馬県)
日野レッドドルフィンズ 20-12 レッドハリケーンズ大阪

力と思いを結集させて奪った魂のスクラムトライ。全員が“献身”を体現して前回対戦のリベンジを果たす

プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた日野レッドドルフィンズのフッカー、谷口永遠選手

日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)がフォワード、バックスともに「前へ」と突き進むエキサイティングで激しい戦いを展開した。10対9と僅差で迎えた後半35分。相手陣5mライン手前で組んだ相手ボールスクラムを一気に押し込むとそのままトライ。気持ちがスタンドまで届くような熱いプレーで勝負を決めた。

前回の対戦では大差で敗れたレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)から3トライを獲得。この勝利でボーナスポイントも加えた勝ち点5を積み上げ、一気に5位に浮上した。

「本当にここしかない。ここのスクラムが終わったらもう死んでもいいかなと思うくらい、気合いを込めて押した」

フッカーの谷口永遠は試合を決めたスクラムトライを組む直前、そう思っていたという。フロントローでただ一人の80分間フル出場。試合終盤の後半35分は疲労も溜まる時間帯だったが、谷口の体にはまだエネルギーがみなぎっていた。

「セット!」のコールが聞こえた瞬間、とにかく無心となり相手を押した。日野RDの8人が気持ちで押したスクラムは相手を突き崩し、一気にゴールポスト真下へ。最後はジョシュ・フェナーがボールをグラウンディングすると、選手たちはこぶしを握り締め、群馬の青空へ向かい雄叫びを上げた。

後半35分のスクラムトライの場面。グラウンディングは8番フェナー選手

「ここでトライを取れればボーナスポイントも含めた勝ち点5を獲れる、と分かっていた。この試合に向けて『献身』というキーワードを掲げて全員が取り組んできた中、バックスもフォワードも『絶対に止める』という気持ちで相手に体をぶつけていた。それを全員で表現できたところが後半もしっかり戦えることにつながった」(谷口)

前半からセットピースでは日野RDがRH大阪を上回っていた。しかし、ペナルティゴールで着実に点差を詰めてくるRH大阪の試合運びのうまさに苦しんだ。前半終了時点で10対6と4点差。さらに後半28分にはまたペナルティゴールを許し10対9とわずか1点差まで詰め寄られ、いつ逆転されてもおかしくない緊張感がグラウンドには充満していた。そんな中、交替で入ったメンバーも含めてフォワード、特にフロントローの魂のこもったプレーがチームを鼓舞。後半13分、交替で入ったフロントローの二人も先発メンバーの熱い気持ちを引き継いでプレーした。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチには文句なしの活躍を見せた谷口が選ばれた。

「もう本当にアドレナリンが出過ぎて頭の中は真っ白です。とにかくうれしくて。あのスクラムトライはフロントローからすれば最高のプレーだったので。今後も自信をもってスクラムで相手を圧倒したいと思います」(谷口)

先発、リザーブ問わず、チーム全員の力が結集して奪い取ったスクラムトライだった。

(関谷智紀)

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、中鹿 駿バイスキャプテン

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「前節の九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)戦に続いて、勢いに乗ってレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)戦に臨みたかったのですけど、今週にコンディション不良の選手が3人も出て、急きょメンバーを入れ替えるような状況でした。そんな状況でも今週は『献身』というテーマを掲げて取り組んできた中、チーム全員が献身的にトレーニングからチームにコミットメントしてくれたことがこのゲームのすべてだったと思います。本当にこの1週間、ここにいる中鹿(駿)、そして笠原(雄太)キャプテンを中心に1週間良い練習をして過ごせたことが今日の勝利につながったと思っています。あと2試合あるので、まずは次の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)戦に向けてもう一度自分たちの力をすべて発揮できるように良い準備をしていきたいと思います」

──今季のベストゲームのようにも思えますが、勝利後の率直な思いはいかがですか。

「今日ゲームに出られなかった選手たちもわれわれスタッフの席の近くにおり、全員で試合を観たのですけど、本当にみんながエキサイトしている状況でした。われわれのエキサイティングなラグビーを体現する23人のメンバーを本当に誇らしく感じましたし、悔しさを感じながらもこの1週間、試合に出ないナビゲーター(メンバー外)のみんなが献身的にチームのために体を整えてくれ、23人のドライバー(出場組)たちがゲームで良いパフォーマンスをできるように、彼らが本当に相手チーム以上にプレッシャーを掛けてくれました。その中でつかんだ勝利ということを非常にうれしく思っています」

──リザーブメンバーも含めた総力戦で交代選手が活躍しました。要因はどこにありますか。

「先ほど中鹿ゲームキャプテンも話してくれたとおり、九州KV戦からチームのやるべきことをシンプルにして、それを言語化したものをリーダーたち中心にその言葉にフォーカスしてプレーへと落とし込むことが非常にうまくいっており、それで(途中出場から)フィニッシャーとして出たメンバーもやることが明確になっていました。その中で、何度も言いますが、今週チーム全員が献身的にチームにコミットしたことでの勝利、ということで本当に非常にうれしく思っています」

──ボーナスポイントも含めた勝ち点5を取ることができたことについてはどう捉えていますか。

「試合の終盤、キックオフから良い位置でペナルティをもらってそこでショットを狙ってもボーナスポイントにはならなかったので、私も『タッチラインを狙ってくれるだろう』と思っていたらそのとおりでした。そのプレーからはトライにつながらなかったですけど、RH大阪さんがショット(ペナルティゴール)で得点を重ねてトライを取れていなかったので、われわれはそのままトライまでフィニッシュできれば勝ち点5を取れる状況でした。それも含めて選手に聞いたら『あと1トライでボーナス(ポイントが得られる)というのは頭に入っていた』と言っていました。そういう意味でもわれわれ日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)が勝利に飢えていた中でみんなが献身的にプレーしてくれた。それが勝ち点5につながったと思っています」

──次節は首位のS愛知戦ですが、その試合に向けての思いはいかがですか。

「ディフェンスにおいて、あと少しでトライを奪われるというぎりぎりの場面もあったのですけど、みんなに『絶対にトライを与えない』という思いがありました。トライゾーンドロップアウトの場面も3回くらいありましたけど、それくらいわれわれは勝利に飢えていたと思います。選手たちからも『最後まであきらめない』という強い気持ちを感じられてうれしく思っていますし、次のS愛知戦に向けて、さらにチームとしても個人としても上回れる、成長した中で臨んで、次のゲームを良い形でフィニッシュできるように準備していきたいと思います」

──次節は群馬県桐生市(森エンジニアリング桐生スタジアム)で初めてとなるリーグワンの開催ですが、桐生での試合に向けて意気込みをお願いします。

「みなさんに熱いメッセージが届くような、日野RDのラグビーを見て、『エキサイティングなラグビーですごく良いチームだな』と思っていただけるような、そして『ラグビーって本当に楽しいな』と思っていただけるような試合になるようにわれわれもしっかり準備をして、桐生でのリーグワン初試合にふさわしいゲームにしたいと思っています」

日野レッドドルフィンズ
中鹿駿ゲームキャプテン

「ホストゲームで勝利できたこと、そして連勝できたことをうれしく思います。前半、良い形でラインアウトモールからドライブをできていました。僕はちょっと前半で目をけがしてしまって入替したのですが、そのあとも代わりに出場した選手が全力でやってくれて、そのまま良いテンポのまま勝ち切れたので良かったと思います。

今週掲げた『献身』というテーマの中にも『アグレッシブ』というキーワードがあって、そのビジョンを前節の九州KV戦から本当に全員が同じ方向を見ようということで取り組んでいて、その準備の中でみんながRH大阪さんを倒そうという気持ちをもって臨んでくれたと思いますし、先ほど苑田ヘッドコーチも言ってくれたとおり、メンバーに選ばれなかった選手からの練習でのプレッシャーというのは本当にRH大阪さん以上のものがあって、そこが今日の良い試合内容につながったと思っています。とはいえまだレギュラーシーズンは残り2戦あるのでしっかり準備して臨みたいと思います」

──フォワード陣のワークレート(運動量)が印象的でしたが、どう感じていましたか。

「本当にみんなの気持ちが入っていたと思います。バックスのほうでは急きょのメンバーチェンジがありましたがフォワードはあまりメンバーが変わらなかったので、とにかくプッシュし続けようと言い続けていました。それをみんなが献身的に体現してくれ本当に良かったと思います」

――後半28分には10対9と1点差にまで詰め寄られるタイトな試合でしたが、終盤どんな思いで試合を見ていましたか。

「今季は僅差の試合が多くて、正直ずっとヒヤヒヤしている状況が続いていますけど、その僅差の試合についてシーズンの前半戦は勝ち切れなかったので、『そこを勝ち切ろう』という意識がいまはベースになっていると思います。そこからディフェンスにおいての目標を全員に植え付けられているというか、全員がディフェンスを意識してくれているからこそ今日の試合でも良いディフェンスを展開できて相手を抑えることができたと思っています」

レッドハリケーンズ大阪

レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(左)、杉下暢キャプテン

レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ

「まずは試合開催にあたりましてご尽力いただきました日野RDの皆さま、関係者の皆さま、そして群馬県協会の皆さま、レフリーの皆さま、本当にありがとうございました。この試合を戦うにあたって、今日は日野RDさんの戦い方がすごく良かったと思っています。今日はわれわれのパフォーマンスというところではやはり満足できるものではなかったですし、自分たちにフォーカスした部分でもストレスがかなり掛かったゲームになったと思っています。実際、いま、少し負けが続いているのですが、われわれとしてはこのしんどい状況でやっぱり立ち向かう、立ち上がるというところもこのチームがやっていく必要があると思っています。今回の課題というのを見極めて次のゲームに臨んでいきたいと思っています。ありがとうございました」

──ノートライに抑えられてしまった要因はどこにあると考えていますか。

「ノートライとなってしまった原因は、スコアに至るまでのプロセスの中で自分たちがミスをしてしまったことだと思っています。トライになるチャンスというのは複数回作ることができていましたので、そういった場面で焦らずに一つひとつ積み重ねるということをやりたいと思っています。自分たちに再度フォーカスして取り組んでいくべきかなと。日野RDさんについては、セットピースのところでプレッシャーを掛けられているところはありました。ラインアウトにしてもスクラムにしても(ボール)獲得率がそこまで良くなかった。そういったところもあって、早く1本(トライが)ほしいという焦りも少しあって取り切れず、といったところです。次の課題としてはやはりそのあたりの精度をしっかり上げていくこと。チャンスでゲインしたときにどれだけ我慢強く次のアタックにつなげるか、というところをやっていくということです」

──後半28分に9対10まで追い上げるなど、ゲーム運びのうまさで接戦にもち込んだようにも思えました。そのあたりはどのように感じていますか。

「われわれは『あきらめの悪いチームを作ろう』という形で進めているので、競ったところやタイトにリードをされたところでも食らいついて自分たちのペースにもっていくところは意識しており、今日もその部分は遂行することができました。そのあたりはこれからもやっていきたいですし、日野RDさんと近いようなチーム構成で日本人選手が多いというところもあるので、そういった自分たちの良さというものを色濃く輝かせていきたいと思っています」

──次の試合にはどのように臨みたいですか。

「自分たちもこの試合を振り返り、しっかり確認して、良かった点はしっかり見極めたいと思います。負けたからといってすべてが悪いとは思っていません。良い部分は積み上げていってその時間を伸ばすこと。負けが続いているのでどうしても『あかんのかな』という気持ちが出てくるとは思いますが、もう1回自分たちのできることをわれわれ全員が認識し次の対戦に生かすというところだと思います」

レッドハリケーンズ大阪
杉下暢キャプテン

「まずは試合開催にご尽力してくださった皆さま、本当にありがとうございました。試合といたしましては非常に自分たちにストレスの掛かる試合内容だったと思っています。ミスが見られ、規律が乱れ、プレー速度も落ちてしまう。本当に苦しく流れが悪い状況だったのですけれどもその中でも6対10で前半しっかりと我慢して折り返し、後半につなげようという話はしていました。後半の頭(立ち上がり)にはスコアするチャンスはあったのですが、そこでスコアすることができず、結局そのままずるずるいってしまい敗れてしまいました。練習中の精度を上げていく。本当にこれしかないと思っていますので、もう一度自分たちの原点を振り返って残り2戦を戦っていきたいと思います。ありがとうございました」

──後半に一気に突き放した試合だった前回と今回はどこが違っていたのでしょうか。

「まず自分たちがスコアし切れる場面でスコアし切れなかったことが自分たちのストレスになってしまったこと。セットピースのところでわれわれが思っている以上の圧力を受けてボールを取り返されてしまうというところがスクラムとラインアウト両方にありましたので、そういったところの圧力というのは日野RDさんが前回の対戦のあとに力を付けてきたところかなと思っています」


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