NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第12節
2025年4月20日(日)12:00 ウエスタンデジタルスタジアムきたかみ(北上総合運動公園) 北上陸上競技場 (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 24-34 清水建設江東ブルーシャークス
真のリーダーへ。「ショッキングな敗戦」を糧に“残り4試合”で勝利をつかみ取る

勝ち点6差で迎えた6位の清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)と、8位の日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)との一戦。両チームにとってD2/D3入替戦回避に向けて大きな意味をもつ直接対決は後半31分まで同点という拮抗した展開が続いたが、試合終盤で逆転した江東BSが、34対24で勝利を収めた。今節は7位だった日野レッドドルフィンズも勝ち点5を上積みし、この結果、釜石SWの7位以下が確定。D2/D3入替戦に回ることとなった。
釜石SWのキャプテン・村上陽平は試合後、「ショッキングな敗戦」と表現し、気丈に話す中にも明確な悔恨がうかがえた。
キャプテンを務めたのは今季から。昨季まで6シーズンにわたってキャプテンを務めた小野航大からバトンを引き継ぐ形だった。キャプテンになった当初は「これまで“副キャプテン人生”だったので、少し戸惑いというか、しっくりきていない部分もあります」と話していた村上だが、いまでは紛れもないリーダーだ。「ほかのリーダーと協力しながら彼らしく引っ張ってくれていると思います」という小野の言葉からも分かるように、チームからは大きな信頼を寄せられている。しかし、だからこそ悔しかった。
「リーダーとしてコントロールし切れなかったこと、至らない部分があったことは、チームに対して本当に申し訳ないと思います」
毎試合、試合後会見に臨む村上だが、ここまではっきりとした自身への言及はあまり聞いたことがない。それだけこの試合を含めたレギュラーシーズンの残り3試合の勝利に懸けていた証拠でもある。
とはいえ、下を向いてはいない。会見の終盤には、いつもと変わらず収穫と課題を客観的に捉えて言語化した。「自分たちの時間を作れたときは本当にいいラグビーができていると思う。あとはいかに結果にこだわれるか。突き詰めていきたい」とまっすぐなまなざしで話す。その表情はすでに敗戦から気持ちを切り替え、いまできることと次の試合を見据えていた。
今季はあと一歩で勝利に届かないという経験を何度もしてきた。しかし、それを感じられたのもチームとしての成長があったからこそ。レギュラーシーズンの残り2試合、そしてD2/D3入替戦の2試合は今季の集大成となる。「ショッキングな敗戦」をこの“4試合”で勝利をつかみ取るための糧とする。村上の目にはそんな“断固たる意志”が宿っていた。
(髙橋拓磨)
日本製鉄釜石シーウェイブス
日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ
「久しぶりの北上開催ということで、釜石シーウェイブスとしては非常に光栄なことだと思って挑みましたし、なんとか勝利をお届けしたかったです。前半はいい(試合への)入りをして、少し中だるみした時間はありましたけど、いい内容だったと思います。後半も引き続きフィジカルファイトはしてくれていたと思いますけど、しっかりボールを敵陣に出す、ボールをキックで外に出す、ハイボールのキャッチのところなどは少し狙われたところもありながらも、終始修正することができなくて、後半逆転されてしまった形になりました。そういった小さなところを突かれてしまったゲームだったと思います。とはいえ、フォーカスしてきたわれわれのラグビー、フィジカルのところは非常に通用していたと思いますし、圧倒できていたと思うので、その勝負のあやのところを今回の学びとして次につなげていきたいと思っています」
──キックを使って陣地を取っていこうという狙いが見えましたが、どのような狙いをもって臨んだのでしょうか。
「ウチのゲームプランは、システムとしてそういった部分があるので、選手たちがそれを遂行して、実行及び成功をしてくれたと思います」
──ラインアウトのボール獲得率も高かったですし、逆に相手の(ボールを)スティールする場面も今季一番多かったと思います。準備してきたものが出たという形でしょうか。
「そうですね。ラインアウトのボール獲得率はここ最近低かったので、そこを修正したという形です。修正できたのは非常に良かったかなと思っています」
──レギュラーシーズン残り2試合に向けて、どのように戦っていきたいですか。
「今回の敗戦は非常に厳しくて、D2/D3入替戦を視野に入れないといけない状況にはなってきたと思いますけど、(ここからの残り2試合に)負けてD2/D3入替戦に挑むよりは、われわれのラグビーをしっかりやり切って、自分たちのベストを突き詰めて挑むほうが、(D2/D3入替戦の)入り方としてもチームの勢いをしっかりもったまま戦えると思います。ここからの試合も自分たちのベストを尽くしていきたいと思っています」
日本製鉄釜石シーウェイブス
村上陽平キャプテン
「まず本当に負けてはいけない試合だったというのが一番で、試合のターニングポイント、大事な部分でスコアできなかったし、スコアされてしまったのが、本当に勝敗に大きく関わる部分だったと思います。
いま、須田ヘッドコーチからもあったとおり、フィジカルの部分でファイトできていたとは思いますけど、如何せん、そのスコアのされ方があまり良くなかったというか、簡単に取られ過ぎてしまったところが、チームとしては印象が良くなかったです。練習でもセットピースからの3フェーズをコンプリートしようというところはそれぞれ声を掛けてはいましたけど、そこをやり切れなかったのが、チームとしては痛いところだったと思います。リーダーとしてなかなかコントロールし切れなかったところ、ディシプリンやスクラムハーフとしてのアタックのコントロールに至らない部分があったことは、チームに対して本当に申し訳ないと思います。ただ、負けてしまったのは仕方ないので、次の試合で絶対勝てるように、またいい準備をしていきたいと思います」
──「大事な部分でスコアできなかった」という言葉がありましたが、どの場面で一番感じている部分でしょうか。
「前半、17対7と10点リードしていたところで、けっこう相手もハンドリングエラーが多く、ノックフォワードなどからマイボールのチャンスが何回もありましたが、せっかくのチャンスを相手と同じようにエラーで終わってしまったところです。そこが痛かった、もったいなかったと思います。結果的に前半と後半の最後の時間帯で、絶対にスコアを取られてはいけないところでスコアされて試合を終えてしまったことにつながっていると思います。自分たちの時間を作れているときはいいラグビーをしていると思いますし、そのときにどれだけスコアを重ねられるかが本当に大事だと思うので、そこはもう少し詰めないといけないところであり、もっと全員が同じ絵を見てスコアできるようにならなければいけないなと思います」
──後半、逆転に成功してからの残り20分少々の場面、チームとしてはどういう戦い方をしようと共有していましたか。
「前半、ディフェンスでファイトできていて、粘れていて、自分たちの流れを作れていたので、まずはディフェンスから流れを作るところと、敵陣で戦わないといけないところ。敵陣で戦うことは、チームのマインドとしてもっていたので、『まずは敵陣に入ってアタックしよう』と声を掛けていましたけど、そもそもなかなか敵陣に入れず、自陣に釘付けになってしまいました。そこから不要なペナルティを冒してしまってスコアされたというところが本当にもったいなかったですし、やってはいけないプレーが何回もありました。スコアされてはいけなかったなと思います」
──前節、「セットアップのスピードを上げなければ」という話がありました。今日の試合での改善についてはどう感じていますか。
「遂行できている部分はもちろんあったと思いますが、それをやり続けないと絶対に勝てないと思います。須田ヘッドコーチから冒頭にもありましたけど、中だるみ(の時間)を起こしてはいけないと思います。『マインドをステイオン』とよく言うんですけど、マインドセットを常にもっていて、中だるみを起こさせないようにしなければいけないと思います。さっき言ったいらないハンドリングエラーは雨の影響もあったと思いますけど、そこは絶対になくさないといけない。でも、セットピースの速さは前の試合に比べたら良くなっていると思います」
清水建設江東ブルーシャークス
清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督兼チームディレクター
「まず、開催に当たり多くの方にご尽力いただきまして、本当にありがとうございました。ある意味、今季負けた試合で一番悔しかったのは(第3節の)釜石シーウェイブス戦でしたので、しっかりリベンジできたところはチームの成長かなと思います。ただ、前半のミスの部分だったり、自滅している部分だったり、この試合でも改善点が多くあったと思いますので、この勝ちを機にしっかり残りの2試合もファンや応援してくれているみなさんにブルーシャークス(の戦う姿)を見てもらいたいと思います。本日はありがとうございました」
──前半、ラインアウトを含めたミスが多く出ましたが、後半に向けてどういう指示をしたのか、教えてください。
「『ラグビーにおいてミスがない試合なんて絶対にないので、ミスをしたとしてもチーム全員でカバーするように』という話もしましたし、言葉が適切かどうか分からないですけど、あれだけミスしていても、スコアは3点差で折り返せたのは我慢できていた証拠だと思っていました。ディフェンスに対しては、ある程度できていた部分もありましたし、ミスを改善すれば必ず勝てると思っていましたので、この部分に関してはハーフタイムにしっかり選手に伝えました」
──後半は内容でも盛り返して逆転しました。後半の評価はどのように捉えていますか。
「もう気持ち以外の何ものでもなくて、私もこういった会見をさせていただける中で気持ちしか伝えてこなかったものですから。選手はこの気持ちをしっかり体現してくれたと思います。ただ今回、ラインアウトはダメでしたけど、スクラムに関しては李優河、立川(直道)、サンシ(野村三四郎)、この3名が本当によく頑張ってくれて、スクラムもやってくれました。ここで主導権が取れたのがゲームの展開を引き寄せた要因なのかなと思います」
──前回の日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)との対戦では後半に逆転を許しました。そこからチームとして一番成長した部分はどういうところですか。
「(前回の敗れたのは)ディビジョン2とD3で上がったり下がったりを繰り返しているブルーシャークスと、D2にずっと居続けている釜石SWの差だったと思います。前回は後半に関しては基本的に釜石SWのインパクトのあるプレーヤーと、勢いあるプレーに押されてしまって、ディフェンスもすべてが後手に回った結果、逆転されたのかなと思います。
今回に関しては、そういった修正点は釜石SW以外との試合でもありましたので、『後半20分からが勝負だぞ』という話もしていましたし、私自身気持ちしか伝えてこなかったので、『勇気をもって一歩前に出てしっかりタックルをしよう』と。タックルも一人で倒したほうが絶対いいですから、そこは『1対1で勝とう』という話も絶えず話してきました。こういった成果が、結果に表れたと思います」
清水建設江東ブルーシャークス
ジョシュア・バシャム ゲームキャプテン
「この試合が本当にタフな試合になることは分かっていましたし、両者にとって大一番でした。釜石SWさんは前半リードしていて、いい流れで来ていたので、特にこっちとしては『どこか(の時間帯)でいいだけじゃなくて、80分全部をとおしていいパフォーマンスをしよう』と言い続けていました。こういう難しい天候でミスもありましたけど、そういうフォーカスでプレーできたことが勝利につながったと思っています」
──僅差の展開でしたが、どういうところが勝負のポイントになると思ってプレーしていたのか、またチームとして共有していたのか、教えてください。
「やっぱり前半最後のトライがかなり大きくて、そこから前のめりに行けるなとは感じました。もちろん前半、個々のミス、役割のミスとかがたくさんあって、頭の中がいっぱいいっぱいになりそうでしたけど、後半はそこを1回忘れて、リラックスして臨みました。それにプラスしてスクラムでアドバンテージが取れたのも、(モメンタムを)押し上げてくれた要因かなと思いました。なので、どうやってプレッシャーを相手に掛けるか。ボールを保持し続けると相手からプレッシャーを受けるので、キックを有効活用して敵陣でプレーしてプレッシャーを相手に掛けていくことを意識して、最後は役割を遂行し切ろうという話をしました」
──後半再逆転されたあと、ペナルティからショットを選択しました。その選択についてどのような狙いだったのか教えてください。
「追い掛ける場面ではありましたけど、1回(スコアを)イーブンにすることで自分のチームを落ち着かせようと思いましたし、イーブンにすることで相手はスコアをもう1回取らないといけないというプレッシャーになると思って、選択しました」
──今回の戦いで勝利以外にチームが得たものはどのようなものでしょうか。
「一番の学びは慌てなければ勝てるというところかと思います。これまでの試合だと、相手にリードを取られたら焦ってパニックになって崩れていって、どんどんリードを離されてしまう展開が多くあったのが、今日は1回もパニックにならずに全員がまとまって落ち着いてプレーしたこと、お互いを信じたことで最後勝ちにつなげられました。そこが一番の勉強でした」