NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第14節
2025年5月4日(日)13:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)
ルリーロ福岡 vs マツダスカイアクティブズ広島
ルリーロ福岡(D3)

ラグビーワールドカップ2015イングランド大会の南アフリカ代表戦で終盤に劇的なトライを決めたあの雄姿を忘れていない。レジェンド、カーン・ヘスケスがいま、また一つ節目を迎える。今節のホストゲームに出場すれば、ジャパンラグビートップリーグおよびリーグワン通算100キャップ。来日16年目の39歳で、キャリアの集大成を刻もうとしている。
100という数字は、ただの記録ではない。宗像サニックスブルースでの黎明期、負傷による長期離脱、そしてクラブ消滅の衝撃――。あらゆる困難と対峙しながら、それでも一線で戦い続けてきた証明である。今季の開幕前、「いま93キャップだよ」と旧知の恩師に教えられたその瞬間から、100キャップは目標になった。
かつての俊足ウイングではなく、フランカーとしてピッチに立つヘスケス。「昔より足は速くない」と笑う姿に、年齢と向き合いながらもなお成長を選ぶアスリートの真価がにじむ。フォワード転向はキャリアの終焉ではない。むしろ、チームのニーズに応える新たな挑戦だった。密集で体をぶつけ、声を出し続ける。それは技術以上に、覚悟と哲学を問われる仕事だ。
そんなヘスケスがいま、身を置くルリーロ福岡もまた、成長途上のチームである。今季は思うような結果が出なかったが、泥臭くても前に出る、最後まであきらめない、その姿勢が観客の胸を打つ。華麗さで魅せるよりも、魂のぶつかり合いで興奮させる。このクラブのスタイルとヘスケスの精神は、どこか重なる。
「自分の強みであるフィジカルを生かし、モメンタムを作りたい」。そう語るヘスケスは、先週の練習試合で40分間出場し、今節はメンバー入りする。豊田将万ヘッドコーチは「彼のようなエネルギーをもった選手が復帰したことで、チームに化学反応が起きる」と語る。若手にとって、その存在は単なるロールプレーヤーではない。ヘスケスのプレー、言葉、姿勢すべてが“教科書”なのだ。
記念試合で見せる一挙手一投足には、背中で語るベテランの矜持が宿る。そして、試合の終盤、チームが追い風を欲するとき、ヘスケスが立ち上がる。その瞬間、16年の歳月がすべて意味をもつ。
(柚野真也)