2025.05.05NTTリーグワン2024-25 D3 第14節レポート(LR福岡 12-35 SA広島)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第14節
2025年5月4日(日)13:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)
ルリーロ福岡 12-35 マツダスカイアクティブズ広島

ジャージーに込められた覚悟と規律。強さを問い続ける者にだけ、次の扉は開かれる

この日ディビジョン3優勝を決め、歓喜にわくマツダスカイアクティブズ広島の選手たち

その瞬間、加藤滉紫の目には光るものがあった。ディビジョン3優勝を懸けた一戦。ビジターの地・福岡で迎えたルリーロ福岡戦で、マツダスカイアクティブズ広島は35対12と快勝し、狙いどおりの勝ち点5を手にした。

前週に2位の狭山セコムラガッツが敗れたことにより、3トライ差以上の勝利で勝ち点5を獲得すると今節で自力優勝が決まる状況。そのプレッシャーの中、チームの全員が冷静に自らの役目を果たした。

歓喜の中心にいたのは、ゲームキャプテンとして今季チームをけん引してきた加藤だった。ダミアン・カラウナ ヘッドコーチが築いてきた「文化」と「基準」を体現する存在であり、誰よりも体を張り、言葉を尽くして仲間を鼓舞してきた。試合前、「準備してきたことを一つひとつ丁寧に」とだけ語ったその背中には、勝利への強い意志と、仲間への信頼がにじんでいた。

マツダスカイアクティブズ広島のダミアン・カラウナ ヘッドコーチ

序盤こそ相手の粘りに苦しんだが、後半は得点を許さず2トライを重ねた。苦しい局面でも崩れなかったのは、今季取り組んできた「細部の修正」の賜物だったという。加藤は「ミスを見逃さず、悪いものは悪いと伝える文化ができた」と語る。それは、強さの礎となる「チームの自律」であり、かつては足りていなかった部分だった。

今季、チームに生まれた変化は、単なる戦術や練習内容にとどまらない。選手一人ひとりが当事者意識をもち、チームの中に「声」が生まれたことが最大の成長だった。加藤自身も「以前は遠慮していた部分もあったけど、いまは自分の感じたことをきちんと伝えられるようになった」と話す。ゲームキャプテンという立場が言葉に重みを与え、チーム全体を前進させる推進力となった。

勝者とは、勝ちたい者ではなく、勝つ準備をした者である。その準備をチーム全員で重ねてきたからこそ、加藤は胸を張って泣けたのだ。カラウナ ヘッドコーチが試合後に語った。「まだ終わっていない」。歓喜に溺れることなく、次なる入替戦を見据えるその言葉は、加藤にも深く刻まれている。赤いジャージーに込められた覚悟と規律。加藤は、その象徴としての責任を果たした。勝利を喜ぶよりも、強さを問い続ける者にだけ、次の扉は開かれる。

(柚野真也)

ルリーロ福岡

ルリーロ福岡の豊田将万ヘッドコーチ(右)、三股久典キャプテン

ルリーロ福岡
豊田将万ヘッドコーチ

「今日は応援ありがとうございました。相手は首位のマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)ということで挑戦者として臨みました。また、ホストゲーム最終戦ということもあり、何としても勝ちにいくという強い気持ちで1週間準備してきました。ただ、結果としては相手の強みを出させてしまい、こちらの流れに持ち込むことができなかったのが残念です。後半で逆転するというプランもありましたが、それもかないませんでした。ペナルティが多かったのも痛かったですね。来週のレギュラーシーズン最終戦に向けて、またしっかり準備していきたいと思います」

──後半、何度かチャンスがありましたが、トライに結びつけられなかった要因はなんでしょうか。

「ハーフタイムでは『焦らず、やるべきことをやり切ろう』と話していました。決して悪い判断ではなかったと思いますが、もう少し視野を広げられれば違う選択肢もあったかもしれません。ただ、チャンスに至るまでの流れは非常に良かったですし、選手たちが後半も集中していたのは感じました。トライにつなげられなかったのは課題ですが、選手たちの成長の証でもあると受け止めています。細かい点は映像で確認していきたいです」

──後半、スクラムでのペナルティも目立ちました。

「主にペナルティを取られたのは後半から出場した(イオセファツ・)マレコです。特にコラプシングが多く、積み重なってしまいました。今季からプロップとして育てている段階なので、彼の成長過程として捉えています。ただ、あそこで流れを渡してしまったことは事実ですから、手放しで肯定はできません」

──今季からチームを指揮されて、ホストゲーム最終戦まで戦い抜いた心境を教えてください。

「自分たちのラグビーを体現しようとする中で、リーグのレベルとすり合わせるのに時間が掛かりました。それはマネジメントできなかった私の責任です。ただ、選手たちは与えられた環境の中で最善を尽くして準備してくれました。今季は私自身もシーズン直前の合流で伝え切れなかった部分も多かったですが、選手たちは本当によく成長してくれたと思います」

──カーン・ヘスケス選手がトップリーグ・リーグワン通算100キャップを達成しました。

「本当に偉大な選手です。実は私はその内の10試合ぐらいは相手チームとして戦っています(笑)。彼にしかできないキャリアの積み重ねがあり、いまこうして仲間として祝福できることを心からうれしく思います」

ルリーロ福岡
三股久典キャプテン

「本日は暑い中、多くの方に会場へ足を運んでいただき、ありがとうございました。前節の勝利で勢いを得て、今日もそのまま波に乗っていこうという目標で臨みました。ただ、自分たちのミスや後半の入りでの規律の乱れから、相手であるSA広島さんの強みを生かされてしまい、結果としては流れを引き戻すことができず敗れてしまいました。ホストゲーム最終戦ということもあり、『絶対に勝とう』と全員が強い気持ちをもっていましたし、何よりカーン・ヘスケスのトップリーグ・リーグワン通算100キャップという節目でもあったので、チームとしても特別な思いがありました。残念ながら勝利にはつながりませんでしたが、来週に控えるレギュラーシーズン最終戦に向けて、良い準備をして、最後まであきらめずに戦いたいと思います」

──前半はいい流れもあったと思いますが、後半に乗り切れなかった要因はどのように考えていますか。

「後半の立ち上がりは、自分たちのテンションで流れを取り戻そうと気合いを入れて入ったんですが、立て続けにペナルティを3つほど取られてしまって…。そこから自陣に入られて失点し、徐々に相手に主導権を渡してしまいました。ただ、そこからも40分間しっかり戦い切れたことは、チームとしての成長だと感じています。最後まであきらめずに食らい付いた選手たちを誇りに思いますし、それを次の一戦に必ずつなげたいです」

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島のダミアン・カラウナ ヘッドコーチ(左)、加藤滉紫ゲームキャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
ダミアン・カラウナ ヘッドコーチ

「正直、今日のパフォーマンスは満足できるものではありませんでした。良かった点もありますが、全体としては改善点が多く、特にディフェンス面でまだまだ修正が必要です。ペース配分についてはよくやれたと思いますが、D2/D3入替戦に向けて課題は明確にあります」

──とはいえリーグ優勝という最高の結果を残しました。チーム作りにおいて、最も重視してきたことは何ですか。

「最初に取り組んだのは『文化作り』です。ハードワークを惜しまないチーム文化を築くこと、そしてそれを選手たちが受け入れてくれたことが大きかったですね。チームの中からリーダーを見つけ、彼らが基準を保ち続けてくれたおかげで、毎週安定した準備とパフォーマンスができました。また、会社からの支援も本当に大きかったです。良い試合のときだけでなく、苦しいときにも支えてくれました。そうした背景があってこそ、いまの結果につながっていると思います」

──相手チームのヘスケス選手がトップリーグ・リーグワン通算100キャップを達成しました。かつて同じチームで過ごしたこともあるそうですが、彼についての思いを聞かせてください。

「本当に特別な選手です。彼がトップレベルで長く活躍してきたことに、心から敬意を抱いています。印象的なトライもいくつもありましたし、何より高いレベルをずっと維持し続けてきた。そんな彼が今日、100キャップを達成する舞台に立ち会えたこと、そして花束を渡す役を務められたことをとても光栄に思っています」

マツダスカイアクティブズ広島
加藤滉紫ゲームキャプテン

「まずは、勝てたことが本当にうれしいです。そして勝ち点5をしっかり取って、優勝を自分たちの手で決められたことが一番の収穫でした。ただ、ヘッドコーチも言っていたように、ディフェンス面には課題が残った試合でもあったので、次の中国電力レッドレグリオンズさんとの試合に向けて、そこを修正して、さらにいいチームでD2/D3入替戦に臨みたいです」

──試合前、チームメートに掛けた言葉はありましたか。

「優勝が懸かっていることはもちろん意識していましたけど、それよりも『準備してきたことを一つひとつ丁寧に出していこう』とだけ伝えました。勝ちたい気持ちはみんな同じだったので、余計なプレッシャーは掛けずに、自分たちらしくやることが大事だと思っていました」

──ゲームキャプテンとして初めてチームを引っ張った試合の雰囲気はいかがでしたか。

「正直、僕が引っ張ったというより、みんなが支えてくれて、自然といい雰囲気を作ってくれた感覚のほうが強かったです。チームとしてのまとまりをすごく感じました」

──優勝が決まった瞬間の気持ちを教えてください。

「もう、マジで泣きそうでした。それだけです」

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