2025.05.23[江東BS]15人ではなく“全員”の思いを込めて。クラブの本質を映し出すベテランの姿

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D2/D3入替戦[D2 7位 vs D3 2位]第1戦
2025年5月24日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 狭山セコムラガッツ


清水建設江東ブルーシャークス(D2)

「サンバチームも本当に一生懸命やってくれていますし、それがチーム全体のモチベーションになっています」(清水建設江東ブルーシャークス 仁木啓裕監督兼チームディレクター)

5月24日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、狭山セコムラガッツ(以下、狭山RG)を江東区夢の島競技場に迎え、ディビジョン2残留を懸けたD2/D3入替戦第1戦に臨む。シーズンの締めくくりとなる大一番。舞台はいよいよ整った。

今季の江東BSは、D2で5勝1分8敗という成績に終わった。悔しさの残る数字であることは間違いないが、チームの中には常に前向きな空気が流れていた。敗戦のあとも顔を上げ、すぐに次の試合へとフォーカスする。そうした姿勢が、江東BSというチームの本当の強さを物語っている。

江東BSには、“メンバー外”の選手たちを指す「サンバチーム」というユニークな呼称がある。吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダーによれば、「『メンバー外』みたいな言い方がイヤだったので、毎シーズン最初の紅白戦のときに自分たちで決めたチーム名を1年間使用する」のだという。昨季は「ニンジャチーム」、そして今季は「サンバチーム」。彼らは出場選手の練習相手として相手チームを模倣するなど、裏方に徹する役割を担っている。

仁木啓裕監督兼チームディレクターが、常々語ることがある。「サンバチームも本当に一生懸命やってくれていますし、それがチーム全体のモチベーションになっています」。目立つことはなくとも、確かな貢献でチームを支える彼らの姿勢が、江東BSというクラブの本質を映し出している。

その象徴とも言える存在が、崎野諒太だ。チーム在籍13年。トップイーストディビジョン2 の時代から、チームとともに歩んできたベテラン選手の一人である。今季ここまで一度も試合に出場していないが、それでも、彼の言葉に後ろ向きな響きはない。

「メンバーに選ばれなかったシーズンは人生で初めてです。もちろん悔しさはありますが、それ以上に"楽しかった”です」

そう語る表情は、実に晴れやかだった。

「いまが、人生で一番ラグビーがうまいと感じているんです。若いころは大学時代の貯金でプレーしていた感覚がありました。でも、いまは違います。意識の高い仲間たち、優秀なコーチ陣、そして整った環境の中で、いまだに自分の技術が確実に伸びている実感があります。成長を感じられるいまが、本当に楽しい」

崎野は江東BSのことを「家族みたいな存在です」と語る。

「勝って喜んで、負けて涙する。そんな経験って、社会人になるとなかなかできないじゃないですか。でもこのチームでは、それをみんなで共有できる。それが本当にかけがえのないことなんです」

社会人として働きながらラグビーを続ける「サラガーマン」としての誇りも、彼の胸にはある。

「僕たちは、仕事をしながらでもトップクラスのリーグで戦えることを証明したい。そのためにも、まずはD2に留まることが大切です。そして、いつかは一番上のディビジョンに挑戦できるように。この2戦を全力で戦い抜いて、来季につなげていきたいと思います」

江東区夢の島競技場で迎える今季最後のホストゲーム。グラウンドに立つ15人だけでなく、戦ってきた全員の思いが、この一戦に込められる。江東BSというチームの真価を、未来へとつなげるために。

(奥田明日美)

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