NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第4節 カンファレンスB
2023年1月14日(土) 12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 7-74 横浜キヤノンイーグルス
美しさと、泥臭さと。金色に輝いたファフ・デクラーク
開幕から3連敗でいまだにディビジョン1での勝利を手にしていないばかりか、前節はクボタスピアーズ船橋・東京ベイに77点を奪われる屈辱を味わった花園近鉄ライナーズ。今節は、前節で数的有利を生かせずに今季初黒星を喫した横浜キヤノンイーグルスを迎え撃った。両チームの世界的スクラムハーフの対決も注目を集めた一戦は、ビジターの横浜キヤノンイーグルスが11トライの猛攻で74対7と圧勝。2勝1分1敗と勝星を先行させた。
「相手のハイボールに対してその処理ができず、たくさんトライを取られた」(水間良武ヘッドコーチ)。2試合連続で70点以上を献上して敗れるという屈辱の展開を、敗軍の将はこう振り返った。
高精度の低弾道キックで相手の急所を突く田村優とは異なり、ボディブローのようにジワリジワリと相手にダメージをもたらすハイパントで試合のリズムを作り出したのは南アフリカ代表のスクラムハーフ、ファフ・デクラークだった。
「キックの精度は自分の持ち味だと思っている。東京サントリーサンゴリアス戦を振り返ると、もう少しテリトリーを取れた試合だったと思っていたので、そこを反省点だと捉えていました」(ファフ・デクラーク)。相手のプレッシャーを寄せ付けない鋭い左足のキックは前半だけで実に9本。ラインアウトからのモールに課題を抱える花園近鉄ライナーズに対して前半4分、先制トライを奪うと終始試合を優位に進めた。
前半8分にはラインアウトからのボールを受けるとヴィリアメ・タカヤワと入れ替わるような形でファフ・デクラークは絶妙のパスを供給。そして、ヴィリアメ・タカヤワのパスを受けたアマナキ・レレイ・マフィがトライに成功する。
「第一に意識したのはゲームマネジメント」というファフ・デクラークの言葉は、要所を締める泥臭いプレーに象徴されていた。
世界最高峰の攻撃的スクラムハーフは、守備でも魅せる。
36対7で折り返した後半2分、花園近鉄ライナーズのスクラムハーフ、ウィル・ゲニアが絶妙のキックを披露。反応したジョシュア・ノーラがトライを狙いに行ったが、ファフ・デクラークは懸命に追走。ジョシュア・ノーラはボールを押さえ切れず、TMOの結果ノックオンと判定されトライには至らなかった。
「(代表で)何回か対戦しているのでお互いの癖も分かっています」とファフ・デクラーク。オーストラリア代表のウィル・ゲニアによるキックも織り込み済みだったが、大量のリードにも緩まない姿勢は、やはりワールドクラスの選手のメンタリティー。
後半14分にお役御免となったファフ・デクラークのプレーを堪能した観客はホスト、ビジターを問わず大きな声援で称賛した。
もっとも、南アフリカの「小さな巨人」を生かせたのは、横浜キヤノンイーグルスの選手全員がディシプリンを保ちながらプレーし続けたからこそである。
ファフ・デクラークも言う。「キックはチェイスがないと意味がない。キックしたあとでも皆がしっかりとチェイスできていたのでそれも良かったと思います」。
髪の毛だけでなく、そのプレーでも金色の輝きを放つ背番号9を日本で見られるのは、ラグビーファンにとっての僥倖だ。
(下薗昌記)
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ
「先週大敗して、ディフェンス、それからラインアウトモールのところを練習で取り組んできたんですけども、ラインアウトモールから3つですかね、(トライ)されて、それから相手のハイボールに対してその処理ができず、たくさんトライを取られた。その中でもいい部分はいくつかあったので、ブレずに自分たちが求めるスタイル、それを出すために必要なことをまたしっかりと、この花園で修正して、来週の東京サントリーサンゴリアス戦につなげていきたいと思います」
──いくつかいい点があったと言われましたが、どのあたりがポジティブな要素だったのでしょうか。
「前半、われわれのモメンタム(勢い)があった部分というのはスクラムですね。スクラムでペナルティを取る部分があった。それからラインアウトも自分たちでテンポがあった。その部分ですね」
──苦しい時間帯にズルズルといってしまうことが多いのは、キャプテンの野中翔平選手の不在も影響しているのでしょうか。
「キャプテンというよりかは個人の問題ですね。ウィル(・ゲニア)が言ったように個人のスキルの問題ですね」
──帝京大学の福井翔選手ら新加入選手が発表されていますが、新戦力についての印象やこれからの起用について教えてください。
「新戦力の選手、福井翔と井上優士はまだ合流していないですね。ただ、合流している3人を含めて彼らはライナーズの未来なので、これから一緒に合流してライナーズのラグビーを学んで早くグラウンドに立てるようにわれわれはプッシュしていきますし、彼らはそれを受け止めて早くチームの戦力になって活躍してくれることを願っています」
──ウィル・ゲニア選手について。
「ウィルは本当にいいタックルをして、ナキ(アマナキ・レレイ・マフィ)にもタックルをして、ほかの選手にもタックルをして、ゲームのこともコントロールしてくれていました。代えたくはなかったんですけど、後半、前半の最後もですね。トライを取られて、前半もトライを取られてフォワードのところでもっと勢いを出さないといけないというところで、ウィルを下げざるを得なかったということなので。本当はもっといて、ゲームをコントロールしてもらいたかったんですけどね」
花園近鉄ライナーズ
ウィル・ゲニア ゲームキャプテン
「まず結果はやっぱり残念です。特に個人のミスが多いところがひどいです。多すぎる。ハイボールキャッチができないから、そこで相手に流れを持っていかれたし、元々そういう戦いをしてくるのも分かっていたので、ノッコンや、ペナルティからタッチキックを蹴られてモールトライを取られたり。その流れで相手の思うツボでした。ダメなところが多過ぎます。個人的なところになりますけど。
システムを信じていて、システムは効いています。だからこそ、個人のゲームの理解、われわれがやろうとしていることへの理解とその中での役割をしっかりと果たすというところに尽きる。ミスをなくしていくところ、そこができていないです。フィジカルでも勝負できていないです。
なので、自分としてはやっぱりやっていてもイライラします。70点を取られる試合というのは本当に恥ずかし過ぎます。これからは本当にハードワークをし続けて、システムを信じてやっていくしかないですね」
──対戦した横浜キヤノンイーグルスのファフ・デクラーク選手の印象を教えてください。
「やはり強い相手と戦うのは、常に楽しいし好きなんですけど、彼個人と私の戦いというのはそんなにないんですよ。9番としてはチームの中でシステムの中で何ができるかというところなので。やはり横浜キヤノンイーグルスはフィジカルが強くてゲインラインを取って圧倒していました。そういう意味では彼にとっては彼の強みを出しやすい時間とスペースをフォワードがしっかりと作ってくれていたので、彼にとってはやりやすいゲームだったと思います」
──今日、ご自身のプレーでうまくいった点を教えてください。
「やはり、自分が個人でどうだったとか、彼と比較してどうだったかという話はあまりしたくない。というのもやはりラグビーはチームプレーで、9番としてはチームがどうかによって自分のゲームのパフォーマンスというのは変わってきます。そういう意味ではやはりフォワードが相手フォワードを圧倒していたり、バックスも強いキャリーで相手のバックスを圧倒していれば、自分が良い判断をするための時間とスペースが作り出される。
そういう意味では、彼(ファフ・デクラーク)のチームはフォワードが彼にとって良い判断をするためのスペースと時間をしっかりと作り出せていたと思います。
自分に関しては、今回の試合ではやはり激しさをもってチームをリードしたいと思っていました。タックルで今日はこれだけ花園近鉄ライナーズがやるんだというのを見せたいと思っていたので、そういう意味ではしっかりと出せていたと思います。そのあとマルチフェーズに持ち込んだら、そのあとリードしていきたいと思っていたんですけど、やはりそのチャンスがなかなかなかったので、そういう意味ではリードし切れなかったと思います」
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「われわれは先週、一人少ない東京サントリーサンゴリアスにああいう試合をして負けて、今週どう振る舞うかをテーマにしっかりと1週間ハードに準備してきました。態度の部分ではポジティブな部分も見られたので、このまま自分たちのやり方を信じて、やり切ったときにはしっかりと力が出せると、そう思えるような場面もたくさん見られました。もう、1回負けたので、全勝を目指して次からは1個も負けない気持ちでレベルアップしていきたいと思います。お疲れ様でした」
──先週の負けの話が出ましたが、負けから学んだものを生かして練習に1週間取り組んできたのか、それともある程度リセットするイメージだったのか、どのような1週間だったのでしょうか。
「僕らはルールに基づいて、しっかり練習をしなければいけないと思いますね、チーム側は。なので、前回のゲームでいうところの、レフリングに対するフィードバックもしっかりともらって、僕らがやっていることは間違いじゃないという返答が来たので。ただ、自分たちの正しい基準でやっていても、それはもちろんレフリーもミスしますし、そうなったときにしっかりと安定したメンタルで自分たちのいつもどおりの力を出せるようなそういうタフさというのが、今週はしっかりといい準備ができたと思います」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン
「今日の試合は長い時間、自分たちで試合をコントロールできていましたし、用意していたプランどおり試合を進められたかなと思います。先週の課題であった、ディシプリンのところとブレイクダウンのところはかなり手ごたえを感じました。ただ一つ、試合を閉めるところでやっぱり、自分たちとしてはうまくいかなかったところがありました。また一つ学ばせていただきましたので、ここから本当にチームとしてよりレベルアップして、もう負けの試合を経験したくないというのはチーム全員で同じ思いなので、これから本当に勝つゲームを続けていけるように準備していきたいと思います」
──今日は当然勝ちにいく試合だったと思うが、できればボーナスポイントもというプレッシャーは感じていたのでしょうか?
「正直、点差とか、もちろんポイントを取りにいかないといけないというのはわかっていましたけど、あまりそこはプレッシャーに感じることはなくて、本当にこの試合は自分たちがどう振る舞えるか、本当に自分たちがテストされている試合だったので、点数とかポイントというのはあまり、プレッシャーには感じていませんでした」
──前節までの課題だったディシプリンが今日はうまくできたというところは、具体的にどのようなところを調整、あるいは改善して、どのあたりがうまくいったのでしょうか?
「まずラインオフサイドのところ、そこはもう1節のところからずっと課題として出ていたので、しっかりとブレイクダウンから50cm下がろうというコールはチーム内で統一していました。あとはポジティブじゃないタックルをしたときにノットロールアウェイを取られるシチュエーションがすごく多かったので、もう一度一人ひとりのタックルの精度、しっかりとゲインラインの前で止めるというところをこの1週間チームとしては統一してきました。その2点が改善されつつあるかなと思います。ただ、試合の序盤にラインオフサイドのところも取られていますし、引き続きここは改善していかないといけないと思います」