NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第13節 カンファレンスB
2024年4月12日(金)19:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 横浜キヤノンイーグルス
花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)
すべての悔しさを味わってきた男が
途中出場でもたらすエナジー
前節、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)に敗れたことで今季のディビジョン1で10位以下が決定。2年連続での入替戦を戦うことが決まった花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)の中で唯一、全12試合に出場している男がいる。
パトリック・タファ。彼は今季、出場した全試合で負けの味を味わってきた。
「悔しい部分はあります」と本音を漏らしたパトリック・タファだが、トヨタV戦でも二つのトライを決めて先手を取るなど、昨季とは異なる戦いぶりを見せているチームには手ごたえも覚えている。
「負けからの学びもありますし、チームは成長しています。もちろん、結果はついてきていませんが、リーダーの一人(バイスキャプテン)としてはポジティブな雰囲気をもたらすことも大事だと思っています」
U20オーストラリア代表の一員として5年前のワールドラグビーU20チャンピオンシップ2019に出場し、決勝戦でもプレーした経験も持つパトリック・タファのポテンシャルの高さについては「神戸のナンバーエイト(サウマキ アマナキ)のような選手になれば、日本代表に入る目も出てきますよ」と向井昭吾ヘッドコーチも評価する。
今季は強豪相手にも競り合った試合展開を見せ、リードする時間帯もある花園L。課題は、後半に崩れる時間帯が目立つことである。
トヨタV戦でも敗色濃厚だった後半37分に一矢報いる執念のトライを決めているパトリック・タファは、横浜キヤノンイーグルス戦では途中出場からチームにエナジーを与える役割となった。
「相手はフォワードが大きいし、フィジカルが強いことも分かっています。ディフェンスの必死さが前半は出せていますけど、後半になるとなぜかそれがなくなってしまうのが現状。ラグビーの試合は80分間で完結するので、最後までしっかりとプレーしたいです」(パトリック・タファ)
チーム通訳の前田啓子さんが「(パトリック・)タファに『最近調子はどう』と聞いても、自分のことじゃなくてまず『みんな、いい感じだよ』とチームのことを話すんです」と絶賛するほどの自己犠牲に満ちた人柄と、穏やかな性格を持っているパトリック・タファ。
気は優しくて力持ち──。オーストラリア生まれの逸材は「自分の行動でチームを引っ張っていけるのがうれしいですね」とバイスキャプテンの肩書きに誇りと責任を感じながら、ピッチを疾走する。
(下薗昌記)
横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスB)
敗戦の記憶を書き換える
初キャップと勝利を目指して
2連勝中の横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)と対戦する“フライデーナイトゲーム”。キックオフは4月12日(金)19時。会場は東大阪市花園ラグビー場だ。
敵地での花園L戦を2日後に控えた全体練習の終盤、果敢なランでディフェンスを切り裂く選手がいた。味方のトライにもつながるアタックに「ナイスプレー!」の声がキヤノンスポーツパークに鳴り響く。
「それまでは結構ミスもありましたが、最後に自分の持ち味を出せたので、いいイメージで試合を迎えることができそうです」
言葉の主は、花園L戦でメンバー入りを果たした武藤ゆらぎ。東海大学出身のスタンドオフは、初めてリーグワンの舞台に立つチャンスをつかもうとしている。「ラグビーを始めたころから憧れてきた」ジャパンラグビー リーグワン(当時はジャパンラグビー トップリーグ)の舞台。花園Lの先発メンバーには36歳のウィル・ゲニアも登録されたため、「スーパーラグビーでのプレーを見ていた」“スター選手”との対戦も楽しみの一つだ。
もちろん、憧れの舞台を踏みしめるだけで終わるつもりはない。ピッチに立つチャンスがあれば、「ミスを恐れずに自分の強みを出すこと」に集中している。
武藤のストロングポイントは、前述のシーンのような「相手ディフェンスに仕掛けていくランニング」だ。3月24日の練習試合・東京サントリーサンゴリアス戦で「自分の持ち味を出せたこと」がメンバー入りにつながったため、いいイメージはできている。武藤は言う。
「横浜Eへの加入が決まってから、ずっと試合に出ることを望んできました。その中でチャンスを得られたことはとてもうれしい反面、プレーオフトーナメントが近づいていることに対する緊張感はあります。いざ試合に出ることになれば、もしかしたら緊張するかもしれませんが、勝利で締めくくることができるようなプレーをしたいです」
花園L戦の試合会場は、西のラグビーの聖地・東大阪市花園ラグビー場。東海大学付属大阪仰星高校時代や東海大学では敗戦の記憶が多いため、「このチームで勝って思い出を書き換えたい」と武藤は言葉に力を込めた。
(郡司聡)