釜石シーウェイブスRFC(D2)
地元・岩手への思いを胸に。期待が阿部竜二を奮い立たせる
「ラグビーのまち釜石」で、釜石シーウェイブスRFCがいよいよホストゲーム開幕戦を迎える。12月25日、釜石鵜住居復興スタジアムに三重ホンダヒートを迎え、12:00試合開始。“今季初勝利”という名のクリスマスプレゼントをファンに届けられるか。
前節、日野レッドドルフィンズとの試合は、セットピースでミスが頻発し、前半で0対33と大きくリードを許した。須田康夫ヘッドコーチは「開幕戦の緊張と、強さがある相手を変に意識し過ぎて自滅してしまった。でも、これがあって自分たちのやるべきことを思い出せた」と振り返る。後半はボールを保持し動かしていくという、チームが得意とする形を徹底。リズムをつかみ、4トライを奪った。
次節の相手である三重ホンダヒートとは、昨季2戦2敗。2戦目はわずか1点差の惜敗だった。相手の選手層はより厚みを増し、特にフィジカルの面で厳しい戦いが予想される。その中でも「テンポよくボールを動かせばいい流れが作れる」(須田ヘッドコーチ)。前の試合で再確認した強みを継続したい。
勢いに乗るのが、リーグワンデビュー戦でいきなりトライを決めたルーキー、阿部竜二だ。関東学院大学から加入した23歳は、今季のプレシーズンマッチ8試合すべてに出場。重ねた試合経験を早速生かした。後半20分、セタ・コロイタマナが粘り強くボールキャリー。「セタはいつもボールをつないでくれる、来ると思っていた」とパスを受け、冷静にトライにつなげた。基本、受け答えは控えめで謙虚な阿部だが、「デビュー戦のトライは率直にうれしい。今季、1試合最低1トライは決める」と力強く話し、トライゲッターであるウイングとして確かな自信を得ていた。
そんな阿部は岩手県の紫波町出身。中学3年時にラグビーを始め、黒沢尻工業高校ではキャプテンとして全国高校ラグビー大会に出場した。その際に感じた地元の盛り上がりを覚えているからだろう。「たくさんの人に生の試合を見に来てもらいたい。そのために、自分は地元選手として、とにかく一生懸命にプレーする」と岩手での活躍を誓う。25日の試合には家族や親戚が総出で応援に駆け付けるそうだ。熱い釜石のファンの応援、地元の期待が阿部の気持ちを奮い立たせている。
釜石の応援のシンボル“大漁旗”がはためく中、チームを勢いづけるルーキーが2戦連続トライを狙う。
(佐々木成美)
三重ホンダヒート(D2)
トム・バンクス、ワールドクラスの真髄を。「圧倒的なプレーを見せないといけない」
強豪、浦安D-Rocksを相手に初戦を落とした三重ホンダヒートは、何としても今季初白星を挙げたい第2節。聖なるクリスマス、12月25日のビジターゲームは、釜石鵜住居復興スタジアムにて、釜石シーウェイブスRFCとの対戦となる。上田泰平ヘッドコーチは「同じく前節は負けてはいるが、釜石シーウェイブスRFCはいいチーム。しかし、相手に合わせるのではなく、われわれのラグビーを出していきたい」と抱負を話す。
圧倒的な存在感を見せたアルゼンチン代表のパブロ・マテーラ、ラインアウトを完全制圧した南アフリカ代表のフランコ・モスタート。開幕戦は、負けはしたもののチームは世界基準のプレーを、鈴鹿の地で魅せた。しかしワールドクラスのうちの一人、フルバックのトム・バンクスは、やや消化不良のまま、後半27分でベンチに退いた。本人も「いいプレーもできたが、改善しないといけない部分はたくさんあった」と振り返る。
トム・バンクスは、現在のワラビーズ(オーストラリア代表)ナンバーワンのフルバックと認められている。電撃的な加速度を生み出すランニングとフットワーク、的確なポジショニングと創造性に富んだプレー選択。中でもロングキック、ハイパントなど種類と判断力まで含めたキックテクニックは、ワラビーズでも飛び抜けたスキルを持っている。
しかし前節は、浦安D-Rocksのフルバックで元ワラビーズのトッププレーヤー、イズラエル・フォラウとの駆け引きでキック合戦にはならず、トム・バンクスの武器の一つであるロングキックはほとんど炸裂しなかった。ロングキックをすると突破力のあるイズラエル・フォラウがキャッチ、ボールキャリーをして相手のペースになるからだ。一方、イズラエル・フォラウが蹴り入れてこなかったのも、トム・バンクスの爆発的なランニングを警戒したからだろう。
「戦術的な意味もあったことは確か。彼のパフォーマンスについてはまったく心配していない」と上田ヘッドコーチは話す。トム・バンクス自身も「次のゲームでは、ロングキックやボールキャリー、ハイボールのキャッチングでゲームを圧倒するところを見せたい」と言う。
来年にはラグビーワールドカップが控えているが、ワラビーズには、海外在籍選手は3人までしか選出されないルールがある。そのため、国外チームのプレーヤーは常にパフォーマンスを詳細にチェックされている。トム・バンクスのその一人である。「ワールドカップでプレーしたいことは間違いない。だから今シーズン、日本でも圧倒的なプレーを見せないといけないと思っている」。
一つひとつのプレーが、真の意味でワールドカップへとつながり、常に見えないプレッシャーにさらされているトム・バンクス。彼のプレーは絶対に見逃すことはできない。
(小崎仁久)