2022.12.27NTTリーグワン2022-23 D2 第2節レポート(釜石SW 12-75 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第2節
2022年12月25日(日) 12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
釜石シーウェイブスRFC 12-75 三重ホンダヒート

大差の敗戦の中にいた“サプライズプレーヤー”。セタ・コロイタマナという希望

釜石シーウェイブスRFCのセタ・コロイタマナ選手

釜石鵜住居復興スタジアムで行われた、釜石シーウェイブスRFCのホスト開幕戦。1,167人が会場に詰め掛けたが、相手に圧倒的な力の差を見せつけられ、開幕から2連敗と厳しい船出となった。

対戦相手の三重ホンダヒート。今季初勝利を狙い、掲げていたのは「win」というシンプルなテーマだ。素早い出足、接点やセットピースでも勝ち切り、前半で6トライを奪った。釜石シーウェイブスRFCにとっては、今季から加わったワールドクラスの選手たちも脅威だった。オーストラリア代表で21キャップを持つトム・バンクスはボールを持てば鋭いステップで相手をかわし独走。圧倒的なテクニックは釜石のラグビーファンをうならせた。

釜石シーウェイブスRFCの小野航大キャプテンは、「相手には強いランナーがいる。受け身になると、今回のような展開になってしまうのは分かっていた。もっとディフェンスでしかけるべきだった」と振り返る。

1対1のディフェンス強度やセットピースの精度。2戦連続、序盤から大差をつけられたチームの立て直しは急務だ。

一方で、ファンの期待感を高めたのが、2戦連続途中出場のセタ・コロイタマナ。抜群の推進力で一人、二人、3人とかわし個人技で圧倒した。リーグワン初トライを決め、存在感をさらに強めた。

「面白い選手でしょ? やっとお披露目できた」と笑顔を見せて話したのは須田康夫ヘッドコーチ。今年、オフシーズンに視察で訪れたニュージーランドで、彼の突出したパワーやスピードを目にして獲得に至った。そのとき、所属していたのはクラブチーム。これまでも決して際立った活躍経験はないが、チームメートの村田オスカロイドも「セタのプレーはとにかくすごい」と興奮しながら話す。「この選手は一体……」。他チームにも驚きが広がっている。

100kg超の恵まれた体格とは裏腹に、取材中は照れながら話す姿が印象的だ。それでもピッチではひときわ大きな声でチームを鼓舞する。

「ピッチに入ったらみんなにエネルギーを与えたい。毎試合ハードにプレーする」(セタ・コロイタマナ)。いつも万全の準備で自身の出番を待っている。

ホスト開幕戦で力を発揮した“サプライズプレーヤー”。初トライをはずみに、チームをいい方向へ導きたい。

(佐々木成美)

釜石シーウェイブスRFC

釜石シーウェイブスRFCの須田康夫ヘッドコーチ(左)、小野航大キャプテン

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「寒い中、今季初のホストゲームにお越しいただいた皆さんには申し訳ないゲーム内容になってしまったとすごく感じていますし、反省しております。その中で選手たちも80分間、最後まで自分たちのラグビーを体現しようと頑張った試合だと思いますが、フィジカルバトルのところで食い込まれる部分が多くて、特に前半の最初に失点を多くしてしまい、相手を勢いづけてしまうことになったことが今回の敗因だと思います。とはいえ、できている部分、やっていればいい形を作れるという部分もあったので、ポジティブに考えて次に備えてまた頑張りたいと思います」

──セットピースでなかなかマイボールを取れなかったことについてどのように分析していますか?

「スクラムは前節から少し改善されたと思っています。しっかり組むことができましたし、前節の日野レッドドルフィンズさんとの試合のように完全に押されるという場面がなかった。ラインアウトのところはゲームを崩してしまった理由の一つだと思うので、少しテコ入れが必要だと思います。いま持っているオプションを新しくするのかというところはもう一度しっかり見て、選手たちと話をして、よくできるようにしっかりフォーカスして次はやりたいと思います」

──相手に研究されていたという印象もありますか?

「そうですね、もちろんどこのチームも研究してきますし、そういった中で研究されても大丈夫なものも持っていますが、使い切れていない判断の部分があります。そこは自信を持たせられれば良かったと思っています」

──このあとはビジターゲームが4試合続きます。どのように修正していきますか?

「一戦一戦、確実にチャレンジして、チーム力を上げていくのが釜石シーウェイブスRFCのあるべき姿だと思っているので、先のことは見ていないですが、次の清水建設江東ブルーシャークスさんはディビジョン3から上がってきているチームなので負けられないと思いますし、100%の準備をすることは変わらないと思います。ビジターゲームであろうがホストゲームであろうがそこは100%の準備を進めていくだけだと思います」

──開幕戦からの2試合ともに、試合開始直後から苦戦している印象。どう振り返りますか?

「若い選手も多いですし、経験している段階だと思いますが、最初から100%、120%を出していかないと、お互いフレッシュな状態なので、そこでどちらが勢いに乗れるかが決まってしまうと思います。その結果が点数に表れているというのはあると思います」

──後半から出場したセタ・コロイタマナ選手が初トライを決めました。

「チームに合流したのが一番遅かったのでゲームにフィットし切れていない部分もあると思いますが、今までの釜石シーウェイブスRFCにはなかったインパクトプレーヤーで本人も自信がついてきていると思いますし、日本のラグビーにもどんどん慣れてきて、トライを取れるというのが本人としても自信になったのではないかなと思います」

──2試合が終わってみて感じたこと、そして今後、強化が必要な部分は?

「昨季に比べてよりフィジカルなリーグになっていると思います。その中で相手のアタックをしっかり止める部分、フィジカルの部分が絶対必要になってくるので、そこに負けない危機感を常に意識してトレーニングをしていきたいと思いますし、これがスタンダードだと思ってプレーしていかないといけないと思っています。そういった中では、いい経験のゲームになったと思います」

──この試合、プラスにとらえていることは?

「ポジティブな部分は少ないです。さすがにこの点差なので、強みがあるとはさすがに言い切れません。ただ、ボールを持って動かさないといけないのは分かっていて、そこがウチの強みですし、ボールを持っていたとき、相手にも立ち遅れが発生してきていたので、そういったところは、今度はウチが自信をもってできればもっといいゲームができるし、スペースが見えてくるのではと思います。そういった部分を学んだゲームになりました」

釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン

「三重ホンダヒートさんに対して、自分たちからディフェンスをしかけるところにフォーカスできていればこういう結果にならなかったと思います。今季のディビジョン2はこのレベルがスタンダードだと思いますし、このレベルで戦えないと生き残れないと感じています。もう一度自分たちのやるべきことを明確にして次の試合に臨みたいです」

──後半に向けてキャプテンとしてどんな言葉をかけましたか?

「前半、フィジカルの部分で食い込まれていることが多かったのですが、アタックを続けている限りは相手にプレッシャーを掛けている感覚はあったのでもっとボールを自分たちで持つということを意思統一して後半に臨みましたが、セットピースのところでボールを取ることができなかったことなど、課題はたくさんあると思います」

──次のホスト戦は3月。ファンにどんなプレーを見せたいですか?

「ファンの人が見に来たくなるようなゲームをする義務が僕たちにはあると思いますし、熱いゲームを次はしたいと思います」

釜石シーウェイブスRFC
セタ・コロイタマナ選手

──2試合連続で後半から出場。どんな気持ちでピッチに入りましたか?

「思い切りプレーができるように最善の準備を毎回やっています。ピッチに入ったらみんなにいいエネルギーを与えられるようにと心がけています」

──後半8分に決めた自身のトライについて。

「率直にうれしいですが、大差で負けていたのでまだ自分の仕事をやらないといけないという気持ちが大きかったです。毎試合、ハードにプレーしてチームに貢献したいと思っています」

釜石シーウェイブスRFC
阿部竜二選手

──地元・岩手での試合を振り返って。

「いつも以上に意気込んで臨んだ試合でしたが、もう少し自分からボールをもらえるように走ることが必要だったと思います。ウイングですが、外でも内でもボールを持ち、自分の運動量を増やしてもっとチームに貢献できるように頑張りたいと思います」

釜石シーウェイブスRFC
中村良真選手

──ワールドクラスの選手もいる相手との対戦で感じたことは?

「コンタクトレベルの部分をもっと上げないといけないことと、セットピースや一人ひとりのディフェンスについては違いがあるので精度を上げなければいけないと思いました」

──昨季から増えているフルバック起用について。

「これまであまり公式戦ではやったことがないポジションですが、特に関係なく、キックの部分などの自分の持ち味を出せればいいと思っていて、自信にはなっています。チームのために頑張っていきたいです」

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートの上田泰平ヘッドコーチ(左)、古田 凌キャプテン

三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ

「メリークリスマス! 雪など、いろいろなことが心配される中、関係者の皆さんには、さまざまなことに気を配りながら会場設営をしていただいて、ストレスなくプレーができたことに感謝しています。並びに寒い中、サポーターの方々が見に来てくださったおかげで選手たちもいつも以上の力を出すことができたと思います。

試合に関しては、前節、勝ち切れなかったところがありましたが、それを含めてうちでいう“ヒート”という、ゲームに出られないメンバーたちがしっかりと練習の強度を上げていこうと、今回選ばれた23人のメンバーに対してすごくいいプレッシャーを掛けた練習をしてくれたおかげで今日のような結果が出せたと思っています。チームを支えてくれている“ヒート”というプレーヤーにこの場を借りて感謝を伝えたいし、それをまとめたリーダー陣も素晴らしい仕事をしてくれたと思っています。

試合中は、釜石シーウェイブスRFCさんの勢いが出た時間帯もあり、自分たち一人ひとりが一瞬受けに回ってしまうなど、80分間をとおして改善するべきところが見つかったのはすごくポジティブなことだと思います。

最終的にはいいトライがたくさん取れた試合でしたが、ちょっとした気の緩みをグラウンドの中で絶対に作らせない雰囲気をもう一度作り直して、今後の成長につなげていければと思います。

また、釜石シーウェイブスRFCの南篤志選手、50キャップおめでとうございます」

──前半からスクラム、ラインアウトで優位に立てたことについて。

「ウチの田中貴士と伊藤鐘史というコーチ陣が計画を立てて実行してくれた結果が出たのではと思います」

─―試合を通じていいペースで進められたが、課題を挙げるとすると?

「前にすごくリズム良く行くことができていたが、少しの瞬間、気の緩みがあって、サポートプレーというのがうまく組み立てられなかったと思います。後半はしっかりと正しいプレー、正しいサポートの役割を心がけてやると修正をしていましたが、それでも後半の最初はなかなか前に出られずに苦労した部分があったので、もう一度ビデオを見ながらどういうふうにサポートをしていけばより前に出られるか、もう一度チームとしてやっていけるように頑張りたいと思います」

──釜石シーウェイブスRFCに対し警戒していた点、攻略できたポイントについて。

「セットピースの部分です。田中貴士コーチと伊藤鐘史コーチ、二人の怖いコーチ陣がしっかりとウチのフォワードをコーチングできた結果だと思っています。あとはバックスがしっかり前に、スペースに対してアタックできたのが、うちのショーン・トレビー コーチのコーチングが実を結んだと思っています。今回、多くのトライを奪えましたが、このような状況は今後、ずっと続いていくものでもないと思っているので、ここからもう1回再現できそうなものをコーチ陣と話し合って、どうすれば自分たちが良くなるかしっかり話していこうと思っています」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「今回のテーマは“win”ということで、スクラムでもラインアウトでも、一つのバトルに“勝つ”というのをテーマに準備し、そこがうまくできて良かったと思います。後半、少し我慢の時間帯や、正しい判断ができなかった部分があったのでそこはもう一度振り返り、チームとしていい準備ができればと思っています。

ただ、しっかり勝ち切れたことはすごくうれしく思いますし、次につなげていきたいと思います」

―─対戦した釜石シーウェイブスRFCの印象は?

「後半、勢いをもっていかれたシーンがありました。アタックがすごく良くて、ワンプレーワンプレーが良かったと思います。そこで僕たちがどれだけ正しい判断をして、勢いを自分たちにもっていけるかが後半の課題だと思うので修正していきたいです」

──開幕から1勝1敗。今後の意気込みを。

「激しい試合が続くと思いますが、1試合1試合確実に勝利していきたいと思っていますし、最終的にディビジョン1に昇格したいと思っています」

三重ホンダヒート
トム・バンクス選手

──今季、自身初トライについて。

「チームのパフォーマンスが良かった結果です。今季ファーストトライが取れたのでそれに関してはうれしいです」

──チームとして中心的な存在。今後担っていきたい役割は?

「とにかくチームに対していいものを供給できたらいいと思っていて、それは自分自身がいかにプレーに絡めるかにかかっていると思います。特にゲームマネジメントやゲームコントロールのところをしっかり発揮することができれば、チームをいいポジションに導くことができると思います」

三重ホンダヒート
李承爀選手

──この試合で得た収穫は?

「前節、負けてしまいました。そこからすごく準備をして、接点でもセットピースでも“勝つ”という気持ちで圧倒できたところが良かったと思います。相手も体が大きいですが、自分たちもラインアウト、スクラムは自信をもってやっているので、そこはすごく大事だと思って挑みました」

──自身の2トライについて。

「フォワードとしてしっかりプレッシャーを掛けられたので、運良く自分がトライを決められただけです。フォワードとしてモールでトライできたのはいい自信につながると思います」

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