2022.12.25NTTリーグワン2022-23 D1 第2節レポート(神戸S 58-36 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスB
2022年12月24日(土) 13:00 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 58-36 花園近鉄ライナーズ

衝撃のナニ・ラウマペ、“弾丸ランナー”のハットトリック

コベルコ神戸スティーラーズ、ナニ・ラウマペ選手

コベルコ神戸スティーラーズが12月24日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で花園近鉄ライナーズを迎え撃った。互いに譲れない“関西ダービー”にふさわしい得点を奪い合う白熱した攻防に突入したが、ホストチームは後半に連続トライを挙げて突き放す。コベルコ神戸スティーラーズでの公式戦通算100試合出場だった山中亮平の記念試合に華を添えるように今季初勝利を飾った。

赤の弾丸が、敵陣を蹂躙したのは前半13分のことだ。

相手ゴールラインのすぐ手前、スクラムから中嶋大希のパスに反応した元ニュージーランド代表、ナニ・ラウマペ。まるで地球を蹴り飛ばすようなパワフルな豪脚で加速すると、その屈強なフィジカルは相手タックルをものともしない。そのまま日本での自身初トライにつなげた。

「チームメートのため、チームのために結果を出したかったので特別なものになりました。トライはチームメートがいなかったら起こりえなかったこと。すべての人に感謝しています」

その破壊的な突進力につけられた異名は“弾丸ランナー”。今季のリーグワンに新たに参戦した大物プレーヤーの一人だ。開幕戦も随所に能力の高さは見せたものの、不完全燃焼を否めなかった中で迎えたホスト開幕戦。そのスキルが開放のときを迎えた。

初トライから3分後、ナニ・ラウマペは的確なサポートのランで二つ目のトライを挙げる。後半6分にも松永貫汰の突破を追走し、中嶋大希を経由してボールを受けるとフェイントを入れてハットトリックを達成した。迫力の突進と同時に、欠かさなかった味方への援護射撃。司令塔として躍動した日本代表・李承信は「隣でプレーしていてもうまくコミュニケーションをとってくれるので本当に助かっています」と12番を称賛する。

開幕2試合をこなした赤のトライゲッターは、「すごく日本のラグビーは好き。自分のプレースタイルに合っているアタッキングラグビーを日本はやっている」と、その土俵にフィーリングの良さを感じ取り、「このコベルコ神戸スティーラーズというチームが好きですし、チームメートもすごく好き。ここから先、もっともっと上達してチームに貢献できたらと思います」と野心的に語る。リーグタイトル奪還を目指すチームを持ち前の推進力で引っ張っていくことになりそうだ。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのニコラス・ホルテン ヘッドコーチ(左)、橋本皓キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ

「最初に、先週のパフォーマンスについてファンの方々に、今日はホストゲーム最初のゲームでもありますので、謝りたいと思います。本来のコベルコ神戸スティーラーズらしいパフォーマンスではなかったと思います。今日のパフォーマンスも本来の姿を出せたかというとそうではなかったと思うので、いくつかの部分は自分たちで納得するわけにはいかないと思っています。

ただ、今日の試合を勝利で終えられたことは、山中(亮平)選手のコベルコ神戸スティーラーズでの公式戦が100試合出場だったということもあって、その試合をしっかり勝利で終えることができたのは本当に良かった。

試合の中でのポジティブな部分は、しっかりと得点を重ねることができたことだと思います。ただ、ラストパスの部分や、もう少しボールキープのところで、自分たちの精度が高ければあと20点は取れたと思うので完璧ではないですが、これだけ点を取れたことはポジティブなことだと思います。

シーズンの順位争いを考えるときに、絶対にここで勝点5を取れるか取れないか、は大きい部分だったので、それを取って終わることができて良かった。先ほどチームとのミーティングもしましたが、チームには自分たちがいま最高の状態である必要はないけれど、自分たちが求めている最高の状態にもっていくのはシーズン中盤、ただ、必ず1歩1歩成長していくことを忘れずにやっていこうという話をしました」

──「コベルコ神戸スティーラーズらしくできなかった」とおっしゃっていた点について教えてください。

「キックカウンターや、ターンオーバーからのトライ、そういう状況でトライを仕留め切っていくのは神戸ラグビーの良さの一つだと思っています。自分たちは、プレースタイルもあってどうしてもミスが起きる回数がほかのチームと比べて多いと思います。ミスは必ず起きると分かっているからこそ、ターンオーバーを与えてしまったときに、自分たちの切り替えのスピードや、そこのディフェンスの精度はもっと高くないといけない。そこの部分の精度が上がれば、先ほど言った、自分たちが本来もっと取れるべきだった20点が取れてくると思います。先ほどの『20点は取れた』というのは、自分たちのアタックの部分が良かったから取れたというよりも、ディフェンスの精度が高ければその20点差をさらに作れたということです」

──36点を取られたディフェンス面の評価について。

「正直、いいとは言えないです。今季を含めて、昨季を考えたときも、ディフェンスはこの24カ月ほどうまくいっていない部分の一つだと思っています。神戸のディフェンスを考えたときに、神戸のアタックとディフェンスは必ず連動してくるものなので、それがうまく連動し切れていません。ディフェンスとアタックが別々になってしまっているところがあるので、そこは必ず成長していかないといけません」

──今節は開幕戦と同じメンバーでしたが、チームとして一貫性をもたせようという考えだったのでしょうか?

「言われている通り、一貫性の部分が大事だと思って今回、同じメンバーを選びました。新しいメンバーが多いからこそ、シーズン前の記者会見でも話をしましたが、コネクションの部分の精度をどんどん上げていかないといけない。そこの部分が必要だったからこそ、一貫性をもってメンバーを選びました。先週と同じメンバーを使ったことによって、パフォーマンスの部分で良くなったことがいくつか見えたかなと思います」

──ナニ・ラウマペ選手のチームへの貢献をどのように評価していますか?

「ナニに関しては、まだ慣れていっている途中だと思っています。コベルコ神戸スティーラーズのラグビー、日本のラグビーにも慣れていっている途中だと思っていて、いまがピークかと言えばまったくピークではないと思っています。今日、ナニが見せられる部分の一部が垣間見られたと思います。ナニに求めていることは、その良い部分を常に出せる状態にもっていってもらえるか、そこの部分をこれから求めていきたいです」

──ナニ・ラウマペ選手について、これからもっと見せてくれそうなポテンシャルはどのあたりでしょうか?

「求めている部分、これからもっと見せてほしい部分に関しては、前への推進力や、それを例えば10分に1回とかそういうのではなくて、どれだけ常にボールに絡むときにそれを出せるか。あとは、ナニがボールに絡むプレーをどれだけ多く作れるか。そこが重要になると思います。それができるようになれば、さらに良いパフォーマンスがたくさん出てくると思います」

──山中亮平選手のキックについて。チームがリスクを冒しても攻撃的に行けるのは、後ろで山中選手が伸びのあるキックを蹴れることが安心感をもたらしているからなのでしょうか?

「もちろん、あれだけ長いキックを蹴ることができるので、チームを前に押し出してくれていると思います。山中選手が後ろにいることで、相手がカウンターアタックするところで、ランをしてくるのかキックをしてくるのか、どちらをするのか分かりにくい状況にもっていけていると思います。なので、余計、自分たちが相手のキックから今日はトライを取れたと思いますが、そこの部分でキックもカバーしないといけないし、ランもカバーしないといけない状況にもっていけていると思います。山中選手がいることで、チームに安心感があることは間違いないと思っています。日本代表のフルバックですし、役割を高いレベルで遂行してくれるので、彼がいることで自分たちがより良い仕掛けができると思っています」

コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓キャプテン

「得点に関してはすごくコベルコ神戸スティーラーズらしい部分もありました。ただ、ディフェンスの部分に関しては課題が残っています。これからの戦いを考えた中で、そこをしっかり修正しなければいけないことを痛感しています」

──前後半のスコア数は同じでしたが、相手の出方に対して調整したことなど、前後半で変わったことがあれば教えてください。

「今日は自分たちにずっとフォーカスを当てていました。自分たちのやるべきラグビーをしっかり80分、遂行することをグラウンドでは言い続けています。なので、前半、後半で特に変えた部分はないです」

──ディフェンスの課題について。これからチャンピオンを目指していく上で、具体的にここをもっと修正しないといけないことがあれば教えてください。

「連係の部分や、タックルの局面の部分ですね。タックルに入る瞬間も、入るまでも全部を含めて連係を高めていく必要があると思います」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの水間良武ヘッドコーチ(右)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ

「本日はありがとうございました。最初に先制パンチをかまして、そこからノッていきたかったんですが、反則を減らしたけどもやっぱり不用意な反則で攻められてトライを取られてしまいました。トライを取ったけれど、その後のキックオフレシーブで相手に取り返されるというようなこともありました。ただ、しっかりとつながりを保ち続けて最後まで戦いました。後半も最初にスコアして、最後もスコアして、チームとしてやっぱり、攻撃、攻めることが自分たちの強みで、それをしっかりと見せられました。ただ、”殴り合い”のところで、簡単に殴られてやられることがあった。そこは私の責任の部分なので、これからさらに自分たちの強みを生かせるようにそこを改善していきたいと思います」

──バックスでひらめきのあるプレーが見られました。「花園近鉄ライナーズらしい」攻撃を見せてもらいましたが、どう評価していますか?

「普通ですね、それくらいやるのは当たり前なので。いまのそういった評価はうれしくて、『花園近鉄ライナーズらしい』アタック……、やっぱりライナーズはアタックのチームだと皆さん認識されているところで、それはすごくうれしいことですね」

──ジャクソン・ガーデンバショップ選手のチームへのフィット具合は?

「だいぶフィットしてきましたね。ただ彼を助けるバックスの選手がもうちょっと欲しいですね。そうすればチームのアタックももっと機能するので」

──リザーブの選手で今日、評価できる選手を教えてください。
「……考える、ということは思いつかない(笑)。ただ、人羅(奎太郎)はね、ウィル(・ゲニア)に代わって、テンポを上げるところ、テンポをコントロールするところをしっかりやっていましたね。正確なパスも多くてチャンスを作っていたので、人羅は評価に値しますね。サムはまだまだですね、サム・ケアード、これからですね」

──シオサイア・フィフィタ選手の欠場理由および復帰見込みを教えてください。

「インフルエンザです。先週から『もう行けます』と言っていましたけど、残念ながらそれはできないので、次は出るんじゃないですかね。楽しみにしておきたいですけど、体調のことはしっかり管理しないと」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「本日はありがとうございます。チーム力で負けたというよりも、インディビジュアル(個の力)、僕も含めて『トップ4を狙います』と言ったんですけど、そこのレベルに本当にいたのか、いなかったのかというところが大きいんじゃないかと思います。そこが合わさってのチーム力だと思っているので。そこのチーム力の部分は僕、キャプテンであるとか、ヘッドコーチであるとかが強化していける部分ですが、やはりインディビジュアルというのはチームで多くの時間を取れるわけではないので、帰ってテレビを見るのか、トップ4になるためにグラウンドに残るのか、そういうところ。日々の習慣のところをもう一度、見つめ直さないといけないということを学べた試合だったんじゃないかと思っています」

──ディフェンスではコベルコ神戸スティーラーズが大外にもってきたときだったり、オフロードをつながれたときだったり、対応し切れなかった部分も見られましたが、どのように修正していきたいと思いますか?

「まずディフェンスとタックルを分けて考えないといけないですね。システムのところで言うと、相手のナインシェイプのところに人数を掛け過ぎていました。切り取ってみれば枚数的に余られていたというよりは、枚数はいたんですけど、相手が3人のところにこっちが5人立っていて、結局、外側の広いスペースで強い選手と1対1のところのタックルで負けていました。インサイドのところでしっかりと幅をもつところと、例えその状況だとしても1on1なので止め切れなきゃいけない。この二つが大きな課題かなと思っています」

──関西ダービー。野中選手もずっと関西でプレーし、ファンの方も多く来られていたと思うが、盛り上がりなどどのように感じましたか?

「ずっと関西でラグビーをやっていて、大学くらいから関東が有力、というような構図が出来上がっていると思うんですけど、そこをなんとか関西勢でひっくり返したいという気持ちはありました。ただ、この試合に関しては、特に『関西ダービーがどうこう』ということは考えていなくて、自分たちのやるべきことに集中してやっていました。アウェイでコベルコ神戸スティーラーズさんの高いものが目立つ中で、その雰囲気をひっくり返してやろうと思っていたんですけど、今回、負けてしまいました。また次回、ホームで勝てるように努力を続けていきたいと思います」

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