2024.03.25NTTリーグワン2023-24 D1 第11節レポート(神戸S 60-17 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第11節
2024年3月24日(日)14:30 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 60-17 花園近鉄ライナーズ

小さな巨人に宿る推進力。フルタイム出場継続中の松永貫汰が、チームを加速させる

身長は167cm。体格差を感じさせないプレーで今季は全試合に出場し続けているコベルコ神戸スティーラーズの松永貫汰選手

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は24日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)との関西ダービーに臨んだ。前半は拮抗した展開となるが、後半一気にスコアを広げる。最終的に計8トライを挙げる猛攻を披露し、60対17の快勝。プレーオフトーナメント出場圏内の4位を維持し、3位との勝ち点差を縮めた。

前半12分、相手ディフェンスラインの間隙を縫い、松永貫汰が抜け出した。鋭いランでボールを運び、キックを使ってなお前進を図る。相手に拾われるとすかさずタックルで倒し、パスが出ると即座に立ち上がってチャージした。スタンドを大きく沸かせた背番号11の連続プレー。魅了したガッツと推進力は、後半の二つのトライに結実した。

「キックパスを呼んだ」という後半9分のトライ、「かっこいいトライではなかった」としながらも難しいボールをインゴールにトライした同31分。いずれもチームに勢いをもたらす価値ある得点だ。「シーズンをとおしていい準備ができている。このままコンディションを維持してゲームに挑んでいきたい」。24歳はこの日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。

大阪市東住吉区出身。中学1年時からラグビーを始め、同区内にある長居公園のスタジアムでNTTドコモレッドハリケーンズ(現・レッドハリケーンズ大阪)や近鉄ライナーズ(現・花園L)の試合観戦に勤しんだ。大阪産業大学付属高校を経て筑波大学へ進学し、「神戸Sに一番に声を掛けていただいたのもあるし、自分の意思としても強いチームでチャレンジしたかった」と神戸S加入を決断した。

167cmと小柄だが、「フィールドに立てば、大きい選手も小さい選手も関係なくやるべきことをやらないといけない」と受け止め、屈強なプレーヤーたちと堂々と渡り合う。ここまでリーグ戦全試合に先発しフルタイム出場中。ハツラツとした姿勢で神戸Sでの3シーズン目に挑戦中だ。

次節からは3位・東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)、2位・東芝ブレイブルーパス東京と上位勢との直接対決が待つ。

「絶対に勝たないといけない気持ちをもって挑んでいきたい。昨日(23日)、東京SGが負けて、横浜キヤノンイーグルスも上がってくると思います。自分たちはボーナスポイントも取っていかないといけない。優勝に向けてプレーオフ(トーナメント進出)を逃さないように頑張っていきたい」

2月上旬には『男子15人制トレーニングスコッド福岡合宿』に初招集された、伸び盛りの小さな巨人。チームメートと数多の障壁を乗り越えるべく、持ち前の推進力をなお加速させていく。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「今日の試合のフィニッシュの仕方に関してはハッピーです。ただ、ハーフタイムではすごく怒っていました。前半の精度について、ですね。精度の部分があまりにもヒドかったためになにひとつプレッシャーを掛けられなかった。そこに関してはとても腹を立てています。後半はそこの部分に関して選手がいいリアクションを取ってくれて、丁寧に仕留め切ることができたと思います。自分たちがしっかりと相手にプレッシャーを掛けて得点に変えることが後半はできました。セットピースから取られたトライのところ以外に関しては、ディフェンスも全体的にいい形でできたと思うので、そこも良かったと思います」

──日和佐篤選手が入ってからとてもテンポが良くなった印象です。彼のパフォーマンスについてお願いします。

「シーズンをとおして日和佐選手は素晴らしいパフォーマンスを出してくれています。今シーズンであれば開幕節から5節くらいまでベンチからの途中出場になりましたが、そのときも今日と同じパフォーマンスを出してくれていました。ここ数試合に関しては先発の試合も続いていたので、ゲーム体力のコントロールも含めて今回は中嶋大希に先発してもらって、日和佐をベンチでという考えで臨みました。その上で、今日に関しても途中から出て素晴らしいパフォーマンスを出してくれたと思います」

──プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された松永貫汰選手の最も評価しているところを教えてください。

「今日の試合も素晴らしかったですし、今シーズンをとおして素晴らしいパフォーマンスを出してくれています。まず、いいところの一つとして、働く姿勢、ワークレートの高さがあると思います。すごく速い選手というわけではないと思いますけど、いいフットワークを持っていますし、近い場所でのクイックな動きができる選手です。今日は彼の強みを生かして2トライしてくれましたが、先週の試合ではディフェンスでも素晴らしい貢献をしてくれています。いいパフォーマンスでチームを支えてくれている選手だと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
プロディ・レタリック共同キャプテン

「(デイブ・レニー)ヘッドコーチが言ったように、前半に関しては精度の部分で良くなかったと思います。それでも、なんとかやれている部分はありましたが、ミスから相手につけ込まれるところもあったと思います。ただ、自分たちがしっかりと正しい形で前を向いてプレーをしていれば、相手に対してプレッシャーを掛けてそこからチャンスを作れていたので、後半は、それをしっかりと継続することができたと思います。求めている80分のパフォーマンスだったかと言えば正直、そうではなかったのですが、勝ち点5を取ることができました。来週、しっかりとリフレッシュして次の東京サントリーサンゴリアス戦に向けて準備していきたいと思います」

──前半にミスが多かった原因はどういうところにあるのでしょうか?

「正直、パッと答えは出ませんが、自分たちのコールは掛けていましたが、そのコールの中で、する動きを間違っている選手や自分たちの中で違うページに立っている選手が多かったからです。なので、そこの部分でしっかりとコミュニケーションを取って、自分の役割はなんなのかをクリアにする、そこを修正するだけだと思っています」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「ありがとうございました。必勝を期して向かったのですが、前半は非常にディフェンスも機能して、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)さんもかなりミスがあり、競ったゲームになっていました。ただ、後半は22mの内側に入ったときの圧力では、神戸Sさんの強みを非常に出されてトライを奪われてしまった。相手のミスにつけ込んで前半から私たちのターンオーバーでトライを奪うという反応が少し遅かったかなと。できたところとできなかったところをまた修正して、少し(試合間隔が)空きますので、ディフェンスは非常にできるようになりつつありますし、アタック面でももう少し整備して次のゲームに向かっていきたいと思っています」

──竹田祐将選手が早々に交代した理由を教えてください。

「けがです。彼が早々にけがをしたというのも、司令塔なので非常に痛かったと思います。そこはすぐに対応してメンバーを入れ替えて、いま、私たちのチームの軸であるトム(・ヘンドリクソン)も代えないといけなかった。それでキャプテンも含めてチームにはプレッシャーが掛かったかなと思います」

──竹田選手の次節以降の見通しはどうですか?

「そこはまた、違うメンバーもいますし、彼が治ってくるかもしれませんし、いまの状況はどうなっているのかまだ分からないですね」

──竹田選手と(クウェイド・)クーパー選手の交替について、トム・ヘンドリクソン選手を代えざるを得なかったのはカテゴリー枠の関係ですか?

「そうですね。(カテゴリーBとCの選手は合わせて)4人しか出られないので、その組み合わせをいろいろと試しているところもあり、それについては私のほうで代えたというところです」

──たとえば、吉本匠選手を10番で使うなどの想定もありましたか?

「それもあると思いますけど、トム(・ヘンドリクソン)を外した場合にどうなるのかとか、今日は、クウェイド(・クーパー)とウィル(・ゲニア)の組み合わせで動かしていくとどうなるのか。あと、外側のプレーヤーがどれくらい機能するかというところで代えましたが、少しディフェンス面についてはキツかったかなと思っています」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「連敗中で、自分たちが積み上げてきたものを出し切ろうと、スタートから出し切ろうとチームで臨んだ試合でした。前半の入り、後半の入り、ともに自分の中では良かったのではないかと思っています。ただ、神戸Sさんすごく縦にボールを動かすのがうまくて、そのときの自分たちのリアクションが遅く、縦に一度ボールをつながれてしまうと、下がってしまい、そのあとにノットロールアウェイなど簡単なペナルティをしてしまって、自陣深くに入りこまれてスコアを取られるような流れが、特に後半の中盤以降、多く見られたかなと。神戸Sさんが相手でなくても自分たちは少し点差が開いてくると、あきらめているつもりはないですけど、自分たちが積み上げてきているものが崩れる瞬間があり、そこを80分、一貫してできるようにすることが今後の課題かなと思っております。本日はありがとうございました」


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