2023.01.08NTTリーグワン2022-23 D1 第3節レポート(埼玉WK 40-5 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第3節 カンファレンスA
2023年1月7日(土) 12:00 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 40-5 三菱重工相模原ダイナボアーズ

首位攻防戦でポイントとなった、二人の代表戦士による“二つのキック”

巧みなキックも魅力、埼玉パナソニックワイルドナイツの山沢拓也選手

2位・埼玉パナソニックワイルドナイツと1位・三菱重工相模原ダイナボアーズの上位対決。開幕2連勝同士の首位攻防戦は、埼玉パナソニックワイルドナイツが6トライの猛攻を見せて40対5で勝利、開幕3連勝で首位に立った。

今季初先発の山沢拓也、ルード・デヤハーが魅せた“二つのキック”が、ゲームの主導権を一気にたぐり寄せた。

一つ目のキックは前半28分だった。モールから出たボールを中央で受けた山沢は、一瞬の判断でミドルパントを選択する。左サイドの大外を走るダミアン・デアレンデにピンポイントで合わせる絶妙なキックだ。長ければタッチを割り、短ければ相手にカットされてしまう状況下、まさにそこしかないという正確無比な軌道となった。ダミアン・デアレンデからの折り返しを受けた大西樹が、リードを広げるトライを奪ってみせた。

山沢は「(後ろから)キックのコールがあったので、蹴ろうと判断した。サイドのスペースを見たときに手前に相手ディフェンダーがいるのが分かったので、競り合えるような場所に入れて、そのコンテスト(競合い)ボールで取れればチャンスにつながると考えていた。結果(トライ)につながったので良かったと思う」と振り返った。トライを決めた大西は「山沢選手はキックがうまいので、来ると信じていた。良いところに蹴ってくれたことがトライにつながった」と高精度キックを評した。

2本目のキックは、ルード・デヤハーの一瞬の判断から生まれた。前半33分、右のタッチライン際で相手と1対1になった206cmの南アフリカ代表プレーヤーは、ジャッカルからのカウンターを避けるため、咄嗟に相手の背後へグラバーキック(転がすキック)を繰り出した。大型プレーヤーの巧みなキックに、スタンドからも感嘆の声が上がった。

ルード・デヤハーは、自身本来のプレーではないグラバーキックに照れながらも「直感で背後にスペースが見えたのでチャレンジしてみた」と説明した。

敵陣深くに転がったグラバーキックは結果的に相手ラインアウトとなったが、そのラインアウトを埼玉パナソニックワイルドナイツが奪い取って、再び大西がトライを決めた。「ジャック(・コーネルセン)がラインアウトを叩いてくれて、福井(翔大)選手や(大西)樹選手がつないでくれた。一つの仕事を終えたら、また次の仕事を探すというプレーからトライが生まれたと思う」(ルード・デヤハー)。

日本代表の山沢、南アフリカ代表のルード・デヤハーの2本のキックが大きなモメンタム(勢い)を生み出し、チームに勝利を導いた。埼玉パナソニックワイルドナイツは、勝利を積み上げるたびに強く、たくましくなっていく。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツの右から、ロビー・ディーンズ監督、ルード・デヤハー選手、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「まずはルード・デヤハー選手のデビューを祝福したいと思います。大けがからの復帰でしたが、良いコンディションでゲームに臨んでいました。トレーニングからチームを盛り上げてくれていて存在感を発揮しており、本日の試合で準備してきたことを実行してくれました。

試合前の記者会見でもお伝えしたようにセットピースがカギになると考えていましたが、セットピースで相手に良いプレッシャーを与えることができたと思います。過去2試合は、逆にプレッシャーを掛けられてしまいましたが、今日は相手にプレッシャーを掛けて良いラグビーができたことをうれしく思います。

レッドカードについて、皆さんが気になっていると思いますので、先にお話しさせていただきます。コーチ陣を含めて自分たちにとって安全性が大切だと思っています。試合後、相手選手、レフリーには謝罪をさせてもらっています。彼(ダミアン・デアレンデ)自身、危ないプレーをする選手ではないですが、いろいろなプロセスがあり、このような結果になりました。今日、あらためて映像を見ての確認になると思いますが、公平に審査してほしいと思います。その判断が出てから自分たちの学びにしたいと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「新年のスタートのゲームで良いゲームができて良かったと思います。自分たちのやりたいことが少しずつですができてきていて、コンビネーションも上がってきています。そこに関しては、手ごたえを感じました。試合の中では、相手を上回ろうとゲームに臨みました。どのプレーでも相手を上回って、ゲームをコントロールできるようにしました。ペナルティ自体がまだ少しありましたが、改善されていると思いますし、スクラム、ラインアウトのセットプレーからのスタートもよくできてきました。それらの点でもワイルドナイツのラグビーが良くなっていると感じました。ただ、パスミスもあったので次の試合へ向けて成長していきたいと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ルード・デヤハー選手

「最初に、埼玉パナソニックワイルドナイツの選手としてデビューできたことをとてもうれしく思います。入団した瞬間からチームメートや関係者が温かく受け入れてくれましたし、そこからも、なぜ埼玉パナソニックワイルドナイツが成功しているかということが理解できました。

ゲームについては、とても楽しめたと感じています。試合を振り返ると、立ち上がりから良いスタートが切れたと思います。ミスはありましたが、ミスしたあともみんなが次の仕事を探して、実行していきました。セットピースに関しては、プレッシャーを掛けられましたし、ダイレクトプレーを心がけていました。全体的に良いパフォーマンスができたと思っていますが、満足せず、さらに成長していかなければいけないですし、成長していきたいと思っています」

埼玉パナソニックワイルドナイツの山沢拓也選手(左)、大西樹選手

埼玉パナソニックワイルドナイツ
山沢拓也選手

「結果として今季、初先発の試合を勝って終われたということは良かったと思っています。個人としては戦うエリアを意識した中で、なかなかエリアを取り切れなかったり、質が良くなかったり、ペナルティがあったりしてプレッシャーを受けてしまうことはあったのですが、そこでトライを奪われることなく守り切れました。やっていく中で、自分たちがうまく修正しながら戦えたのは良かったところかなと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
大西樹選手

「最初にちょっとバタバタしていたのですが、自分たちがやるべきことをシンプルにやっていこうということで、良い感じでラグビーができて、それが結果につながったと思います。個人としては、新年のスタートがうまく切れたことで、トライにつながったと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「毎日が学びの日ですが、今日もすごく学びが多かったと思います。自分たちから、相手に対してチャンスを与えてしまえば、それを生かしてくるのは分かっていました。自分たちがコントロールできるところでミスをして、チームとしてやりたいことが遂行できませんでした。相手にチャンスを与えてしまい、それを決め切られてしまいました。自分たちが準備してきたことができないとやられてしまいます。このリーグでトップのレベルも分かりましたし、その意味でも、良い学びになりました」

──どんなゲームプランだったのか? うまくいかなかった点は?

「うまくいかなかったのはセットピースです。そこが安定しないと自分たちのやろうとする戦いができなくなる、自分たちがやりたいことができないぶん、深いところからのプレーになってしまいました。前半は自分たちのチャンスになるべきところで、相手にボールを渡してしまっていました。後半は、やりたいことができ始めて安定してきて、トライを奪うことができました。ただ、前半に自分たちから相手にチャンスを渡してしまったことが反省点になります」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「結果は非常に残念ですが、強い相手に対して自分たちのラグビーを遂行できませんでした。そこが反省点でもありますし、今回は良い学びになりました。この結果を悲観し過ぎることなく、前を向いてトレーニングをしていきたいと思います」

──後半の改善点は?

「バックスのところで、埼玉パナソニックワイルドナイツさんが自陣からキックでくると思っていたので、自分たちもキックバックで押し返していこうとしました。後半は、うまくいった部分もありましたが、自分たちのペナルティから押し返されてしまって失点してしまいました。全体の規律の部分は改善していかなければいけないと思います」

──連勝が止まりましたが今後も勝ち続けるために必要なことは?

「戦術のところもありますが、まずは一人ひとりが自分の与えられた仕事を遂行すること。15人全員でそれができれば結果がつかめると考えています」

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