2024.04.07NTTリーグワン2023-24 D1 第12節レポート(埼玉WK 53-12 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第12節 カンファレンスB
2024年4月6日(土)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ vs 三菱重工相模原ダイナボアーズ

完全復調の「サイクロン」。
王座奪還へ埼玉WKは勇往邁進を続ける

埼玉パナソニックワイルドナイツのマリカ・コロインベテ選手。「今季は80分フルで出場する試合が少なかったがコンディションは上がっている」

埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)がジャパンラグビー リーグワン第12節のホストゲームで三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦し、53対12で勝利した。

埼玉WKの“サイクロン”が2トライを奪って勝利に貢献した。

トップギアに入れば誰も止められない。7対0で迎えた前半13分、マリカ・コロインベテがディラン・ライリーからのパスを受けると一気にスピードを上げてゴールラインを越えた。埼玉WKはその後にシンビン(イエローカードによる10分間の退場)が出た影響で一時14対12まで迫られたが、前半29分にラクラン・ボーシェーのインターセプトを起点に最後はマリカ・コロインベテがトライを奪って相手を突き放した。

「2本ともにサイドでボールを受けてトライまで持っていくことができた。フォワード陣が中央でパワーを見せてくれているので、サイドが空いてくる。自分だけのトライではなくてチームで奪ったトライ。今季は80分フルで出場する試合が少なかったがコンディションは上がっているし、ゲームで自分のベストを尽くすことができました」

スピードとパワーを兼ね備えたワールドクラスのウイングは、弾丸のようなアタックで敵陣へ切り込み、ディフェンスラインを破壊していく。ライン際でパスを待ち、相手の対応によって、内と外を使い分けながら陣地を奪っていく。本人は「昔と比較してスピードは落ちているよ」と冗談っぽく笑うが、その突破力は際立っている。

昨季のプレーオフトーナメント準決勝でも圧倒的な存在感を見せてトライを奪うと、相手の激しいマークを受ける中でライン際のコンクリートフェンスに激突するシーンもあった。ロビー・ディーンズ監督には「マリカ(・コロインベテ)を止められるのはコンクリートだけだ」と言わしめた。そして、今回の試合後には「マリカ(・コロインベテ)のコンディションが上がっているのはチームにとって好材料です。プレーオフトーナメントのことはまだ考えていないが、チームの競争が激しい中で選択肢が増えたのはプラスになります」と語った。

埼玉WKは開幕から無傷の12連勝。プレーオフトーナメント進出も決まった。マリカ・コロインベテは「プレーオフトーナメントはまだ先のこと。いまは一戦一戦、目の前の試合に向けて最善のトレーニングを重ねて準備していくことが大切。チームのためにプレーするだけ」と言葉に力を込める。

マリカ・コロインベテの完全復調は埼玉WKにとって最高の武器であると同時に、相手にとっては脅威となる。埼玉WKの“サイクロン”が、王座奪還へのルートを切り拓いていく。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「素晴らしいラグビー日和でした。三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)さんはとても良いチームです。シーズンを通じて相模原DBさんは進化していて、東京サントリーサンゴリアスさんとも良い試合をしました。相模原DBさんとのゲームは、ハードワークしないと勝てないと選手たちが考えていました。オフ明けで難しいのですが、選手たちがしっかりと戻ってきてくれたのでとても満足しています。福井翔大選手と野口竜司選手が復帰し、選手層が厚くなり、長田智希選手もミッドフィールドでしっかりとプレーできて良かったと思います」

──エリアを取るキックがなかった印象ですが、プランどおりでしょうか?

「決してそういうことではなくて、選手たちがモメンタムを出していって、ポジティブにプレーしてくれました。前回の相模原DBさんとの試合のときよりも自分たちがボールを持ってプレーしたと感じています。これを次へ生かしていきたいと思います。また、イエローカードが出たときは良い対応ができなかったのですが、そこは良い教訓にしていきたいと思っております。ディフェンスのところは、相模原DBさんを賞賛したいと思っています。前回のときはパスがつながってトライを取れたのですが今回は(相手が)うまくやってきたと感じました」

──マリカ・コロインベテ選手の調子が上がっているように見えましたが、いかがでしょうか?

「今日はマリカ(・コロインベテ)選手特有のプレーをしてくれました。彼のプレーが大好きですし、彼のプレーが良くなっていると感じています。ディフェンスでも脅威になっていて、相手のアタックの選手たちがどこから来るのかを予測できているところが見受けられました。非常に良い選手だと感じています。プレーオフトーナメントについては、ここからも1週間ごとに、違う相手と戦うのですが、誰が(試合のメンバーに)選ばれるか分からないので、マリカ(・コロインベテ)という選択肢があるのはチームとして大きいと思います。本日の試合に関しては、ミドルロー(ロック)の選手が80分間出場しましたが、(ルード・)デヤハーたちが帰ってきます。今後へ向けてチームとして選択していきますが、そういうところが自分たちの仕事だと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「いろいろな局面でプレッシャーを受けたりしたのですが、総じて良いラグビーができたシーンが多かったと思います。ゲームのスタートの部分でペナルティが続いたり、後半には敵陣にいながらもトライが取れないシーンもあったりしました。チャンスでしっかりと取り切ることをやっていかないと、この先、ゲームが接戦になったときに、足元をすくわれてしまうと、チーム全員が感じていると思います。基本の部分ができていれば、そこは解消できるので、またしっかりとやっていきたいと思います」

──戦列から離れていた選手たちが戻ってきてメンバーが入れ替わった。その中で準備してきたことはどういったことでしょうか?

「けがでリカバリーが必要になり、チームから離れる選手もいますし、戻ってくる選手もいるわけですが、常に埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)でのプレーを共有できていて、みんながいつプレーしても同じプレーができるのが、このチームの強さだと思います。今日は二人が戻ってきて良いパフォーマンスを見せてくれましたし、彼らがいない間にもほかの選手が良いプレーをしてくれました。みんなが良い刺激を与えてくれて、お互いに高めていけます。けが人が出て、流動的なメンバー編成でも、自分たちのやるべきことが分かっています。誰が出てもスタンダードのプレーができると思っています」

──山沢拓也選手がイエローカードをもらったあとはチームとしてどんなプレーを心がけましたか?

「山沢(拓也)選手にイエローカードが出てしまったので、後ろのリカバリーとディフェンスの幅が狭くなってしまいました。トライも取られてしまって難しい状態だったのですが、一人ひとりがプレッシャーを掛けるのは14人のときでも変わらないので、みんながつながり続けようと話していました」

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「タフな試合でした。53点も奪われたことは残念でしたが、前半は自分たちが練習してきたことを見せられましたし、良いプレー、良い戦いを見せることができたと思います。前回に埼玉WKと戦ったときよりもマインドセットは良かったと思いますが、改善しなければいけない点はまだ多いと思います」

──残り4試合どんなゲームを見せたいと考えていますか?

「残り4試合を楽しみにしています。毎週、自分たちが良い戦いをするところを見せたいと思います。前回の埼玉WKとの対戦ではハーフタイムで試合が決まっていましたが、今日はそうではなかった。そこは成長できた部分です。どんな相手でも自分たちの戦いを見せていきたい。そこはトヨタヴェルブリッツ、横浜キヤノンイーグルス、リコーブラックラムズ東京、花園近鉄ライナーズ戦で、パフォーマンスを上げて、勝てるゲームを見せていきたいと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「前回の埼玉WK戦の大敗から、この試合にどういったマインドセットで臨むのかということにフォーカスして準備してこのゲームへ臨みました。前半にトライを取られましたが、われわれが準備してきたことをしっかりとグラウンドで遂行できたと思います。ただ、個人的なエラーが多発してしまったので、そういったところは、一人ひとりが自分に矢印を向けて、どういうパフォーマンスを出せるかを考えながら、残り4試合で改善していきたいと思います」

──この試合に向けてどんな準備をしたのでしょうか?

「技術よりも、一人ひとりのマインドセットのところ、一つひとつのプレーにどう取り組むかが改善された部分です。前回は、一人ひとりが埼玉WKに勝つつもりでグラウンドに立ったかと言われたら正直そうではなかった。相手を大きく見過ぎて、勝つ気持ちで臨めていなかった面もあったと思います。ただ、今日に関しては、同じ絵を描いて埼玉WKを倒すつもりでゲームに臨めたと思います。そういったマインドセットが良かったと思います」

──前回の戦いと比較しての手ごたえはありますか?

「今日の試合に関しては、相手というよりも、自分たちのマインドセットを意識しました。アタッキングブレイクダウン、ディフェンスのブレイクダウンのところでは、相手に脅威を与えることができていたと思います」

──後半に難しくなった要因は何だったのでしょうか?

「ペナルティをしてしまってラインアウトを獲得できなかったり、個人的なタックルミスでチャンスを失ってしまったり、相手にチャンスを与えてしまったかなと思います」

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