NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第3節 カンファレンスA
2023年1月8日(日) 14:30 豊田スタジアム (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 25-29 リコーブラックラムズ東京
BR東京を勝利に導いたのは、復帰後初先発の松橋周平
最後まで息つく暇もないシーソーゲームは、ビジターのリコーブラックラムズ東京が今季初白星を挙げた。
序盤から得点の奪い合いとなった試合は、後半13分までトヨタヴェルブリッツが11点をリードしていた。しかし、リコーブラックラムズ東京は選手交代で流れを変えると、松橋周平とネタニ・ヴァカヤリアがトライを決めて29対25と逆転した。
後半40分には、トヨタヴェルブリッツがラインアウトモールから再逆転となるトライを決めたかに見えたが、TMOで何度も見直した結果、インゴールノックオンの判定となり得点は無効に。ビジターチームが何とか逃げ切った。
「最後はやっぱりディフェンス。あきらめずにファイトした結果、神様が振り向いてくれた。チームのDNAが出せた」と、胸を張ったのはリコーブラックラムズ東京の武井日向キャプテン。そして、そのあきらめない姿勢を体現し、チームに今季初勝利を引き寄せたのは、2016年から在籍する松橋だった。
松橋は、昨年3月の試合中に右膝の前十字靭帯を負傷して長期離脱を余儀なくされた。17年秋にも同じ箇所を負傷しており、復帰を不安視する声もあった。
ただ、当初の診断よりも早く開幕戦からベンチ入り。チームが2連敗を喫した中、23年の幕開けとなる試合でピーター・ヒューワット ヘッドコーチは「彼はプロフェッショナル。もう準備万端だと感じた」と松橋を先発に指名した。
まだ少し痛みがあるという松橋も「スタートから出てチームに勢いをもたせたかった。このタイミングで俺がやるしかないという思いでいた」と、チームの期待に応えてみせる。もともと日本代表にも名を連ねたことのある実力者。チームに勢いをつけるトライを決めただけではなく、得意のジャッカルを重要な局面で二度も決め、相手の攻撃を寸断した。
「僕らはもっとできるはず。これまでは自分たちのラグビーをしたいのに、なかなか出せないという弱いメンタリティーが正直あった。前節負けて、そこの部分をもう1回見直すことができたのが、今日の結果につながったと思う」(松橋)
「彼は泥臭い7番、自分たちもそれを求めている」と、ピーター・ヒューワット ヘッドコーチから高い信頼を得ている松橋。開幕から苦しんできた黒羊に、大きな戦力が戻ってきた。
(斎藤孝一)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ
「最終的にこういう結果だったので、本当に残念で仕方がないです。たくさんのチャンスを失いました。本来ならばやるべきところを最後までやり切れなかった。本当にパフォーマンスに関しては残念でした。いまはロッカールームも非常に静かな状態です。すごく痛い、もう心が痛いという感じです。とはいえ、自分たちがやろうと思ったところ、そこは試合の中でできたパートもありました。でも小さなピースがうまくいかずに、そこで勢いがつかなかったと思います。
リコーブラックラムズ東京さんですが、非常に良いプレーをしていました。自分たちの勢いをつかんで、最後まで持ち込めたところが良かったと思います」
──ラインアウトがうまくいかなかった要因はどのように考えていますか?
「特に序盤で、あまり自分たちが求めたラインアウトができなかった。マイボールラインアウトが取れないということは、もちろんそのあとには非常に難しい状況になります。映像を確認して自分たちができなかった細かいところ、そこをこの2日間で検証していきます。選手たちも、そこは一生懸命自分たちで見て、確認する時間がこれから出てきます」
──80分の中で相手の時間になるところがあると思いますが、そこはどう捉えていますか?
「ゲームプランに関しては、最初の20分間は自分たちのやるべきところをうまく遂行できたと思います。試合が進むにつれて、リコーブラックラムズ東京さんも向こうのゲームプランを進めてきたのですが、彼らは彼らなりの道を見つけて進んでいったと思います。ウチとしては小さな要因があったと思うのですが、まだ具体的には正直分からないところがあるので、そこは深く検証していって、グラウンド上で何がいけなかったのかというところと、準備のところも含めて深く見ていきたいと思います。いずれにしても大きな学びが今回もありました。
自分たちはいまこういう状況ですが、本当にこのチームの一人ひとりに対して自信をもっています。本当に質の高い選手がそろっていて、みんなすごく情熱があって、決意に満ちあふれた選手たちです。それに付け加えて素晴らしいリーダーが、いまチームを引っ張ってくれています。いまはこのようにうまくいかない状況で、何か歯車がかみ合わないところがあるんですけど、確実に私たちは前に行ける、そういった集団だと思います。今後ほかのチームが怖れる集団になる、自分はそういった選手たちが集まっていると思っています」
──悔しい敗戦ですが、大切なのは常に次の試合だと思います。まずはどんな修正をしたいと考えていますか?
「いまはロッカールームで非常に残念な気持ちでいるので、静かな中でそういった話をしました。次の試合は埼玉パナソニックワイルドナイツ戦ですが、いまは35試合負けなしのチームです。そういったチームと対戦できるということで、チームとしては高いモチベーションがあります。
修正ポイントは、オンザフィールドでもいくつかありますし、メンタル面でも準備のところでもあると思いますが、それが感情的なものなのか、精神的なものなのか、これから見極めて修正していきたいと思います」
トヨタヴェルブリッツ
古川聖人 共同キャプテン
「残念な結果になったと思います。これがいまの自分たちということを、自分たちも知ることができましたし、ファンのみなさんもそうだと思います。自分たちは決してチャンピオンチームではないし、常勝チームではないのが現状だと思うので、ここからしっかり作り上げていく。またチームとしても、こういった残念な結果は下を向きがちになると思いますが、そこはしっかりと次を見て、何をしなければいけないのか見つめ直して、またイチからやっていかないといけないと思うので、そこに関しては自分を含めたリーダー陣がやっていきたいと思います」
──今季初先発となりましたが、プレーの手ごたえはいかがだったでしょうか?
「まずプレーとして自分に求められているのは、ディフェンスでインパクトを与えることだと思うので、タックルだったりジャッカルだったりのところ。タックルでは要所で相手を押し返すことができたんですけど、ブレイクダウンのところに関してはもう少し上を目指してやっていかないといけないと思います。
また、キャプテンとしては、自分自身の力が足りないからこそ、こういう結果になったと思います。選手みんなはよくハードワークしてプレーしてくれたと思うし、チームでやろうとしていることも、みんな体現してくれていたと思います。キャプテンとして自分自身をもっと見つめ直していきたいと思います」
──松橋周平選手のプレーは参考になりましたか?
「特に気にしてはいないですね。自分のやるプレーをしっかり、相手がどうこうではなくやっていきたいと思います」
──次の試合に向けて、考えていることを教えてください。
「自分も特に悲観的になる必要もないし、なり過ぎることもないと思います。来週に向けて、自分たちはチャンピオンチームでもないですし、常に勝ち続けるチームではないので、本当に失うものは何もないと思います。相手は僕たちから何かを奪うことはないですけど、僕たちは相手から何かを奪い取ることができると思うので、そういった意識で相手から何かを奪う、そして自分たちが上に向かって行くきっかけを作れるいいチャンスかなと。本当に大きな何かではなく、小さなきっかけでこのチームはまた上にいける可能性があると思います。やろうとしていることは一つひとつ試合の中でクリアになってきているので、長いシーズンの中でどんどんどんどん良くなっていって、みなさんに上に行く姿を見せていけたらいいなと。まずは来週、しっかりチャレンジしていきたいと思います」
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「まだ少し消化しようとしている状態ですけど、クリアなプランをしっかりと掲げてここまで来て、まあうまくいったのかなと思います。最初の50分、60分はタイトなゲームになるだろうと予想していました。ベンチメンバーもインパクトを与えられるメンバーだったので、彼らが与えてくれたエナジーは素晴らしかったと思います。
80分までのファイトも、すごく素晴らしかったと感じました。本当に選手たちにとってすごくいい勝利だと思います。ここまで頑張ってやってきて、それでも結果が出ていなかったので、そういう意味では本当にうれしいですね。みんなのことを思うと良かったです」
──前の試合から先発メンバーの変更も多かったですが?
「ウチのトレーニングは、みなさんの見ていないところで行われているというか、あまり見られていないと思いますが、今までもずっと言ってきたように、ウチのチームはロックスターがすごくそろっているチームではない。ウチはスコッドで戦う、そういうチームです。メンバー変更はありましたが、全然心配もなく、もちろん出したメンバーに対してすごく自信もありました。ゲーム展開的にも、ああいうインパクトプレーヤーがベンチから出たのは、ハマったのかなと思います。
ハーフタイムが明けてから、少しペナルティが多かった。もうちょっとタイトなゲームだったらとは思っていましたが、ペナルティを重ねてしまったので、そこは改善していきたいと思います。でも、しっかりと前半のメンバーが作ってくれたベースを、交代メンバーがプラスしてくれたと思いました。なので、ウチはスコッドで戦うという意識でやっています」
──時間が経つにつれてエナジーが出てきたと思いますが、それはこれまでの練習で積み上げによるものなのでしょうか?
「ウチはフィットネスがあるチームです。確かに交代で入ってきたメンバーはパワーがある選手が多く、ネイサン・ヒューズはパワフルな選手ですし、アイザック・ルーカスはみなさんもご存じかと思います。彼らも自分の役割を遂行しているだけなので、特に特別なことをしているわけではありません。自分の強みを生かしてプレーしてくれた。そこに向けてしっかりと前半のメンバーがいいベースを作ってくれたと感じています」
──松橋周平選手の活躍が光っていましたが、評価を教えてください。
「前十字(靭帯)のけがから復帰した選手で、結構早めに復帰したんです。2カ月くらい早かったのかな。そのことだけでも、彼がどれだけプロフェッショナルなのかということが想像できると思います。すごく頑張って、いまのところまで戻ってきて、最初はベンチから使ってきたんですけど、もう準備万端かなと。今日はそれを見せてくれましたし、やはり泥臭い7番ですよね。ボールの上に入ったら強い、それは自分たちも求めていることなので、そういうふうに評価しています」
リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン
「まず勝てて本当に良かったです。開幕から2戦、勝つことができなかったので、しっかり結果が出たということが本当にうれしいなと思います。チームとして、試合をとおして毎試合すごくレベルアップを感じていて、厳しい状況もありましたが、ディシジョン(判断)のところも試合を重ねるごとに良くなってきていると思います。最後の80分のボールのシーンなどは、やっぱりディフェンスですね。チームのDNAが出せたと思います。チームとしてレベルアップしている。やっていることは間違っていないと思います。シーズンはまだまだ続くので、レベルアップしてリコーブラックラムズ東京のラグビーを追求していきたいと思います」
──後半の立ち上がりに少しリードを広げられましたが、チームメートにどんな言葉を掛け、反撃につなげたのでしょうか?
「チームとして80分をとおしてハードラグビーをするというのが、昔はできなかったですけど、それがいまやっとできるようになってきて、全員が認識を同じにしてプレーできたことが一番の要因だと思います。その時も全員焦らず、次に何をしようか、次の仕事を考え続け、その瞬間でしっかりと正しい判断をしてできたというのが結果につながったのかなと思います」
──最後に長い時間のTMOがありましたが、どんな心境でしたか?
「本当にどっちに転んでもおかしくない状況だったと思います。ただ、あそこで最後まであきらめずにファイトし続けた結果が、なかなかうまくいかなかったですけど、こっちにボールが転んできて、神様が振り向いてくれたんじゃないかなと。あきらめずにハードワークし続けた結果、80分を通して、自分たちはそこをDNAとして大切にしている部分なので、それを見せられたことで、ちょっとこっちに(運が)向いたのかなと思いました」
──ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)のところで優位に立ちましたが、どこを意識していたのでしょうか?
「ブレイクダウンのところも、この前の東芝ブレイブルーパス東京戦から、リアクションのところが悪かったり、自分たちの強いブレイクダウンができなかったりというのがレビューとして出て、それを1週間しっかり準備してきました。今回もそこをフォーカスしてやっていたので、試合を正しくレビューして、それを1週間でしっかり準備して結果につなげられたのが、(勝利できた)大きな要因かなって思います。本当に1週間、そこに意識的に取り組んだということが結果として表れたんじゃないかと思います」