2023.12.11NTTリーグワン2023-24 D1 第1節レポート(トヨタV 15-8 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスB
2023年12月9日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 15-8 リコーブラックラムズ東京

世界最高の9番と10番、アーロン・スミスとボーデン・バレット加入の効果

プレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍、トヨタヴェルブリッツのウィリアム・トゥポウ選手は元日本代表だ

パロマ瑞穂ラグビー場における過去最多のファンを集めたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)とリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)の開幕戦は、その熱気に後押しされた両チームの意地と誇りがぶつかり合う接戦となり、序盤の2トライで主導権を握ったトヨタVが、追い上げるBR東京を後半無得点に抑え、何とか逃げ切った。

この試合で最も輝きを放ったのはトヨタVの6番、ウィリアム・トゥポウ。ラグビーワールドカップ2019日本大会で桜のジャージーを着て戦った元日本代表は、今季バックスからフォワードに本格的に転向。試合終盤でも落ちない運動量と、鋭いタックルでチームの危機を何度も救った。

この試合は当然のようにトヨタVに新加入したラグビーワールドカップ2023フランス大会準優勝ニュージーランド代表のスーパースター、アーロン・スミスとボーデン・バレットに注目が集まった。ウィリアム・トゥポウの活躍は「彼らに負けたくない」という反骨心によるものなのかと勝手に想像していたのだが、彼にそんな考えは1ミリもなかった。

「たまたま私が良いプレーをできましたけど、それは私個人のプレーじゃなくて、ほかの良い選手たちがいて初めてできることです。中でもナギー(アーロン・スミス)はかなりの助けになっています。彼はグラウンド上で常にしゃべって、絶対に静かになることはない。それが私たちの仕事、特にディフェンスの部分をやりやすくしてくれています」

もちろんボーデン・バレットについても、「明確な指示とゲームの読みという部分ですごくやりやすかった」とこの試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチは語る。合流してわずか1週間でもオールブラックスの二人はチームに大きな影響を与え、勝利のビジョンを示し、そして仲間を輝かせた。

「ナギーもボーディー(バレット)も本当に素晴らしい。世界でもトップクラスの9番10番がチームに参加してくれたことは本当にラッキーだなと思っています」(ウィリアム・トゥポウ)

パスやランのスピードだけでなく、世界のスーパースターは素早くチームに馴染み、信頼をつかんでいることがウィリアム・トゥポウの言葉からも分かった。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「今日は、まず非常にいい結果が得られたと思います。両チームともにハートやパッションに満ちた試合だったと思います。リコーブラックラムズ東京さんはフィジカルを生かした試合運びでした。われわれとしてはまだ改善の余地がありますが、7人の選手が(リーグワン)デビューという中で勝ち切ったことは、チームとしても大きいと思います」

──丸山凜太朗選手の先発抜擢の意図と評価を教えてください。

「丸山に関しては非常に才能にあふれた、期待感のある若手だと思っています。ボーデン(・バレット)からたくさんのことを学んでほしいと思っています。彼は世界屈指のスキルを持っている素晴らしい選手ですから。(丸山には)これからチーム内での成長を期待していますが、今日は不運ながらひざをけがしてしまいました。いずれにしても彼は非常に賢明でタレントもあるので明るい未来がある、そういう選手だと言えます」

──福田健太選手はベンチ外でしたが理由を教えてください。

「福田に関してはひざのけがにより、数試合出られない状態です」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「タフなゲームになるだろうなという予想はしていましたが、予想どおりにすごくタフなゲームになりました。ただ、ベン(・へリング ヘッドコーチ)も言ったとおり、自分たちがやりたいことができましたし、とにかく勝利を拾えたということはチームとしてポジティブなことかなと思います。また7人の選手の(リーグワン)デビューがありましたから、それを勝利で祝えたことはキャプテンとしてすごくうれしく思います」

──試合の滑り出しはよかったが、途中でいい流れが止まってしまった要因について。

「自分たちからやっていくんだというメンタリティーを、今週1週間とおしてやってきたことがいいスタートにつながったと感じています。自分たちの流れを止めてしまった一つの要因として、ペナルティがすごく多かったことがあります。そこは今後のチームとしての課題になってくると思いました。ただ、その中でもディフェンスのタックルの成功率はいい数値が出ていて、そういう我慢強さというところは収穫だと思います。まずはポジティブな面に光を当てて進んでいきたいと思います」

──試合序盤にはスピーディーなラグビーができていました。

「ああいうトライは、今までのトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)ではあまりなく、本当にスピーディーになったと思います。ボーデン(・バレット)とアーロン(・スミス)というゲームメーカーがいるので、自分たちのフィジカルを生かしながら、スピードを付け加えていくことが新しいトヨタVのラグビースタイルになると思います。まだ彼らは合流間もないですし、チームとしてもっとシャープにできると思います。ただ、ファーストゲームにしてはすごく良い形を出すことができました」

──9000人を超えるファンが集まりました。パロマ瑞穂ラグビー場での新記録ですが、どう感じていますか?

「素直にうれしいですね。ラグビーワールドカップ2023フランス大会直後のシーズンということでスタジアムに来てくれる人も増えると思いますが、一貫性を持って集客していかないと、日本のラグビー人気が上がっていかないと思うので、これをどう続けていくのかが、課題になるのかなと思います」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「まずはトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんにおめでとうと言いたいと思います。(トヨタVは)最初の15分がすごく良くて、その中で自分たちはしっかりとファイトし続けました。最後の10分、15分はどっちに勝利が転がっていてもおかしくない展開だったと思います。うちの選手は数名がすごく勇気のある姿を見せてくれました。すごく誇りに思っています。

今日の試合に関しては、相手チームの選手の名前がよくニュースになるような、ワールドクラスの選手がそろったチームでした。それに対して自分たちのチームのパフォーマンスはすごくハッピーなものでした。もちろんディテールのところは改善していかなければなりませんが、自分たちが何者なのかというところは示せたと思います」

──試合後、選手たちにはどんなメッセージを送ったのでしょうか?

「いま、言ったとおりです。長いシーズン、まだ1試合を終えたところで、学びもありました。でも、一晩でいいチームにもならなければ、悪いチームになるわけでもない。引き続き、月曜日からハードにやって次節に向けて準備をしたいと思います」

リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン

リコーブラックラムズ東京の武井日向キャプテン

「前半の入りは悪かったですが、慌てることなく自分たちのラグビーをやり続けられた点はいいことだと思います。ただ、チャンスだったりピンチだったり、要所での精度はまだまだ改善しなくてはいけないところですし、その辺りは次に向けてしっかりとレベルアップをしていきたいなと思います」

──チームの中で取っていたコミュニケーションはどんなものでしたか?

「『自分たちのやるべきことをしっかりとやろう』、『自分の仕事をしっかりやろう』、『システムを守ろう』ということをチームのハドルで話し続けていました。だから、やるべきことが明確だったのかなと思いますし、チームとして同じ絵を描けていたと思います」

──うまくいったと感じている部分はどういったところになりますか?

「自分たちのシステムを守れたときにはいいアタックができていたと思います。やるべきことを実行できたことは良かった点だと思うので、あとはチャンスの場面での精度、一つひとつのディテールのところにもっとこだわっていかないといけないと思います」

──シーズンに向けてチームとしてのDNAや泥臭い部分を見せていきたいと話していたがその点についてはどうでしたか?

「チームのDNAはこの試合でも見せられたと思います。そこは自分たちが本当に大事にしている部分なので。その土台の部分はやり続けないといけないと思いました。多くの人は結果だけを見てしまうと思いますが、自分たちはプロセスのところにフォーカスしたいと思っているので、今日の試合も内容がどうだったのかをしっかりとレビューして続けていきたいです。まだシーズンが始まったばかりで、この1試合の結果だけで自信を失うこともないですし、自分たちのラグビーをし続けて成長していきたいと思います」

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