三重ホンダヒート(D2)

三重Hのストロングポイント。積み上げてきたラインアウトの質

前節、三重ホンダヒートは、釜石シーウェイブスRFCのホストゲームに乗り込み、75対12と大勝。1勝1敗で年をまたぎ、ホーム、三重交通Gスポーツの杜鈴鹿サッカー・ラグビー場へと帰ってくる。今節の相手は同じく、ここまで1勝1敗の日野レッドドルフィンズ。ヒートは、前節の勢いそのままに連勝、ホストゲーム初勝利を挙げたいところだ。ただし、上田泰平ヘッドコーチは「前節、大差がついた試合でも最後までしっかりプレーできたことで成長を感じているが、大量得点のゲームを当たり前にできるわけではないことは、認識しておかなくてはいけない」と手綱を締め直している。

前節で際立ったのはラインアウトでの強さ。マイボールで10/13の成功率。相手のラインアウトは7本、スティールした。スクラムハーフを務める山路健太も「ラインアウトの選手たちが頑張って、常にクリーンで攻撃しやすいボールを供給してくれるので、ありがたかった」と感謝を口にする。第1節・浦安D-Rocks戦もゲームは負けたものの、マイボールラインアウト11/13の成功率、スティールは4本奪った。

チームのストロングポイントになっているラインアウトについて上田ヘッドコーチは「フランコ・モスタートをはじめ経験、高さ、スピードを持った選手がそろっていることと、それをユニットとして完成させている伊藤鐘史コーチの力が大きい」と話す。

その伊藤コーチは「前節は中心となるフランコ・モスタートのリーダーシップ、読みが良かった。それに連動してリフトをする選手らも良い反応ができた」とラインアウトでの勝因を語る。強さのヒケツについては「昨年のプレシーズンからずっと基礎練習を繰り返してきた。反復練習でラインアウトの質を上げてきたことが、徐々に成果として表れている」と話す。スティールを多く生み出していることについても「どこに投げてくるのか、相手チームの心理を読むことと、リアクションスピードが重要」で、それがうまく機能していると言う。

「ただし、」と伊藤コーチも続ける。「いまのところは悪くはないが一喜一憂はしない。一貫性を持ち、自分たちがやるべきことをできているのかに集中したい」とチームを引き締める。

「現代の世界のラグビーでは、得点の8割はラインアウトが基点となっている」(上田ヘッドコーチ)というセットプレー。三重ホンダヒートにおいても「これが強くないとウチのアタックは機能しない」(上田ヘッドコーチ)と言わしめるほどラインアウトの重要性は高い。

プレーのスキルだけでなく、何人並ぶのか、誰がキャッチするのか、相手との駆け引きも見どころである。ボールがタッチラインを割ったからといって、ホッと気を抜いてはいけない。その時こそ、われわれはグラウンドから目を離してはならないのだ。

(小崎仁久)

ラインアウトを強みとする三重ホンダヒート


日野レッドドルフィンズ(D2)

世界クラスへの挑戦。スタンドオフの新星、北原璃久

ディビジョン2、序盤の趨勢を左右する必見の一戦だ。

強力なフォワード陣を擁して圧力をかけていく日野レッドドルフィンズに対し、オーストラリア代表フルバックのトム・バンクスをはじめ高い個人技を持つ選手が居並び、縦に速いラグビーを見せる三重ホンダヒート。タイプの違う両チームの激突は、見るものにとって驚きのシーンが連続するエキサイティングな試合となることは間違いない。日野レッドドルフィンズの箕内拓郎ヘッドコーチは三重ホンダヒートに対し、「今年進化を見せている、われわれが超えなくてはいけない相手。昨季も2敗しているし大事な試合という位置づけは変わらない」と語る。

その三重ホンダヒート戦で、開幕から3試合連続スタメン出場を張るのがスタンドオフの北原璃久だ。視野の広さと的確な判断力でチームを統率する若き司令塔。開幕節ではドロップゴールも決めるなど意外性あふれるプレーも魅力だ。「まだまだ納得できるパフォーマンスはできていない。でも、試合で見つかった課題を個人練習で補って良い方向に進めるように。正確なプレーを継続してできるようにしたい」と北原自身は謙虚に語るが、東京都出身の23歳は日野レッドドルフィンズの強力フォワード陣とスピードあるバックス陣をつなぐ重要な役割を担い、急速な成長を見せている。「トライセーブのタックルも見せるなど、守りでも手を抜かず最後まで全力でプレーする」と箕内ヘッドコーチも北原のラグビーに向かう姿勢を評価している。

北原は國學院大學久我山高校からニュージーランド南島のオタゴ大学に進学。そこでニュージーランド流の展開力あふれるラグビーを吸収していった。「攻撃でも守備でも大きな相手に対してひるまずどうアタックしていくか、という部分がニュージーランドで培った一番大きいもの」という北原。「ニュージーランドで学んだ土台に日野で1年間学び積み上げてきた部分をどんどん出していきたい」と週末が待ちきれない様子だ。対面する三重ホンダヒートのスタンドオフはU20 ニュージーランド代表歴のあるケイレブ・トラスク。「彼のプレーはニュージーランドでもテレビなどでよく見ていた選手。10番同士での対決、チャレンジできるのはとても楽しみです」(北原)。三重ホンダヒートには各国の代表クラスがそろうが、その相手にも北原は真っ向勝負でぶつかっていく。

「フォワードだけでなくバックスも一体となってボールを動かすラグビーが今季はできている中で、どれだけシステムを守り80分間我慢して戦い抜けるかがキーとなる。北原がグラウンドの中でもリーダーシップを発揮して、いかにゲームをドライブできるか」と箕内ヘッドコーチも若き司令塔に期待を寄せる。北原とスクラムハーフのオーガスティン・プルが良い形でバックス陣にボールを渡し、決定力あるウイングのチャンス・ペニへとつなぐ。日野レッドドルフィンズとしてはその形を何度も見せたい。

「大学では目の前のプレーをどうするかでいっぱいでした。でもいまは『どうやってゲームを作るか』をもっと高い視野から考えてプレーすることを目指しています。染山茂範さんやサイモン・ヒッキーなど経験豊富な先輩方からスタンドオフとしての役割を教わり、プレーの選択肢も増えている。ヒート戦では頑張ってくれているフォワードを助けるプレーを見せたい」

将来性あふれるスタンドオフの新星、北原璃久のプレーに注目だ。

(関谷智紀)

日野レッドドルフィンズの北原璃久選手。ニュージーランドのオタゴ大学でプレーしていた

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