2023.01.16NTTリーグワン2022-23 D2 第3節レポート(三重H 20-19 日野RD)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第3節
2023年1月15日(日) 12:00 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場 (三重県)
三重ホンダヒート 20-19 日野レッドドルフィンズ

8番を託された「最高の男」がチームを逆転勝利へ導く

No.8で先発した三重ホンダヒートの古田凌キャプテン(中央)

1勝1敗同士の対戦となった、三重交通Gスポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場で行われた第3節。序盤から、多くのペナルティを重ねながらも日野レッドドルフィンズが試合をリードした。三重ホンダヒートは、後半に入り最大11点差をつけられたが、その後、日野レッドドルフィンズがシンビンで二人を欠く状況となり、主導権を奪取した。一気に点差を縮め、試合時間残り2分で逆転、三重ホンダヒートが20-19で、ホストゲーム初勝利を飾った。

三重ホンダヒートのキャプテン、古田凌にとって苦しいゲームだった。チームのアタックは、ラフプレー気味の激しいディフェンスに遭い、まったくリズムに乗れなかった。相手は前半だけでも10、前後半合わせると21のペナルティを犯していたが、ゲームの支配権は持たれたままだった。さらにチームのストロングポイントであったはずのラインアウトは相手に分析され、逆にラインアウトでの勝負を挑まれて、開始3分からスティールをされてしまった。前半23分には日野レッドドルフィンズが、ラインアウトを基点に鮮やかなトライを決めていた。

自らがやりたいラグビーを相手にされ、ハイタックルを幾度となく受け、チームにはイライラがつのり、焦ってもおかしくはなかった。しかし、古田はキャプテンとして「焦らずに一つひとつのプレーをテンポよくやろう。そうすれば、自分たちのラグビーができる」とチーム内に声をかけ、落ち着かせていたと言う。

古田自身も久しぶりに、攻守に渡ってチームの中心となるナンバーエイトのポジションを任された。本来ならば、アルゼンチン代表のパブロ・マテーラが務めるはずだが、登録枠の関係でスターターに加わることができなかった。高いスキルとリーダーシップを持つ“世界のナンバーエイト”の代わりを、古田は務めていた。

本人は「ひさびさの8番で緊張しました」と笑う。悪い状況が続く中、「マテーラがいたら…」と思われてしまうところだが、「そこは気にせず自分のプレーに集中した。逆に、後半にパブロ(・マテーラ)が控えている安心感があった」と、周りからの重圧をも意に介さない。

昨季からキャプテンを務めている。パブロ・マテーラやフランコ・モスタートら、世界の強豪国での豊富な経験とキャプテンシーあふれる選手がいる中でも、やはりキャプテンは古田である。彼に、自身の今季の目標を聞いても「うまくチームをまとめて、ディビジョン1へ導くこと」という答えしか返ってこない。前主将の小林亮太も「古田は最高の男。体を張って、寡黙にチームを正しい方向へ引っ張ることができる」と褒め称える。

ゲームは、日野レッドドルフィンズがペナルティを連発、終盤にシンビンを二人出し「自滅」した形だった。しかし「相手のペナルティがなかったとしても、われわれはチームを立て直せた」と三重ホンダヒート・上田泰平ヘッドコーチは確信を持って話す。その言葉の理由には、キャプテンが古田であることを含んでいるのは、想像に難くない。

(小崎仁久)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートの上田泰平ヘッドコーチ(右)、古田 凌キャプテン

三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ

「皆さんお疲れさまでした。2回目のホストゲームということも含めて、三重県協会を含め、関係者の方がしっかりと準備して、迎え入れてくれたおかげで、選手もいつもどおりの力を発揮できたと思って感謝しています。

試合の流れに関しては、三重ホンダヒートとしては、やはり日野レッドドルフィンズさんの激しいディフェンスにとても苦しめられたというのが、正直な感想です。それを改善することにおいて、やはり一人ひとりがプレーをすることよりも、もう一度、ラグビーというものが15人で、しっかりとつながってプレーをしていかないといけない、ということを再認識できました。とても学びのある試合だったなと感じています。

後半の最後、相手が13人になったところなど、うまくリーダー陣の選手がゲームをコントロールしながら進めてくれたことで、自分たちのやりたいようなラグビーが最後はできたかなと思っています。そこに関しても、しっかりと今までよりも成長を感じるような試合だったと感じています」

──前半はなかなかリズムをつかめなかった、主導権を握れなかった要因をどのように考えていますか?

「前半は風上でスタートはしたのですが、その割にはテリトリーを全然取れなかったというところがありました。テリトリーがうまく取れず、結局それが自分たちのポゼッションに戻ってくるという、この流れがまったくできていなかったと感じています。それに加えて先ほど言ったように日野レッドドルフィンズさんの、前に出てくる良いディフェンスに押しやられることで、よりテリトリーを取れない試合になってしまいました。結局は最終的に自分たちのいい形でのフェーズを続けることができませんでした。おそらく最初の20分の間で、最大の10フェーズ程度でペナルティゴールへつながるのですが、それまでのフェーズはおそらく2、3フェーズしか、自分たちでポゼッションを持てていませんでした。最後はいい気持ちでポゼッションを持てていましたが、やはり最初の20分のところで、テリトリーを取られているのが原因で、自分たちのラグビーというのが機能しなかったと思っています」

──ラインアウトでも相手に上回られたように感じましたが?

「ライアウトを軸に、相手も攻撃をしっかりと仕掛けてきていたというのがありましたが、それを含めて前半、相手が勝ち越して折り返したというのは、相手の戦術どおりのものができたからだと思っていました。恐らく前半、相手が出してきた戦術というのは、サプライズ的なものが結構多かったので、後半は攻め手がシンプルなことしかできなくなってくるので、そこに対して三重ホンダヒートとしても、しっかりと前に出るということで、シンプルなこと同士で戦わなければいけないと、ハーフタイムにはそのような話をしました。

後半の立ち上がりは、僕はとてもいいスタートを切れたなと思っています。あの形をやはり前半最初の20分から80分間しっかり続けていけば、本当にファンも喜ぶようなラグビーができるのではないかなと思っています」

──結果として相手のペナルティで優位に立てたとも言えます。「もし」を考える意味はありませんが、相手のペナルティがなかったとしても勝利に結びつけられたと考えていらっしゃいますか?

「ペナルティというものをどういった認識でいるのかということもありますが、ペナルティがなかったとしても、しっかりと立て直すことはできただろうと思っています」

──パブロ・マテーラ選手をリザーブからスタートさせたのは戦術的な意味があったということでしょうか?

「マティウス・バッソンを今回3番に入れたのですが、彼が、練習からパフォーマンスがとても高くて、どうしても使いたいということで彼を入れました。登録枠の関係上、そういった形(パブロ・マテーラがリザーブ)で、日本人選手のバックローでそろえたのですが、彼らに対してもいいチャンスを与えることができたと思いますし、チームとしてまた一つ成長できたと思います」

──この試合に対するゲームプラン、うまくいった部分、うまくいかなかった部分を教えてください。

「アタックでは、ボールを継続できなかったというところがうまくいきませんでした。一人ひとりが孤立して行ってしまっているので、ディフェンスからすると、ただの1対1の局面が連続して起こっているということになってしまっていました。そこを戦術的にもっといろいろなオプションを組みながら、アタックを仕掛けていかないと、自分たちがやりたい、スペースに対してアタックを仕掛けていくということが機能しないよ、という話ですね。

後半の最初、敵地に入るまでのところは、とても良い連携を取りながら、ボールが動いていたと思います。その点はしっかりと修正できたのですが、それが継続できなかったところがあります。

もう一つは、これに関係することで、リアクションスピードがやはり前半とても遅かったというところが、戦術的に少し足りないところです。ここは見える感じや、恐らくデータで見る限りでは数字的には見えてこない部分で、動き出しの初速だとか、そういった勘の良さ、試合中、一人ひとりが勘や読みなど、そういった駆け引きをしながら、もっとラグビーをしないといけない、ということは話をしました」

──相手の反則で行けるような状況になっても、またこちらの反則でそれが継続できなかったところがあったと思いますが、その要因はなんでしょうか?

「全員がしっかりとしたオプションに慣れていないということですね。オプションに慣れていないから、相手が的をしっかりと絞れて簡単にタックルできる、ボールをストップダウンさせるという継続させない状況が作られていました。周りのサポートプレーヤーもリアクションが遅いので、一つのユニットになり切れず、後から入ってきてしまっているので、相手のほうが先に来て、ボールキャリアがそれによって孤立をしていたということです。

もっと全体が一つになって動かないといけません。ボールが動かないということは、そこで争奪が起きるということなので、その争奪で絶対に勝つためには、やはりユニットで動いていかないとダメというところですね」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「お疲れさまです。まずホームゲームで、しっかりと接戦をモノにできたということは、とても三重ホンダヒートとしてもプラスになりましたし、自信につながったのではないかなと感じています。前半のところでは、少し我慢の時間帯があったりだとか、日野レッドドルフィンズさんの勢いに少しリアクションができずに、苦しい時間帯もありました。しかし後半の最後、モールでしっかりトライを取って、接戦をものにできたということは、とても自分にとってもプラスになりましたし、最高の試合であったのではないかなと感じています」

──キャプテンとしてお伺いしますが、これで2勝となってチームとしては、とても雰囲気も良くなっていると思いますが、いま、チームとして一番いい部分はどんなところでしょうか? チームの雰囲気だったり、様子だったりいかがでしょうか?

「いまは練習から、とてもメンバーも頑張っているのですが、そうではないノンメンバーも頑張っていて、チーム全員が一体となって、本当に練習できていますし、良いプレッシャー感を持って、メンバーもメンバー外もやり合えています。そこは僕ら、三重ホンダヒートとしての強みでもありますし、いい部分でもあるかなと本当に考えていて、その結果がこの勝利だと思っています。本当にメンバーだけではなくて、メンバー外の頑張りもあって、この接戦をモノにできたととても思っているので、そこが自分たちのいい部分かなと思います」

──今日はラインアウトも、結構しっかりマイボールでキープできていたと思いますが、その強みというのは、どのあたりから生まれてくるものですか?

「練習からですかね。練習をやはり、コツコツやって、本当にチームが一体となってやっているので、ラインアウトも取れますし、スクラムもいいスクラムが組めていると思います。日頃からしっかり、気を抜かずに練習から頑張ってやっているから、今日のような試合になったのではないかなと僕は思います」

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの箕内拓郎ヘッドコーチ(左)、オーガスティン・プル共同キャプテン

日野レッドドルフィンズ
箕内拓郎ヘッドコーチ

「まず、今回の試合に対して、三重ホンダヒートさんは強いチームであることはわれわれも認識していましたし、去年も敗れているチームであるので、80分、我慢強く戦っていこうとしました。われわれとしては、おおむねうまくいった部分、前回よりもディフェンス、アタックともに改善された部分は多々ありました。

しかし、やはり規律の部分で、特に後半、自分たちの首を絞めてしまいましたし、やはり13人では戦えません。もちろん、その中でもワードワークをしてくれていた選手もいますが、その部分をチームの課題として、この先のシーズンもまだまだ厳しい戦いになるのかなと思います。

先ほど言ったように、いい部分、ポジティブな部分はたくさんありましたので、来週へと継続して、規律の部分を見直して準備をしていきたいと思います」

──今日は風が強く吹きましたが、どのようなゲームプランをお持ちでしたか。それに対してうまくいった部分、うまくいかなかった部分を教えてください。

「ここのグラウンドへ来て、風が強いなとは思いましたが、上から見た感じでは、プレーに影響するほどではなかったかなと思います。三重ホンダヒートさんに対して、われわれとしてもいろいろ仕掛けていく、先手を打つというプランで準備しました。タイトな三重ホンダヒートさんのディフェンスに対して、スペースを見いだせないところもありました。パーフェクトな展開ではない中でも、このような点差で我慢できたということ、いい時と悪い時のムラがなくなったところは良かったと思います」

──今日はかなりペナルティが多かったと思いますが、原因はどの辺りにあると考えられますか?

「前半、少しタックラーに対して、二人目のところでジャッカルにいくのかどうか、というところがうまく合いませんでした。なので少しハーフタイムで修正して、スペースを取りに行くということ、極力そこでペナルティを減らそうという話をしました。そこは良かったと思いますが、やはり要所要所でプレッシャーを受けたときに、ブレイクダウンでのペナルティであったり、ハイタックルは同じ選手が何度もしているわけです。それは個人的な問題なのかなと思います」

──前半はかなり流れが良く、ラインアウトが強く、そこからのトライも取れていました。それは当初から「狙い」だったのでしょうか?

「どのチームもそうですが、ラインアウトが基点のトライは多いですし、比較的準備しやすいプレーです。強い風がある中、獲得力は特に前半は良かったと思います。後半はシンビンが出る中で状況は変わっていきましたが、われわれにとっても、やはりラインアウトからのアタックは、重要な要素であることは間違いありません」

──後半は前半のような勢いがなくなってしまったというのは、やはりペナルティが一番大きな要因でしょうか?

「そうですね、選手が少ない中でも、ディフェンスはしっかりできていました。そのディフェンスのフェーズに関しては、前回よりもかなり進歩が見られています。ただ、やはり14人、13人では守り切れないですし、15人がいて初めてシステムとして成り立つところはあると思います。

前半、後半ともに、相手の勢いは止められていたのかなと思います。(ペナルティについては)『たられば』の話はしたくはありませんが、勝てなかったことにはやはり理由がありますし、もちろん勝たなければいけない試合だったと思います。われわれは学ぶべきところ、勝てなかった理由があった試合だと思います」

日野レッドドルフィンズ
オーガスティン・プル 共同キャプテン

「先ほど箕内拓郎ヘッドコーチがおっしゃったように、規律の部分で問題があり、おそらくその部分が今日の試合では僕らチームの首を絞めたのかなと思います。ただ、しっかりとチームとして戦う姿勢を見せられたことは、ポジティブなことだと思います。厳しい時間の中でもしっかり準備してディフェンスはできたと思っています。アタックに関しても、しっかり準備してきたことが、効果的に出せたということは、とても良かったことだと思っています。

もちろん今日の試合は勝てませんでしたが、今後もシーズンがまだまだ続いていくということを考えると、とてもポジティブなゲームでありましたし、大きなステップになった試合だったと思います。まだ三重ホンダヒートとの対戦はありますので、次の試合、また戦うことを楽しみにしています」

──前半は自分たちのチームに試合の「流れ」がずっと来ていましたが、やはり後半になってからペナルティでチームが少し崩れ始めたのかなと感じました。グラウンドの中で、オーガスティン・プル選手としてはどのように感じていましたか?

「すべてにおいていいところはありました。しかし、選手の中でも、非常に気持ちが高まっているところがありました。そういったところの気持ちのコントロールの仕方を学ぶ必要はあるのかなと思います。アグレッシブに行くところだったり、そういった気持ちというものをどのようにコントロールしていくのか、というところは、まだまだチームとして学んでいかなくてはいけないことの一つだと思います。
ただ、しっかりそこで戦っていくという気持ちであったり、態度というものがあったことが、今日の試合のようなスコア、(試合の大部分を)リードして進められたことにつながったと思っています」

──相手の三重ホンダヒートは強いチームであるという認識は、試合前からあったと思います。そういったチームに対して、ペナルティがなければ勝てた可能性も高かったと思いますが、手ごたえなどどう感じていますか?

「オー、イエス!(笑)(ペナルティがなければ)勝てたと思っています」

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