NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第4節
2023年1月28日(土)12:00 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 64-14 釜石シーウェイブスRFC
デビュー戦で鮮烈ハットトリックの河野竣太、“オファーなし”からの「Revive」
浦安D-Rocksに喫した敗戦から2週間。今節に向けて「Revive(再生)」というテーマを掲げた豊田自動織機シャトルズ愛知は、パロマ瑞穂ラグビー場で、見事によみがえった。先制トライは許したものの、その後は試合の主導権を握り続け、トライを量産。結果は64対14という大差で、今季初の勝点5を得た。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、今節がジャパンラグビー リーグワン初出場だったルーキーの河野竣太。持ち前のスピードと切れ味鋭いステップで相手ディフェンスを幾度も破り、なんとハットトリックを達成。ディフェンスでも80分間チームのために体を張り続けた。そんな河野に自身のパフォーマンスの出来について聞くと、「70点ぐらい」とやや控えめな返答。「まだ自分のプレーが出せていない気がしています。もっとボールを持って、トライを取り切りたい。また、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)のところは課題が残りました」という胸の内だった。徳野洋一ヘッドコーチも河野について、「今日のパフォーマンスは彼の最低限。ここからさらに良くなっていくと思います」と評価した。
鮮烈なデビュー戦となったが、その前には多くの苦労があった。関東大学リーグ戦1部でトライ王を獲得しながらも、社会人チームからのオファーがなかった。「体が小さい(175cm75kg)のもあって、上のレベルだと信頼されないのかなと感じていた。それでも、徳野さんは信頼してくれた。その信頼に応えられるように、日々の練習から体を張っています」(河野)。
信頼に応えたいという思いは、グラウンド外にもある。河野は社員選手としてチームに所属。練習のない時間は、サラリーマンとして働いている。「社会人になって、職場の方の存在が本当に大きいと感じています。僕がラグビーしやすい環境を作ってくれて、僕のことを応援してくれているのがとてもうれしい」(河野)と、職場でのサポートが自身の原動力であることも語った。
河野の最終目標は「自分がトライを量産して、豊田自動織機シャトルズ愛知を日本一にする」こと。まずはその第一歩を踏み出した。次節以降も、グラウンドを切り裂く新たな風となる。
(齋藤弦)
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「パロマ瑞穂ラグビー場特有の強風はなかったものの、かなり気温が下がる中、運営スタッフの方には朝早くから準備いただきましたこと、感謝しております。試合のほうは、結果的には点差が開きましたが、まだまだ改善する余地がある内容だったと思います。前節、浦安D-Rocks戦に大敗した中で、今日の試合は、自分たちが目指す姿を追い求めるきっかけにしたいと思っておりました。そういった面では、ポジティブだったと思っています。本日はありがとうございました」
──新しくメンバー入りした選手が活躍したが?
「ここまで3節を戦ったメンバーから、今回大幅にメンバーを入れ替えております。けがなどのコンディションの問題によるメンバー変更ももちろんあるのですが、目的としては、自分たちが目指すラグビーにどれだけ真摯に向き合っていけるかという部分。そういったところで、パフォーマンス高く、これまでのプロセスを踏まえて、素晴らしいアティチュード(姿勢、態度)を見せていたメンバーを加えました。今回メンバーに新たに入った選手については、本当にチームに新しいモメンタム(勢い)を生み出す素晴らしい仕事をしてくれたかなということを感じております。今回、素晴らしい準備した選手には感謝したいです」
──開始15分で勢いづいたが、要因は?
「接点の部分、コリジョンの部分で、モメンタムを作り出すことができたというところです。その中で、規律高く、非常にワークレート高くプレーしてくれたというところが、初めの15分間のモメンタムを作れた要因かと思います。また、ラインアウトをはじめ、セットプレーもかなり安定しておりましたので、試合開始15分のコントロールという部分では、セットピース、それから接点、運動量の部分で相手を圧倒することができたと考えております」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジョシュ・マタヴェシ ゲームキャプテン
「前節の浦安D-Rocks戦の敗戦から、選手たちはアティチュードのところですごく良い反応を見せてくれました。タックルや規律のところでハードワークしてくれたのでうれしく思っています」
──プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた河野竣太選手に2アシストをしたことについて。
「彼もアティチュードのところはすごく良かったですね。若い選手が、恐れずにどんどん自分のプレーをしていくのはとても良いことです。若い選手らしいエネルギーをフィールドに持ち込んでくれました。彼は曜日関係なく、本当にハードワークしてくれているので、すごく良い選手だと思います」
釜石シーウェイブスRFC
釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ
「本日も素晴らしい環境の中、ゲームをさせていただいたことを光栄に思っております。ゲームの内容としましては、豊田自動織機シャトルズ愛知さんの勢いに対して受けた部分がありました。ウチも粘れていたり、チャンスを作れていたりしていたのですが、簡単なミスで相手に渡してしまいました。流れをなかなか止められず、こういったスコアになってしまったのかなと感じています。しかし、スクラムなどの部分は改善されていると思うので、次の浦安D-Rocks戦に向けて、いい準備をしていくしかないかなと感じています」
──前後半ともに入り方に失敗した印象があるが?
「そうですね、試合の入りはもちろん重視したところではあったのですが、そこのやり合いで豊田自動織機シャトルズ愛知さんのほうが一枚上手だったというところだと思います。もちろん、ウチの選手も良い態度で臨んでいましたし、もちろん力を抜いていたわけではないと思うので、そういった部分では、結果的に我慢比べで、豊田自動織機シャトルズ愛知さんが勝ったというところだと思います」
──次節に向けて。
「今日の内容も踏まえまして、自分たちにフォーカスしていくことが一番効くのかなと感じています。僕らが何をするかというところで、浦安D-Rocksさんが何をしてきて、どういうチームでというのは、いまのところ関係ないかなと思っています。しっかり自分たちのやるべきことを精度よくやって、いい流れを作るところに、まずフォーカスしたいと思います」
釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン
「本日はありがとうございました。ヘッドコーチからもあったように、ディフェンスのところで、相手の勢いを止め切れずに、スコアを重ねられてしまったというのが敗因だと思います。チームとして取り組んでいるラインスピードのところだったり、フィジカルバトルのところだったりで、もう少し、自分たちがプライドを持って戦わないといけない場面だったとは思うのですが、相手のほうが一枚上だったというか……。本当に細かい、小さな差だとは思いますが、それを積み重ねられて、スコアされてしまったと思います。ただ、アタックのところは、ボールを持っていればアタックできているという実感がありましたし、チャンスもたくさんあったので、あとはそこを取り切るという精度のところ。練習から課題に上がっているところなので、チームとしてもう一度見つめ直して、下を向かずに次に向けてまた準備したいと思います」
──どのあたりが相手に上回られてしまったのか?
「相手がやってきたことや、プレーの部分に関しては分析どおりで、特別なことをやられたわけではなかったです。しかし、1対1のところで前に出られてしまう場面が多くて、そこを起点にされてしまいました。ラグビーはそういうスポーツなので、その接点のところ、1対1のバトルのところで、もう少しこだわりを持たないといけなかったかなと思いますし、そこがうまくいかなかったときに、セカンドのサポートや、2人目3人目というところをかけてでも、接点の勝負にも少しこだわらないと、こういうゲームになるかなと思います」
──キャプテンとして、次節に向けてどう働きかけたいか?
「自分たちを信じることができるような準備というか、自分たちがやるべきことを確認する時間になると思うので、相手が何をするかよりも、自分たちが何をするかだと思います。僕たちのスタンダードだけでは戦えないと思うので、本当にすべてにおいて自分たちのマックスというか、最大限のプレーをスタートから出し切れるような準備をしたいと思います」