NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第10節
2024年3月30日(土)12:00 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 48-36 日本製鉄釜石シーウェイブス
若手が躍動し「全員が戦力」を体現。
運命の残り4試合に向けて激化するサバイバル
穏やかな春の陽気に包まれたパロマ瑞穂ラグビー場。今季のリーグ最終節だった豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)と日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)の対戦は、48対36でS愛知が勝利した。
今節のS愛知は、共同キャプテンを務めるジェームズ・ガスケルと、バックス陣のリーダーでディビジョン2得点ランキング1位のフレディー・バーンズが欠場。両者がそろってフィールド上にいないのは今季初の出来事だった。徳野洋一ヘッドコーチはこの試合に向け、若い選手を中心に編成し、先発メンバーの平均年齢は26歳。今季初キャップを記録した選手も5人いた。
そのような中でも、「素晴らしいパフォーマンスだった」と徳野ヘッドコーチが表現するように、若い選手たちが躍動。加入から間もないながらセットピースやフィジカルバトルで特徴を見せたジャック・リーガン、ハットトリックを達成し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選出された市川敬太らが役割を全うした。
また後半には、けがで戦列を離れていた清水晶大や天理大学から加わった鄭兆毅も出場し、勝利に貢献。ゲームキャプテンを務めたケレビ ジョシュアの「このチームは全員が戦力」という言葉を体現してみせた。
試合後、選手たちはディビジョン2(D2) 1〜3位 順位決定戦とD1/D2入替戦に向けた覚悟の言葉を口にした。「足りないところは山ほどある。次は80分間出られるように頑張ります」と鄭兆毅が言えば、「今後の準備期間は大事な時期。チームの力になれることをアピールしていきたい」と清水。結果がついてきた市川も「ライバルはたくさんいる。全員で切磋琢磨して、誰が出てもいい結果が出せるように準備したい」と語った。
順位決定戦までの3週間には、2試合のトレーニングマッチが組まれている。徳野ヘッドコーチはこの期間を「サバイバル」とし、「ここまでのリーグ戦の個人のパフォーマンスにはフォーカスしない」と明言。今節を含め、選手のアピール合戦は始まっている。
(齋藤弦)
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日は素晴らしい天気の中で、リーグ最終戦をホストゲームで迎えられて、たくさんのファンの方々に見ていただいたということで、チームを代表して感謝申し上げます。ありがとうございます。ゲームとしては最終戦、勝ち点5をしっかり獲得できたということ、大変うれしく思っております。本日はありがとうございました」
──4試合ぶりに先制点を取ることができましたが?
「この前の浦安D-Rocks戦とNECグリーンロケッツ東葛戦は入りの5分間ぐらいで、自分たちのペナルティなどでつまずいてしまいました。この反省を受けて、今日の試合はリーダー陣を中心に、特に試合の入りの部分を正しく入っていくことをメッセージとして出していたので、とても素晴らしかったと思っています」
──後半は点差を縮められてしまいましたが、受けに回ってしまった要因は?
「もちろん、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)さんが本当に素晴らしいアタックをしていたのもあると思いますが、われわれ自身が80分をとおしてゲームをどのようにマネジメントしていくのかを、まだまだ学んでいかないといけないと思います。そういった部分が、少し後半に点差を縮められた要因になったかと思っています」
──今季初出場の選手が多くいましたが、評価をお願いします。
「今日の試合はわれわれのリーダー陣、カテゴリーCの選手、そういった中心の選手が不在となり、またけがで直前にメンバーが代わるといった、本当に難しいシチュエーションだったと思います。そのような中で、若い選手たちがしっかりこのゲームに向けて本当に良い準備をして、この機会をつかみ取るためにアグレッシブにプレーしてくれたこと、成長の機会として捉えてくれたこと、彼らは素晴らしいパフォーマンスだったと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ケレビ ジョシュア ゲームキャプテン
「徳野洋一ヘッドコーチが言ったように、(リーグ戦)最後のホストゲームにたくさんのファンが応援にきてくれたことに感謝します。今日の試合では大きく変わったことがありましたが、勝ち点5を取れたことをうれしく思います」
──ジェームズ・ガスケルやフレディー・バーンズが不在の中での試合となりましたが?
「ジャマ(ジェームズ・ガスケル)とフレディー(・バーンズ)は本当に素晴らしいリーダーです。そんな彼らがいないことは良い意味でチャレンジだと思っていて、このチームには彼ら以外にもリーダーシップのある選手がいます。その選手たちのサポートをもらいながらできたので、やりやすかったです。末(拓実)や山口(知貴)、ベンチからはアキ(清水晶大)らが声を出してくれて、そういう人たちのおかげでチームをリードできたと思います」
──課題だったトライを取り切るところは改善できたように見えましたが?
「そうですね。敵陣22mラインに入ったところに課題があって、練習から取り組んでいたことが試合で出せて良かったです。だけど、トライを取った直後に釜石SWさんにトライを取られてしまいました。そういったシーンは順位決定戦や入替戦で続けてはいけないので、しっかり修正できるように頑張りたいと思います」
──順位決定戦や入替戦に向けて。
「このチームはキャリアなど関係なく、みんなが大事な戦力だと思うので、今日のようにいろいろな選手にチャンスがあると思います。僕もこのジャージーを着てプレーすることは確約されていないと思うので、練習からチャレンジして、自信をつけて試合に臨みたいと思います」
日本製鉄釜石シーウェイブス
日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ
「本日は素晴らしい環境の中、試合ができたことを非常に誇りに思いますし、開催にご尽力いただいた皆さまに感謝申し上げます。ゲームの内容としましては、試合の入りの部分で与えてしまったスコアが、内容と時間帯ともにあまり良くなかったので、そこがゲームに響いてしまいました。後半は良く点差を縮めて、最後まであきらめずにやってくれたと思っています。そういった部分は評価できると思います。次の順位決定戦に向けて、覚悟を持って取り組めるように挑みたいと思っています。本日はありがとうございました」
──後半はどんな部分が良くなりましたか?
「しっかりボールを動かすところと、そういったアタックに優れた選手が後半(交代で)入ることで、いい影響を与えられたのかなと思っています」
──逆転まで持っていくために必要なことは何ですか?
「途中まで勢いがあった中でも小さなミスがあり、そこが自分たちを苦しめたと思います。トライを取ったあとのディフェンスでもう1回我慢しないといけないところを我慢し切れず、簡単に取られてしまったのは、(逆転まで)届かない要因ではあったと思います。ボールを動かすことに対して自信を持ってほしいと思いますし、(我々のアタックが)そういった設計にもなっていますので、『自分たちが攻めるんだ』という意思を見せて、変に硬くならずに、自信をしっかり保ちながら順位決定戦に挑めればいいと思っています」
日本製鉄釜石シーウェイブス
サム・ヘンウッド バイスキャプテン
「今日はディフェンスを中心にかなり大事な瞬間というのがあったと思います。そこで反応が遅れたり、反応が十分ではなかったりと、そういったことによって相手に簡単にポイントを与えてしまったという面があったと思います。そして、アタックは最後のほうでチャンスがあったのに、そこで取り切れない、ミスをするところがありました。それでも、よく最後まで戦って盛り返していきました。そういうところで釜石SWのスピリットは見せることができたと感じています。こういう点は今回の学びとして、次の順位決定戦につなげていけるようにしたいと思います」
──順位決定戦に向けて。
「自信を持ってプレーするというマインドセットの部分は維持しつつ、これから順位決定戦に進んでいく中で、大事なのはスキルセットを正確に遂行することだと思います。ほかの2チーム(レッドハリケーンズ大阪、九州電力キューデンヴォルテクス)とは力の差はそこまで離れていないと思いますし、そうした中ではスキルセットを正確に遂行したチームが勝つと思っています。これはアタックでもディフェンスでも、今回チャンスがあったのにそれを生かし切れなかったところがありましたので、これから整理して、今後に向けて臨んでいきたいと思います」