NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第6節
2023年1月28日(土)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 21-19 横浜キヤノンイーグルス
死力を尽くした“ベストバウト”。竹山晃暉のタックルから始まった、ワイルドナイツ劇場
青と赤の対決は、今季ここまでのNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23・ベストバウトの一つとなった。
埼玉パナソニックワイルドナイツにとっては絶体絶命だった。竹山晃暉の2トライなどで後半4分までに14対5とリードを広げる展開。後半6分に堀江翔太らをピッチに投入、フロントローを入れ替える「勝利の方程式」を実践する。
しかし、世界屈指の選手であるファフ・デクラークを擁する横浜キヤノンイーグルスは想像以上に手強かった。アマナキ・レレイ・マフィの負傷交代直後のセットピースで、ボールを地面に置いて味方につなぐというサプライズなトリックプレーからエスピー・マレーがトライ。さらに、途中出場のシオネ・ハラシリが後半34分にパワフルな突進でディフェンスをなぎ倒して逆転トライを決めてみせた。
残り5分で14対19。埼玉パナソニックワイルドナイツは、リーグワン初年度のリーグ戦とプレーオフで16連勝、今季もリーグ5連勝でこの試合前まで21連勝中。このゲームでは連勝継続へ黄色信号、いや、赤信号が灯った。
埼玉パナソニックワイルドナイツのキックオフでゲームはリスタートした。それが「ワイルドナイツ劇場」開演の合図だった。竹山のタックルを皮切りに攻撃に転じると、5mラインからじわじわと陣地を進めてゴールラインへ迫る。
最後は、密集の背後からヴァル アサエリ愛がスペースへ飛び込んで同点トライ。「チーム全員で奪ったトライだった」(ヴァル)。ラストプレーとなったコンバージョンを、松田力也が確実に決めて逆転に成功してノーサイドとなった。その瞬間、ピッチサイドから控え選手たちが一斉に飛び出して、勝利の輪をつくった。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、竹山だ。
前半5分、後半4分にいずれも自身のショートパントをチェイシングしてボールを抑えてトライを奪ってみせた。後半のトライは、バウンドしたボールを、空中で抱え込んでボールを地面につけた執念のプレー。そして2トライ以上に価値があったのは後半35分、キックオフレシーバーに果敢なタックルを見舞って、相手のペナルティを誘ったシーンだ。彼のアグレッシブなプレーによって最後のトライが生まれた。
第2節〜第4節まで先発出場が続いた竹山だが、第5節では先発を外れてリザーブスタート。竹山は「(先発から外れたことで)自分のプレーを見直す機会になった。分厚い選手層のため毎試合が競争だが自分自身が成長できている」と前向きに捉えてトレーニングに向き合った。そして、今ゲームで大仕事を果たした。
ロビー・ディーンズ監督は「トライのほか、最後のキックオフでレシーバーをタックルしてペナルティを奪ってくれたことを大きく評価している。今日は価値あるプレーを見せてくれた」と賛辞を送った。
両軍が死力を尽くしたバトルは、王者・埼玉パナソニックワイルドナイツに軍配が上がった。この試合を観戦したファンは、リーグワンのレベルの高さとその魅力をあらためて知ることになっただろう。このカードがプレーオフで再び見られることを願いたい。
埼玉パナソニックワイルドナイツは2月5日14:30のビジターゲームでNECグリーンロケッツ東葛と対戦する。
(伊藤寿学)
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「予想していたとおり、難しいチャレンジになりました。横浜キヤノンイーグルスのみなさまにはちょっと不幸だったと思います。勝利への道筋を導き出した自分たちのチームを誇りに思います。簡単な試合ではなかったが、お互いが信頼し合って戦ったことが勝利につながったと思っています。横浜キヤノンイーグルスさんの健闘を讃えたいと思いますし、このリーグがどれだけ面白いかをあらためて教えてもらいました。今後も楽しみにしています。この経験を経て自分たちはより強くなっていけると思います」
──この逆転を予想しましたか?
「自信はなかったですが、選手たちを信じていました。この挑戦を乗り越えられると思っていました。結果的に、選手たちが勝利への道を探し出してくれました。ファンのみなさまに大きな感謝をしたい。みなさんの存在が、このチームに違いを生みますし、選手の力になります。最後に盛り上げてくれたことが勝利につながったと思います」
──2トライの竹山晃暉選手のパフォーマンスについて。
「とても良いパフォーマンスだったと思います。二つのトライは、神様に感謝したほうがいいですね(笑)。自分でアクションを仕掛けて、追い掛けていってくれました。それがトライにつながりました。自分のやるべきポジション、役割を果たしていました。最後のキックオフもしっかりと頑張って追い掛けてくれてレシーバーをタックルして、そこからペナルティを奪ってくれたことを評価しています。今日は目に見えるパフォーマンスが、評価できる結果だったと感じています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「本日もありがとうございました。ロビー・ディーンズさん(監督)が最後に言ってくれましたが、このゲームを経て、僕たちが強くなって、リーグ戦を戦っていくことがすべてだと思っています。今日は、しんどく、タフなゲームでした。これを勝ち切れ、埼玉パナソニックワイルドナイツの強さを出せたり、自分たちで勝利の道を探せたりできたのは良かったと思います。戦った選手たちを誇りに思いますが、試合内容は完璧ではなくて、勝って喜んで終わりではない。ここから何を学ぶか、どう成長するか。それが、今後の埼玉パナソニックワイルドナイツの結果、自分たちが欲しいものに手が届くかどうかにつながっていくと思います。これをしっかりとレビューして、来週1週間、努力したい。ここからもっと強くなれると思っています」
──ブレイクダウンの横浜キヤノンイーグルスのプレッシャーについて。
「横浜キヤノンイーグルスさんが僕たちに勝つために考えてきたことだと思います。それがあったからこそ自分たちのアタックがうまくいかなかったところかと感じています」
──試合終盤の戦いについて。
「あの時間帯で負けていて、普通であれば何か特別なことや、大きいプレーをして勝てない試合もありますが、今日の埼玉パナソニックワイルドナイツの選手たちは、いつもどおりプレーできたことが、最後で点数を取れた要因の一つだと思います。淡々とプレーを続けて、トライにつなげたことが埼玉パナソニックワイルドナイツの強さだと思っています。選手たちが、同じ絵を見続けたことが勝利につながったと思います。埼玉パナソニックワイルドナイツとして一つひとつの仕事をやり抜くことをいつも話しています。最後まで100%でやり続けたことが最後のアタックにつながったと思います」
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「悔しいですけど、チームが強くなる過程ではこれを乗り越えなければいけない。困難を乗り越えるのが強くなっていく試練です。ちょっと前のチームであれば内容に満足してしまったかもしれないが、いまは違います。今日はこの悔しさを忘れずに、ポジティブな部分はあったし、負けたけど、自分たちの力を認め、少しの差を探しながら、毎日、埋めていく作業が必要になります。チーム一丸で成長していきたいと思います」
──ブレイクダウンでファイトできていた。
「細かいところなどポジティブなところはあったと思う。アタックでは準備していたことがうまく出た時間はあった。ラグビーに対するベースは絶対に上がっていると思います。ただ、ここで勝ち切る強さを見せなければいけない。このチームがここから、トップ4に入って優勝争いするというカルチャーを作るには、そういうところが必要だと思う。この差を日々のトレーニングで埋めていくしかない。チームとしてハードワークしてやっていかなければいけない」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン
「勝てる自信はあったので、結果として勝てなくて残念です。いま持てる力を出し切った。だからこそ、ここからさらに成長して、もう一度、プレーオフで埼玉パナソニックワイルドナイツさんにチャレンジできるチームになっていきたいと思います。課題が毎試合出てくるので修正を重ねていって、スキのないチームになっていきたいと思います」
──リードしたあとの戦いについて。
「キックオフレシーブは自分たちの課題に挙がっているところです。今日の試合でもキックオフレシーブを2、3本、簡単に相手に渡してしまっていました。ああいうことをしてしまうと、トップ4のチームにはスコアにつなげられてしまいます。引き続き、改善していかなければいけないと思います」
──ディフェンスで意識したことは?
「やるべきことは毎試合変わらないので、自分たちのベースの部分をしっかりとやっていきました。ブレイクダウンで時間が作れたので、そこはできていたと思います」