2023.12.12NTTリーグワン2023-24 D1 第1節レポート(埼玉WK 53-12 横浜E)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスB
2023年12月10日(日)15:05 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 53-12 横浜キヤノンイーグルス

「最後の開幕戦」で快勝。現役ラストイヤーの「生・堀江翔太」をぜひ会場で

横浜キヤノンイーグルスのファフ・デクラーク選手をハンドオフで押しのける埼玉パナソニックワイルドナイツの堀江翔太選手。開幕に先立ち、今季限りでの現役引退を発表した

埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が開幕戦で横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)に53対12で勝利した。前半から攻守に圧倒した埼玉WKは小山大輝、ラクラン・ボーシェー、ベン・ガンターがトライを決めて得点を重ねた。前半終了間際に反撃を受けて22対12で折り返したものの、後半にもディラン・ライリー、山沢拓也らがトライラッシュを見せて計8トライで完勝した。

その瞬間は後半9分にやってきた。開幕戦直前に今季限りでの現役引退を発表した日本代表の堀江翔太が、ピッチサイドで空を見上げてからフィールドへ入った。ファンは、万雷の拍手を送るとともに「ラスボス見参」のタオルマフラーを掲げて、ドレッドヘアーのグラディエーターを迎え入れた。

チームは29対12とリードしている状況。フロントローに加わった堀江はチームに強度と闘志を注入して、ゲームの主導権をさらに埼玉WK側へ手繰り寄せていく。接点で力強いタックルを見せる一方で、巧みなポジショニングで攻守にモメンタム(勢い)を生み出した。ラグビーワールドカップ2023フランス大会王者・南アフリカ代表の司令塔ファフ・デクラークと競り合うシーンでもスタンドを沸かせた。

「デクラークはもちろん質の高いプレーヤーですが、相手に関係なく自分のプレーをするだけでした。今季限りでの現役引退を発表させてもらったが、今季1年は現役。チームのために戦うだけです」

ゲーム終盤の後半39分には、素早い切り替えからスペースへ走りパスをつなぐとクレイグ・ミラーのトライをアシストした。自分自身でもトライを決められる可能性もあったが、チームプレーを選択。勝利を決定付けた。堀江は「多くのファンに勝利を届けることができて良かった。1万2千人以上の観客が来てくれて最高の雰囲気を作ってくれたことに感謝している」と試合を振り返った。

ロビー・ディーンズ ヘッドコーチは「今季限りでの引退を聞いたときはもちろん驚いたが、すぐに『Congratulations!』と伝えた。その理由は、引退のタイミングを自分で決められる選手は限られているから。彼の功績は揺るぎないもので、彼の意志を尊重したい。プロフェッショナルとして、今日も素晴らしいプレーを見せてくれた」と激励の言葉を送った。

試合を終えた堀江は「よく考えたら、自分にとっては最後の開幕戦だった(苦笑)。気負わずに一戦一戦で役割を果たしていきたい。試合会場で生・堀江を見てほしい」と話した。今季の埼玉WKは、現役ラストイヤーとなる堀江とともに勝ち進んでいく。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(右)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「素晴らしい開幕戦だったと思います。初戦ということで難しさもありましたが、ラグビーワールドカップの選手が合流して短い準備期間になった中でこの結果には満足しています。どこを焦点にするかを伝えていましたが、それがしっかりと遂行できたと思います。

今季はタフな戦いになると思っています。だからこそ開幕戦が大事になります。メンバーの継続性があり、そこはアドバンテージでした。前半にリードしたあと、最後に詰められましたが、後半に自分たちのスタンダードを上げられたことが良かったと思います。

ラクラン・ボーシェー選手は、息子の誕生をお祝いする2トライを決めました。坂手淳史キャプテンは、開幕までチームをよくまとめて努力してくれたと思います。また地域の皆さんのサポートが開幕勝利につながりました。ファンがいなければ私たちの存在はありませんしファンタスティックなムードを作ってくれたことに感謝しています」

──坂手選手のリーダーシップとは?

「選手とチームからリスペクトを勝ち得ています。チームマネジメントにおいて、それはとても重要です。短い準備期間においては、リスペクトはリーダーとして必要な素質だと考えています。グループにおいて坂手選手の発言に影響力があり、チームが動いていきます。どんな状況でもチームを理解して行動してくれていると感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「ホームで開幕戦を迎えられて良い雰囲気でゲームをすることができました。先週、今週と宮崎合宿へ行って、横浜キヤノンイーグルス戦に向けての戦術を落とし込みました。うちは昨季とメンバーがほぼ変わらないので戦術理解がスムーズにいきました。今後の成長にフォーカスしてシーズンを戦っていきたいと思います」

──代表組合流から時間が少なかったが?

「代表以外のメンバーがプレシーズンで頑張ってくれていて、チームとして底上げがありました。そこに代表組が合流して良いドライブができました。また合宿を組んでくれたことでミーティングができて、コミュニケーションが深まりました。昨季(プレーオフトーナメント決勝で敗戦)の悔しさはみんなが持っていると思いますが、今季は今季であって、昨季ではありません。さらに成長していかないと目標は達成できません。チーム一体となって一戦一戦を戦っていきたいと思います」

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(右)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「ボコボコにやられてしまいました。1試合1試合、危機感を持ってやらないとこういう結果が起こりうる。序盤がポイントでしたが、あの展開でゲームプランが崩れてしまいました。ディフェンスが機能していなかったのですが、新しいことをやっているので、変化を恐れず戦っていきたいと思います。変化を恐れて元に戻すことはしたくないです。3、4試合までこういう展開が続くかもしれませんが、我慢強くやっていけばシーズン終盤につながっていくはずです。ただ、今日の最初の15分は残念でした」

──新しい部分とは?

「システムを変えたのですが、それが機能していません。ただ、それ以前に態度の部分など、そういうところがディフェンスで大事になります。これだけやられたら、次は良くなるしかない。殴られっぱなしではなく、次の試合で立ち上がっていく姿勢を見たいと思います」

──手ごたえは?

「今日の手ごたえはまったくないですけど、プレシーズンの手ごたえから、やることをやれば結果は出ると思っています」

──序盤に何が起きていたか?

「ここ2試合くらい、目の前のプレーというか、そういうところをおろそかにしてしまいました。気持ちが空回りしている部分もあります。そこがしっかりできれば戦えるはずです。次の試合で修正できるようにやっていきます」

──ハーフタイムは?

「勝つために何をしなければいけないかを伝えました。ラインアウトのところも取れていないが、コーチングの責任もある。準備したことがまったくできませんでした。先回りの仕事をしなければいけないですし、自分の仕事にベクトルを向けていかなければいけない。何かを間違えれば、こういう試合になることは全試合ありえます。だからこそ、しっかりとしたマインドセットでやっていかなければいけないと思います」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「こういうゲームでああいう入り方をすると、こういう結果になってしまうとあらためて感じました。ディフェンスのところはやってきましたが、アティテュードのところで準備が足りませんでした。今季は、どこに勝つのも簡単ではありません。危機感を持って戦っていきたいと思います」

──ゲームの入りは?

「入りの場面で一つずつズレてしまってやられてしまいました。ディフェンスの部分で最初の10分で崩れてしまったと思います」

──どのように修正していったか?

「自分たちのリズムを作れれば、アタックする時間が増えていきます。やるべきことは明確なので変えていきたいと思います。来週は、ホストゲームでファンに勝利を届けたいと思います」

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