NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第8節
2023年2月18日(土)13:00 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 vs 東京サントリーサンゴリアス
先輩の胸を借り、押したスクラム。東京SGが7連勝
『東京決戦』と銘打ったリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京) 対 東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)の一戦。東京SGが中村駿太の2連続トライでリードすると、BR東京もゴール前での攻防からネイサン・ヒューズが押し込み、詰め寄る。後半も激しいブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)での攻防が続いたが、二つのペナルティゴールをしっかりと沈めた東京SGが逃げ切り、18対7で勝利を収めた。
この試合でジャパンラグビー リーグワン初キャップを獲得したのは、BR東京の佐藤康。今週は「なんとなくそんな雰囲気を感じていた」そうだが、それでもメンバー発表で名前を呼ばれたときには「びっくりした」と素直な感情を口にした。出場は後半32分から。「スクラムを押そう、ラインアウトで攻めよう、ではなく、まずはいかに安定したセットプレーが組めるかに注力しました。100点満点ではなかったですが、良かったと思います」と安堵の表情を見せた。
「どれだけ自分のプレーで、勝利を引き寄せられるか。それができる選手になりたい。まずは来週、ホームで1勝。そのためにチーム全員で良い準備をして、勝ちにいきます」と次なる舞台を見据えた。
また、この日1トライのネイサン・ヒューズは、ファンへの感謝の気持ちを繰り返した。「勝っても負けてもいつも応援してくださっているファンの皆さまにはいつも心から感謝しています。ホストゲームではなかなか勝てていませんが、来週必ず強くなって帰ってきます。私たちの闘志には、火がついたままです」。
チャンスのとき。苦しいとき。声を出し、手をたたき、背中を押してくれるファンのためにも。来週こそホストゲーム初勝利を届けたい。
一方、「良いレベルでスクラムもラインアウトもセットができた」と笑顔を見せたのは、人生初めてのプレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得した東京SGの中村駿太。圧倒したスクラムの秘訣は「この3週間、ヒットの瞬間にパワーを出すことにフォーカスした」スクラム練習だったという。また2日前に両チームの選手が発表されると「(1番の小林)賢太はすごく気合いが入っていましたよ」と笑った。何を隠そう、“トイメン”の3番には早稲田大学の先輩である千葉太一の名が。後輩が先輩の胸を借り、スクラムで勝ち切った。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「フラストレーションの溜まるゲームだったなと思います。チームには自分たちのエフォート(努力)やファイトし続けるところ、トライラインを守るディフェンスは素晴らしかったと伝えました。お互いのためにとにかく必死に戦った姿勢は本当に誇りに思います。
今日はセットピースのところで影響があったかなと思います。スクラムペナルティはおそらく、予測ですが8から9。重要な局面でラインアウトをターンオーバーされたことが影響したように思います。ディフェンスで流れを取り戻そうとしたところで、セットピースがうまくいかず、流れを作れなかった。ここは修正が必要なエリアだと思います」
──前半、3番を千葉太一選手から柴田和宏選手に交代した意図について。
「柴田が入ってスクラムを良くしてくれたと思います。より良いプラットフォームを作ってくれました。とはいえ途中出場した人がうまくいった理由は、その人のスタイルや相手との相性もあると思うので。柴田が途中出場して良い仕事をしてくれたと思います。負傷により交代となってしまったことは予想外でしたね」
──セットピースを除けば、規律の意識について改善されたと捉えてよいか?
「セットピース以外のところでは、そんなに大きな問題ではなかったかなと思います。オフサイドの可能性、ペナルティは必ず1試合に何回かあるので、どうしても起きてしまうことです。ただ、連続して何回もペナルティを重ねないことが大事です。リーダーたちがしっかりと伝えながらやってきたので、改善傾向かなとポジティブに思っています」
──バイウィークを挟んだが、いつもと違うことをしたとすれば規律の部分ということか?
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦の敗戦はダメージがあったのですが、バイウィークは一旦離れる、時間を使ってリセットする良い機会だったと思います。次の6週間はこのチームにとって大事な6週間になります。メンタリティはしっかりとできているのではないかなと思います」
──東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)はショーン・マクマーンもサム・ケレビもいない中で我慢強く勝ち切った。日本人選手、ラック周辺の質において差は感じたか?
「ないです。もちろん、良い選手はいっぱいいますし、日本代表もいます。東京SGの強みは、そういう選手たちに頼らないところです。メンバーを見ても日本代表が10人くらいいます。
ですが、今日の2チームを比べたら、とても近い位置にいる、大きな差はないと感じています。あるとしたら、今日はセットピースです。
先ほども『選手を誇りに思う』と言いましたが、ポゼッションが全然ない中での18対7という点差。セットピースを修正して、自分たちにチャンスを与えてあげることが大事です。僕は自分の選手たちの味方をしたいと思います」
リコーブラックラムズ東京
山本昌太ゲームキャプテン
「タフなゲームでした。トップ4のチームを相手に自分たちができたこと、できなかったことがすごく明確です。ヒューイ(ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ)が言ったように、ファイトし続けたところはチームとして本当に良かった部分。ただ、セットプレーで自分たちにチャンスを与えてあげられなかったところが難しい試合になった要因だと思います。
今日の試合を含めて6試合続くので、しっかり自分たちにフォーカスして、次節に挑みたいと思います」
──チーム全体で良いディフェンスがあった。どうして守り切れたと思うか?
「東京サントリーサンゴリアスはアタックチーム。セットピースからの最初の3フェーズをしっかり抑えれば、自分たちのディフェンスにチャンスがあるとゲーム前から分かっていました。なので、この1週間、最初の3フェーズをしっかりディフェンスしようと、タックルのスキルよりもメンタル、マインドセットの部分を準備してきました。とにかく自分たちの強みはディフェンスで、とにかくディフェンスで勝つんだ、と。それが80分間、波はありましたが良い部分が多く出せたかなと思います」
──自身のタッチライン際でのナイスセーブについて。
「自分だけではなく、必死にゴールラインを守ることはそれぞれの仕事だと思っています。(ピーター・ヒューワット ヘッドコーチから『良いディフェンスでしたね!』と声が掛かる)」
──ラインアウトは少しナーバスになってしまったのか?
「フォワードがパニックになったようには感じていなかったのですが、でも勝負どころ、ここは絶対に押さえておきたいという部分でノットストレートもあった。勢いを自分たちで失ってしまいました。ノットストレートをしたという事実もそうですし、メンタル的にフラストレーションが溜まる展開に自分たちでしてしまった。苦しい展開になったかなと思います」
──フェーズを重ねた所でのアタックのテンポについて。
「ボールキャリーで勝負し、2、3人目がきっちり仕事をするのはチームとしての約束事。この試合だけではなくずっとやってきている部分ではありますが、相手のプレッシャーもあります。自分たちが思うテンポでアタックできず、クイックに出せることも少なかった。自分としても難しかったですが、ただ、そこはもっとうまくできたとも思う。そこは9番としてのスキルなので、しっかりと反省して次に生かしていきたいと思います」
東京サントリーサンゴリアス
東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督
「(齋藤)直人は理想が高いので納得していないかもしれないですけど(笑)、本当にこういうゲームになることは想定していたことなので。そのとおりになったな、と思います。その中でも最後よく勝ち切ってくれました。
特に強いリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)のフォワードに対して、スクラムでもラインアウトでもプレッシャーを掛けられたことが今日勝てた要因かなと思います。
こういうゲームを勝っていきながら学んでいく、これはこれから先、チームにとっては大きな財産になります。われわれにとっても良いゲームができたと思います」
──カテゴリーCの選手が登録メンバーにいない中で、日本人選手も若い選手を中心に成長している。どう捉えているか?
「カテゴリーCの選手たちが試合に出られないということは分かっていたことなので、そこは悲観せずにいます。われわれには良い選手がたくさんいますし、その選手が努力して成長力高くやっているチームです。そこについてはまったく心配していません。
それこそがやっぱりある意味、われわれのプライドだと思っています。この8試合でチームの成長を感じているので嬉しく思いますし、まだまだ成長できるなとも思います。
また、ゲームに出ているメンバーだけでなく、なかなか練習試合がない中でも30人強のメンバーがハードにトレーニングしています。昨日もノンメンバーのトレーニングで、自分の成長、チームの成長のために意欲的に一人ひとりが取り組んでいる姿を見て、やっぱりあらためて東京サントリーサンゴリアスはこういうチームでないといけないなと思いました。われわれの強みだなと再確認できたところです。チームとしてそういう空気が醸成されてきていると感じます」
──特にフォワードのどういうところが良くてプレッシャーを掛けられたと考えるか?
「スクラムでプレッシャーを掛けたかったところでプレッシャーを掛けられたな、と。スクラムでペナルティも取れたし、ターンオーバーもできた。想定していたとおりだと思います。
BR東京さんはラインアウトからのスコアが非常に多いチームなので、ラインアウトでもプレッシャーを掛けたかったのですが、(マイケル・)ストーバーグが出ているときはかなり高かったですね。なので、ここにプレッシャーを掛けるのは前半難しかったです。
ただ、相手のサインに対してしっかりと飛んでいたので、それがジャブとなって後半のノットストレート、フッカーへのプレッシャーを与えられたと思います。試合をとおしてプレッシャーを掛けることができました」
東京サントリーサンゴリアス
齋藤直人 共同キャプテン
「リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)とのビジターゲーム。厳しい戦いになることが分かっていましたが、最後まで何もかもうまくいかなかったな、というのが正直な感想です。ただ、その中でもしっかり勝ち切れたこと、ここから始まる6連戦を勝ってスタートが切れたことはポジティブな部分だと思います」
──うまくいかなかった部分とは特にどこか?
「試合の入りは良かったかなと思うのですが、それ以降、自分たちのペースで試合をしている感覚がなくて。一つの要因はブレイクダウン。BR東京がプレッシャーを掛けてくることは分かっていたけど、そこでクリーンなボールを出せなかったこと、その周辺でのペナルティ……。
それがペースを握れなかった一つの要因かなと思います」
──アタック面でどうしたらもっとテンポを上げられたと思うか?
「しっかりビデオを見なければ分からない部分もありますが、いま、試合を終えて感じているのはボールキャリアーがいろんな選択肢を持ちすぎているということ。良い選手がいて、オフロードやキックのオプションを持つ中で、最後迷った部分で相手の圧力を受けたところが前半序盤にはありました。
もちろんオプションを持つことは大切ですが、一意見として、チームとしてまず試合の入りは勢いを持つために極力良いキャリーを先行するなど、工夫していけるところかなと思います」
──攻め込んでいるときにペナルティゴールで3点を取ろうという考えはなかったのか?
「今日に限っては、前半はあまり考えていませんでした」
──相手がアタックしているとき、ブレイクダウンでテンポをある程度抑えられたと思うが、実際に近場でプレーしていてどう感じたか?
「ディフェンスについては試合中そこまで問題なかったのですが、ただ、規律のところだけ。自分たちのスペーシングやタックル、相手の外国人選手にはタックルを外される場面もありましたが、そんなに大きなゲインも許さなかったので良かったと思います。
ブレイクダウンについてはダブルで入れていたところがうまくつながったかなと思います。ただ、さらなる成長を、という意味では、(現状)しっかりバランスもとれて良いセットもできているので、あと最後はラインスピードをもう少し出せたらさらにプレッシャーを与えられるのでは、と思います」