2023.03.03第9節 SA広島 vs RH大阪-見どころ

マツダスカイアクティブズ広島(D3)

初勝利の勢いそのままに。初の福山開催で広島県を熱くする

今節は広島県東部にある福山市の福山通運ローズスタジアムで行われる。マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)として、福山で初めて開催する試合だ。中居智昭ヘッドコーチは「ラグビースクールは福山でも盛んにやっていますけど、これまで東のエリアで試合を開催できなかった。広島県全体のラグビー熱を盛り上げるチャンスだと思って良いゲームをしたい」と意気込みを語っている。

SA広島は、ラグビーを生観戦できる日を楽しみにしていた福山の方々に好ゲームを見せる態勢が整っている。前節のクリタウォーターガッシュ昭島戦で今季初勝利を飾り、スタンドオフの龍野光太朗は「(ジェイコブ・)アベルが来てくれたことによって自分自身もすごくゲームをコントロールしやすかった。9番と10番で良い雰囲気を作れた」と確かな手ごたえを感じていた。

加入したばかりのニューランド出身のジェイコブ・アベルは早速、チームの中でも大きな存在感を放っている。中居ヘッドコーチも「彼はいろんなアイディアを持っているのでオプションも増えていますし、全員の視野も広がってきています」と話している。ジェイコブ・アベルの加入によって好循環が生まれ始めているタイミングだからこそ、龍野は「自分たちの勢いをぶつけたい。実力を試せる機会になるのですごく楽しみですね」と首位を走るNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)戦を心待ちにしていた。

バックスが効果的にオープンスペースを突いていけるかが重要なポイントになるが、RH大阪の強力なフォワードの前進を止めることでペースも手繰り寄せていきたい。前節に3トライの活躍を見せた武田知大は「強い外国人選手のアタックを激しいタックルで返すと相手も慌てるのかなと思うので、魂で止めます。何かを懸けないと勝てないと思うので、魂を懸けます」と話して心と体の準備を行っている。

SA広島の選手たちは強い気持ちを持ってぶつかっていく。福山通運ローズスタジアムで4日14時にキックオフする一戦は、エキサイティングな80分間となるに違いない。

(寺田弘幸)

前節は3トライの活躍。マツダスカイアクティブズ広島の武田知大選手


NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(D3)

仲間がいる喜び、ラグビーができる喜び。初先発の男は「最高」の仲間へパスをつなぐ

前節、九州電力キューデンヴォルテクスとのビジターゲームに勝利し、チームとして積み重ねてきたものに手ごたえを感じたNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)。中5日で再びビジターゲームに臨むNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3第9節を前に、マット・コベイン ヘッドコーチは、「前節で良いパフォーマンスを出せたので、そのまま高いレベルでプレーし続けるということが大切」だと語っている。

今節の10番には、これまで先発メンバーに名を連ねていた川向瑛に代わり、呉嶺太が出場する。呉が先発出場するのは、2022年に加入して以降、初めてのことだ。

呉が関西学院大学を卒業したのは、21年3月。RH大阪に加入するまで、キャリアに1年間の空白がある。

「大学卒業後は、オーストラリアに渡って、プロラグビー選手を目指すつもりだった」が、コロナ禍の影響でその予定は白紙に戻ってしまった。それからは、日本で加入できるクラブを探し求めてトライアウトを受けながら、「家から自転車で20分ほどのところにある公園で、トレーニングをしていた」。毎日一人で公園に行き、ほかの人の迷惑にならないように配慮しながらボールを壁に向かって投げては取ってを繰り返し、公園で食事をとってから、また別の場所にあるジムに自転車で向かう。そんな日々を過ごした。

22年3月にRH大阪のトライアウトを受けた。スタンドオフに負傷者が出ていたことも相まって、4月から2カ月間のプロ契約を結ぶことができた。6月はまた公園に行く日々となったが、7月にはまた2カ月間のプロ契約を結んでもらい、入社試験を経て9月に正式に社員選手として加入している。

入社する前には再び海外に挑戦しようとしていたが、そのころにはもうRH大阪に加入したいという気持ちのほうが大きくなっていた。

「ボールがたくさんあるし、マーカーなどの用具やグラウンドを囲むネット、ジムもあって、通りがかる人に気を遣うことなく練習に集中できる。そして、一人じゃない。最高です。この環境でラグビーをさせてもらいたい」と、今度は自らの意志で海外に行く予定を断ち切った。

移動日前日の練習では、初先発への「緊張を抑えようと」、ゴールキックの練習を最後までグラウンドに残って繰り返していた。そんな呉について、キャプテンの杉下暢はこう話していた。

「初先発の彼がゲームコントロールしやすいよう、まずはフォワード勢が相手より優位に立って試合を進めていけるようにしたい」。

試合会場のグラウンドに立つときは、もうあのころのように一人ではない。呉自身も自信を持っている正確かつ丁寧なパスを「最高」だと感じたチームの仲間につなぎ、勝利に貢献したい。

(前田カオリ)

1年のブランクを経てトライアウトから這い上がってきた、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪の呉嶺太選手



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