NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3(リーグ戦) 第11節
2023年3月19日(日)14:00 ニンジニアスタジアム(愛媛県総合運動公園陸上競技場)(愛媛県)
マツダスカイアクティブ広島19-62 NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
ひたすらに、がむしゃらに辿り着いた100キャップ。その原動力は「精一杯応えたい気持ち」
マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)は愛媛県で、そして四国でも初めてとなるNTTジャパンラグビー リーグワンの試合をニンジニアスタジアムで開催した。試合前にはラグビークリニックも行い、地元の子どもたちと触れ合う機会を作っている。
この試合では、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)に、100キャップを迎える選手がいた。鶴田諒は日川高校、東海大学を卒業後の2011年からNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安に在籍し、今季からRH大阪に加入。「正確な試合数は分からないけれど、これまでは両方でちょうど半分ずつぐらい、差があっても片方が60%になる程度だと思う」と、これまでのキャリアでは、スクラムハーフとウイングで出場を重ねてきている。
100キャップ目のこの試合でも、ウイングで先発し前半に2トライ。後半9分からはスクラムハーフを務め、これまで積み重ねてきたことを惜しみなく発揮して勝利に貢献し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチも獲得した。
100キャップを迎える数日前には、「最近は、チームによっては50キャップ目などの節目にSNSで『おめでとう』と言ってもらっているのを見かけるけれど、自分のときにはそういうのもなかったので、いつ50キャップだったのかも分からない。ファーストキャップのときに祝ってもらって以降はそんな機会もなかったので、どう祝われたらいいか、分からない(笑)」とあまり実感がない様子だったが、多くの人たちに祝ってもらったことで「やっと実感が湧いた」。セレモニーの場を設けてくれたSA広島と愛媛県ラグビー協会を筆頭に、たくさんの感謝の気持ちを語った。
中学3年生のとき、授業でラグビーをやったことがきっかけで、キャリアをスタートすることになった。自らの強い意志で始めたわけではなかったが、「ラグビーを見たこともないところから始め、知識もないですし、ただひたすらにがむしゃらに先生の言うことを聞いて、自分を使ってくれることに対して精一杯応えたい気持ち」だけでやってきた。それがいまでは、プレーや試合に向けての準備を「プロ意識」(マット・コベイン ヘッドコーチ)と評してもらうものとなった。
もちろん、これで終わりではない。シーズンもキャリアもまだ続く。長年の経験で培ったものを生かし、ここからさらにチームに貢献してくれることを期待したい。
(前田カオリ)
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭 ヘッドコーチ
「本日は、愛媛県で、また、四国全体としても(NTTジャパンラグビー)リーグワンの試合を初めて開催するということで、開催に向けて多大なご尽力いただいた方々に感謝申し上げます。そのような試合でしたので、われわれはいいゲームを見せたいと思って臨みましたが、試合をとおしてNTTドコモレッドハリケーンズ大阪さんの力強いフィジカルのラグビーになかなか立ち向かうことができず、大敗してしまいました。試合の中では、その流れを変えようと自分たちのアタックの形をいくつか出せた部分もありましたが、やはり試合をとおしてフィジカルの部分で後手、後手に回ってしまったことが、今回の敗因と感じています」
──前節に続く勝利を収めたかったと思いますが、今日足りなかったのはどのような部分でしょうか?
「自分たちのマインドセット、戦術の準備は、きちんとできていましたけれど、やはり大元となるラグビーの格闘技的な部分と言いますか、そういったところについて、練習の中で本当の意味での“闘い”のところの準備は足りなかったのではないかと、感じています」
──愛媛県、そして、四国で初めてリーグワンの試合を行えたことについて、どう感じていますか?
「われわれが活動する広島を始め、中国地方や四国地方を見てみると、高校の全国大会などにおいてもなかなか上位に入る機会が少ないのが現状です。ラグビー人口を増やすことも含め、もっともっとラグビーの盛り上がりが地域に必要だと感じていました。今回こうした機会をいただけたので、少しでもこの地のラグビーに貢献できればと思って、午前中からラグビークリニックなども行い、選手と触れ合えるような機会を作らせてもらいました。そのような活動ができ、とてもうれしいです。ありがとうございました」
マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗 キャプテン
「本日はありがとうございました。フィジカルで押されてしまい、受け身になってしまいました。試合の序盤に受け身になってしまったところが、最終スコアにもつながってしまったと感じています。自分たちのメンタル、勝ちにこだわるところでもっと準備が必要だったなと思います。あと3試合あるので、この結果を引きずらずに、残りの3試合でしっかり3勝できるように、今回は2週間の準備期間があるので、次に向けて準備していきたいと思います。ありがとうございました」
──メンタル面で「もっと準備が必要だった」と思われたのは、何が足りないと感じたからでしょうか?
「勝つためにこちらから攻める場面をもっと作っていかなければいけないのに、相手の勢いを受けてしまう局面が多かった。『こちらから仕掛ける』というメンタルが足りませんでした。僕自身も少し意識が足りなかったと反省しています。試合の中盤や後半のところでは少しずつ勢いを出すこともできていましたが、最初から100%出せないと、どんな相手でも勝てないので。やはり途中から出すだけでは、足りなかったと感じています」
──愛媛の子どもたちが、大きな声援を送りながら観戦を楽しんでいる姿が印象的な試合でした。
「試合中もバックスタンドから子どもたちの声援がずっと聞こえていましたので、その声援はとても力になりました。本当はもっといい試合を見せられればよかったのですが、もし、またここで試合をさせてもらえる機会があれば、そのときには声援に勝利で応えられるようにしたい。これからもしっかり頑張っていきます」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ
「まず試合に勝利できて、とてもうれしく思います。得点を多く重ねられるようになってきたことは、本当にポジティブに捉えています。もちろん、常に課題はあります。例えば相手がボールを持ったとき、自分たちにミスタックルもありました。けれど、鶴田諒選手の記念すべき100キャップの試合で、チームとして勝利できたことは本当にうれしく思いますし、彼自身もこの勝利にとても貢献してくれ、プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれたので、それについても本当にうれしいと感じています」
──新チームとして始動しましたが、完成度も高くなってきたのではないでしょうか?
「お互いに関係性を作り、少しずつ向上させてきたことで、それぞれの力を集めて発揮できるようになってきました。ただし、私はコーチという立場であるので、ここで満足せず、チームを常に成長させないといけません。ディフェンスに関しては、ほかの部分よりも完成させるのに時間が掛かるものだと思っていますが、まだ課題が残っているので、シーズン最後までの残り数週間で、さらに良いチームにしていきたいと考えています」
──100キャップを迎えた鶴田諒選手について、どのように見ていますか?
「昨季も私は彼と同じチームにいて、ディフェンスコーチをしていましたので、ディフェンス力があると感じています。また、彼にはプロ意識があります。長年培った経験と、しっかり準備をすること、仕事をやり切ること、チャンスがあったら絶対につかむこと。そういうところが、彼の魅力だと思います」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
杉下暢 キャプテン
「まず、鶴田諒選手の100キャップ目の試合を勝利で終えることができて本当によかったと思っています。ここ2試合で先制される展開が続いていたので、今回は自分たちから仕掛けて先制点を取ることを目標としていたので、それを実行することもできました。セットピースを中心にどんどんエリアを取ってドミネート(相手を圧倒)していくことができたので、そこはチームとして一試合一試合積み上げてきたところが力になってきていると感じています。ただ、前半の最後のところで自分たちのセットピースのミスやイージーなハンドリングエラーなどでちょっとモメンタム(勢い)を失ってしまい、試合の最後にトライを取られてしまいましたので、もう一段レベルを上げていけるようにやっていきたいです」
──チームとして積み重ねてきたことが、結果にも表れるようになってきました。
「セットピースに関しては、スクラム、モールともに相手をドミネートする機会が増えました。アタックに関しても、シーズン当初に比べるとスコアに違いが表れていますし、我慢強くボールをキープしてトライまで結びつける機会が増えました。ただし、ディフェンスに関しては、まだレベルアップできる余地が残っています。ディフェンスコーチとともにチームとしてもう一度みんなで大切にしている部分を見つめ直し、残り3試合でよりレベルアップしていけると思っています」
──キャプテンの目から見た鶴田諒選手の魅力はどういうところでしょう?
「たくさんありますが、一つだけ挙げるならば、常に前を見て状況判断をし、その判断が正確なところ。それがチームに落ち着きとモメンタムをもたらしてくれているので、残り3試合もチームをしっかり前に進めていってくれると思います」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
鶴田諒 選手
──100キャップ目の試合で、ウイングとスクラムハーフの両方を務めて勝利で終え、プレーヤー・オブ・ザ・マッチも獲得されました。いまどのように感じていますか?
「100キャップを達成したんだな、という実感がやっと湧きました。(スタートは14番だったので)9番に入ることは確定していませんでしたが、自分がやってきたことをこの試合で全部できたらいいなと思っていました。トライは狙って取れるわけではないので、チームメートと冗談交じりで『インゴールまでサポートするから、最後はちょうだいね』などと話をしていましたが、本当にトライを取ることができて幸運でした。でも、トライできたことやプレーヤー・オブ・ザ・マッチを頂けたことよりも、やはりチームメートが試合に勝って祝福してくれたことが一番うれしかったです」
──長く続けてこられた中で、大切にされてきたことは?
「中学3年でラグビーに触れ、高校から本格的に始めました。ラグビーを見たこともないところから始め、知識もないですし、ただひたすらに、がむしゃらに先生の言うことを聞いてやってきました。そんな自分のことを高校、大学、社会人で使ってくれるチームがありましたが、自分を使ってくれることに対して精一杯応えたいという気持ちしかありませんでした。いまもその気持ちだけです。そのときに与えられたポジションで出られるよう、常に良い準備をして試合に臨めるようにしています」
──最後に、支えてくれた方々へのメッセージをお願いします。
「今日の試合はビジターチームであったにも関わらず、セレモニーの場を設けてくださったマツダスカイアクティブズ広島さんと愛媛県ラグビー協会の方々に本当に感謝しています。ありがとうございました。
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪のスタッフも、胸元に100キャップ目であることが刺繍された特別なユニフォームや記念Tシャツなどをサプライズで準備してくれました。本当に感謝しています。チームメートは、この試合に来ていないメンバーも含め、何度も『おめでとう』と言ってくれましたし、今日、試合に出たメンバーは『この試合を絶対に勝って祝おう』という意気込みで試合に臨んでくれ、実際に勝ってくれました。
2011年から昨季までプレーしていたNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安の元メンバーからは、試合前日にメッセージ動画をもらいました。それを見て込み上げるものがあって、下手な試合を見せられないと励みになりました。また、東海大学の同期を始め、たくさんのメッセージをもらいました。本当は一人ひとりに『ありがとう』を伝えて回りたいですが、この場を借りて、『ありがとう』を伝えさせてもらいます。
100試合出られるような丈夫な体に産んでくれた両親にも、あらためて感謝しています。そして、去年7月に千葉から大阪に移る決断をする際、一緒に来てくれた家族の存在がなければ、いま、ここに自分はいませんでした。いつも支えてくれている家族に、いちばん大きな感謝を伝えたいです」