中国電力レッドレグリオンズ(D3)
フル出場を続ける前キャプテン。「シンプルに負けたくない」から頑張れる
開幕から全7試合にフル出場中。体を張ったプレーでチームを引っ張り、フィールドで頼れる存在感を放つ。「ひさしぶりに思う存分、試合に出られてうれしい」。今季、32歳の松永浩平に充実感が漂う。
この数年はけがに悩まされてきた。昨季も2度の肉離れにより、キャプテンながら出場できたのは5試合だけ。そこから今季はトレーニングを見直し、けがなくシーズンを戦える体作りに励んできた。
「肉離れを防ぐために、新谷(健一)S&C(ストレングス&コンディショニング)コーチらと相談しながらトレーニングをして、体重も減らしました。シーズン中もできるだけ全体練習にプラスでトレーニングをして、なるべく強度を下げないようにしています」
26歳のときからキャプテンとして中国電力レッドレグリオンズをけん引してきたが、今季からはその役割を若手二人に託した。6年間背負ってきた重責から解放されたことも大きい。
「キャプテンのときはチームのことを一番に考えていたけど、いまは自分のパフォーマンスでどうチームに貢献するかを考えている。自分にベクトルを向けられるので、気持ち的にはラクですね」
心身ともに充実している松永は、22年に加入した松田進太郎とフランカーの“松松コンビ”でコンスタントに安定したパフォーマンスを発揮。今季のスローガンでもある「成長」のためにも、松永は9歳年下の後輩を誘って自主練習に取り組んできた。
「僕から誘っていて、彼から『やろう』って言われたことはないです(笑)。でも、僕が練習したいのもあるし、バックローのレベルを上げたいのもあるので。ちょっとでも教えることがあればいいなと思ってやっています」
松田はそんな先輩のことを「一番ヤバい人です(笑)」と言う。「試合の走行距離で僕よりちょっと走れなかっただけで、『負けた』って悔しそうにしている。ほぼ10歳上でもそんなにずっと高いモチベーションでやり続けられるのがすごい。だからずっと試合に出られていると思います」
松永本人も「ベテランでもまだ成長したいし、常にうまくなりたいと思っている」と衰えない向上心を持つ。その根底にあるのは、「負けず嫌い」だ。
「モチベーションはこのチームに入ってから全然変わっていない。シンプルに負けたくないから。味方にも、目の前の敵にも、自分にも負けたくない」
今節はマツダスカイアクティブズ広島とのダービーマッチ。松永にとって生まれ育った広島は「大事にしたい場所」。そんな地元でのプライドを懸けた試合も負けたくない。充実のシーズンを送る元キャプテン、その心は闘争心に満ちている。
(湊昂大)
マツダスカイアクティブズ広島(D3)
リベンジを期す、特別な“広島ダービー”。「感動を与えられるようにしたい」
“広島ダービー”は、広島のラガーマンにとって特別な舞台である。
広島で生まれ育ち、広島工業高校から天理大学を経てマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)に所属している大竹智也は、12日にBalcom BMW Stadiumで行われる中国電力レッドレグリオンズ戦に向けて、人一倍強い想いを持って準備を続けている。
「昔から“ダービー”は本当に良い試合になっていましたし、昔から広島のラグビーと言えばマツダ(現在のSA広島)と中電さん(現在の中国電力レッドレグリオンズ)でしたから、その試合に出られることは本当に光栄なことです。自分の後輩も試合を見ていると思うので、感動を与えられるようにやりたいですね」
今年で30歳を迎える大竹が感じてきた、“広島ダービー”の歴史とは──。
「ダービーの戦績は、僕の感覚では五分五分です。いつもの試合と違う緊張感がありますし、中電さんのこともすごくリスペクトしている。中電さんはマツダ戦になると闘志が全然、違うんですよ(笑)。今回は僕たちも闘志を前面に出していきたいと思いますし、個人的な部分でも負けないようにしたい。スクラムとセットピースで圧倒したいですね。試合に勝っても、そこで負けたら勝った気にならないので」
大竹が、ダービーを大いに盛り上げる一人になるに違いない。
チーム全員も、今季の開幕戦で行われた“広島ダービー”に敗れた悔しさは、いまも忘れることなく胸に刻んである。昨年の12月17日に雨の降るBalcom BMW Stadiumで敗れてから、今季は苦しいシーズンを過ごしてきたが、チームは歯を食いしばって前を向き、状態は上向いてきている。
前節に福山通運ローズスタジアムで開催されたNTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦は前半に退場者が出たこともあり、大差で敗れたが、その中にも収穫はあった。
キャプテンの﨑口銀二朗は「後半はディフェンスを立て直してこちらから圧力を掛け直すシーンを作れたところと、自分たちの気持ちが切れることなく戦えたところは大きな成長。アタックに関しても敵陣に入って自分たちがリズムよく攻める形を作ってトライを取り切れた。そこをしっかりと自信にして中国電力レッドレグリオンズ戦に勝てるようにやっていきたい」と話している。
(寺田弘幸)