NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第7節
2024年2月25日(日)14:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 20-25 マツダスカイアクティブズ広島
どちらに転ぶか分からない広島ダービー。
“ラグビーボールのような激闘“はSA広島に軍配
今季2度目の広島ダービーも、最後まで勝敗が分からない熱い試合となった。2月25日に中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)とマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)が対戦。お互いが点を取り合うシーソーゲームとなり、ラストプレーまでもつれ込んだ接戦をSA広島が25対20で制し、前回逆転負けの雪辱を果たした。
ラグビーボールはどう転ぶか分からない。試合終盤5点差を追って攻め続けた中国RRは、ブザーが鳴ったあとに逆転の望みをつなぐラインアウトのチャンスを得た。これはサインミスでボールが流れたものの、いち早く反応したSA広島も予想より大きくバウンドしたボールをつかめず。それを中国RRが回収して、また望みをつないだ。
しかし、直後の密集で痛恨のノックオン。その瞬間に試合の決着がついた。
観客2,421人の感情を揺さぶるようなラストシーンだった。「楕円球の持つ魅力のような、どっちに転ぶか分からない展開だった」とSA広島の中居智昭ヘッドコーチは表現し、「常に焦りもありつつ、いつでもチャンスを狙うというお互いのプレーが最後の最後まで面白いゲームにした」と両チームの健闘を称えた。
SA広島は前回のダービーで21点差を返されて逆転負け。試合後に「最後は気持ちの部分で足りないものがあった」と話していた中居ヘッドコーチは、今節に向けて「情熱を持ってプレーしよう」とチームに話したという。その結果、選手たちが熱く戦い抜いた姿を見て、「最後のピンチになったときも前を見続けてプレーしてくれた。それは今回の最大の成長だと思う」と中居ヘッドコーチは胸を張った。
ただ、時に情熱のぶつかり合いだけでは勝てないのも事実だ。中国RRは主導権を握るラストプレーで冷静さを欠いて自ら好機を逃す形となった。岩戸博和ヘッドコーチは「取りに急いだところがあった。もう1回時間をかけて、自分たちの形に持っていければ違う展開になっていたかもしれない」と話し、西川太郎共同キャプテンも「焦りがあったのか、もっと落ち着いてやれば良かった」と悔しさを噛みしめた。
中国RRにとっては悔し過ぎる敗戦だ。それでも、「ダブルタックルでしっかりボールに絡んでいく部分は体現できたし、規律の部分もペナルティを少なく守ることができた」(西川)と手ごたえはあった。これまでの課題と向き合い、成長してきたからこそ、最後まで面白い試合になったはずだ。ワンプレーの重みを痛感したこの悔しさも、成長の証であり糧になる。
今季の広島ダービーは2試合とも熱い接戦で1勝1敗。4月6日の第3戦はお互い絶対に負けられない一戦となる。ラグビーボールのように試合展開がどう転ぶかは分からない。だが、また熱い広島ダービーになるのは間違いない。
(湊昂大)
中国電力レッドレグリオンズ
中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ
「まずはマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)のみなさま、リーグ関係者のみなさま、ありがとうございました。規律を持ったディフェンスとアタックができ、ペナルティの数が少なくて、以前からフォーカスし続けていた部分ができていました。反省点は、SA広島さんのゴール前の厳しいディフェンスによって、トライスコアまでいかなかったところ。7点差と逆転できるロースコアに持ち込めたのはプランの一つだったので、しっかり我慢できたと思いますが、トライスコアできなかったところとスコア後のリスタートで相手にボールが転がる展開になっていたので、そこはしっかり修正しないといけないと思いました。最後は5点差で非常に悔しい結果になりましたが、SA広島さんとはもう1試合残っていますし、あとは中5日で日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)との試合があるので、しっかり修正して次にチャレンジしていきたいです」
──ラストプレーでゴール直前に迫ったものの、ミスがあって試合終了になりました。最後のシーンはどう見ていましたか?
「いろいろな準備をしてきましたが、取り急いだところがあったと思います。その前のラインアウトでミスしたところで、やられたなと思いました。でも、そこからウチのボールになったので、もう1回ゆっくり時間を掛けて、自分たちの形に持っていくところを誰かがリーダーシップを持ってやっていけたら、もうちょっと違った展開になったかなと思います。そういったゲームコントロールは、経験値を積んでいかないといけないと思っています」
──トライやペナルティゴールで得点を重ねた宮嵜隼人選手のパフォーマンスについてどう感じましたか?
「7点差以内のスコアで、引き締まったゲームを作れたのは、宮嵜のキックがあったからですし、しっかり彼自身の役割ができていたと思います。前節はディフェンスの部分で反省点がありましたが、彼なりに考えてしっかり修正してくれました。次の試合も出場したら、引き続きいいパフォーマンスを期待しています」
──今季の広島ダービーは1勝1敗。第3戦はどんな試合にしたいですか?
「この2試合ともしびれるような試合展開が続いているので、最後の3つ目は勝利したいと思います。常に成長し続けた上で、最後の広島ダービーをいい結果で終わらせたいです。とはいえ、それまでに試合が続くので、われわれの形、役割、責任を選手自身が理解して、あと半分のシーズンでしっかり成長していきたい」
中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン
「本日はありがとうございました。すごく悔しい試合になりました。ディフェンスの部分では、前節から相手の大きい外国籍選手に対してダブルタックルでボールに絡んでいこうと話はしていて、そこは体現できました。規律の部分も、ペナルティを少なく守ることができて良かったと思います。敵陣22mに入ったあとのアタックではペナルティゴールでスコアできていましたが、トライを取り切るところまでいけず、最後の最後も自分たちのミスで終わってしまう悔しい試合になりました。もう一度、細部をしっかり準備して、次の日野RDさんは強いので、しっかりチャレンジできるようにやっていきたいです」
──トライやペナルティゴールで得点を重ねた宮嵜隼人選手のパフォーマンスについてどう感じましたか?
「ペナルティゴールはチームとしてもゲームを組み立てていく上ですごく大きいですし、彼のキックはすごく信頼しています。ペナルティをもらって、タッチラインに出して、モールという選択肢もありますが、そればかりだとフォワードの足も削られるので、そういった点でもゲームを組み立てる上ですごく助かっています」
──今季の広島ダービーは1勝1敗。第3戦はどんな試合にしたいですか?
「昨季も1試合目に勝って、2試合目で負けて、3戦目も負けてしまったので、昨季と同じようにならないようにしたいです。次はSA広島さんのホストゲームなので声援に負けないように、こっちもはね返したいですし、最後もいいゲームになると思うので勝ち切れるように頑張りたい。それまでに数試合あるので、1戦1戦成長していきたいと思います」
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ
「広島ダービー第2戦、両チームが熱い試合をプレーできたことをうれしく思います。ゲームの内容は中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんの激しいプレッシャーでなかなかスコアできない状態が続き、自分たちのリズムに持っていくことができず、最後までもつれたゲームになりました。アタックでミスもあったのですが、一番やってはいけないペナルティの部分が多く出てしまい、自分たちから流れを失うような時間帯がありました。オフェンスではフィジカルの部分で全員が体を張ってファイトして、いいプレーができたと思いますが、それはルールの中で正しいプレーで行うことで、よりいい流れが自分たちにくると思うので、そこは次回に向けて修正していきたいです」
──前回の広島ダービーで「最後は気持ちで負けた」と言っていたが、今回の試合に向けてメンタル面でどう準備してきましたか?
「情熱を持ってプレーしようとミーティングで話して、練習中でも試合中でも選手がそういった声掛けをするようになりました。最後のピンチになったとき、そこでも前を見続けてプレーしてくれたところが、今回の最大の成長だと思います」
──最後の最後まで分からない展開でしたが、どう見ていましたか?
「私はスタンドで見ていたんですが、楕円球の持つ魅力のような、どっちに転ぶか分からない展開でした。祈る思いもありましたし、選手を信じて、最後の最後は選手たちがやり切ってくれたなと思います。あとは、中国RRさんが常にプレッシャーを掛け続けていたので、常に焦りもありながらいつでもチャンスを狙うというお互いのプレーが、最後の最後まで面白いゲームにしたと思います」
──プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたボーディン・ワッカ選手のパフォーマンスについてどう感じましたか?
「前半はエリアを取るマネジメントのところで、前でプレーすることができて、すごくいい流れを作ってくれたと思います。その中で、ポジションを変えて、後ろに入ったところでスコアをしてくれました。彼がボールを持って前に出るとチームが乗ってくるので、彼のユーティリティー性を含めたところで今日はすごく良さが出たと思います」
──後半にボーディン・ワッカ選手から齊藤遼太郎選手にキッカーを変えた狙いを教えてください。
「後半に入った齊藤もペナルティゴールの成功率を含めて高い精度を持っている選手です。彼がフレッシュな状態だったので、(ボーディン)ワッカが疲れた状態で蹴るよりも、キッカーを変えることを選びました」
マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン
「本日もありがとうございました。試合は中国RRさんの激しいプレッシャーと自分たちのペナルティで流れを作れなかった時間が長かったですが、しっかりスコアを重ねられて勝ち切れたところは自分たちの自信につながると思います。アタックのミスやペナルティのところは修正していかないといけないので、また来週の試合に向けて全員でいい準備をしていきたいです」
──見事なキックパスで最初のトライを演出しました。アシストのシーンを振り返ってください。
「外からキックパスのコールが出ていたので、アドバンテージはなかったんですけど、思い切って蹴りました。その結果、インゴールに飛んでいって、ちょっと長かったと思いましたが、うまくバウンドしてウイングの中村悠人がしっかり押さえてくれたので、良かったです」
──最後の最後まで分からない展開でしたが、どう見ていましたか?
「ディフェンスは、崩されているというより自分たちのペナルティが原因で自陣に入られることが多かったので、ペナルティさえしなければ、しっかり守り切れると思っていました。チームを信じて、(交代後にベンチから)見ているだけでしたが、守り切れて良かったと思います」