NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第11節
2023年3月11日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 24-62 トヨタヴェルブリッツ
「自分も負けていられない」。
同級生の「化け物」に刺激を受け、姫野和樹がリーグワンを盛り上げる
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第11節の交流戦でトヨタヴェルブリッツ((以下、トヨタV)を迎えた花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)。今季初勝利を目指した花園Lだったが、勝ち名乗りを受けたのは今季初の連勝を目指したトヨタVだった。
花園Lにペナルティゴールで先手を取られたもののあっさりと連続トライで逆転に成功。試合の主導権を握ったトヨタVだったが「花園L側としてもすごくいい形でわれわれにプレッシャーを掛けた」とベン・ヘリング ヘッドコーチも認めたとおり、花園Lはかみ合い始めてきた攻撃陣が反撃のムードを作り出す。
トヨタVがリードしていた中で、花園Lの心を折るトライを決めたのが前節も試合を決定づけるトライを奪っていた姫野和樹だった。
2019年のラグビーワールドカップで日本代表の8強入りに貢献し、全国にその名を売った姫野。現在、開催中のワールドベースボールクラシック(WBC)で日本中を熱狂させている侍ジャパンの大谷翔平の存在に、強く刺激を受けているという。
親交のある大谷とはともに1994年生まれで同学年。WBC開幕前にも連絡を取り合ったという姫野は、大谷に負けじとこの日は「二刀流」を見せつける。
共同キャプテンとして「チームのことはしっかりと僕に任せてもらえればいい」とチームをけん引する姿勢を見せ続けながらも、前半33分にはラックを乗り越えて、2試合連続のトライに成功する。
鋭くパワフルな動きは、強靭なフィジカルを誇る花園Lのワイマナ・カパのタックルを寄せ付けないものだった。
「僕たちの強みはシンプルなコリジョン(衝突)に対して、強く行くこと。自分たちで(相手の守備に)穴を開けていくフォワードの力強さは自分たちの武器」と姫野は振り返ったが、トヨタVの表看板でもあるフィジカルの強さが随所で発揮された一戦となった。
共同キャプテンとして、そして2試合連続のトライゲッターとしてトヨタVをけん引したパワフルな「二刀流」は大谷を「あれは化け物でしょ」と冗談めかして絶賛したが、同時にこうも付け加えた。
「自分も負けていられない。まずはリーグワンでしっかりと見せていこうと思います」
もうその目は次なる東芝ブレイブルーパス東京戦を見据えている。
(下薗昌記)
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ
「今日は暑いということで、われわれは走り勝とうと。どんどんボールを動かして走り勝とうとしたんですけども、チャンスのところで前半、ラインアウトを取れずに相手に取られてトライになってしまった。本当に小さいところですが、それが大きなところにつながっている。後半になると1対1のところでやられ始めて、それをスコアにつながれてしまっている。
アタックをしていい部分もあるんですけど、取り切れない部分もあり、なかなか難しい試合展開が続いています。毎試合、毎試合いい部分は出てきているので、いい部分、いい時間帯を多くしていこうと。そして良くない時間帯、良くないプレーのところを良いプレーに変えていこうと、試合後に話をしました。大きなけが人がいないので、また次に向けて準備してやっていきたいと思います」
──アタックのプレーヤーの呼吸が合ってきて、いいアタックができている局面が増えてきたと思いますが、そこが改善されているのはどのあたりに要因があるのでしょうか。
「役割の部分ですね。役割が明確になってきている。それから、ブレイクダウンの寄りの部分で、そこを意識して球を出すというところですね」
──今日は特に相手のフォワードにそれほどブレイクダウンで完全にやられたように思えませんが、要所で球出しが遅れていました。原因をどのように考えていますか。
「原因はセットアップのところですね。セットアップが遅いとやはりレースにも負けてしまうので、そこで負けてしまっていますね。1対1で体の大きい選手に負けていた選手もいましたが、そこはもう変えられないので早くセットして早く攻める、早くアタックをする。そして自分たちの展開に持っていくことを多くやりたかったんですけど、それが出せませんでした」
花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン
「同じくラインアウトのところでのミス、また我慢し切れずペナルティをしてしまったところ。前半はそこで自分たちが流れを作り切れなかったと思います。試合は続くので、しっかりと修正して自分たちのスタイルをもっと長い時間出せるようにやっていきたいと思います」
──ラインアウトのところでは、相手がうまく競ってきて苦しんだのか、それとも自分たちのスロワーと中の呼吸が悪かったのか、どちらでしょうか。
「100%自分たちに原因がありました」
──それは今日に限ったことなのか、今季なかなかうまくいっていないのか、どちらでしょうか。
「いえ、特に今日の試合ですね。スロワーのスキルも、ジャンパーのスキルも、リフターのスキルも、ラインアウトに入っていくまでのセットスピードも含めて自分たちは見てのとおり、そんなに高い選手がいっぱいいるチームではないのでクイックネスであるとか、細かいところで正確さを出さないと勝てないんですけど、今日はそこを欠いてしまったというところでラインアウトの成功率の低さにつながったと思います」
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ
「まずはチームのパフォーマンスを誇りに思います。ショートウイークの中でリーダー陣が冷静さを見せて、それぞれコミットしてくれたと思っています。花園近鉄ライナーズ側としてもすごくいい形でわれわれにプレッシャーを掛けてきたんですが、それに対して一つにまとまってプレーを遂行することができました」
──本来のトヨタヴェルブリッツの持っている力としては不満の残るここまでの成績だと思いますが、先週と今週で初めての連勝になりました。シーズン序盤といまの時期とで良くなってきた部分があると思いますが、どのあたりだと考えていますか。
「われわれとしては本来やりたいことがよりクリアになってきていると感じています。特にディテールの部分、詳細にフォーカスしたことで、チームとしても自信が得られたと思いますし、それがチーム内に広がっているとも感じます。勝つことは習慣でもあるので、今後、勝っている状況の中でこういった習慣が継続していくと思います。チームとしては常にコネクトできています。ハードな時期を乗り越えて、より固くなった絆がいまのような結果につながっていると感じます」
トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹 共同キャプテン
「攻守のチームのエフォートに関して、誇りに思います。試合に関しては結果的に見たらすごくいい、ハッピーな結果ですけど、その中でも課題も多くあったので、そこを次は修正して臨みたいと思っています」
──具体的にどのあたりに課題を感じたのでしょうか。
「自分たちのエリア取りの部分で、もう少しオーガナイズしながらエリアを取ることが必要だと思いました。自分たちのトライシーンを見ても、キックでカウンターを受けてしまってトライを取られるパターンが多かったので、少しオーガナイズしながら、シンプルにキックしながら、いいチェイスラインを作りながら、やっていく必要があると思います。また、この役割については来週1週間をかけてしっかりと落とし込まないといけない部分だと思います。
あとディフェンスで少し簡単に取られてしまった部分があったので、そこはインディビジュアルのタックルなのか、もう少しチーム的なコネクションの部分なのか、そこをもう少しレビューしながら、来週に向けてやっていきたいと思います」
──本来のトヨタヴェルブリッツの持っている力としては不満の残るここまでの成績だと思いますが、先週と今週で初めての連勝になりました。シーズン序盤といまの時期とで良くなってきた部分があると思いますが、どのあたりだと考えていますか。
「僕もベン(ベン・ヘリング ヘッドコーチ)と同じように、セイムページを見られているところがすごくいいと思います。一人ひとりの役割を一人ひとりがハードに100%やるところ、そしてチームのことはしっかりと僕に任せてもらえればいいし、そういった意味でいまはチームとしての最大限の力を、コネクションを持ってやれているところが自分たちの力を最大限発揮できている要因だと思います」
──前半、相手のラインアウトでボールを奪ってトライというシーンがありましたが、相手のディフェンスのどの辺りに穴があると思って試合に臨まれたのでしょうか。
「僕たちの強みはシンプルなコリジョンに対して強く行くこと、自分たちで穴を開けていくフォワードの力強さが武器なので、そこに関してフォワードは、モールなどもけっこう対応しましたけど、そういったフィジカルの部分でしっかりと圧倒していく。そこで圧倒すればバックスにまたスペースができますし、フォワードの仕事が重要と考えていた中で、その期待にフォワードが応えてくれたと思います」
──交流戦が終わって、これから東芝ブレイブルーパス東京や埼玉パナソニックワイルドナイツとの試合が始まることになりますが、これからの試合に向けて一番大事になることは何でしょうか?
「自分たちのポテンシャル、僕たちの持っているタレントを全員でしっかりと信じて信念を持って、コネクションを持って、チームとして戦うところが一番大事になってくると思います。そのためにリーダーとして僕がしっかりと先頭に立って引っ張っていくということがすごく重要になると思います。そこに対して僕自身も少し一歩引いていたところもありました。共同キャプテンという立場もあるし、年も重ねて、下の世代も育てないといけないといういろいろなものがあったんですけど、しっかりと自分が先頭に立って、チームを引っ張っていく。そこは自分の役割だと思っているのでそこをしっかりとリーダーとして、チームをまとめて全員でチームとして戦っていきたいと思います」
──アーリーエントリーのアイザイア・マプスア選手の印象を教えてください。
「ポテンシャルはすごくありますよ。いい選手です。すごくいい選手だし、頭を使ってラグビーもできる選手なので今後伸びてくると思うし、いつもマプス(アイザイア・マプスア)には試合前に『ミスを気にしなくていいから、思い切ってやれ』と言っていますけど、本当に今後が楽しみな選手だと思っています」
──WBCが開催されていますが、日本代表として刺激を受けている部分があれば教えてください。
「快勝していますね。サッカーのワールドカップもそうですし、WBCもいまやっていますが、日本中を熱狂させているというところで、正直、ラグビーも今年ワールドカップもありますし、負けていられないという刺激を受けています」
──大谷翔平選手とも親交があると思いますが、印象やメッセージをやりとりしたことがあれば教えてください。
「あれは化け物でしょ(笑)。化け物ですよね。こないだ愛知に来たときにLINEしたんですけど、それぐらいですかね。『ひつまぶし食って帰りや』と言って終わりましたけど、すごいですよね、化け物ですね。自分も負けていられないなと思います」