NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスB
2024年1月14日(日)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 14-47 トヨタヴェルブリッツ
「特別で気合いの入っていた」古巣戦。
“トヨタVのフィフィタ”が花園を席巻
花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)がトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)を迎え撃った一戦には、9,032人の観客が詰めかけた。しかし、大勢のファンが楽しみにしていたであろうニュージーランド代表のボーデン・バレットは体調不良で急きょ欠場。同代表のアーロン・スミスも前半15分で負傷交代するアクシデントが発生したが、トヨタVは47対14で勝利し、今季3勝目を手にした。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、ラグビーワールドカップ2023フランス大会に出場したシオサイア・フィフィタ。日本代表の僚友でもある姫野和樹は「彼は突出したボールキャリアーだと思いますし、それは本当にワールドクラスな部分」とシオサイア・フィフィタの推進力をこう評したが、トンガ生まれの『剛の男』は、『柔』も併せ持つことを開始早々の2分に決めたトライで見せつける。
昨季までのチームメートを振り切って左サイドを疾走すると、自ら蹴り上げたボールを拾って華麗に先制トライ。「ここ(東大阪市花園ラグビー場)でプレーするのは特別。昨季までいたチームとやれるのでワクワクしていました。気合いが入っていましたし、トライを決めたらこのポーズをやろうと思っていました」と両手で地面を指差すお馴染みのパフォーマンスを披露。緑色のジャージーに身を包んだシオサイア・フィフィタにとって、古巣への感謝と“トヨタVのフィフィタ”をアピールするものだった。
そのシオサイア・フィフィタの輝きは、花園Lで同期入団だった木村朋也に火をつけた。「『いきなり来たな』って感じでした。でも取り返してやろうというよりは、自分のやるべきことをしたかった」と前半14分には木村にとってディビジョン1での初トライを奪い、反撃ムードを作り出した。
シオサイア・フィフィタ自身、今季初となる1 試合2トライにはならなかったが、後半35分にも姫野が称した「突出したボールキャリアー」ぶりを発揮し、三浦昌悟のトライにつなげた。
フィジカルバトルを得意とするトヨタVの新たな武器になりつつあるシオサイア・フィフィタ。「しっかりと自分の色を出した上で、チームのシステムを信じて今季を戦いたいと思います」。人懐っこい笑顔は花園L時代そのままだが、すっかりトヨタVの一員になった「サイア(フィフィタの愛称)」は、まだその本領のすべてを見せ切ってはいない。
(下薗昌記)
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ
「ホストゲームでの勝利を期して戦おうということで、今日のテーマはバトル。接点で勝つということでした。外側のウイングがボールキープするところでしっかりとキープできなくて、なかなかトライに結び付かなかったところが、思いどおりにいかなかった部分です。
試合の流れとしてはあれぐらいの得点差で近づいていくこと(が狙いでした)。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんは後半に得点が少ないチームなので、私たちのフィットネスで勝つというプランどおりにいっていたんですけど、最後のフィニッシュまで行けなかったところがあの得点差になったかなと思います。次節までにブレイクダウンと、やはりペナルティがあるのでそこを修正して、また(試合を)迎えたいと思います」
──モールで押し込まれる場面が特に前半は多かったと思うのですが、要因をどう考えていますか。
「トヨタVさんは前回のゲームでもモールが強かったです。モールでペナルティを取ってそこから敵陣に大きく入ってくるパターンが(トヨタVは)どこのチームに対してもありますので、そこは修正してきましたが、まだまだ(相手に対する)武器のところまでは使えなかったというところだと思います。押されたあと、『その次は第2パターンで』という指示も出していましたが、それがまだ習熟されていなかったところはありますので、そこはもう一度、この試合だけでなく前の試合でも見られた弱点だと思われていると思うので、対策を考えて次のゲームにしっかりと修正してもっていきたいと思います」
花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン
「今週1週間、大きな試合という点もそうですけど、フォワードに対して『フォワードのタックルで勝つ』、『まずはユニットバトルで勝つ』ということを掲げてやっていましたが、前半のセットピースでは、特にラインアウトが思うように安定しませんでした。モールに対しての準備をしてきたんですけど、実際に出すことができず、そこでのペナルティを取られました。実際にやりたかったことと逆のことにフォワードパックとしてはなってしまいました。その中で前半、あのような点数だったということは、そこさえしっかりとできればもっといい戦いが前半からできたんじゃないかと思っています。結果自体は厳しいですし、真摯に受け止めていますが、また違った角度から見れば自分たちにフォーカスして修正さえできれば、もっともっと面白いゲームができる手ごたえがつかめたゲームになりました」
──結果は出ていないものの、昨季と違って希望の見えるような内容の多い試合も多いと思います。さらにここを突き詰めていけば勝ちにつながるという手ごたえはどのあたりにありますか。
「温かいお言葉をありがとうございます。基本的に勝負の世界に生きているので、希望が見えたとしても負けているのが現状で、すぐチームが変わって勝てるわけではないですが、この結果に慣れないように絶対にしないといけません。希望の話でいうと、まだまだフォワードパックとして自分たちの味を出せなかった、獲得率が悪かった、モールでペナルティをしてしまった、バックスの簡単なハンドリングエラーがあった、ブレイクダウン周りでまだまだやりたいようにできなかった……。やりたいことはほぼほぼ頭に入っているんですけど、実行ができていないというのは、本当に練習(で解決する)しかないと思っています。もう第5節が終わりましたが、練習から見つめ直して、本当にステップアップしていかないといけません。『希望が見える』ということで、昨季と同じようにはなりたくないので、もう一度気を引き締め直してやっていきたいと思います」
──後半、流れを持っていけそうな展開で、少し相手陣内でペナルティが多かったように思いましたが、それについてはどう感じていますか。
「誰しもが敵陣でラグビーをしたい。その中でペナルティをしてしまうと、一気に中盤まで帰ってくることになります。中盤でラグビーをしているときにペナルティをしてしまうと一気に自陣に釘付けになってしまう。エリアマネジメントの一つの中にペナルティをしないというのがセットになっていると思っていて、ただ、そこでの細かいディシプリンが守れないのが現状です。おっしゃるとおり、そこが直って、ペナルティの数がもっと減っていけばいいと考えています。おそらく、いまディビジョン1で一番ペナルティが多いのはウチなので、そこも大きな修正点の一つです」
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ
「まず試合の結果に関しては満足しています。セットピース、モールなど非常に負荷の多い試合の中で選手も足をつる様子もあったんですけど、まずはわれわれの仕事をやり切ったということが今回の試合でできたと思います」
──今日の試合で、急きょボーデン・バレット選手がメンバーから外れた理由を可能な範囲で教えてください。
「ボーデン・バレットに関しては今朝、風邪で体調不良ということで。アーロン・スミスも同じく試合の序盤で交代となってしまったんですけども、これまで出場機会が限られていた丸山凜太朗やティアーン・ファルコンといった選手たちが試合の出場機会を得られたのは同時に非常にいいことだったと感じています」
──次節の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦に向けて、カギになる点を教えてください。
「BL東京さんは非常にタレントもそろっていて、フィジカルが強いチームなのでまずはそのフィジカルの点を超えるということなんですけども、それ以上に重要になるのは私たち自身に焦点を当てるということです。来週はバイウィークに入るので、まずコンディションとメンタルの面を整えて今季の大一番に向けて準備を整えたいと思います」
トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン
「自分たちの花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)に対するプランニングがハマったと思います。今回はフォワードで勝負するという気持ちが前面に出て、トヨタVらしいラグビーをお見せできたかなと思いますけど、後半の途中でトヨタVのフォワード陣もすごく頑張って少し足がつるなど、そのあとテンポを上げられなくてかなりタフなゲームになりました。それでも、自分たちとしては結果に満足しています」
──前節の逆転負けがあっただけに、後半の入りは配慮されたと思いますが、自分たちにフォーカスしたのか、花園Lもいい試合をしていただけに相手を意識したのかいかがでしょうか。
「おっしゃるとおりで、前節の負けから学ぶことはたくさんありました。特に後半、しっかりと自分たちのラグビーをまずすること、そして今回、試合のはじめに選手たちに伝えたのは『今回は自分たちのチャレンジだということ。前回の反省からしっかりと一貫性のあるパフォーマンスをすることが僕たちの今日のチャレンジだ』ということです。それがすごく機能していたと思いますし、みんながすごく意識して自分の役割を遂行していたと思うので、自分たちがチャンピオンになるためには80分間をとおして一貫性のあるパフォーマンスをし続けないといけないと思いますので、いまにフォーカスして、プロセスにフォーカスしてそれを積み上げていきたいと思います」
──今季のトヨタVには世界的なスターも加入しましたが、シオサイア・フィフィタ選手も今季、花園Lから加わりました。チームメートとしてシオサイア・フィフィタ選手の存在をどう評価されますか。
「サイア(シオサイア・フィフィタ)はいつも元気で、彼は突出したボールキャリアーだと思いますし、(その点は)本当にワールドクラスな部分だと思います。古巣の花園L戦というところもあって彼自身も気合いが入っていましたし、彼は一貫して開幕から素晴らしいプレーをしていますので、このままやっていってほしいと思います」
──後半は少し我慢の時間帯が続きました。後半の最初に波に乗れなかった要因をどう考えていますか。
「後半の最初、うまく波に乗れなかったのはありますけど、それはやっぱり花園Lさんも素晴らしいハードワークをしてきたし、前半の課題を修正するというところで、ラグビーは全部がうまくいくスポーツではないですし、うまくいかないときにどこまで我慢できるか。そこでモメンタムを変えて、敵陣に入ってプレーするかというところがすごく重要になってきます。なので、うまくいかないときに、自分たちとしてはしっかりと同じ絵を見て、キャプテンとしてはただ闇雲にハードワークするのではなくて、しっかりと目的を示してあげることでその方向性に向かってハードワークする。自分たちはモメンタムを変えて、敵陣に行くという目的をチームに教えることで、そこに向かってハードワークしていきました。チームとしてコネクションを持ってハードワークすることによって、また自分たちのペースに変えることができたので、そこはすごくいい点だと思います」
──次節のBL東京戦に向けてカギになる点を教えてください。
「ベン(・ヘリング ヘッドコーチ)が言ったとおりで、本当に昔からBL東京とトヨタVのフィジカルバトルはかなり見ごたえがあって、昔から『どっちのほうがフィジカルは強いんだ』というのがあるので、まずはそこでトヨタVが優位に立つこと、フィジカルバトルでしっかりと優位に立つことがキーになると思いますし、そこは自分たちの土俵なので自信があります。ベンも言ったとおり、自分たちにフォーカスして、バイウィークとなる1週間で心身ともにリラックスしてBL東京戦を迎えようと思います」