NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第10節
2023年3月12日(日)13:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 19-27 マツダスカイアクティブズ広島
頼もしきキャプテンの帰還。
チームに必要な自信と思い切りを実践
15点差を追う試合終盤、鳥飼誠が縦へ勢いよく走り出した。味方からパスを受けると、そのまま相手のディフェンスラインを切り裂く。鮮やかな突破……かと思われたが、パスのタイミングが合わず、スローフォワードの判定。ペナルティにはなったが、苦しい展開の中でも鳥飼らしい思い切りのいいプレーが光った。
今季から中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)の共同キャプテンに就任した鳥飼は、開幕戦の直前に肉離れで離脱。さらに、2月5日のクリタウォーターガッシュ昭島戦で控えメンバーに入ったものの、ウォームアップで指を負傷し、復帰目前で再び離脱を余儀なくされた。
「何やっているんだろう……」。けがが続いて、共同キャプテンとして不甲斐なさを感じていた。スタンドから試合を見守り、チームが勝利すれば素直にうれしかったが、負けたときはフィールドで一緒に戦えないもどかしさが募った。
約3カ月の離脱を経て、3月12日のマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)戦で今季初出場のときがきた。「僕にとっては今日の試合でどれだけ見せられるかが大事」と当然ながら気合いが入る。同時に「『力が入り過ぎると空回りする』とみんなによく言われるし、家族にも『楽しんで』と言われました」と冷静さも忘れたくなかった。
フィールドに入る直前、鳥飼は笑顔だった。「正直、緊張していました。意識的に笑顔だったわけではないですけど、無理に気負わず、このゲームを、このラグビーを楽しもうと思って入りました」。
中国RRは試合を通じてSA広島の勢いに押され、ミスやペナルティも多く、いい流れをつかみ切れずにいた。途中出場の鳥飼は、「思い切ったプレーが自分のできること。勢いを持ったプレーで流れを変えたかった」。鮮やかな突破を見せたシーンもペナルティにはなったが、果敢に相手の動きのスキを突いた結果だった。
今季2度目の広島ダービーを19対27で落とした。それでも、中国RRは試合終盤に意地の2トライを決めて、チームとして最後まで戦う姿勢を貫いた。「そこは次節につながるいいマインドだった」と鳥飼は振り返る。「(終盤のような)自信を持った強いプレーを選択して、思い切ってやることがいまのチームに必要だと思う」。
次戦はバイウィークを挟んで、3月25日の九州電力キューデンヴォルテクス戦。変わらずチャレンジャーとして強敵を迎え撃つ中国RRに、頼もしい共同キャプテンが帰ってきた。
(湊昴大)
中国電力レッドレグリオンズ
中国電力レッドレグリオンズ
久保惠亮フォワードコーチ
「まずはリーグ運営の皆さま、マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)のスタッフ、選手、ファンの皆さま、今日はありがとうございました。ゲームについてはSA広島さんのフィジカルとセットプレーのクオリティーのところでしっかりやられたなという印象です。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)としては、やりたいことが出せなかったゲームだったと思います。試合も続きますので、修正すべきところは修正して次に臨みたいと思います」
──やりたいことが出せなかった要因を教えてください。
「大きな要因としては二つあると思っています。一つは前節の九州電力キューデンヴォルテクス戦がタフな試合だったので、ちょっと疲労が溜まっているというのが大きな原因だったと思います。もう一つはセットピースでSA広島さんのプレッシャーを受けたところが大きいと思います。セットピースのところは中国RRのラグビーにおいてキーファクターなので、ちょっとうまくいかなかったと思います」
──広島ダービーでの敗戦をどう捉えていますか?
「今日は中国RRのホストゲームだったので『悔しい』の一言に尽きます。8点差という結果だけを見ると、さほど離れていないように見えますが、内容もSA広島さんに圧倒されたので、すごく悔しい試合だったと思います。これで1勝1敗になりましたが、SA広島さんともう1試合できるので、もう1回チャレンジして勝てるように頑張っていきたいです」
──復帰した鳥飼誠選手のパフォーマンスについて?
「今週はメンバーインしながらトレーニングしてきて、アジャストしてきた部分も、まだ完全にアジャストできていない部分もありました。それでも、今日のパフォーマンスとしては彼本来の力を出してくれたと思います」
中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン
「本日はありがとうございました。今日の試合は相手の強い外国籍選手のアタックに対して、ウチのディフェンスが受けに回ってしまいました。前半で相手にペースを握られて、そこでの失点が後半に響いたと思います。また、マツダスカイアクティブズ広島さんはモールアタックに対してのディフェンスが素晴らしかったので、こちらがやりたいアタック、モールでのトライを阻止されたところが得点力不足につながり、最後の8点差という数字に表れたと思います。試合の終盤に残り少ない時間で2トライを取れたのは収穫ですが、その前から今日はセットピースでのミスも多かったので、もう一回修正して、また中国レッドレグリオンズのラグビーを体現できるようにやっていきたいと思います」
──広島ダービーでの敗戦をどう捉えていますか?
「今日はお客さんがたくさん来てくれて、その中で勝ってみんなで喜ぶのが目標だったので本当に『悔しい』の一言です。1勝1敗になって、次の4月の試合は真っ向勝負だと思います。最後はウチが勝って、来てくれたみなさんと一緒に喜びたいです」
中国電力レッドレグリオンズ
鳥飼誠 共同キャプテン
──けがから復帰して今季初出場でした。ひさしぶりに試合に出た感想を教えてください。
「正直に言うと、すごく緊張していました。前回のリザーブに入ったときはハプニング(ウォームアップ中にけがをして再離脱)があったので、準備を徹底しようと思っていました」
──試合に入るときはどんなことを考えていましたか?
「自分の持ち味であるディフェンスでしっかり体を張るというところを意識していました。そこで自分の中でのリズムを作って、ゲームに挑もうと思っていました」
──広島ダービーに出場した感想を教えてください。
「声出し応援があって会場はいい雰囲気でしたし、自分たちのプレーに対してお客さんがたくさん声援をくれたので、グラウンドに出てプレーできたのはすごくうれしかったです。個人的には勢いのあるプレーをしたかったので、ディフェンスもアタックも迷わずプレーをしようと思いました。前半はマツダスカイアクティブズ広島が勢いのあるプレーにフォーカスしていて、逆に中国レッドレグリオンズはそれができず、ミスも多かったと思います。最後の15分ぐらいは自分たちの時間ができたと思いますが、トライまでに時間がかかってしまい、逆転につながらなかったと思います」
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ
「本日のゲーム、ありがとうございました。広島のチーム同士の戦いで、たくさんのお客さんにご来場いただき、その中で自分たちのラグビーを存分に見せることができたと思います。ゲームの内容は、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんの厳しいプレッシャーの中、なかなかスコアにつながりませんでしたが、セットピースで自分たちの強みを出せて、そこがスコアにつながったところが今日の収穫だと思います。試合終盤はボーナスポイントを狙いにいきましたが、中国RRさんの力強いプレーとプレッシャーを上回ることができず、最後は失点してゲームを終えました。そこでも自分たちに課題を気づかせてくれましたし、広島のライバルとしてすごくリスペクトしているチームなので、お互い切磋琢磨しながら、これからも広島のラグビーを盛り上げていきたいと思います」
──開幕戦のリベンジも懸かった広島ダービーでの勝利。率直な気持ちを教えてください。
「ものすごくうれしいです。そして、ちょっとホッとした部分もあります。開幕戦で相手の勢いに流れをつかまれて、その中でわれわれはもがくこともできず、気持ちの部分でもお客さんにいいプレーを見せられなかったのが心残りでした。今日は試合の入りから選手が気持ちを出して、ミスが起こってもお互いにカバーしていて、そういったところがすごく出た試合になったのでうれしく思います」
──前節の大敗からどう準備してきましたか?
「大きなところは変えていなくて、コーチ側としては戦い方のマネジメントの部分で、シンプルにエリアを取りつつ得点のチャンスをモノにするところを意識しました。そういう面において、後半はその課題が出たところはありますが、前半はしっかり戦うエリアをうまく使いながら自分たちの形に持っていけたので、いい修正ができたと思います」
──声出し応援を受けた感想を教えてください。
「やっぱり自チームを応援してくれる声は頼もしいですし、選手に力を与えてくれました。みんなが応援してくれて、会場全体が一つになれるところが魅力だと思います。今まで我慢してきたぶん、選手も声援を受け取りながら一緒にラグビーを楽しめたと思います」
マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン
「シンプルに勝てたことがうれしいです。内容としては自分たちがしているアタックやディフェンスをしっかり発揮することができました。その反面、終盤に中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんの激しいプレッシャーを受けて自分たちにベクトルを向け切れずに失点してしまったところはまだまだ自分たちの課題だと思います。残りの4試合に向けてその課題を修正して、チームとして成長していきたいと思います。ありがとうございました」
──開幕戦のリベンジも懸かった広島ダービーでの勝利。率直な気持ちを教えてください。
「開幕戦で負けたのが今季は一番大きかったと思うので、勝ててうれしいです。中国RRさんは広島ダービーのときにさらに力を発揮してくる傾向があるので、それに対して自分たちが受けずに、こちらからしかけて勝てたことは、開幕戦からの自分たちの成長を感じました」
──声出し応援を聞いた感想を教えてください。
「グラウンドでひさびさに応援の声を聞いて力になったので、それに応えられるようにこれからもやっていきたいと思います」
マツダスカイアクティブズ広島
イシレリ・マヌ選手
──広島ダービーでの勝利を振り返ってください。
「マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)と中国電力レッドレグリオンズにとってはビッグゲームで、ダービーが近づくと両チームはお互いに熱くなります。SA広島の選手たちは今週ずっと気合いが入っていました。いい準備をして僕らの戦いができたので、最終的に勝つことができました」
──自身のパフォーマンスを振り返ってください。
「この試合でプレー機会をもらえてとても興奮しましたし、感謝しています。このチャンスをしっかり受け止め、できる限り長くプレーしたいと思っていました。僕はいつもパワフルで速いプレーをしたいと思っています。今週は自分のスピードとパワーを使って相手選手の外側を狙う準備をしていきました。今日はそれがうまくいき、今週の目標を達成できたと思います」
──プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた感想を教えてください。
「とてもうれしいです。この数週間は個人的にハードでしたが、この試合で80分プレーできたことに感謝していますし、もっと向上していきたいと思います。来週のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦では強い相手と対戦できることを楽しみにしています」