リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスA)
BR東京のスクラム=「盛り上がるもの」。
肩のぶつけ合いは絶対に譲れない
今季初の3連勝で勢いに乗るリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)。順位も今季最高位となる6位に上げ、第12節で迎えるはスクラム職人を多数擁する静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)だ。
BR東京の先発を務める1番と2番は、ともに天理大学出身の谷口祐一郎と佐藤康。大学選手権を制覇した経験を持つフロントローたちである。
一学年下の佐藤は、谷口について「2番の気持ちが分かる1番として、いつも助言をくれます」と感謝する。実は谷口、専門はプロップだが、年代別の日本代表ではフッカーを任されてきたのだ。
スクラムは『準備が8割』とよく言われる。スクラムを組む前の準備、セットアップでまずはフォワード8人が固まっているか。良い姿勢を保ったまま、組むことができるかが勝負どころとなる。だが、どうしても、スクラムの優劣は専門家でなければ見分けることが難しい。そこで一つ、簡単な楽しみ方を教えてもらった。
「レフリーが『クラウチ・バインド・セット』のコールを出し、『セット』と同時に両チームが肩をぶつけ合います。その瞬間、どちらがセンターラインを取るか。そこを見ていただくのが、一番分かりやすくて楽しいと思います!」(谷口)
BR東京にとってスクラムとは、「盛り上がる」もの。スクラムを組み、勝てば、バックスも観客も、組んでいるフォワードもみなが笑顔になる。BR東京にとって大切な、勢いを生みだすことができるのである。
「3連勝したどの試合でも比較的良い形でスクラムを組むことができていました。あらためてスクラムはゲームに大きな影響を与えることを全員が再認識できたように思います」(谷口)
だからこそ、静岡BR戦では「まずは安定したスクラムを組みたい。もちろん静岡BRさんが強いことは分かっています。でも、前節で僕たちのミスを修正したら負けずに組めることが分かりました」と佐藤は自信をのぞかせる。
そのために重要となるのは、相手のスクラムキング・3番を自由にしないこと。1番の谷口は「しっかりと頭を前に出す。相手3番側に力を向けるのではなく、あくまでも真っすぐ右肩に力を込めていきたい」と意気込んだ。
毎週火曜日、夜遅くまで開催されるフロントローだけのスクラムミーティング。日ごろの練習も、暗くなるまで肩をぶつけ合う姿が見受けられる。それもすべては、チームの勝利のためである。
「汚れ仕事を全うしたい」(谷口)
「しんどいときに誰よりも体を張りたい」(佐藤)
谷口・佐藤・パディー・ライアンのフロントローで、チームを敵陣に押し上げる。
(原田友莉子)
静岡ブルーレヴズ(D1カンファレンスA)
「失敗を生かす」ラスト5試合のスタート。雪辱に燃えるウイングが、古巣相手に自由に動き回る
今季のNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1も残り5試合。交流戦が一巡して、今節からは同じカンファレンスAのチームとの2度目の対戦が続く。堀川隆延ヘッドコーチが「残り5ゲームでは、これまでの失敗から得た教訓を生かさないといけない」と意気込む戦いだ。
その初戦が、3月18日のビジターゲーム、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)戦。前回対戦のホストゲーム(1月15日)では、22対34で敗れている。
その雪辱戦に向けて「失敗から得た教訓を生かす」という意味でも一際燃えている選手がいる。今節は左ウイングとして先発予定のキーガン・ファリアだ。
2019年に初来日してBR東京に加入し、2シーズン在籍して静岡BRに移籍。前回のBR東京戦でも古巣対決で非常に気持ちが入っていたが、気合いが空回りしたのかミスが増え、イエローカードを二枚受けて退場になってしまった。チームとしても14人で戦っている時間帯にトライを重ねられたことが非常に痛かった。
そのあと、キーガン・ファリアは出場機会を減らしていたが、第9節から3戦連続で先発出場して着実にパフォーマンスを高め、持ち味を発揮しつつある。
「前回のリコー(BR東京)戦からすごく多くのことを学びました。そこから試合に出られなかった期間でいろいろなことを考えて、メンバーに入りたいという競争心も強くなったし、毎日の練習で良い取り組みができたと思っています。前回は硬さがかなりあったので、今回はもっと自由に動いていきたいと思っています」と意気込みを語る。
堀川ヘッドコーチも「(キーガン・ファリアは)体のキレがあって非常にコンディションがいいですね。チームにとってリベンジの試合ですが、彼にとってもリベンジだし、次は彼の良いところを出して、やってくれると思います」と期待を寄せる。
自分自身の持ち味に関しては「左右にカーブしながら走るスピードや自分の強みとしているキックというのを見せていきたいです」(キーガン・ファリア)と自信を見せる。
今節は大黒柱のクワッガ・スミスが負傷で欠場となるが、チームが苦しいときこそ、雪辱に燃える選手たちの頑張りが勝利への原動力となるはずだ。
(前島芳雄)