NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第10節
2024年3月16日(土)13:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 29-36 静岡ブルーレヴズ
敗戦の中でもつかんだスクラムへの手ごたえ。
BR東京は超重量級との次戦を見据える
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は3月16日(土)、秩父宮ラグビー場で静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)と対戦し、29対36で敗れた。
両者ともに負けられない一戦だった。
前節終了時点の順位は、BR東京が10位、そして静岡BRは9位。10位以下がディビジョン2との入替戦にまわるため、是が非でも勝利が欲しかった。ゆえにゲームは、序盤から点を取っては取られての展開が続く。BR東京は一時2点差まで迫ったものの、最終盤、静岡BRのセットピースを起点としたワイドアタックによって突き放された。
BR東京の右プロップとして2戦連続で先発を務めたのは、35歳の元オーストラリア代表、パディー・ライアン。静岡BRの藤井雄一郎監督は宗像サニックスブルース所属時の監督であり、パディー・ライアンが日本でプレーするきっかけを作ってくれた人でもあった。「会えてうれしかったし、良いスクラムバトルができた」と直接対決を喜んだ。
後半16分にパディー・ライアンから右プロップのポジションを託されたのは、25歳の大山祥平。「リーグワンでスクラムを一番の強みとしているチームを相手にも、決して力負けしていなかった。個人として手ごたえはありました」と振り返った。
次戦は、好調を維持する東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)が待ち受ける。今季これまで全試合に出場中の大山は「(BL東京が)超重量級というのは変わらないし、もしかしたら今日以上にスクラムでプレッシャーを受けるかもしれない。いずれはパディー(・ライアン)のようにスクラムでペナルティを取れるような3番になりたいですが、今季は毎スクラムを安定させたい」と次を見据えた。
また、この試合がアーリーエントリー後の初出場となったのが、静岡BRのショーン・ヴェーテー。後半34分からピッチに立った。「朝からワクワクしていました。今日はそこまでプレータイムがなかったので、次はもっとフィジカルなプレーを見せたい」とデビュー戦を振り返った。
実はこの日が、4年間通ったIPU・環太平洋大学の卒業式。卒業式出席のために とニュージーランドから両親が来日していたが、急きょデビュー戦を見届けることとなった。「両親はプレーすることを本当に喜んでくれました。大学の仲間たちも、みんな『頑張れ』と連絡をくれた。うれしかったです。」
卒業式の日に刻んだリーグワンでの一歩目を、ショーン・ヴェーテーは勝利で祝った。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「負けたことは残念ですが、しっかりとカムバックはできたのかなと。ファイトする姿勢は良かったです。良いアタックも今日はところどころで見せられたのですが、ディフェンスが少し消極的になってしまいました。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)がグラウンドを広く使ってプレーしたので、エッジでのディフェンスが少し消極的になり、勢いを作らせてしまったと思います。相手に容易にゲインラインを切らせてしまいました」
──途中出場したアイザック・ルーカス選手の起用法と、早い時間に投入した狙いを教えてください。
「中楠(一期)がしっかりとゲームのセットアップをしてくれました。今季は第4節、第5節に出場してから第9節まで出場はなかったのですが、その間にしっかりと学びを得ました。良いゲームマネジメントを与えてくれる選手だと思います。
今日に関しては、静岡BRが見せていたスピードに対して、われわれもスピードが必要だったと思いました。早い時間帯に交代することは理想的ではないですが、(アイザック・ルーカスが)違いを与えてくれたと思います」
──アイザック・ルーカス選手の出場は、交代したハドレー・パークス選手の故障によるものなのか、それとも試合の流れとして早めにカードを切りたかったのでしょうか?
「ゲームの流れです。相手は広くグラウンドを使っており、相手のスピードに少しやられていました。相手のディフェンスを見ていて、アイザック・ルーカスを入れたら良いアタックが作れるのではないかという絵も見えていました。
ハドレー・パークスにとっては早い時間帯での交代となってしまいましたが、コーチボックスがある上から試合を見ていると(グラウンドレベルとは)見えるものも違っていて、アタックでもディフェンスでもスピードが必要という決断になりました」
リコーブラックラムズ東京
松橋周平 共同バイスキャプテン
「結果に対してがっかりしています。東京サントリーサンゴリアス戦の負けがあったあと、先週の三重ホンダヒート戦の勝ちがあって、また(自分たちに勝利を)持ってきたいというところもありました。良いプレーもありましたが、結果的に静岡BRのほうがチームとしての精度が高く、僕らがそれを受けてしまいました。
自分たちのラグビーの時間を増やさないとボールはつながらないですし、相手にアタックをやらせないことも大事です。一瞬一瞬、一つひとつのプレーが結果につながっていくので、そこの精度を上げていく改善が必要です。僕たちは次、勝つためにすべてを懸けて準備していくだけです。次戦の相手は東芝ブレイブルーパス東京と楽しみな相手なので、次に向けて、個人的には切り替えて、勝つためにやれることは全部やろうと思っています」
──アイザック・ルーカス選手が入ったあとはアンストラクチャーで優位性を持てたと思いますが、プランとしてはアンストラクチャーを増やしていきたかったのか、それとも用意したプレーをやりたかったのでしょうか?
「アイザック・ルーカスが入ってきたら、相手にとっては脅威になります。それでも僕たちはしっかりと相手陣内で戦おうと話していました。無理にアタックをして、ミスやペナルティをして陣地を下げられる、というのが僕たちの課題でもあります。しっかりと戦うべきエリアで戦うことが大事です。でも、彼(アイザック・ルーカス)が行くと判断した場合には全員がしっかりとコミットして、僕たちが早くセットする。そのバランスを意識していました」
──フォワード周りの感触と改善したいことについて教えてください。
「今日はフォワードバトルになると分かっていたので、僕たちとしても受けずに戦いにいきました。でも、ここぞの場面で相手はしっかりとペナルティを取りに来たり、僕たちを集めてディフェンスを寄せてからアタックをしたりと、僕たちがやりたいプレーをやらせてしまったと思います。本当に改善していくしかないので、また同じことを繰り返さないことが大事です」
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「けが人も出て、思うようなメンバーを組めませんでしたが、今日大事なのはどんなことをしても勝つことでした。途中良い形になったり、自分たちのミスからプレッシャーを受けたりもしましたが、最後はなんとか勝ち切れたので、これを機に上がっていきたいと思います」
──ディフェンスが良いチームを相手に、どのようなことに気をつけたのでしょうか?
「何かが良くなったら何かが悪くなるというような形で、前回はアタックがあまり良くなかったです。今日はできる限りボールを持って、相手にプレッシャーを掛けようと意識しました。相手うんぬんよりも、自分たちにフォーカスをしました。
もちろんリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんにとっても今日は大事な試合であり、こういう試合になると想定しながら『こうなったら、こうやれ』という話をしていました。そういう意味では最後までやり切れたかなと思います」
──ここ3試合勝てなかった中で、どういう課題が出てきて、それをどう改善しようとしたのでしょうか?
「スクラムやラインアウトなど、今まであまりなかったミスで自分たちのペースが崩れることがありました。まずはしっかりセットピースからアタックすれば得点できる、という感触はありました。直近の2試合は気持ちよくアタックできていなかったので、今日はそこにフォーカスしました。
先週はディフェンスにフォーカスし過ぎてしまい、アタックの形がまったくできていなかった。今週は自分たちの形と相手の弱いところを突けるようなシェイプを作りました。それがうまくいったので良かったです」
──両翼でトライを取れた点について評価をお願いします。
「両翼でトライを取れるようにアタックをデザインしていたので、そういう意味では良い形が出せたと思います。両ウイング、そしてフルバックは走力のある選手。前半はミスをする場面もありましたが、決定力のある二人だと思います」
──ゲームキャプテンを家村健太選手に据えた狙いと評価、そしてブリン・ホール選手とハーフ団を組ませた狙いについて教えてください。
「いつも庄司(拓馬)がゲームキャプテンをしていたのですが、前々回の試合で脳震盪になり、今回は庄司が後半からの出場ということ、またシェイプをしっかりとやりたかったので、リーダーグループに入っている家村をリーダーにしました。今日はリーダーとして良かったと思います。
ブリン・ホールは長いパスを放れるので、タイトになるBR東京のディフェンスを長いワンパスで切りたいなと。そういう意味では自分でも走っていたので良かったと思います」
──今季全試合に出場している山口楓斗選手についての評価をお願いします。
「彼はウチの息子(NECグリーンロケッツ東葛・藤井達哉)の大親友です。小さいころから僕がご飯を作ってあげていました。おかげであまりデカくはならなかったのですが(笑)。
体は小さいですが気の強い選手。スピードもあります。いろいろな挫折もあったと思いますが、その度に良い学校に行ったり、良い会社に就職したり、幸運に恵まれて生きてきた男です(笑)。今後もそれを生かしてもらいたいと思います。だからと言って特別扱いしているわけではないですが、プレーヤーとしてもチームの中で存在感を発揮しています。良い選手になるのではないかと思います」
静岡ブルーレヴズ
庄司拓馬バイスキャプテン
「この試合は『80分間やり切る遂行力』を掲げました。80分間の中では、相手に流れがいくこともありましたが、控えに代わってもスクラムやラインアウトでもう一度自分たちに流れを引き戻して、遂行することができたと思います。もちろん課題もありましたが、まずは勝てたことが一番良かったと思います」
──2点差まで追い上げられたときにどんなことを意識し、話し合っていたのでしょうか?
「これまでにも、自分たちが勝っていた状況から逆転されたことはありました。自分たちのスタイルを80分間やり切る、というテーマがあったので、トライを取られたあとでも、スクラムで止まったときでもずっと声を掛け続けることができたからこそ、自分たちにもう一度流れが来たと思います。常に流れはどちらに転ぶか分からないもの。自分たちの役割、やるべきことを遂行しようと声を掛けていました」