NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第12節 カンファレンスA
2023年3月18日(土)14:30 秩父宮ラグビー場(東京都)
リコーブラックラムズ東京 15-19 静岡ブルーレヴズ
「恩返しし足りません」。101キャップ目を刻んだ33歳は、チームのために体を張り、気を配る
気温一ケタの雨模様。秩父宮ラグビー場で行われた一戦は、静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)のペナルティゴールで幕を開ける。しかし、すぐにラインアウトモールからトライを決めたのはホストチームのリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)。その後、一時は9点差をつけたものの、後半に静岡BRが3つのペナルティゴールを成功させて逆転。19対15で静岡BRが勝利を収めた。
ノーサイドの瞬間、歓喜に沸いた静岡BRの選手たち。誰一人として交代せず、15人だけで80分間を戦い抜いた男たちは、ボールを蹴り出すと抱き合った。
「僕たちは降格圏(入替戦の可能性)にいます。負けられない試合が続く中、共同キャプテンを二人とも欠き、組織力が試される一戦でした。どんな形でもいいからとにかく勝つ。泥臭くていい、とにかく勝利が欲しい。そういう気持ちで挑みました」
そう話すのは、前節でリーグ通算100キャップを達成した日野剛志。後半29分には千載一遇のジャッカルを決めた。
「決してきれいなゲーム運びではなかったですが、結果がすべて。全員で助け合いながら勝てたことが、あの喜びようにつながったと思います。勝ちに飢えていましたね」
現在33歳。チームに加入し10年以上が経ったいまは、若い選手たちのプレー環境作りにも意識を向けるようになった。
「僕も若いころは、五郎丸歩さんや大田尾竜彦さんら先輩方にのびのびとラグビーをさせてもらいました。だから今度は僕たちがその環境を作る番ですね」
いま、チームは過渡期にある。だからこそ、この苦しい時期を乗り越えればまたトップ4に入る力を持つチームだと信じている。
「このチームに育ててもらいましたけど、まだまだ恩返しが足りません。その過程で150キャップ、それ以上を積み重ねられたら選手として幸せです」とフル出場を果たした101キャップ目の終わりに微笑んだ。
BR東京にとっては、入替戦圏内に入らないためにも、負けられない試合が続く。次節もフォワードが強い東芝ブレイブルーパス東京が相手だ。
「今日のままではダメなことは、みんな分かっています。誰も今日の結果に満足していません。しかも、BL東京には、(天理)大学でともに戦った小鍜冶(悠太)もいる。絶対に負けられない一戦なので今日以上に気持ちを作って挑みたいと思います」(谷口)
チームの象徴である『泥臭さ』を追求する一週間が、再び始まる。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「まずは静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR) に『おめでとう』と伝えたいです。難しい対戦相手で、とてもタフなチーム。スクラムからしっかりとゲームを作っていき、良いキックも織り交ぜながら、特に最後の20分間はブレイクダウンでプレッシャーを掛けてきました。今日は彼らのほうが上回っていたと思います。普段の自分たちが100だとしたら、今日は少しズレがあったように感じます。そこは残念です」
──何回も敵陣深くまで入ったが、仕留め切れなかった要因は何だと考えていますか?
「静岡BRも同じように深くまで入ってきましたね。雨の日はディフェンスが大事になります。今日はアタックが難しい日。ボールをつなぐこと、スピードを上げることが難しかったです。(雨の影響で)オープンなラグビーにはならなかったのですが、そこは常にレベルアップしようと注力しているところです。今日はボールが欲しくない日、という感じでしたでしょうか。こういう日はセットピースからゲームを作っていくことが大事だと思うのですが、そこでのバトルで静岡BRが勝ったかなと思います」
──ハーフタイムに何を伝えましたか。また拮抗した時間帯に選手交代含めどのようなことを考えていたのでしょうか?
「ハーフタイムには、『(前半は)そんな悪くはなかったけど、それでもまだ少し足りていないかな』と伝えました。雨が降っているときはフィールドポジションが重要になります。(グラウンド中央部である)22mラインの間でゲームが続く時間帯もありましたが、今日は雨が強い日なのであまりボールを持たずにプレーをしたいという日です。しっかりとディフェンスをして、ペナルティをもらって、セットピースを使ってゲームを作る日。深い位置からランをしようとメンバーを交代する日ではなかったかなと。前でフィールドポジションを取ってプレーすることが大事でしたが、そこは静岡BRさんのほうがうまくやっていたかなと思います」
──試合の入りの良いゲームが続いていますが、何か対策をされたのでしょうか?
「スタートを良くする方法はないかと常に模索しています。自信があると良いスタートを切りやすいのはありますね。もちろんトレーニングでも変化を与える取り組みをしています。静岡BRは(動くことを)止めないチームなので。最初の20分は良かったですが、やはり今日はセットピースにかかっていたのかなと思います」
リコーブラックラムズ東京
マット・マッガーン ゲームキャプテン
「(ピーター・ヒューワット)ヘッドコーチと同じような感想です。個人レベルのところで、チームとしてやりたかったことができない状況を生み出してしまったかなと思います。このリーグのレベルは、少しパフォーマンスレベルが足りなくても勝てるようなレベルではありません。今日は良いパフォーマンスもありましたが、まだ自分たちが思っているほど良いチームではないということが分かったかなと思います」
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ
「本当に今日は素晴らしい勝利を見せてくれたと思います。静岡ブルーレヴズらしい戦い方、ディフェンスで粘ってセットピースでプレッシャーを掛けて。そういう我慢の80分間だったと思うのですが、本当に選手が素晴らしいパフォーマンスを出してくれたと思います。80分間を(同じ)15人で戦うという、本当に珍しいかもしれないですけど、15人のフィールドのパフォーマンスを見ていて、このゲームにおいては選手交代をする必要がないという判断の下、80分間プレーしてもらいました。フィジカルのあるリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんに対して、局面、局面でしっかりとブレイクダウンでファイトし、アライブ(倒れても立ち上がって)して戦ってくれた選手を誇りに思います。来週もゲームはありますが、今日の反省点を含めてチームが前進できるように来週もいい準備をしていきたいと思います」
──家村健太選手も10番としてフル出場。プレッシャーもあったと思いますが、どのように感じていますか?
「今日はあんまり良くなかったですね。でも背後のスペースをしっかり見れていました。まだまだ彼は成長しなければいけないプレーヤーです。今日のようなタフなゲームを乗り越えて、また成長していくと思います。しっかりと今日のレビューを生かせるように、次のゲームへ向け、一緒に準備していきたいと思います」
──試合終盤での逆転負けが続いていましたが、勝ち切れた要因はどこにあったと思いますか?
「今日もひとつ間違えれば同じ展開になっていたと思います。得点を取って4点差にしたあと、キックオフレシーブからのイグジットでターンオーバーされディフェンスになるという展開。ああいうところがまだまだわれわれの弱さだと思います。ただ、今日はそこからディフェンスで規律を守りながら、自分たちのディフェンスシステムを信じて粘り強くディフェンスしたことが勝利につながりました。ただ、まだまだそういう弱さはある。そういった課題はこれからも克服していかなければいけないと思っています」
──今日もジョーンズ リチャード剛選手は刺さりまくっていました。
「昨日、彼とは面談をしながら、彼のプレーについていろいろと話をしたところでした。今日はこういう天気ですし、とにかく刺さり続ける。あまり小さなことを考えずに、とにかくタックルして寝て起きて、またタックルしてと、本能のままプレーするようにと伝えていました。今日はBR東京さんのアタックが彼のディフェンスにハマったところもあると思いますが、素晴らしいディフェンスだと思います」
──スクラムであれだけ優位に立つことは想定していたのでしょうか。
「スクラムコーチの名嘉(翔伍)が『今週ドミネートできる』という自信をもって準備してきました。フォワードの体が大きい、小さいに関係なく、スクラムというのは何十年と築き上げてきたものです。そういったプライドを今日はフォワードが見せてくれたと思います」
──メンバー交代をしなかった具体的な理由を教えてください。
「今日はインプレー時間が短かったと思います。けが人が出たことでゲームがかなり切れていたので、そういう意味で選手たちがリカバリーする時間を稼ぐことができました。そういった選手のコンディションフィードバックも、グラウンドにいるスタッフからしっかりもらっていました。あとは上から見ていても今日はフォワード8人の足が動いていましたし、点差も点差。選手たちのコンディションも良好で、この流れをいま、われわれは変えるべきではない、という判断の下、(同じ)15人で戦いました」
静岡ブルーレヴズ
大戸裕矢ゲームキャプテン
「雨の中、開催してくださった関係者の皆さま、ありがとうございます。観に来てくださったファンの方々、寒かったと思いますが本当にありがとうございました。試合内容については、もちろん良い点、悪い点はありますが、勝って反省できたこと。そして、欲を言えばフォワードの僕としてはモールで(得点を)取れるチャンスがあったのでそこで取りたかったです。試合トータルで言えば、泥臭さで勝てたところがあります。でも、まだまだ修正点はいっぱいあります。引き続き来週に向けて頑張っていきたいと思います」
──後半に増えた相手ボールのスチール含め、どのようにラインアウトを修正したのでしょうか?
「天候もあり、フロントボールが多くなるという予測があったので、そこを狙いに行きました。前半最初にモールでトライを取られてしまったのは、僕たちの入る場所がちょっと相手の芯を捉えられなかったところがあったからです。そこはハーフタイムに大久保直弥アシスタントコーチと名嘉(翔伍)コーチが修正してくれたので、みんな意思統一をして後半に臨むことができました」
──これまでは勝ち越してからの試合の運びが難しかったですが、今日は勝ち切れた。最後の試合運びで大切にしたところは?
「今日もペナルティが多かったと思いますが、ペナルティさえしなければタックルもしっかり決まっていましたし、ディフェンスシステムはしっかりしていました。自分たちが不用意なペナルティさえしなければ問題ないです。あとは前回、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんと試合をしたときにペナルティゴールから3点を許した場面がたくさんあったので、今日はできるだけペナルティゴールでも逆転されないような点差を考えました。まずは確実に4点差にしようと最後はペナルティゴールを選択しました」
──クワッガ・スミス共同キャプテンが不在の中、勝ち切りました。
「クワッガ・スミスは見てのとおり素晴らしい選手です。ただ、クワッガ・スミスがいないからとスタイルが変わるわけではないので、逆に今週はみんながすごく良い準備をできたと思います。今日は僕がゲームキャプテンをやらせてもらいましたが、一人ひとりがみんな責任感を持ってやってくれたので、今週はすごく良い1週間を過ごすことができました。前回の対戦ではBR東京さんに負けているので、(チームの中で)リベンジというワードも出ていました。クワッガ・スミスがいるに越したことはないですが(笑)、いないから特別何か変わることはなかったです」