豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)
ホストゲーム最終戦で注目したい
「異色の経歴」を持つ二人
豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)は2試合を残して3位が確定。目標としていたディビジョン1昇格への挑戦権を得た。今節は2位の三重ホンダヒートとパロマ瑞穂ラグビー場で対戦する。
今節注目したいのは、今季から出場機会を増やしている23歳の森崎陸と、ベテランの福坪龍一郎。二人に共通しているのは、少し変わった経歴を持っている点だ。
森崎は父親と祖父の影響でラグビーを始め、中学3年生のときにニュージーランドのハミルトンボーイズ高校に入学した。その経緯について「観光でニュージーランドを訪れたときに、いろいろな高校を見て回って、そこでハミルトンボーイズ高校の環境に衝撃を受けた」と森崎。ハミルトンボーイズ高校は国内屈指のスポーツ名門校。もともと、そういった環境でラグビーをさせたかった両親のサポートもあり、中学卒業を待たずしてニュージーランドへ渡った。「最初は英語もまったくできなかったです。ラグビーでは細かいニュアンスまで伝え切れないし、普段の生活でも友だちにジョークすら言えないので、最初は苦労しました。でも、たくさん友だちを作って、とにかく話しまくっているうちに慣れてきました」(森崎)。キックやディフェンスでも特徴を出せる成長株は、持ち前の英語力を武器に外国籍選手とのコミュニケーションを率先してとれる。
現在34歳の福坪は高校1年生のときにラグビーを始め、卒業後に自衛隊に入隊。「習志野自衛隊にラグビー部があって、そこでラグビーを続けました。そこでやっているうちに、トップレベルでプレーしたい思いが出てきて、トライアウトを受けることにしました」(福坪)。厳しい訓練のあとにラグビーをして、練習が終わったらウエイトトレーニングに向かう。想像を絶するほどハードなスケジュールだったことがうかがえるが、本人は「我慢ですね(笑)。どんなことでもポジティブに捉える忍耐強さはついたと思います」と涼しい顔。「チームが苦しいときに助けられる存在になりたい」(福坪)という思いは、自衛隊時代の経験から来ているのかもしれない。
この二人がホストゲーム最終戦でどんなプレーを見せるか、目が離せない。
(斎藤弦)
三重ホンダヒート(D2)
喉もしっかり整える!? チームのエナジーを高める、信頼厚き「元気リーダー」
前節の清水建設江東ブルーシャークス戦に勝利し、2位以上を確定させた三重ホンダヒート(以下、三重H)。今節は敵地に乗り込み、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)と対戦する。
S愛知との前回対戦(第5節)は46対24で快勝したが、キャプテンの古田凌は「まったく油断できる相手ではない。今週1週間しっかりと準備をして、圧倒して勝ちたい」と気合いを入れ直す。
古田がポイントに挙げたのは「チーム全員が同じ絵を描き、一人ひとりが細部にこだわって自分の役割を果たす」ことだ。「土台はできているので、チームがまとまればめちゃくちゃいいラグビーができるという確信があります」と自信を見せる。
チームの一体感を醸成するために一役買っているのが、勝利後に辻惇朗が歌うチームソングだという。「あつろー(辻)が歌で引っ張ってくれて、全員を盛り上げてまとめてくれている。彼はすごくいいキャラなので、あつろーが歌えば、みんなが笑って歌うんですよ」(古田)
キャプテンの言葉を、「直接言われると、照れくさいですね」と眉をハの字にしながらニコニコ聞いていた辻。見るからに”いいキャラ”なのが伝わってくる。
「試合に勝つと僕もすごくうれしいですし。勝利という一つの目標にチーム全員で向かっていって、目標を一つひとつ達成できていることをみんなで確かめられる。勝ったときに歌を歌うことによって、さらにエナジーを上げて、チームが一つになれる。ありがたい役割を任せてもらえているなと思っています」(辻)
チームではS&Cリーダーも務める辻。練習中も大きな声でチームを鼓舞する。「いろいろな局面で声を出してくれて、常にエナジーを上げてくれる」と古田キャプテンの信頼も厚い。横を通り過ぎるチームメイトからも「次期キャプテン」の声が飛ぶ。
「S&Cはストレングス&コンディショニングの略なんですけど、要は元気リーダーです! (上田泰平)ヘッドコーチからも『元気を出して、チームの雰囲気を良くするのがお前の仕事だ』と言われています。僕もまだ未熟で、自分がしんどいときは声が出せなかったりするんですけど、自分ができることを頑張ってやっていこうと思っています。
いまのチームはノンメンバーになっても、全員でラグビーをしているという雰囲気があります。ここからの試合は、ノンメンバーがメンバーにプレッシャーを掛けて、どれだけ全員が一つになって戦えるかが大事になってくると思います」(辻)
リーグ戦は残り2試合、入替戦まで含めると残り6試合。
「6試合すべてでチームソングを歌うつもりなので、喉もしっかりと整えて臨みたいです。試合の終わりに、グラウンドに僕の歌が響き渡っているところにもぜひ注目してください」と辻は愛嬌たっぷりの笑顔で語る。
一戦一戦、辻の声でエナジーを高め、三重Hはディビジョン1昇格へと突き進む。
(山田智子)