NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第9節
2023年3月19日(日)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 22-50 三重ホンダヒート
勝つために。S愛知はどんな『車』を作り上げるのか
豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)のホストゲーム最終節は、春らしい暖かい気候と隣県対決ということもあり、会場の熱気は最高潮に達した。一方のファンが声援を送れば、負けじと相手チームのファンも対抗する。選手たちもその観客の期待に応え、序盤から見ごたえあるフィジカルバトルを繰り広げたが、軍配は三重ホンダヒート(以下、三重H)に上がった。
今季のS愛知の成績はこれで5勝4敗。内訳を見ると、4敗すべてを浦安D-Rocksと三重Hに対して喫している。しかし、強力な陣容を擁する上位2チームに対し、後半戦に入ってからは一定の手ごたえを得ている。特に今節では、序盤からハードなディフェンスからの素早いアタッキングでトライを重ねており、三重Hを苦しめていた。点差以上に実力差は感じなかった印象で、三重Hの上田泰平ヘッドコーチも、「一つひとつのフィジカルのところでは互角に戦っていたし、ウチとしてはもっと上回っていきたい部分が見えた試合」と話した。
確実に進歩はしている。では、勝つために何が必要か。試合後、徳野洋一ヘッドコーチはチームの状況を「ネジ」に例え、こう話した。
「自分たちの大事な3つのネジと、根底にある一つのネジを締め切る作業をやってきています。そういった自分たちが本当に大切にしている部分の精度をどれだけしっかり研ぎ澄まして準備できるのかが、順位決定戦で勝ち切るポイントだと思っています」
この3+1のネジは、S愛知が常日頃から目指しているラグビースタイルのこと。徳野ヘッドコーチは開幕前「自分たちのラグビーを表現するためには『セットピース・ディフェンス・トランジション』の3つがあって、その根底に2秒という短いテンポで、90秒以上のインプレー時間で、その3つをやっていくというのがスタイル」と話していた。そのスタイルはまだまだ発展途上で「伸びシロはたくさんある」(徳野ヘッドコーチ)。なので、目の前の試合をこなしながらチームとしての成長を促し、ネジを回し続けている。
「今日の試合を糧に、自分たちの『車』をしっかり作り上げることにフォーカスしてやりたい」と徳野ヘッドコーチは最後に付け加えた。この『車』ができ上がったとき、S愛知がファンにどんなラグビーを見せるか。完成が待ち遠しくあると同時に、その成長過程も見逃せない。
(斎藤弦)
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日はこの素晴らしい天気で、三重ホンダヒート(以下、三重H)さんのたくさんのファンの方々に来ていただき、素晴らしい環境の中で試合をさせていただいたことに感謝申し上げます。ありがとうございます。試合の中身につきまして、少し点差が開いたというところで、もう少し僅差のゲームを皆さまにお見せするのがわれわれの責任かなと思っていたのですが、結果的に点差が大きく開いてしまったというところは、非常に残念に思っています。ただ、前半をとおして、前回の敗戦から学んだことを含めて、いろいろとチャレンジする中で、成果として見せられた部分があったと思っています。次節の最終戦、そして、順位決定戦と続きますので、われわれはチャレンジャーとして、ディビジョン3からの昇格組として、この一戦から学んで成長していくことが非常に大事だと思っています。また次節、成長した姿をお見せしたいと思います」
──ペナルティが多く出てしまったことが敗因でしょうか?
「ペナルティが敗因のすべてではないとは思っています。前節まで、われわれはディビジョン2の中でペナルティが一番少ないチームです。規律の面を重要視してチーム作りをしていますので、この試合で20近いペナルティを吹かれてしまったという部分は、自分たちからしたら想定外の部分だったのかなと思います。ただ、レフリングに対してストレスを感じることはなかったです。レフリングに対してアジャストしていくことが重要だと考えていて、今日はわれわれ自身のアジャストしていく姿勢が少し不足していたのかなと思っています」
──順位決定戦での再戦に向けて。
「シーズンが始まるまでに、チームの大事な3つのネジを完全に締め切ることなく、シーズンインしました。チームの根幹の部分という大きなネジも完全に締め切ることなく、今季に臨んでいます。今季をとおして、その部分を成長させながら、自分たちの大事な3つのネジと、根底にある1つのネジを締め切る作業をやってきていますので、そういった自分たちが本当に大切にしている部分の精度をどれだけしっかり研ぎ澄まして準備できるかが、順位決定戦で勝ち切るポイントだと思っています。まだまだ伸びシロはたくさんあると思っていますので、今日の試合を糧に、しっかりと自分たちのこの『車』を作り上げることにフォーカスしてやりたいなと思っています」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジョシュ・マタヴェシ ゲームキャプテン
「多くのファンの皆さまに来ていただいて、いい天気の中で試合ができましたが、思うようなパフォーマンスが出せませんでした。前半はいい形で入ることができたなと思いますが、後半はちょっと規律を失ってしまいました。残念なところはありますけれども、ポジティブな面もたくさんあったので、来週の試合が本当に待ち遠しいです。ありがとうございます」
──どういうところにポジティブな面が見られましたか?
「最初の40分、50分のところは、自分たちのいいアタックができたかなと思います。前節の釜石シーウェイブスRFC戦や、その前の浦安D-Rocks戦のときにはあまりうまくいかなかった部分も、今日のその40分、50分はうまくいったかなと思っています」
──順位決定戦での再戦に向けて。
「ここからチームとしても、グループとしてもより結束を高めてやっていきたいと思います」
三重ホンダヒート
三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ
「愛知県協会ならびに豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんのホストゲームということで、素晴らしい受け入れ体制を整えていただき、選手、スタッフともにストレスなく試合に臨めたことに感謝しています。試合に関しては、お互いにフィジカルバトルからスタートして、すごく見ごたえのある試合だったなというのが感想です。結果的にスコアは少し離れましたが、中身を見ると、一つひとつのフィジカルのところでは互角に戦っていましたし、ウチとしてはもっと上回っていきたいという部分が見えた試合だったかなと思います。S愛知さんとは順位決定戦もあるので、そこでしっかりともう一度、今日の試合よりもまた良くなれるように頑張っていきたいと思います」
──最終的にスコアで上回った要因は何でしょうか?
「運が良かったことですね。ペナルティに関しても、全体的なレフリーの判断は、グラウンド上では、多分ちょっとしたところだと思います。誰もが明らかにペナルティをしにいこうとか、そういう気持ちはないと思うので、本当にちょっとした運がウチに転がってきただけなのかな、という感想です」
──外国籍選手がチームの中で果たしている役割は?
「国際経験が豊かですので、正しいことを発言し、正しい行動を見せてほしいというところですね。小さな当たり前の行動でも、国際経験豊かな彼らがそういう行動をすることで、『こういうことも大事なんだな』とあらためて気づいてもらうきっかけになっていると思いますので、すごく助かっています」
三重ホンダヒート
古田凌キャプテン
「しっかりと僕たちのラグビーができて、勝利という結果につながったのはすごくうれしく思っています。今週は一つひとつのバトルに勝つことにフォーカスしてこの試合に臨みましたが、一人ひとりが役割をしっかり果たして、いい結果につながったのが、勝因の一つかなと思いました」
──チームで密にコミュニケーションを取れていたのでしょうか?
「リーダー陣を中心に、練習から常にしっかり固まって、いつもコミュニケーションを取れているので、それが試合に出たのかなと思います」
──今後に向けて。
「チームの状態もすごく良いので、チームとしてしっかりタイトになって、絶対にバラバラにならずに、しっかりと一つの目的に向かって、一戦一戦を絶対モノにするというところを意識して頑張っていきたいです」
──隣県対決ということもあり、多くの三重ホンダヒートのファンが詰めかけました。
「戦っている中で熱い応援が聞こえてきて、すごく力になりましたし、そうした応援の力は戦う上で絶対に必要だと思っているので、本当にうれしかったです」