2023.04.16NTTリーグワン2022-23 D2 1位~3位順位決定戦 第2節レポート(S愛知 13-14 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2 1位~3位順位決定戦 第2節
2023年4月15日(土)12:00 一宮市光明寺公園球技場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 13-14 三重ホンダヒート

「ラグビーの原点のような試合」で両者が得た学び

三重ホンダヒートの古田 凌キャプテン。「どの選択がチームにとって一番良いのかというのを考えながらプレーできた」


雨中の一宮市光明寺公園球技場。今季3度目の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)と三重ホンダヒート(以下、三重H)の対戦は、13対14で三度(みたび)、三重Hに軍配が上がった。

週初めから、この日の天候が雨になることは分かっていた。しかし、当日のグラウンドコンディションなど、試合をしてみないと分からないことも多かった。ピッチ上には大きな水たまりが多くでき、選手が走るたびに水しぶきが飛ぶ。バックスを中心としたボールを動かすラグビーを得意とする両者も、この日は見ごたえあるフォワード戦が主たる攻防だった。

「ラグビーの原点に近いような試合展開になった」とは、三重Hの上田泰平ヘッドコーチの言葉だ。

しかし、だからといって雨という環境に両チームが苦戦したわけではない。S愛知は総当たりのリーグ戦での第10節・清水建設江東ブルーシャークス戦を、似たような状況で戦って勝ち切った。三重Hも、前週は試合がなかったため、「今日よりも酷い天候の中で」(上田ヘッドコーチ)トヨタヴェルブリッツと練習試合を行っている。

S愛知のゲームキャプテンを務めたジェームズ・ガスケルは試合後、「しっかりアジャストしてプレーするだけだった」と語り、三重Hも「『こういうふうに戦えばいいんだな』、というのをグラウンド上で(キャプテンの)古田(凌)らが指導してくれた」(上田ヘッドコーチ)と、雨という環境を優位に生かすべく奮闘した。

では、何が勝敗を分けたのか。S愛知の徳野洋一ヘッドコーチは「要所で少しわれわれがミスをしてしまった」と敗因を分析。個々人の技術的なエラーにも言及したが、チーム全体のゲーム理解度が不足していることを挙げた。反対に、三重Hの古田キャプテンは、「どの選択がチームにとって一番良いのかというのを考えながらプレーできた」とチームとして同じ絵を描けたことが勝因だと話した。

チームとしての経験値がこの試合ではモノを言った格好だが、この試合を経て、両者とも得た学びは大きかっただろう。勝負は、5月に行われる入替戦。S愛知はここから約3週間の期間をチームの“仕上げ”に注ぐ。三重Hも、22日の浦安D-Rocksとの対戦を経て、天下分け目の戦に向かう。

試合後に上がった雨のように、両者の視界は良好だ。

(斎藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル ゲームキャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日はこういう雨の天候の中で、素晴らしい試合環境を作っていただいた関係者の方々、そして、たくさんの豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)、三重ホンダヒート(以下、三重H)さんのファンの方々、本日はありがとうございました。試合を振り返りますと、こちらにとっては悔しいゲームだったなというのが感想としてあるかなと思います。こういう天候の試合ですので、ロースコアになるということは想定していましたが、やはり要所要所で、少しわれわれがミスをしてしまったところがこの1点差という結果に表れているのかなということを受け止めております。本日はありがとうございました」

──フィジカルバトルや我慢強さがチームとして重要だったと思いますが?

「今日が雨ということは、もう週の頭には分かっていたことですので、われわれとしてもフィジカルのところでどういうパフォーマンスができるのか。そして、どれだけ規律高くできるのかというところにフォーカスして1週間準備しました。非常に重要だったと思っています」

──後半はボールを動かす意識が見られました。

「そうですね。前半は少し手堅くいき過ぎて、得点がなかなか取れず、6点取られてしまいました。われわれはボール動かすというスタイルを掲げてやっていますし、また、チャレンジャーであるということ。そして、6点ビハインドということもあったので、少しチャレンジングなプレーをしようと。選手が勇気を持って、後半開始直後からボールを動かしてくれたところは本当に選手が成長している点であり、素晴らしいことだと感じています」

──次の試合は入替戦となります。

「もともと、われわれは本当のピークは入替戦に持っていくということで、総当たりのリーグ戦や順位決定戦を踏まえてどれだけ成長していけるかということを折り込みながらやってきました。そういう意味では、試合を重ねるごとにわれわれのパフォーマンスが高くなってきていることは、見ている方々にも分かっていただけているかなと思っています。今日は小さい勝負どころでの自分たちの精度、ゲーム理解、こういったところを学びましたので、次の入替戦にはいい状態で臨めるのではないかなと思っています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル ゲームキャプテン

「小さいところが要因になって負けてしまったかなと思います。残り22mのところで4回ターンオーバーを取るなど、誇り高いプレーもできたかなと思いますので、(勝敗を分けたのは)本当に細かいところだけでした」

──グラウンドの状況はいかがでしたか?
「いい環境でプレーできました。以前、清水建設江東ブルーシャークス戦も同じような環境の中でプレーしたので、そこでアジャストして、今日もうまくプレーできたかなと思っています。グラウンドのコンディションに関しては、自分たちができることは何もなく、そこに対してしっかりアジャストしてプレーしていくということだけなので、特に問題なかったかなと思います」

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートの上田泰平ヘッドコーチ(左)、古田 凌キャプテン

三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ

「雨の中、関係者の方々が素晴らしいサポートをしてくれたおかげで、スムーズに試合へ入ることができたことを感謝しています。試合に関しては、“ザ・ラグビー”になったかなという形で、ストラテジー(戦略)とかそういう話よりも、ラグビーの原点に近いような試合展開になったのかなと思います。お互い、フィジカルバトルのところがきっ抗していましたが、この難しいゲームを制したのが、三重ホンダヒートだったということで、選手を誇りに思っています」

──選手交代を後半29分まで行わず、3人だけの交代にとどめましたが、その意図は?

「パブロ(・マテーラ)がイエローカードで(外に)出てしまったので、代えたいなとは思いながら外国人枠の関係のところで代えられなかったというのが、後半29分までのところです。残りの選手だと、フロントローには平野叶翔が控えにいて、フィジカルバトルが強みなのですが、あの時間帯に入っていった中では、セットピースのほうが優先順位として高いと考えた結果、藤井拓海を最後まで使うという形にしました。ヴィリアミ ヴリに関しては、最終的に外国人枠も埋まっていたので、(フランコ・)モスタートや、パブロ(・マテーラ)がけがしたときに入れようということで最後まで残しました。近藤雅喜に関しても一緒ですね。最後、日本人のバックローのプレーヤーたちがけがをしたときに、ヴィリアミヴリと近藤がセットで入っていくような形になるかなと思っていました。根塚聖冴に関しては、平野と同じで、フィールドプレーにおいて優位に立てるようなプレーヤーでしたが、この天候だとあの時間帯以降は、セットピースが大事になってくるので、敵陣でのストラクチャー(整った陣形)や戦術的なアタック、ディフェンスをやるために山路健太をそのまま使いました。渡邉弐貴に関しても、最後のバックスの日本人のプレーヤーがけがをしたときのために残していました」

──難しい試合を勝ち切れたことは大きいのでは?

「こういった天候の中の試合では、チームがどういうラグビーをしていくかというのが、いわゆるセイムページ(ビジョンの共有)にならないと、チームとして絶対にマイナス要素として働いてしまいます。先週、トレーニングマッチをやったのですが、今日よりも酷い天候の中でトレーニングマッチをやっていて、そこで出た課題がすごく生きた試合でした。キャプテンの古田凌をはじめ選手全員が、こういうふうに戦えばいいんだなということを、セイムページになるようにしてくれました。シーズン中に得たものを、グラウンド上でしっかりとパフォーマンスしてくれたなというのが今日の感想です」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「雨の中ですごく難しい試合になると予想していましたが、案の定ロースコアで、すごく難しい試合だったなという印象があります。前半からキックでの陣地の取り合いや、フィジカルバトルの部分、一つひとつのバトルのところで我慢の展開が多くありました。三重ホンダヒートとしては、前半を失点ゼロに抑えられて、ディフェンスもアタックも我慢強くプレーできたことが良かったと思います。後半も優位に立てるところはしっかり優位に立ちながら、モールやペナルティキックをうまく使い、どの選択がチームにとって一番良いのかを考えながらプレーできたと感じています。1点差でも勝てたというところは、チームとしてもすごく大きいので、次にしっかりとつなげて頑張っていきたいなと思います」

──リードされていたときに、ペナルティゴールを狙わずにトライを奪いにいく選択をしましたが?

「角度も結構端のほうだったので、そこは10番(ケイレブ・トラスク)とうまく話し合いながら、というのもありましたし、フォワードのモールが機能していたこともありました。ペナルティもフォワードのモールで取れていましたし、相手からしたら僕らのモールが来たらプレッシャーになるのかなと考えていたので、あそこの場面ではコーナーに蹴って、フォワード勝負でいこうという選択をしました」

ニュース一覧へ