2023.03.27NTTリーグワン2022-23 D3 第12節レポート(中国RR 21-45 九州KV)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 ディビジョン3  第12節
2023年3月25日(土)13:00 Balcom BMW Stadium(広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 21-45 九州電力キューデンヴォルテクス

グランドこそがすべてを出し尽くせる場所。
ラグビーに全力の男の日常が再び動き出す

中国電力レッドレグリオンズの森山皓太選手。「僕はもともと人と話すのがすごく苦手だけど、ラグビーだと全身全霊を出せる」

雄叫びがスタジアムに響いた。劣勢の中でチーム一丸となったトライが決まった瞬間、森山皓太が感情むき出しの声を上げた。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)には、グラウンドで常に全身全霊を捧げる男がいる。

中国RRが本拠地のBalcom BMW Stadiumに九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を迎えた電力ダービー。試合の立ち上がりから相手の勢いに圧倒され、気づけば31分までに35失点を喫していた。岩戸博和ヘッドコーチが「力の差が出たようなゲーム展開だった」というほど厳しい試合だった。

それでも、34分にスクラムからリズム良くパスをつなぎ、藤井健太郎がボールを持って押し上げる。そこからチーム全員で粘りの攻撃を続け、最後は前半終了間際にモールを押し込んで青木智成のトライにつながった。

その瞬間、森山が雄叫びを上げた。感情を爆発させた大声は、苦しい雰囲気を切り裂くようにスタジアム中に響く。「自分からチームを盛り上げていかないといけないと思っていた」。その情熱はチームを鼓舞し、後半の立て直しへの流れを作った。

持ち味のタックルでも吠えた。68分、溝渕篤司が高く蹴り上げたボールを相手選手がキャッチ。次の瞬間、突っ込んできた森山が「ドスン」という衝突音とともにボールホルダーを押し倒す。観客もどよめく会心の一撃。森山は起き上がりながら、二度叫んだ。

「相手が向かってくる感じとか、相手を倒したときの観客の盛り上がりを感じられて楽しかった。自分が流れを変えてやると思っていたし、流れが変わった瞬間は最高でしたね」

普段は温厚で物腰の柔らかい印象だが、ラグビーになると周りから「リラックスしろ」と言われるほど熱くなる。気持ちいいほどの雄叫びが出るのは、森山にとってグラウンドこそが体力も気力もすべてを出し尽せる場所だからだ。

「ラグビーは唯一自分を表現できる場ですね。僕はもともと人と話すのがすごく苦手だけど、ラグビーだと全身全霊を出せる。僕にとってラグビーは救いの場所なので、このスポーツに出会えて良かったなと思います」

森山はけがの影響で約2カ月ぶりの出場だった。「ラグビーがこんなに楽しいんだって思いながらやっていました」。試合特有の緊迫感の中で、全力で戦い、全力で感情を出す。そんな自分を表現できる日々が再び動き出した。

中国RRは九州KVに21対45で敗れて5連敗となった。次節は今季最後のホストゲームで首位のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪を迎える。厳しい戦いは続くが、スタジアムに響く雄叫びがまた中国RRを熱くする。

(湊昂大)

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの岩戸博和 ヘッドコーチ(右)と鳥飼誠 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和 ヘッドコーチ

「九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)のみなさま、リーグ運営関係者のみなさま、今日はありがとうございました。前半はわれわれが今回フォーカスしようと話していたディフェンスの部分で受け身に回ってしまって、立ち上がりは選手たちもちょっとパニックになった部分もあったのかなと思います。あとは、『個人でフォーカスするところをしっかりやり切ろうね』と言っていたんですが、そこをできたかどうかは先ほどのミーティングで選手たちに話したところです。九州KVさんの勢いのあるアタック、早いポジショニングを上回ろうと話していました。前半はそこができなかったですが、後半はしっかり修正してくれた部分はありました。試合の入りの僕の動機づけも悪かったのかなと反省しています。とはいえ、後半に修正してくれたのは次につながるゲームだったと思います。九州KVさんにチャレンジできる最後のゲームだったので、しっかり自分たちのラグビーをしていこうと話していたんですが、やっぱり力の差が出たようなゲーム展開だったと思います」

──パニックになった理由を教えてください。

「原点はタックルです。個人の1対1のところでミスタックルを連発していたので、フォワードは顔を上げたらゲインをかなり切られていたと思います。そこが大きな要因だと思います。九州KVさんがやってくることに対してのパニックよりは、ある程度は想定の範囲内ではありましたが、最初のセットプレーのところで止めきれていなかったですし、何が起こっているか分かっていない選手もいたと思います。今日はバックスのディフェンスが非常に悪かったと思います。フォワードはモールやスクラムの部分は非常に評価できる試合だったと思います」

──スクラムの評価を教えてください。

「今回はスクラムでペナルティを取れるようにフロントローもかなり意識してこのゲームウィークで取り組んでくれたので、それが結果として現れたのは評価したいですし、交代で入った選手もしっかりチャレンジできていました。ずっとスクラムでやられていたぶん、負けはしたものの、いい部分が見られたと思います」

中国電力レッドレグリオンズ
鳥飼誠 共同キャプテン

「九州電力キューデンヴォルテクスのみなさま、リーグ運営のみなさま、ありがとうございました。前半の戦い方が試合を決めてしまったと思います。具体的にはファーストフェーズや1対1のディフェンスの部分で、フォーカスしていたところができていませんでした。チームとしても相手にプレッシャーを与えられず、自分たちで仕掛けに行けなかった。そこに尽きると思います。前半でそこを修正できれば良かったのですが、ズルズルと行ってしまって点差が開いてしまったのが今日の敗因だと思います。後半はアタックでもディフェンスでも選手間でトークがあったので、自分たちの時間を作っていけたのは良かったのですが、チームとして一人ひとりがどう仕掛けていくのか。そこを次戦に向けてしっかり準備していきたいと思います」

──今日の試合で手応えを感じたところを教えてください。

「後半はしっかり修正できたところと、後半に押していく中で相手に対してどう仕掛けていくかをチームとしてしっかり話しながら判断できたところは良かったと思います」

中国電力レッドレグリオンズ
森山皓太 選手

──試合を振り返ってください。

「楽しかったです。ラグビーがこんなに楽しいんだと思いながらやっていました。試合の緊迫感や、相手が向かってくる感じ、相手を倒したときの観客の盛り上がりを感じられて楽しかったです。自分が流れを変えてやるんだと思ってプレーして、そこで流れが変わったときの瞬間が最高でしたね」

──実際にタックルで流れを変えるようなシーンもありましたが、手応えはありましたか?

「手応えは非常にあります。ただ、それでも九州電力キューデンヴォルテクスさんがいいラグビーをしていて、それに圧倒されて前半を終えてしまいました。後半に切り替えることができたので、そこは良かったと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクス ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ(右)と高井迪郎 キャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ

「まずは中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さん、ありがとうございます。正直、本当に残念です。前半はいいところがたくさんありましたが、私たちはディビジョン2に上がりたいチームなのに、後半のような試合をするとディビジョン2には上がれないと思います。いまから3週間の休みがあるので、しっかりリセットして、またフォーカスして、いろいろとやらなければいけないことがあると思います」

──具体的に残念だったところを教えてください。

「中国RRさんにモールトライを取られてしまったところが残念でした。私たちはディビジョン3の中ではモールで支配できるチームで、私たちはそこにプライドを持っているので、そのプライドを傷つけられたような感じがしました」

──次節はNTTドコモレッドハリケーンズ大阪との大一番ですが、どのように準備していきますか?

「今日の後半を見ると分かるとおり、少しオフが必要だと思うので、まずは休みを楽しみます。今日は目を覚まされたような感じの試合でしたし、いい勉強になったと思うので、しっかりリセットしてやっていきたいです。今日はいいラグビーをしていて、いいところがあったのは良かったですが、ディビジョン2に上がるためにはもっと良くならないといけないと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
高井迪郎 キャプテン

「まずは、ありがとうございました。ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチと同じように、本当に残念です。今朝、ホテルを出るときに、ヘッドコーチが『自分たちでしっかりチャレンジしよう』という話をしてくれて、まさに前半はそこにフォーカスできたと思います。ただ、後半は自分たちがチャレンジしていく上で、九電DNAやエフォートの部分、チームのカルチャーを守り、成長させるところがなかなかプレーに出ませんでした。対戦相手はいますけど、まずは自分たちにチャレンジすることが大事だと思いますし、そういった部分を成長させていくことが、次のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦やディビジョン2への道につながっていくと思っているので、そこをもう一回見つめ直す必要があると思います。いい勉強になりましたが、全然満足できるゲームではなかったと思います」

──具体的に残念だったところを教えてください。

「セットピースとフォワードのところが非常に残念だったなと思います。もちろん中国電力レッドレグリオンズさんがいいモールを組んでいましたし、そこはリスペクトしていますが、ただ僕たちはもうちょっとできるという話はグラウンド上でもしていましたし、ロッカールームでもフォワードとバックスで集まって話しました。そういうところは成長していかないといけないと思いました」

九州電力キューデンヴォルテクス
吉田隼人 選手

──ひさびさの試合はいかがでしたか?

「(二度の前十字靭帯断裂によって)2年ぶりの試合ということもあって、練習ではできることが試合だと違うので、プレーの強度とか芝の感じとか、試合独特のものがあって、これが試合だなと感じました。思ったより疲れてしまって、思うようなプレーができないことも多々あったので、もっと頑張らないといけないなと思いました」

──試合の入りはどんな気持ちでしたか?

「2年ぶりなので、メンバーの雰囲気とか、試合に臨む感じとか、あとはホテルの過ごし方とか、こんな感じだったなと思っていました。またここから自分のラグビー人生がもう一回始まるなという気持ちになりましたね」

──復帰戦での勝利の感想を教えてください。

「勝利は素直にうれしいですけど、個人としてはできなかったところがいっぱいあったので、そこは修正していきたいです。あとフォワードとしても勢いを作れなかったところ、相手の勢いを止められなかったところが多々ありましたので、個人もフォワードも修正していくところがあったと思います」

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