2023.04.10NTTリーグワン2022-23 D1 第14節レポート(トヨタV 53-5 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第14節 カンファレンスA
2023年4月8日(土)14:40 岐阜メモリアルセンター長良川競技場 (岐阜県)
トヨタヴェルブリッツ 53-5 三菱重工相模原ダイナボアーズ

厳しいポジション争いに打ち勝て。
フランカー・吉田杏が秘める思い

トヨタヴェルブリッツの吉田杏選手。4人をなぎ倒す力強いトライを決めてチームを勢いに乗せた

トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)が前回対戦のリベンジを果たした。

第2節では三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)に対して接戦の末に敗れていたトヨタV。今節は開始直後の2分にフォワード陣によるモールからの必殺パターンで彦坂圭克がトライを奪うと、10分には第7節以来の先発で、この日はフランカーに入った吉田杏が4人をなぎ倒す力強いトライを決めてチームを勢いに乗せた。

「練習どおりです。自分の強みであるランニング、コンタクトプレーが出せたのかなと思います」

そう言って少し笑顔を見せた吉田だが、取材中は終始厳しい表情で、快勝にもそれほど大きな喜びはないように感じた。厳しいチーム内での競争がこれからも続き、一つの結果で一喜一憂はしていられないという思いがあるからだろう。

「トヨタVだけではないですけど、ほかのチームもやっぱり3列の競争は激しくて、そこで日本人の3列が頭角を現さないといけないと自分自身は思っています。今日試合に出られていない古川聖人もそういった悔しさを味わっているので、自分としては試合に出られなかった日本人メンバー、外国人メンバーも含めて、しっかりその代表としてプレーできたと思います」

強いフィジカルとともに、パワーとスピード、そしてこの試合で吉田が見せたようなランニングや持久力も必要なフランカー。チーム内には日本代表の姫野和樹や、この試合ではナンバーエイトに移った南アフリカ代表のピーターステフ・デュトイなど多くの実力者が在籍している。他チームを見ても屈強な外国人がこのポジションの主力となっているのが実情だ。

その中で、このトヨタVと相模原DBの前回対戦は、両チームともフランカーは日本人選手が先発した。そしてポイント、ポイントで質の高いプレーを見せチームを引っ張っていた。

「3列目のポジションは、日本人が試合に出続けるのはやっぱりすごく難しい。その中でしっかり試合に出続けること、いいプレーを出し続けること、そこを目指して残り2試合ですけど、頑張っていきたいと思います」

外国籍選手との厳しいチーム内競争に打ち勝つことが、日本代表のレベルアップにもつながっていく。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹 共同キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「今日のパフォーマンスに関してはうれしい気持ちでいます。1週間を通して姫野(和樹)キャプテンをはじめとしてほかのリーダーもチームをうまくけん引してくれました。それは特に冷静さ、エナジーという点でのバランスを取ること、それをやり続けた結果、いい雰囲気を作り、試合においては実行力、全員が仕事をやり切ってくれたと思います。時に試合の中でうまくいかない局面でも、リーダーがうまくチームを一つにまとめ、その中で話をする。そういったところでもいいプロセスを踏むことができたと思うので、今日の試合に関しては、コーチとして非常に誇りに思います」

──前半戦よりも守備が非常に強くなってきたと感じますが、その要因はどのように感じていますか?

「チーム全体として連係できていることが要因だと思っています。トレーニングの中でもディフェンス面で一貫性というのが見られています。あと、チームの中で『自分たちはいいタックルができる』と、そういった信念というものも生まれていると思います。全員でプレーして、そして連係しているときはいいディフェンスができているので、今日のディフェンスに関しては自分も誇りに思っています」

──東京サントリーサンゴリアス戦をきっかけにチームが上向いたと思いますが、いかがでしょうか?

「あの試合がチームの中で信念を生むきっかけになったと思います。それ以降もトレーニングの中でより一貫性を持つことにフォーカスをしてきましたが、ああいう結果というのがチームとしての信念を生み、そしてその中でエナジーと自信を与えてくれたと思います。それが理由でチーム内でのコネクションができました。それらを後押ししてくれたと思っています」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「本日の結果はうれしく思っています。僕たちは自分たちにフォーカスして、しっかりプロセスを踏んで、その中での必要なディテールをしっかりこだわりながらやっていくことで、自分たちの一貫性が生まれていると思います。それがここ最近の結果だと考えています。リーダーとして引き続きしっかり自分たちにフォーカスして、ディテールに妥協をしないというところ、引き続きリーダーとして引っ張っていきたいと思います」

──2戦目でつまずいた相手との試合でしたが、どんな成長を感じましたか?

「一貫性がもともとなかったというところ。前回は自分たちで少しスキを見せてしまった。チーム内のプロセスの中で、自分たち自身でスキを生んでいたし、相手に左右されてしまった、コントロールされてしまった、自分たちにフォーカスし切れなかったのが前回の対戦でした。今回はしっかり自分たちが細かなところから準備ができたことで一貫性につながった。その細かなことが最近できているからこそ、一貫性を持ったパフォーマンスが出せていると思います」

──パフォーマンスが良くても勝利に結びつかないこともありました。

「結果ばかり気にするのではなく、自分たちにフォーカスして自分たちがどれだけできたかというところ、それが自分たちの評価点としてありました。そこで評価すると自分たちのラグビーができてきているし、もちろん結果につながらない試合もありましたけど、プロセスを大事にしてきているので、そこの評価に関してはリーダーとして満足しているし、今日に関しては結果につながったうれしさはあります」

──立ち上がりのラインアウトモールからのトライについて教えてください。

「フォワードのところは自分たちの強みであると思うんです。やることもクリアだし、自分たちの強みを出すというところをフォーカスしていましたし、あそこは主導権を握るという場面で、すごく大事なモールでした。そこを取り切れたのは非常にいいプレーだったと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「まずはトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)におめでとうと言いたいと思います。本当に素晴らしいパフォーマンスでした。勢いをつかんで、そこから1回も放しませんでした。前回、私たちと戦った時から学んで改善して、素晴らしいパフォーマンスを出したので、それを褒めたいと思います」

──前回対戦との違いはどこに感じていますか?

「一番は勢いだと思います。相手が最初に二つのトライを取って、そこから自分たちが勢いを取り戻すことができませんでした。そこからすべてが相手方向に行き始めて、自分たちも相手陣内に入ったときもありましたけど、それを遂行できなかったというところも大きな違いだったと思います。普通はできているところが、今日はその大事な場面でミスが起きてしまいました。そこが一番の違いだと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「まず、負けたことを本当に悔しく思います。ディフェンスだったりアタックだったり、われわれが準備してきたところを遂行できた場面もあったんですけど、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)に崩される場面が多かった。高いプレッシャーの中で、どれだけ自分たちのプレーを遂行できるかというところが、この高いレベルの中で戦うには必要だと思います。しっかり反省するところを反省して、次につなげていきたいと思います」

──前回対戦との違いはどのように感じていますか?

「(グレン・ディレーニー)ヘッドコーチのおっしゃったとおり、トヨタVはスコアできるところでしっかりスコアした。(三菱重工相模原)ダイナボアーズはスコアできるところで取り切れなかった。そういうところが今回の差だと思います」

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