2023.04.17NTTリーグワン2022-23 D1第15節レポート(横浜E 9-11 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第15節 カンファレンスB
2023年4月15日(土)14:00 日産スタジアム(神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス 9-11 東京サントリーサンゴリアス

追い風となった前半終了間際のペナルティゴール。”3位争奪戦“を東京SGが制す

ロースコアの接戦を制した東京サントリーサンゴリアス。10番の田村煕選手がプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した

この一戦を前にした時点で3位の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)を勝ち点3差で追う状況だった5位の横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)。試合では横浜Eが常に先行する展開に持ち込んだものの、後半32分にトライを奪われて逆転負け。“3位争奪戦”を制した東京SGが、プレーオフトーナメント進出を決めた。

東京SGの選手がタッチラインにボールを蹴り出し、滑川剛人レフリーのホイッスルが鳴り響くと、ビジターチームの3位以内が確定した。「プレーオフトーナメントに出ることが当然と見られるチーム」(田村煕)にとっては、安堵する結果。兄・優との兄弟対決を終えた田村煕も「ホッとした」と率直な心境を明かした。

3対6で折り返した前半は大苦戦。開始2分には兄の田村優にペナルティゴールを決められると、前半の東京SGはアタックをしかける形もままならなかった。

それでも、スコアは0対3。前半30分には追加点となる2本目のペナルティゴールを決められたものの、チームの心が折れることはなかった。田村煕がこう証言する。

「チームにとっては、厳しい状況だったけど、(点差を)3点で抑えられていたし、ゲームの流れが良くなかったとしても、スコアがそれほど開かなかったことは大きかった」

強気のマインドで戦えていた東京SGは前半終了間際の40分、相手のペナルティに付け込み、田村煕がペナルティゴールを奪取。相手にダメージを与えられる時間帯に追撃の得点を奪えたことも、チームにとっては追い風となった。

3対6で迎えたハーフタイム。ロッカールームでの東京SGフィフティーンは「足りないことを言い合えたし、後半に向けてスイッチを入れることができた」(田村煕)という。

“粘り腰”で戦い続け、反撃のチャンスをうかがう。こうして東京SGは終盤の後半32分、モールの展開からこの試合唯一のトライを奪い、スコアを逆転させた。逆転に向けた機運に関して、田村煕がこう振り返る。

「大事な局面で変なミスやペナルティをしなくなりましたし、それによって少しずつこちらに流れが傾いてきた中で最後に仕留めた形でした」

決して勝機を逃さない。決勝トライは相手の運動量低下にも付け込んだ形だが、前半終了間際というプレッシャーが掛かる時間帯に、田村煕がペナルティゴールを確実に決めていたことも見逃せない。

「今日の勝利への貢献度は30%ぐらいでは」(田村煕)

横浜E戦でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた勝利の立役者は、実に謙虚だった。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介 監督(右)とコリー・ヒル ゲームキャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介 監督

「勝つチャンスはたくさんあったのですが、それでもこういうゲームを勝ち切れないのはチームの甘さです。ただ、ゲームの内容は、雨の試合でしたが、個人的には両チームのラグビーのレベルは高かったと思います。相手とのほんの少しの差がまだまだ埋まり切っていません。例えば、ペナルティのタッチキックをしっかりと出すとか、自分たちで流れを引き寄せられる場面を逃していることが、勝てるチームになれていないことにつながっています。ただ、勝ち点1を取っていますし、最高の負けだと思います。次の試合は先を見ずに、コベルコ神戸スティーラーズとベストなラグビーをして、“イーグルスのスタイル”で堂々と勝ちにいきたいと思います」

──田村優選手の早めの負傷交代は、チームに影響を与えたのでしょうか?

「彼の経験値やラグビーの知識がチームには必要でした。早い段階で抜けたことにより、もちろんチームには影響がありました。代わって入った(小倉)順平は、上のレベルに行くには、ラグビーを理解して、ゲームプランをどうコントロールしていくか。そういうラグビーの知識がついてくれば、上のレベルの選手にはなるとは思います」

──雨の試合に向けて、選手たちにはどんな指示を出したのでしょうか?

「われわれは雨の試合の経験値も多いですし、雨の中での試合の準備も進めてきました。大事なことも分かっているので、それを遂行しようと話していました。前半は支配している時間は長かったと思います。ただ、後半の試合を分ける時間帯のコントロールはまだまだ学んでいかないといけない。80分全体のマネジメントというよりは、ラグビーはテリトリーゲーム(陣取り合戦)なので、それをどうドミネート(力で圧倒)していくかは、大事なポイントだったと思います」

──後半25分にフロントローのポジションの選手を3枚代えたにもかかわらず、その後スクラムやモールで押し込まれたことは、誤算だったのでは?

「その差はありました。選手たちにも話したように、彼らも頑張っていますが、ネガティブにならずに、1週間の取り組みを見直してほしいということです。練習に臨むマインドなど、小さなことですが、そういう部分を変えていくことにより、ラグビー選手として成長するスピードは変わってくると思います。まだ若い選手もいますし、そういうことを考えながら準備することができれば、ポテンシャルのある選手たちなので、もっともっと伸びていくと思います」

──テリトリー(陣地)を取れなかった原因は?

「その原因はペナルティです。ペナルティが増えると、テリトリーで負けることはラグビーの鉄則です。あとはセットピースです。雨の日はセットピースがゲームを左右します。ただ、僕はそんなにネガティブにはなっておらず、次の試合に向けてエネルギーが湧いてくるような試合でした」

──総括ではベストゲームをすることを強調し、プレーオフのことは口にしていません。その理由は?

「そのままの意味です。ベストゲームをすることで結果がついてくる。われわれには自力でトップ4に入る権利があるわけです。まずはシンプルなことを追求し、その結果、チームとして成長できた状況で次のステップに進めればいいと思っています」

横浜キヤノンイーグルス
コリー・ヒル ゲームキャプテン

「非常にタフな厳しい試合になりました。こういう天候ですし、フィジカルな試合になることも覚悟していました。ハーフタイムにも話しましたが、両チームにはわずかな差しかない、と。そして試合後のロッカールームで選手たちは非常に悔しい顔をしていました。今季は接戦の試合が多かったですが、そこでしっかりと白星を取り切れなかったことが、フラストレーションの溜まる原因ではあります」

──後半、劣勢になった理由は?

「前半に関しては自信を持っているゲームプランを遂行できましたし、実際に得点を重ねることができました。後半はレフリングの見解が自分たちにとって不利になっていきましたが、それはラグビーでは仕方がないことです。自分たちを見つめ直す反省点は、接戦をモノにする力をつけることです。もっと力強く試合をフィニッシュできるチームにならないといけないと思っているので、最終戦に向けて、また気持ちを引き締めていきたいです」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲 監督(右)と堀越康介 共同キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲 監督

「本日も雨の中、たくさんのファンの方々に後押ししていただき、感謝しています。ありがとうございました。非常にタフなゲームでした。選手たちには『1点差でもいいから勝ち切るゲームをしよう』と話していた中で、実際にそれに近い試合になりました。相手のプレッシャーがある中で選手たちも頑張ってくれましたし、最後に自分たちの強みを出して勝ち切ってくれたことで成長につながるゲームができました。また、チーム全員で良い準備をして、次節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦にチャレンジしたいと思います」

──ハーフタイムにはどんな指示を出されたのでしょうか?

「二つの指示を出しました。一つ目はカウンターに対して、誰がディフェンスでボールに行くのか。それが明確ではなかったので、そのコミュニケーションを取りました。もう一つはこういう雨の中のゲームはルーズボールが多いので、スクラムを組むのではなくて、ルーズボールを回収して、その状況をうまく使っていくことを確認しました」

──流大選手の評価はいかがでしょうか?

「流については、ひさしぶりの試合でしたし、早い時間帯での出場は迷いましたが、チームをうまく落ち着かせてくれたと思います」

──スタンドオフに田村煕選手を起用しました。その理由を聞かせてください。

「クラッツ(アーロン・クルーデン)のコンディション不良がありまして、当初とは違うメンバーになりました。田村もスタートから出て、本人は納得したパフォーマンスとは言わないでしょうけど、ペナルティゴールをしっかりと決めてくれました」

──後半に状況が好転した理由は何だったのでしょうか?

「前半と後半で変えた部分はありましたが、特に後半は落ち着いて試合をコントロールできたと思います。前半はどちらかと言うと、違うキックの種類を使うことでテリトリー(陣地)が取れたのかなと思っています。後半はその部分がしっかりと修正できました」

──松島幸太朗選手のパフォーマンスは良かったのではないでしょうか?

「ハイボールの対応や、キックとランの選択は明確だったと思います。重馬場では彼の持ち味を出しにくいとは思いますが、良い働きをしてくれました」

──逆転トライを獲得したテビタ・タタフ選手の出来とイエローカードを受けた場面について、どう見えましたか?

「一生懸命にチャージした中で体重のある選手が突っ込んだ形となり、悪意があってタックルをしたようには見えませんでした。ただペナルティはペナルティですから対応していかないと。トライに関しては、モールでプレッシャーを掛けられていたので、フォワードの力だと思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介 共同キャプテン

「監督が先にお話されたとおり、80分後に1点差でもいいから勝つという気持ちで臨みました。難しいゲーム展開になりましたが、最後の最後まで戦い続けたことで、最後に相手も疲れてきて、ミスが多くなり、こちらに流れを持ってくることができました。僕たちらしい、ハングリーらしさが出た試合でした。次に戦うクボタスピアーズ船橋・東京ベイは初戦で負けているので、必ずリベンジをして、たたきつぶしていきたいです」

──劣勢だった前半の内容について、振り返っていただけますか。

「前半途中、横浜キヤノンイーグルスさんに結構モメンタム(勢い)を作られましたし、自分たちのペナルティもあって、うまくテリトリー(陣地)を取れない時間がありました。ただ、ハドルでは常にコネクト(両隣の選手との意思疎通を図ること)をして、『モメンタムで負けるな』ということは言い続けてきた中で修正できたと思います」

──具体的な修正点は?

「もう少しストロングキャリーをすることと、雨の中での肉弾戦を少しでも制することを意識するようにしました」

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