2023.04.25NTTリーグワン2022-23 D1 第16節レポート(静岡BR 27-37 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第16節 カンファレンスA
2023年4月23日(日)14:00 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 27-37 トヨタヴェルブリッツ

初めての1万人超え、そして決意を固めた新キャプテン。静岡BRが得た二つの大きな財産

最終節、12,203人の観客が見守るヤマハスタジアムで、ようやく復帰がかなった静岡ブルーレヴズの奥村翔キャプテン

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第16節。リーグ戦最終節をホストゲームで迎えた静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)は、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)に27対37で惜敗。8位でシーズンを終えた。

前節は静岡BRがやってくれた。ディビジョン1の1位に君臨し続け、昨季のリーグワン開幕以来無敗という驚異的な強さを誇る埼玉パナソニックワイルドナイツに、初めて土をつけた。しかも、相手のホストゲームである熊谷スポーツ文化公園ラグビー場での試合。その勝利の余韻もあっただろう。トヨタVとの東海ダービーということもあっただろう。来場者限定プレゼント、仮面ライダーショー、移動動物園などのイベントも用意した。そういうさまざまな要素が重なり、ヤマハスタジアムには12,203人の観客が駆け付けた。静岡BRのホストゲームとしてはリーグワンが開幕して以来、初めての1万人超えだった。

この日は、今季のキャプテンを任された3年目の奥村翔が先発出場。第9節以降は負傷もあって試合には出られず、ピッチの外から仲間に声を掛け続けた。そして、この最終節が復帰の試合となった。「自分がけがをしている間、チームがまとまってきて、勝ちも増えた。プレーはできないけれど、みんなを鼓舞する言葉はずっと掛け続けたし、みんなに何を話すかはいつも意識していた。先週も本当はピッチに立ちたかった」。

奥村が試合に出られない間、昨季までキャプテンを務めていた大戸裕矢がゲームキャプテンの役割を担った。「大戸さんは、キャプテンじゃなくても、体を張り続けて、チームを引っ張っていってくれる。そういう姿に僕だけじゃなく、チーム全員が付いていく。自分もそういうキャプテンになりたい」と、自らを奮い立たせる。

シーズンをとおして作り上げた「チームカルチャー」(堀川隆延ヘッドコーチ)と、スタジアムにこだまする1万人の観客の声援。二つの大きな財産を得たチームは、来季こそ、大きな飛躍を見せてくれるはずだ。

(有働文子/Rugby Cafe)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの堀川隆延ヘッドコーチ(右)、奥村翔 共同キャプテン

静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ

「1年間、われわれを応援してくださった静岡のみなさんに勝利をお届けすることができず、本当に申し訳ございません。事業部のみなさんも、このホーム開催に向けて、寝ずにさまざまなアイディアを考え、本当にいろいろな準備をしてくれた。そういった方々のチームに対する思いを、結果で表現できなかったというのが本当に残念です。われわれが埼玉パナソニックワイルドナイツに見せたようなラグビーができたときもあれば、そういう力が(ほかの試合では)発揮できなかったりと、1試合1試合、一貫性を持って成長し続けることができなかったのが、今季かなと。何が足りないのか、しっかりレビューして来季につなげたいです」

──今日の試合のターニングポイントはどこだったのでしょうか?

「ターニングポイントは後半の敵陣22mでのスクラムで、完全にドミネート(圧倒)しているのに、ペナルティをしてしまったというのがすべてだったかなと。そういった反省も含めて、自分たちの強みをさらに磨き上げて、“レヴズスタイル”をより強く成長させられるように、来季はやっていきたいです」

──ラインアウトで苦戦した理由について。

「試合中も大久保(直弥)コーチと、たとえば4人ではなくて5人とか、『違うオプションのほうがいいよね』と、われわれが上から見ているものと、選手たちとの間でギャップはあったかと思います。できるだけアドバイスを出していましたが、選手たちの中では実行していると思っていて、そこは話してみないと分からないですが、そういったところでしょうか」

──シーズンをとおして、奥村翔キャプテンの成長をどう感じていますか?

「もう一度、新しいチームカルチャーを持とうということで、過去のヤマハ発動機時代からも含めて、コアになるものが何かを若いリーダーと全員で作ってきました。今季は、勝てないけれど、大負けはせず接戦になるとか、チームが粘れるようになった。崩れない。これは、カルチャーが芽生え始めた証拠だと思っています。そういう意味で、奥村は選手としてだけではなく、人間として成長できたのではないかと思います」

静岡ブルーレヴズ
奥村翔キャプテン

「1年間ありがとうございました。ここまで走り続けられたのは、みなさんのおかげです。今日の試合は本当に勝ちたかった。とても悔しいです。自分たちが用意してきたことに対して、トヨタヴェルブリッツにうまく対策をされたのが、今日の敗因だなと思います。堀川(隆延)ヘッドコーチも言ったとおり、チームは昨年より確実にレベルアップしていますし、埼玉パナソニックワイルドナイツにできたようなゲームを毎試合できるように、来季はがんばっていきたいです」

──1万人を超す観客がスタジアムに来場しました。その光景を見て感じたことは?

「12,000人を超える方々に来ていただき、本当にうれしく思っています。グラウンドから会場を見上げると、たくさんの“レヴニスタ“、ファンでスタンドが埋まっていて、この中でラグビーができることは喜ばしいことだと感じました」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹 共同キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「非常にエモーショナルな試合でした。たくさんのメンバーが今季限りで退団するので、彼らにとっても自分たちのハートを見せて、いいパフォーマンスでシーズンを終えるということ。それに対して、静岡ブルーレヴズがセットピースの部分でいいプレーをして、われわれとしてもカバーしないといけない。そういう局面が多かったです。シーズンの締めくくりとして、ハートを見せて、そしてメンタルゲームにうまく対応して、選手は戦い切ってくれたと思うので、次のシーズンにつながるいい試合だったと思います」

──今季の収穫と課題について。

「まず、大きな学びがコーチとしてありました。それは、一貫性を持つこと。月曜日のトレーニングから始まり、選手、コーチ、リーダーシップグループの中で、準備の段階で一貫性を持つことです。そういった意味で、今季はすべてのメンバーが成長できたと思っています。もちろんシーズン序盤に関しては、その一貫性のところがうまくいっていない部分はありましたが、それが来季に向けての改善点です。われわれとして、しっかりコントロールできるところをしていきたいと思います」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「最終戦はすごくタフなゲームになりました。正直、自分たちのやりたいこともあまりできなかった。でも、今季の序盤から一人ひとりがチームのことを考えて、チームのために全力を尽くしてくれた。だからこそ、こうやって終盤になって、チームが勝ち切れるようになってきたわけで、選手一人ひとりの努力を誇りに思います。来季に向けて、いいシーズンの締め括りになったなと思います」

──今日の勝利の一番の要因は?

「自分たちのやりたいラグビーができていなくて、試合内容的には静岡ブルーレヴズが優位に進めていた感じはしますが、そこで勝ち得た要因としては、自分たちのセオリーに立ち返って、ゲームをコントロールできたというところ。ただ、内容としては満足できないです。ラストの試合なので、勝てたことは良かったです」

──日本代表の活動までは、どのように過ごすのか。

「ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチからも、しっかりリフレッシュすることを言われているので、まずはそこをしっかり。いったんラグビーを忘れて、自分の心と体をリフレッシュすることが優先になるかなと思います。そのあとは、(持久力測定の)ヨーヨーテストもあるので、そこに向けて体づくりをしていきます」

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